財産開示手続きとは?弁護士費用や手続きの流れについて解説!

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遺産相続

財産開示手続とは?目的や罰則について解説!

財産開示手続は債権者が裁判所に申し立て、債務者の財産の情報を開示してもらう手続きです。

誰かにお金を貸した場合、お金を貸した以上は借りた人に返してもらいたいはずです。しかし、もう返せるお金は無いと借りた人が主張して、回収が難しい事態になっていることもあるでしょう。

本当にお金を借りた人に財産が無いのかどうか、裁判所ではっきりさせることができます。申込を受理した裁判所は、債務者を呼び出しその財産について陳述させます。

この手続きを行う目的は、強制執行の実効性を確保するため、債務者が陳述した財産の情報を基に、その財産を差し押さえることにあります。

債務者が呼び出しに応じない場合や嘘の供述をした場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、重いペナルティを受けることになります。

財産開示手続の要件は?強制執行できなかったことを主張・疎明する必要あり!

借りた人がなかなかお金を返してくれないからといって、いきなり申立ができるわけではありません。次のような要件が必要です。

要件その1:債権者が申し立てる権利を有している

債権者であれば誰でも申立ができるわけではなく、次のいずれかの要件に該当していることが必要です。

・執行力のある「債務名義」の正本を有する金銭債権の債権者
・「一般の先取特権」を有している

債務名義とは、債務者にお金の返済を強制的に履行させる強制執行の際、その前提として必要とされる公的機関が作成した文書のことです。

この債務名義となり得るのはすでに裁判をして勝訴が確定しているならば確定判決、強制執行できるよう作成された公正証書の場合は執行証書が該当します。

一般の先取特権とは債務者から債権(お金)の回収を行う際、優先してお金を返してもらうことが認められている権利です。

要件その2:強制執行を開始できること

強制執行を開始できる要件(執行開始要件)が整っている場合です。該当する要件は次の通りです。

・債務者に債務名義の正本または謄本が送達された
・「条件成就執行文」または「承継執行文」が付与された場合、執行文謄本と証明文書謄本が送達済
・確定期限の到来が必要なケースでは、その期限が到来

条件成就執行文は債権に条件があった場合、債務名義を付与する公的な機関から条件の成就が確認された後に作成される執行文です。

たとえば債務名義に「債務者が自己都合で本契約を解除した場合、債務者は債権者に対し300万円を支払う」といった条項があるケースです。

一方、承継執行文は債務者から別の人へ権利や義務の承継があった事実を、債務名義を付与する公的な機関が確認し、債務名義に表示された人以外の人へ執行力を及ぼすことのできる執行文です。

この承継とは、例えば債務名義上の債務者が死亡し、その相続人は債務者の財産の他に借金等も引き継いだ場合等があげられます。

要件その3:強制執行の開始や一般の先取特権が実施不可となっていない

債務者が次のような申立を行い手続きが開始された場合、強制執行の開始はできなくなります。

・破産手続開始決定
・民事再生手続開始決定
・会社更生手続開始決定
・特別清算手続開始決定

裁判所がこれらの手続きを認めた場合、債権者へ通知が来て、強制執行のできない旨が明記されています。なぜなら各債権者に対し、配当という形で公平にお金を分けて返すこととなるからです。

そのため、債権者の判断で強制執行することは不可能となります。

一方、一般の先取特権は次の場合に行使することができません。

・被担保債権が履行期の前(お金を返す期限前)
・破産手続開始決定・会社更生手続開始決定・民事再生手続開始決定後、裁判所が一般の先取特権の実行の中止や取消を命じた

要件その4:強制執行ができなかったことを主張・疎明する

強制執行の手続きをしても債務者から完全にお金を返してもらうことができなかった、または債務者の分かっている財産へ強制執行しても完全に貸したお金が戻らないことを、裁判所に主張します。

手続きをしても完全な弁済が得られなかったときは、疎明(裁判官が一応確からしいと判断する)資料として、下記を提出します。

・配当表または弁済金交付計算書の写し
・開始決定正本または差押命令正本写し、配当期日呼出状写し等

一方、強制執行しても完全に貸したお金が戻らないと主張する場合、財産調査結果報告書を作成・提出する必要があります。

要件その5:債務者が3年以内に財産を開示していない

債務者が過去3年以内に財産開示していたなら、基本的に財産開示手続を行うことはできません。

全財産を開示したと裁判所が判断した場合、それでも申立したいなら債権者は次の事実を立証する必要があります。

・一部の財産を開示していない事実
・新たな財産を取得または雇用関係の終了

立証ができないと、この申立は却下されます。

財産開示手続の流れは?各段階のポイントや注意点について解説!

こちらでは申立の手順やポイント、気を付けるべき点について解説します。

申立の手順やポイント

財産開示手続の流れは次の通りです。

1、債務者の住所を調査:市区町村役場から債務者の住民票や戸籍の附票の取得し現住所を調べる
2、裁判所へ申し立てる:債務者の住所地の裁判所で行う
3、財産開示期日の実施:申立が受理されると約1ヶ月後に実施される

裁判所へ申し立てる際は、必要な調査として不動産ならば住所地や本店支店所在地の登記簿、債権の場合は債務者の勤務先・取引先の調査等を行います。

その上で提出する書類は主に次の通りです。いずれも裁判所等で取得できます。

・財産開示手続申立書
・当事者目録
・請求債権目録
・財産調査結果報告書
・債務名義等還付申請書

債務者の財産の種類に応じて追加の書類が必要となります。

申立が受理されれば、財産開示期日が実施されます。期日の約10日前に債務者から財産目録が提出され、この目録を閲覧することができます。

期日にて債権者は、裁判所の許可を得て債務者に質問をすることができます。事前に質問票を作成し、質問の内容をまとめておいた方が良いでしょう。

申立の際の注意点

財産開示手続が認められても、全ての財産が開示されるわけではありません。次のような財産は開示対象外となります。

・生活に不可欠な衣類・用具
・1ヶ月間の生活に必要な食料・燃料

また、過去3年以内に財産開示手続の実施や、破産や民事再生等が既に開始されると、申立そのものが認められません。その他、債務者の所在地がわからない場合も同様です。

財産開示手続で嘘をついたり裁判所に来ないケースはある?

以前の財産開示手続は、仮に裁判所へ債務者が出頭しない場合や財産の隠ぺい等をしても、30万円以下の過料しかペナルティがありませんでした。

そうすれば、30万円以下の過料を受けるより、差し押さえられることで債務者へ損害が大きいならば、開示に応じない可能性もあるのです。

しかし、2020年4月から施行された改正民事執行法により、正当な理由もないのに、裁判所の出頭を無視したり虚偽の陳述をしたりすると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金を科すと厳罰化がなされました(民事執行法第213条)。

過料という行政罰から刑罰へ変更されたことで、財産開示手続に応じないと前科がついてしまうことはもちろん、場合によっては身柄を拘束され懲役刑の実刑も受けることになります。

この厳罰化は、手続きの無視や嘘をつくことを抑止する目的となっています。

財産開示手続の費用は?裁判所へ支払う手数料と弁護士費用の目安について解説!

手続きを行うには裁判所へ支払う手数料と、弁護士を立てる場合は弁護士費用が必要です。こちらでは、それぞれの費用を解説します。

裁判所へ支払う手数料

裁判所へ支払う手数料の内訳は次の通りです。

・申立手数料:債権者1人につき2,000円(納付は2,000円分の収入印紙を申立書に貼付)
・裁判所が使用の郵券:6,000円分の切手(東京地方裁判所の場合)

郵券は申し立てる裁判所によって納付額が異なってきます。

このように、裁判所への手数料は8,000円程度で済むはずです。

しかし、申立にいろいろな書類が必要で、債務者の住所地が不明のままでは申立すらできません。債務者がどこにいるのか、財産は何を所有しているのか、勤務先に勤めているのか等、その調査を素人だけで行うのは極めて困難です。

弁護士費用

債権回収をより確実に行いたいなら、弁護士へ依頼することが大切です。法律の豊富な知識や、的確なアドバイス、裁判所・債務者との交渉、裁判所に出頭した場合も申立人をサポートしてくれます。

弁護士費用は法定されておらず、あくまで費用の設定は各弁護士事務所が自由に行えます。

費用の目安は次の通りです。

・相談料:1時間5,000円~10,000円程度(相談無料の場合もあり)
・財産開示手続代行費用:50,000円前後(一般的に強制執行のサポート費用へ含まれる)
・強制執行のサポート費用「着手金」:10万円~30万円
・強制執行のサポート費用「成功報酬」:回収額の10~20%

着手金とは弁護士へ依頼する際に支払う費用です。こちらは債権の回収に成功しても失敗しても返却されない費用です。

一方、成功報酬は債権回収へ成功した場合に支払う費用です。金額が明確ではなく回収額に応じてかかる費用も変わってきます。

弁護士費用の合計金額は強制執行を想定し、1,000万円の債権を回収する場合、110万円~231万円程度かかる可能性があります。

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