【まとめ】遺言執行者の報酬はいくら?ケース別に報酬の決め方や相場を解説!

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遺産相続

遺言執行者とは?必要性や役割をチェック!

遺言執行者は遺言者(故人)が作成した遺言書の内容を正確に実現するために手続きをする人です。遺言書を作成する際、遺言執行者を選任するかどうかは遺言者次第です。

しかし、遺言書で誰に遺言執行者を任せるのか指定すれば、誰が中心となって遺言手続きを進めるべきか相続人へ伝えられます。

遺言執行者が可能な作業・手続きは主に次の通りです。

・相続人等へ遺言執行者に就任した事実を通知

・相続人の調査

・遺言者の遺産や、負債(借金等)の有無を調査

・財産目録を作成し、相続人全員へ交付

・預貯金口座の解約や名義変更

・有価証券の名義変更

・土地・建物の相続登記や遺贈による登記

・相続財産の現金化

・遺言執行完了後、相続人全員に職務完了報告書を送付

重要な役割が与えられるものの、遺言執行者の就任に特別な資格は必要ありません。そのため、家族の中で信頼のおける人を指定しても良いですし、弁護士をはじめとした士業専門家への依頼も可能です。

遺言執行者になるための要件や選任方法、注意点

遺言執行者は、遺言者の意思を尊重し、遺産分割や遺産管理を円滑に進めるための役割を担います。遺言執行者には、特定の資格や許可は必要ありませんが、一定の要件を満たす必要があります。

まず、遺言執行者には成年後見人や保佐人、破産管財人になるための要件と同様の要件があります。つまり、20歳以上の成年で、民事上の能力(財産上の行為ができる能力)があることが求められます。

また、遺言執行者になるためには、遺言者との間に血縁関係がある場合や、遺言者の信頼があることが望ましいとされています。

遺言執行者を選任するための手続きは、特別な手続きはありませんが、遺言書に明記されることが一般的です。遺言書には、遺言執行者の任命や報酬、業務内容、解任条件、複数の遺言執行者の場合の決定方法などが記載されます。

遺言執行者には、遺言者の遺産を管理し、遺言書に記載された遺言の履行をする責任があります。そのため、信頼できる人物を選び、十分な説明を行った上で選任することが重要です。また、遺言執行者として任命された場合は、その業務に対して誠実に対応することが求められます。

遺言執行者になることは、重責を伴う役割ですが、遺言者の意思を尊重し、遺族のトラブルを未然に防ぐことができます。遺言執行者に興味がある方は、遺言書作成時に任命されることを希望する旨を遺言者に伝え、十分な説明を受けた上で判断することをおすすめします。

遺言執行者は指名すべき?報酬を払ってまでも指名するメリット!

遺言執行者の指名には報酬を支払う必要があります。報酬を支払ってまで指名するメリットについて解説します。

・遺志の確実な実行

遺言執行者の指名により、遺言人の遺志がより確実に実行されることが期待できます。遺言執行者は遺言書に明示された指示に基づいて行動し、遺言人の意図を尊重します。

・専門知識の活用

弁護士や公証人などの専門家を遺言執行者として指名することで、法的な知識や経験を活かして遺産の処理や相続手続きをスムーズに進めることができます。

・利益調製の公平性

遺言執行者の存在により、相続人間の利益調整や紛争解決が円滑に行われる可能性があります。遺言執行者は公平な立場から遺産分割や財産の処理を行い、相続人間のトラブルを防ぐ役割を果たします。

遺言執行者の選任は必要?申立手続きや費用について解説!

遺言執行者の報酬はどのようにして決める?遺言執行者の報酬の割合

遺言執行者に支払う報酬は法律で決められていないものの、遺産総額の約1%~3%が相場です。ここでは、ケースごとの報酬の決め方についてみてみましょう。

遺言執行者の報酬が遺言書で決まっていた場合

遺言者が報酬について「遺言執行者に指定した〇〇〇〇へ、報酬として金〇〇万円を支払う。」という形で遺言書の中に明記されていれば、基本的に報酬はその金額となります。

また、遺言書に「報酬は遺言執行対象財産の〇%を支払う。」と、相続財産に対する割合で明記する方法もあります。

報酬の支払い方法やタイミングについても記載し、明確に定めておくと手続きがスムーズに進みます。

なお、遺言書で指定された人が、指定された報酬額に不満がある場合、遺言執行者を辞退しても構いません。

遺言執行者の報酬を遺言執行者と相続人や受遺者の間で決める場合

遺言書に報酬が明記されていなかった場合、遺言執行者から相続人や受遺者に対して相当な報酬額を提示して、報酬をどうするか話し合いで決めます。その上で遺言執行者と相続人や受遺者との間で話し合いがまとまれば、その報酬額によることになります。なお、遺言執行者となる人が無報酬で良い場合、報酬額の取り決めは不要です。

相続人で取り決める場合も、報酬額に不満があれば辞退できます。

遺言執行者の報酬を家庭裁判所で決めてもらう場合

遺言書に報酬が明記されていない、遺言執行者と相続人や受遺者の話し合いで報酬が決まらなかった、家庭裁判所から遺言執行者として選任された、というケースでは家庭裁判所に報酬付与の申立てをして決めてもらいましょう。

申立人は遺言執行者本人であり、遺言執行終了後に遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。主に次の書類を準備し、家庭裁判所へ提出します。

・遺言執行者報酬付与申立書:家庭裁判所で取得

・死亡記載のある遺言者の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得

・遺言執行者の住民票または戸籍附票:住所地または本籍地の市区町村役場で取得

・遺言書の写し

・遺言執行報告書・相続財産目録・遺産に関する資料

遺言執行者の報酬はいくら?種類別の報酬相場を比較!

遺言執行者は親族の他、専門家や法人へ依頼が可能です。相続手続きを専門とする専門家や法人に頼むことで迅速・正確な遺言執行が期待できます。ただし、第三者に頼むと報酬が発生します。報酬額は各事務所・法人で自由に設定しています。

ここでは士業専門家、金融機関、親族(一般人)、家庭裁判所で決定する報酬額の相場をみてみましょう。

士業専門家の報酬相場

遺言執行者として適任なのは弁護士・司法書士・税理士・行政書士で、報酬目安は下表の通りです。

士業専門家 基本料金 報酬 他の費用
弁護士 30万円~40万円 相続財産の1~3% 交通費や日当・戸籍謄本などの証明書手数料・諸手続きの手数料など
司法書士 20万円~35万円 相続財産の1~2%
税理士 20万円~30万円 相続財産の1~2%
行政書士 10万円~20万円 相続財産の1%

遺言内容によって相続人の揉め事が発生するおそれを考慮する場合、報酬額は高めでも紛争解決に対応できる弁護士を遺言執行者として選んだ方が無難です。

弁護士以外の士業は比較的報酬等が割安になっています。ただし、相続人の揉め事を家庭裁判所の調停・審判等で解決する際、当事者の代理人としてサポートしてくれるのは弁護士だけです。なお、司法書士は裁判所に提出する書類作成をサポートしてくれます。

財産に不動産が多いなら登記のプロである司法書士、相続税の申告が必要になる可能性が高いなら税のプロである税理士、財産に自動車が数多くあるなら行政書士へ任せましょう。

各事務所によっては基本料金を定めていないところや、交通費等が無料というところもあります。

金融機関の報酬相場

信託銀行等の金融機関に遺言執行の依頼が可能です。信託銀行では遺言書の作成や保管、遺言執行を包括したトータル的なサポート・サービス(遺言信託)を提供しています。

充実したサポート・サービスが受けられるので、遺言者や相続人も安心して任せられます。ただし、執行自体は士業専門家に業務委託するので外注費用が上乗せされることに注意しましょう。

報酬相場は相続財産の1~3%を目安としているものの、最低報酬額は100万円と設定している金融機関が多いです。

遺産総額が多い場合に金融機関は頼れる存在ですが、まず遺言者の方で保有している資産や負債をよく確認してから依頼した方が無難です。

親族(一般人)の報酬相場

親族に遺言執行者を頼む場合、頼んだ相手が無報酬で良いなら無理に報酬の設定は不要です。遺言書で報酬について明記されていたり、相続人で取り決めたりした内容に従います。

得られる遺産から差し引いて報酬を取得しますが、概ね20〜30万円となるケースが多いようですが、士業などに依頼する場合より相場は低くなります。

家庭裁判所で決めた場合の報酬相場

家庭裁判所で報酬を決める場合は、明確に報酬額が法定されているわけではありません。次の諸事情を考慮し算定されます。

・遺言者との関係性:遺言執行者は遺言者の親族か第三者か

・相続財産の種類や状況:相続財産はどれ位あるのか、負債等も考慮

・執行事務の内容・難易度:執行する財産の種類や額、相続人で揉め事がないか等

・遺言執行者の地位・収入

これらの状況を踏まえ、報酬額がどれ位になるのかは家庭裁判所の裁量次第です。

遺言執行者の報酬額が相場より高い場合の対処法

上記で解説した通り、遺言執行者が受け取る報酬は、遺言書で決められる場合もあれば、相続人同士で協議して決める場合もあります。また、家庭裁判所で決められることもあります。報酬の金額は、遺産の価値や遺言執行者が行う業務内容などによって変わってきます。

遺言書で決まっている報酬額が相場よりも高い場合や、遺言執行者から高額な報酬を要求された場合の対処法を解説します。

遺言書で決まっている報酬額が相場よりも高い場合

遺産分割協議や家庭裁判所での調停などを通じて報酬額を減らすように相談してみましょう

遺言執行者から高額な報酬が要求された場合

まずはその理由を確認し、報酬の妥当性を判断することが大切です。もし妥当でない場合は、協議や調停を通じて適正な報酬額を提示するように求めることもできます。

まずは、遺言書で決まっている報酬額が相場よりも高い場合は、遺産分割協議や家庭裁判所での調停などを通じて報酬額を減らすように相談してみることが考えられます。また、遺言執行者から高額な報酬を要求された場合には、まずはその理由を確認し、報酬の妥当性を判断することが大切です。もし妥当でない場合は、協議や調停を通じて適正な報酬額を提示するように求めることもできます。

報酬が相場より高い場合の主な理由としては、例えば相続人が多く、財産の価値が高い場合には報酬が相場より高くなることがあります。また、遺産分割協議書や裁判所の決定によって相続人が決まるため、相続人の数が多い場合でも、報酬が増えることがあります。さらに、相続財産の価値が高額である場合も、相場よりも高い報酬となる可能性があります。

遺言執行者の報酬は誰が負担する?支払うタイミングや支払い方法も解説!

基本的に遺言執行者の報酬は、相続財産の範囲内で相続人や受遺者が負担し遺言執行の完了後に支払います。自己資金で報酬を支払うのではなく、相続財産の中から報酬を支払うケースが多いです。そして、遺言執行者への報酬を支払うタイミングは、遺言執行の完了後に支払います。

遺言執行者は、遺言書に基づいて遺産の処理や財産の移転手続き、債務の弁済などを行います。そのため、遺産分割が完了してからその業務を終えるまで、遺言執行者への報酬は支払われません。また、遺言執行者が途中で業務を放棄した場合、報酬は受け取れません。ただし、相続放棄などにより相続人がいなくなった場合は遺言執行の業務が完了した部分の報酬を受け取ることが可能です。

もしも相続人が遺言執行者ならば、改めて現金で渡す必要はありません。報酬に見合った遺産分を、他の相続人より多めに取得できるよう調整する方法があります。

なお、次の遺言執行費用は報酬に含まれません。

・相続財産管理費用

・不動産の移転登記費用

・預貯金の解約・払戻の費用

・相続財産目録の作成費用 等

遺言執行の際にかかった上記のような費用を遺言執行者が負担した場合、これらの費用を報酬に上乗せして支払います。なお、遺言執行者と協議し、遺言執行費用の全額やその一部を前払いする方法もあります。

契約書や文書の作成が報酬に含まれるか否かの判断を明確にするためには、遺言書に「契約書や文書の作成に関しては、遺言執行者の報酬に含まれる」という旨の記載をしておくと後々揉めることもないでしょう。

ただし、遺言書にこのような記載がない場合は、遺言執行者と相談して追加の報酬金額に関して取り決めをする必要がでてきます。

遺言執行者の報酬を支払えない場合はどうしたら良い?

遺言書に明記されていた遺言執行者への報酬が、遺産が少ないにもかかわらず、数千万円・数億円等とあまりにも高額ならば、相続人達は遺言執行者に辞退してもらうか、辞任を要求しても構いません。

遺言執行者が辞退・辞任しても遺言書に影響はありません。また、遺言執行者を立てなくても、相続人が手分けして遺言内容を実行することは可能です。

適正な報酬価格で遺言執行者に遺言を執行してもらいたい場合は、相続人で改めて話し合うか、家庭裁判所から遺言執行者を選任してもらうのも良い方法です。

遺言執行者に関するよくあるトラブル

遺言執行者に関するトラブルや問題が発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。以下に、一般的なトラブルの事例とその対処方法を紹介します。

遺言執行者の業務遂行能力の問題

遺言執行者が業務を適切に遂行できない場合があります。たとえば、高齢で認知症が進行しており、意思疎通が困難になっている場合や、精神的に不安定で判断力が低下している場合などです。この場合、遺言執行者を解任することができます。解任の手続きについては、弁護士などの士業に相談することが必要です。

遺言執行者の報酬に関する問題

遺言執行者の報酬に関する問題が生じる場合があります。たとえば、遺言執行者が相場より高い報酬を請求してきた場合や、報酬についての取り決めが明確でない場合です。この場合、遺言執行者との契約内容や報酬に関する書面を確認し、必要に応じて弁護士などの士業に相談することが必要です。

遺言執行者の業務遂行に関する紛争の問題

遺言執行者が遺産の分配についての紛争や、その他の業務遂行に関する紛争が生じる場合があります。この場合、まずは遺言書や契約内容を確認し、解決策を模索することが必要です。もし自力で解決できない場合は、弁護士などの士業に相談することをおすすめします。

以上のように、遺言執行者に関するトラブルや問題が生じた場合には、解決するために遺言書や契約内容を確認し、必要に応じて弁護士などの士業に相談することが大切です。また、遺言執行者を選ぶ際には、信頼できる人物を選ぶことが重要です。

遺言執行者はどこに頼むのがいい?遺言執行者に関するおすすめの相談先をご紹介!

遺言者が遺言執行者を誰にするか悩んでいたり、相続人で遺言執行者を決めたりする場合、いろいろと疑問や不明な点は出てくるものです。

そのようなときは「相続診断士」にまず相談してみましょう。相続診断士は相続全般の知識を持つ有資格者なので、遺言執行者に関する悩みの相談にも無料で応じ、良いアドバイスを行ってくれます。

その他、相続診断士は各士業専門家への橋渡し役も担います。例えば遺言執行者を専門家に依頼したいが、遺言の内容で揉めそうなときは弁護士を紹介してくれます。

また、相続不動産が多く登記に詳しい専門家へ頼みたいなら司法書士を、相続税の申告が必要な場合には税理士を紹介してくれることでしょう。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

小出 亮

こいで司法書士事務所 代表司法書士

小出 亮(こいで りょう)

千葉県流山市の司法書士。10年以上の業務経験を活かし、主に相続手続き・生前準備(遺言など)・不動産・会社の登記手続きを専門としている。丁寧・親切・誠実をモットーに、きめ細やかなサービスと柔軟でスピーディーな対応が強み。一般市民の方向けの講演・セミナー・相談会を通じて、司法書士は身近な存在かつ頼りになることを多くの方に知ってもらうために積極的な活動を行っている。

サイトURL:https://ny-shoshi.com/

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