相続財産目録を自分で作る際の注意点やExcelのテンプレートなどを紹介!
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相続財産目録とは?財産を一覧にまとめたもの!具体的なサンプルを紹介!
相続財産目録とは被相続人の所有する土地・建物のような不動産資産、預貯金・株券のような金融資産を一覧にした書類です。相続財産目録の書式や記載内容は特に法定されていません。
相続財産目録は遺言書の作成、遺産分割協議の進行、相続税の申告等の際に必要な書類となります。相続の際の財産目録は相続人が個人であっても、遺贈(遺言書で財産を引き継がせること)や死因贈与(死亡を原因に贈与を行う契約)で法人に相続させる場合も、記載内容は変わりありません。
裁判所では次のような相続財産目録(遺産目録)のサンプルが提供されています。このようなサンプルを利用して作成しても構いません。
[裁判所COURTS IN JAPANホームページ 書式集]
https://www.courts.go.jp/kyoto/saiban/katei/s_syosiki/index.html
なお、会社の作成する財産目録も財産の計算書類ですが、こちらは会社の解散による清算手続き、株式会社が会社更生法・民事再生法の適用を受ける場合等に利用します。相続とは関係ありません。
相続財産目録を作るメリットとは?作る義務はある?
ここでは相続財産目録の作成のメリットと、どのようなケースで必要となるのかについて解説します。
相続財産目録の作成のメリット
作成するメリットは主に次の3点です。
(1)遺産全体が把握しやすくなる
被相続人の遺した不動産や預貯金等のプラスの財産、ローンや未払金等のマイナスの財産が把握しやすくなります。遺産の全容がわかれば相続人間での遺産分割協議も円滑に進みます。
財産目録を作成しマイナスの財産が多いと判断したら、速やかに相続放棄(遺産を引き継がない代わりに、被相続人の債務を返済しない)や、限定承認(取得したプラス財産の限度で、被相続人の債務を相続する)の手続きを行うことも可能です。
(2)円滑な遺産分割協議ができる
複数の相続人が集まり遺産分割協議をする場合、口頭だけで財産を伝えて分割しようとすれば、財産の一部を伝え忘れるリスクがあります。
しかし、財産目録を作成して各相続人へ配布すれば、一目で財産の種類・評価額等がわかり遺産分割協議をスムーズに進めることができます。
(3)相続手続きが進めやすい
財産目録により相続財産全てが一目でわかるので、相続人で公平な配分がしやすく、相続手続き(例として預貯金の名義変更、土地・建物の名義変更等)の計画が立てやすくなります。
その他、財産目録に各相続財産の金額(評価額)を明記すれば財産総額が把握でき、相続税の申告・納税の必要の有無も判断できます。なお、相続税の基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人」分に課税価格の合計額が収まれば、申告・納税は不要となります。
相続財産目録が必要となるケース
財産目録作成の必要性が生じるのは主に次のケースです。下表をご覧ください。
ケース | 財産目録作成義務 | 財産目録を作成すべき人物 | 提出・配布先 |
遺言書作成時 | 任意 | 被相続人(遺言者)本人 | 遺言書に添付・保管 |
限定承認・相続放棄の申立時 | ・限定承認:義務 ・相続放棄:任意 | 相続人 | 家庭裁判所に提出 |
遺産分割調停の申立時 | 任意 | 相続人 | 家庭裁判所に提出 |
相続税申告時 | 任意 | 相続人 | 税務署に提出 |
遺言執行手続き時 | 義務 | 遺言執行者 | 相続人に交付 |
遺言書作成の際は、被相続人本人が生前に財産調査を行い相続財産目録としてまとめておきましょう。
限定承認・相続放棄を家庭裁判所へ申立てる場合、限定承認は所定用紙に遺産目録への記入が、相続放棄は申請書に相続財産の概略の記入が要求されています。また、遺産分割調停の申立ては所定用紙の遺産目録に記入します。
また、相続税申告時には税務署への提出するとき相続税の申告書へ相続財産の一覧表に記入が必要です。
いずれも、財産目録を作成しておく義務はないですが、作成しておけば所定用紙への記入がスムーズにできます。
また、遺言執行者とは被相続人(遺言者)から指定された、遺言内容の実現のために必要な手続きをする人です。この遺言執行者には、財産目録を作成して相続人に交付する義務があります。
相続財産目録は自分で作れる?作成時の注意事項を紹介!
相続財産目録の書式は特に法定されておらず、手書きでもPCでも作成可能です。ただし、次の点に注意する必要があります。
相続財産目録へ記載する相続財産は具体的に
単に相続財産の種類だけを記載するのではなく、相続財産の詳細なデータを記載しないと正確な財産の把握ができなくなります。
例えば被相続人の預金の場合は金融機関名・支店名、口座種別、口座番号、口座名義、預金残高を明記し、建物の場合は所在、家屋番号、構造、床面積、固定資産税評価額等を明記します。
記載漏れがあると相続手続きの遅延も
相続財産目録を作成し遺産分割協議を行った後、一部の記載が漏れていた場合、再びその財産について分割協議をする必要があります。
新たに判明した相続財産であっても、遺産分割協議では相続人全員の合意が必要です。記載漏れがあると相続手続きが遅れてしまうケースも想定されます。
正確な相続財産目録の作成には法律の専門家等の助力を得た方が無難です。
自筆証書遺言の財産目録は所定の形式を満たす必要がある
遺言者が自筆証書遺言を作成する場合、財産目録を添付すれば相続人に円滑な相続財産の分与が可能です。目録の形式は法律で決められていないものの署名押印の必要があります。
また、2019年の民法改正によりパソコン等での作成、預貯金には通帳の写しの添付、土地については不動産登記簿謄本の添付も可能です。
柔軟な作成が可能になった反面、財産目録のページ毎に署名押印し、更に自筆証書とは別の用紙で作成を要求されています。このような方式に従わないと、遺言書として認められないおそれもあるので注意が必要です。
財産目録に書くべき項目は?テンプレートはある?Excel形式のテンプレートも紹介!
財産目録の書式に決まりはなく、相続人が個人であっても法人であっても作成に相違はありません。遺言書に添付する際や、裁判所・税務署へ提出する財産目録の作成の際は、インターネットで無料のテンプレートを取得できます。
Excel形式のテンプレートのメリットは、パソコンで気軽に作成できる他、新たに財産を発見したらその都度修正・追加が簡単にでき、財産目録を作成しなおす手間も省ける点です。
無料テンプレートを取得できるサイトは主に次の通りです。
【Excel】裁判所COURTS IN JAPAN 書式集:https://www.courts.go.jp/kyoto/saiban/katei/s_syosiki/index.html
テンプレートへ相続財産の内容を記載する場合は、それぞれ次の詳細情報を明記しましょう。
- 預金:金融機関名・支店名、口座種別、口座番号、口座名義、預金残高、管理状況等
- 建物:所在、家屋番号、構造、床面積、固定資産税評価額、管理状況等
- 土地:所在、地番、地目、地積、固定資産税評価額、管理状況等
- 株式:銘柄、株数、証券会社・口座番号、単価、管理状況等
- 有価証券:種類、証券会社等、口座番号等、数量等、金額、管理状況等
自分で作るのは不安…専門家に依頼するときの相場とは?
相続財産目録を作成した経験がなく、自身で行うことに不安を感じる場合は法律の専門家へ依頼しましょう。相続財産目録の作成は弁護士、司法書士、行政書士に依頼できます。
いずれの専門家も財産調査に精通し、正確な財産把握と相続財産目録の作成が期待できます。また、遺産分割協議書の作成も依頼できるので、その後の相続手続きが円滑に進められるはずです。
弁護士、司法書士、行政書士に相続財産目録の作成を依頼する場合、費用の目安は下表のとおりです。
士業 | 相続財産目録の費用目安 |
弁護士 | 5万円~10万円 |
司法書士 | 5万円~7万円 |
行政書士 | 3万円~5万円 |
費用は法律で定められておらず各事務所で自由に設定可能です。この中で行政書士は最も費用負担が安いものの、相続人同士のトラブルの解決は業務の範囲外です。
もしも相続人間で相続に関する揉め事が発生しそうなときは、紛争解決のプロである弁護士に最初から頼んでおいた方が無難です。
なお、相続財産目録をはじめとした相続の不明点や悩みを相談したい場合は、まず「相続診断士」に相談してみましょう。
相続診断士は様々な相続の質問・疑問に応える有資格者で、相談内容に応じて法律の専門家への橋渡しも行ってくれます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください
この記事を監修したのは…
税理士法人マインライフ 代表社員:門倉 誉士希、伊藤 千尋、久保 佑介、川崎 朝輝
相続税専門の税理士法人として、東京都新宿区新宿、千葉県習志野市津田沼に事務所を展開しております。
少数精鋭の税理士法人を目指しており、申告には必ず100件以上の申告関与数のある税理士が担当することで、
二次相続や将来的な譲渡もふまえた分割のアドバイスなどお客様に寄り添った相続税申告を行うことを法人の理念としております。
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