財産債務調書にはどこまで記載すべき?記載内容や書き方を解説!
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財産債務調書とは?提出対象者となる条件は?
財産債務調書とは、一定の所得金額および財産価額に達している人が、確定申告書とは別に提出しなければならない法定調書です。
提出対象者は次のような条件をすべて満たした方々が該当します。
- 確定申告書の提出が必要な人または所得税の還付申告書が提出できる人
- 所得金額の合計額が2,000万円を超える人(ただし、退職所得を除く)
- 年の12月31日で財産価額が合計3億円以上、または国外転出特例財産価額が合計1億円以上の人
- 年の12月31日に、その価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者(2023年度から適用)
たとえ1年間の所得金額が2,000万円を超えていても、国内の財産が3億円未満で海外の国外転出特例対象財産(例:株式・投資信託等の有価証券、デリバティブ取引等)が1億円未満ならば、調書の提出は不要です。
財産債務調書の提出義務がなくても提出を検討すべき?
提出期限内に財産債務調書を提出すれば、納税者にもメリットがあります。それが過少申告加算税等の「軽減措置」です。
財産債務調書に記載があった所得について、所得税等の申告漏れが生じた場合でも、その部分の過少申告加算税等は5%軽減されます。
このような軽減策を講じているのは、本調書の提出・記載で税務署の調査を容易にしたり、納税者へ恩恵も与えて制度の円滑な定着を図ったりする目的があると考えられます。
財産債務調書の書き方を解説!財産はどこまで記載する?
財産債務調書の用紙は税務署の窓口の他、国税庁ホームページからもダウンロードが可能です。
記載する場合は財産債務調書合計表、財産債務調書・財産債務調書(次葉)に財産や債務を記載していきます。
用紙には次の内容を記載します。
- 土地
- 建物
- 山林
- 現金
- 預貯金:当座預金、普通預金、定期預金等
- 有価証券:株式、公社債、投信信託等
- 匿名組合契約の出資の持分
- 未決済信用取引等に係る権利
- 未決済デリバティブ取引に係る権利
- 貸付金
- 未収入金(受取手形も含む)
- 書画・骨董及び美術工芸品
- 貴金属類
- その他の動産:家具、什器備品、自動車等の家庭用動産
- その他の財産:保険契約に関する権利、預託金等
- 借入金
- 未払金(支払手形を含む)
- その他の債務
なお、改正により2023年度から300万円未満の家庭用動産や事業用の未収入金等は、記載を簡略化できるようになりました。
財産債務調書に記載する財産の価額の算定方法
財産の価額の算定は、12月31日における時価または見積価額となります。こちらでは主な財産の算定方法について取り上げます。
土地建物や有価証券等の算定は次の方法で行います。
- 土地:基本的に固定資産税評価額で記載する、相続税路線価による評価額や鑑定評価額を記載しても良い
- 建物:基本的に固定資産税評価額で記載する、鑑定評価額を記載しても良い
- 定期預金:預入れしたときの元本の金額
- 上場株式等:証券会社から送付される取引残高報告書の記載金額
- 非上場株式:直近の法人税申告書に記載された純資産価額(帳簿価額)
- 生命保険:解約返戻金の金額(保険会社から送付される「契約状況のお知らせ」等に記載)
外貨建ての財産(例:外貨建預金等)・債務の価額は、日本円に換算し記載しましょう。自分の取引している金融機関の公表するレートを記載します。
- 財産:12月31日(休業日ならば、31日に最も近い営業日)の最終のTTB(対顧客直物電信買相場)
- 債務:12月31日(休業日ならば、31日に最も近い営業日)の最終のTTS(対顧客直物電信売相場)
なお、相続または遺贈により取得した財産・債務は2020年以後、財産債務調書への記載が不要となりました。
財産債務調書を作成する手間を軽減する方法をご紹介!
財産債務調書への記載は自分の財産・債務に関する書類があれば、それに明記されている金額を用紙へ転記するという簡単な作業がほとんどです。
しかし、参考にする書類の収集が面倒なのは事実です。この面倒な作業を可能な限りスリム化するため、次のような方法を検討してみましょう。
事前に財産・債務をリストアップする
時間的に余裕があるうちに、自分の財産・債務をリストアップしてみましょう。
そして財産価額等を確認するための書類、書類の収集方法を一覧表にしておいた方が、財産債務調書の記載の準備をスムーズに進められます。
例えば自分が次のような財産を有しているなら、一覧表へ次のように明記します。
財産等 | 関係書類 |
土地 | 課税明細書(地方自治体から届く固定資産税の納税通知書に添付されている書類)で確認 |
建物 | 課税明細書(地方自治体から届く固定資産税の納税通知書に添付されている書類)で確認 |
上場株式 | 取引残高報告書(証券会社から送付される書類)で確認 |
生命保険 | 契約状況のお知らせ等(生命保険会社から送付される書類)で確認 |
財産債務調書の記載前に一覧表を作成していれば、どんな書類を参考に記載するべきかがすぐわかります。
もちろん、送付されてくる書類は誤って破棄しないように、しっかり保管しておきましょう。
e-Taxで作成可能
e-Taxとは、インターネット等を利用し電子的に国税の手続きが行えるシステムです。
e-Taxにて確定申告書等の作成を終了した時点で、各種所得金額の合計が2,000万円を超えたとき、財産債務調書の案内と「財産債務調書を作成する」ボタンが表示されます。
このボタンをクリックすると「財産債務調書(同合計表)」の作成が可能です。手書きの記載が面倒な納税者におすすめの方法です。
ただし、確定申告書も財産債務調書も、手書きの作成に慣れている方々は、無理に本システムを利用する必要はありません。
税理士に任せても良い
日ごろから税金の相談をしている「税理士」がいるなら、確定申告書とともに財産債務調書の記載を任せるのも良い方法です。
自分の仕事が忙しく、申告手続きがなかなか進まない場合、代わりに作成を依頼できるか確認してみましょう。
記帳代行を依頼している場合、オプションとして財産債務調書の記載を用意している税理士事務所もあります。もちろん、費用は支払わなければいけません(財産債務調書の記載分は2万円程度)。
財産債務調書を提出後に修正・追加記載が必要になった場合の手続きは?
提出した財産債務調書の記載内容に関して、誤り・記載漏れがあった場合、 提出期限内に限らず期限後であっても、再度財産債務調書等を提出すれば、訂正が可能です。
ただし、誤りや記載漏れのあった箇所だけの記載だけではなく、当初提出した財産債務調書と財産債務調書合計表への記載内容も含め、全ての財産・債務を記載しなければいけません。
財産債務調書の提出期限はある?忘れるとペナルティも!
財産債務調書はその年の翌年の3月15日までに、納税地を所轄する税務署に提出します(ただし、2024年から6月30日までに延長)。
こちらでは、提出期限内に提出したものの不備があった場合や、期限内に提出しなかった場合のペナルティ、財産債務調書に関する相談先を説明しましょう。
ペナルティについて
提出期限内に提出したものの記載間違いや、申告漏れの部分があったならば、過少申告加算税・無申告加算税が課されてしまいます。
しかし、財産債務調書の提出に関しては特例措置があり、過少申告加算税・無申告加算税で課せられる税率が5%軽減されます。
例えば過少申告加算税の金額は基本的に納める税金額の10%相当額ですが、特例の適用により5%となるのです。
一方、提出期限になっても提出していない、または記載内容に仮装隠蔽(例:ねつ造)等の不備が認められた場合、過少申告加算税・無申告加算税で課せられる税率が逆に5%加重されるので注意しましょう。
財産債務調書に関する相談は専門家へ
財産債務調書で不明点や疑問点があれば、税金の専門家である「税理士」に相談してみましょう。
税理士は相談者の疑問や悩みをヒアリングし、的確な回答を行ってくれるはずです。確定申告や財産債務調書の記載がなかなか思うようにいかなければ、税理士に書類作成や申告手続きの依頼をしても構いません。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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