成年後見制度は生活保護受給者でも利用可能!報酬を払えない場合はどうなる?
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成年後見制度の利用対象者や報酬の仕組みとは?
成年後見制度とは認知症、知的障害、精神障害等が理由で、不動産や預貯金等の財産管理、入院の契約締結のような法律行為が困難な人を支援する仕組みのことです。
2022.01.25
成年後見制度とは?家庭裁判所の役割や手続き、注意点を解説!
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この制度の利用条件に所得制限は無く、生活保護受給者も利用対象者に含まれます。ただし、制度を利用するには家庭裁判所へ申立てる必要があります。生活保護を受けており報酬が払えないからという理由で成年後見制度を利用していないという方も、金銭支援を行っているため、利用することができます。
2021年度は39,313件の申立てが行われ、そのうち37,582件が家庭裁判所から認容されています。本制度による支援が必要と認められた人の性別・年齢の内訳は次の通りです。
年齢/性別 | 男性 | 女性 |
20歳未満 | 0.3% | 0.2% |
20歳代 | 2.3% | 1.2% |
30歳代 | 2.6% | 1.5% |
40歳代 | 5.8% | 3.1% |
50歳代 | 10.4% | 5.0% |
60歳代 | 15.7% | 6.7% |
70歳代 | 28.0% | 19.3% |
80歳以上 | 34.8% | 62.9% |
本制度による支援を要する人は男女とも80歳以上が最も高く、女性では6割を超えています。ただし、50歳未満の若い方々もわずかながら数%を占めています。
申立ての理由としてあげられている原因の内訳は次の通りです。
原因 | 割合 |
認知症 | 63.7% |
知的障害 | 9.6% |
統合失調症 | 9.1% |
高次脳機能障害 | 4.4% |
遷延性意識障害 | 0.8% |
その他 | 12.4% |
高齢者が発症しやすい認知症が原因で申立てを実施している人の割合は6割を超えています。それに次いで知的障害および統合失調症が1割近くを占めます。
知的障害や統合失調症は若い方々も発症するリスクがあり、若い方々はこのような障害等が原因で成年後見制度を利用したと考えられます。
生活保護受給者は成年後見制度を利用できる?利用するメリット・デメリットを解説
生活保護を受給する世帯であっても世帯員の誰かが認知症等になり、成年後見制度を利用したい場合、問題なく家庭裁判所に申立てが可能です。
その利用を家庭裁判所から認容されれば、支援を要する人のために財産管理や法律行為を行えるメリットがあります。
支援を要する人が不必要な契約をしても、成年後見人は取り消すことができたり、介護施設に入所する契約等を代理できたりします。
一方デメリットとしては申立ての際に手数料等があり、成年後見人に報酬が発生するケースもあります。
ただし、生活保護受給者の費用負担を軽減する目的として、様々な助成金制度が実施されています。
成年後見制度の利用にかかる費用と月額
成年後見制度の利用には様々な手数料や報酬等がかかります。ここでは申立てにかかる費用、成年後見人等の報酬の目安について解説します。
申立てにかかる費用
家庭裁判所へ申立て手続きをする際、申立人自身が行えばさほど重い負担となることはありません。費用等は概ね次の通りです。
・申立て手数料:800円
・登記手数料:2,600円
・送達・送付費用:3,200円
・鑑定費用:10万円~20万円程度
鑑定費用とは裁判所が審理を進めるなかで、鑑定が必要と判断した場合に納める費用です。裁判所が医師に依頼する形で行われます。
鑑定の必要がないと判断されれば1万円未満の費用負担で済みます。しかし、鑑定を要する場合は20万円以上の負担となるケースも考えられます。
更に弁護士へ申立てを依頼した場合は報酬費用等が発生します。なお、費用の設定は各弁護士事務所で自由に設定できます。次の費用が目安です。
・基本着手金:20万円~
・報酬金:10万円~
家庭裁判所へ納める費用に弁護士の報酬を含めれば、申立てるだけで50万円以上の負担となる場合もあります。
成年後見人の報酬
成年後見人は家庭裁判所に報酬付与の申立てを行い、それが認められると審判で決定された金額を受け取ることができます。
概ね家族以外の弁護士や司法書士等、法律の専門家が就任する場合に費用が必要となります。成年後見人の報酬月額の目安は次の通りです。
管理する財産額 | 月額 |
~1,000万円 | 20,000円 |
1,000万円超~5,000万円 | 30,000円~40,000円 |
5,000万円超~ | 50,000円~60,000円 |
また、家庭裁判所から成年後見人を監督する成年後見監督人が選任される場合もあります。この成年後見監督人が報酬を受け取る場合、報酬月額の目安は次の通りです。
管理する財産額 | 月額 |
~5,000万円 | 10,000円~20,000円 |
5,000万円超~ | 25,000円~30,000円 |
成年後見人・成年後見監督人が就任したからといって、必ず報酬が発生するとは限りません。例えば成年後見人として被後見人(後見制度の支援を受ける人)の配偶者、その他同居の世帯員ならば無償となるでしょう。
なぜなら被後見人の身近な支援者として、無償であっても後見事務を行う可能性は高いと判断されるためです。
なお成年後見人が財産管理を行うので、その後見人に報酬が支払われないというケースはあまり多くありませんが、被後見人側から万一報酬が支払われない場合、成年後見人は報酬請求権に基づいて訴えを起こすことができます。
成年後見人に付加報酬が発生するケース
特例のケースにおいて、成年後見人に対して付加報酬が加算されることがあります。特例のケースとは、下記の3つ条件に当てはまる場合です。
被後見人の特別なケアニーズ
成年後見人の業務は、被後見人の法的手続きや契約管理だけでなく、日常生活支援や医療管理なども含まれます。もし被後見人が身体的なケアが必要で、後見人の負担が増加する場合には、付加報酬が加算されることがあります。
時間的な負担の増加
被後見人の状況によって、後見人の負担が増えることがあります。たとえば、被後見人の財産や資産管理のための手続きや会議などに時間を費やす場合、付加報酬が支給される可能性があります。業務の時間的な増加に応じて、追加で報酬が加算されることがあります。
専門性の要求
被後見人の状況が特殊で、専門的な知識やスキルが必要な場合には、付加報酬が支給されることがあります。たとえば、高度な財務管理や医療情報の取り扱いが必要な場合、後見人には追加の報酬が支払われることがあります。
具体的には、遺産分割の調停や保険金の請求、不動産の管理、訴訟などです。
なお、付加報酬の加算には地域によって異なる基準や条件が存在します。各地方自治体や関連法規を確認することで、具体的な付加報酬がどのような条件で支給されるかを把握することができます。
成年後見人になる場合は、適用地域の基準を確認し、報酬について被後見人や関係者と合意を形成することが重要です。
成年後見制度の費用負担が難しい方への助成制度を詳しく解説!
生活保護受給者が本制度を利用する際、その費用負担を軽減する制度が設けられています。ここでは「成年後見制度利用支援事業」「成年後見助成基金」そして「民事法律扶助制度」について解説します。
成年後見制度利用支援事業
各市区町村で実施している生活保護受給者が成年後見制度を使用する際の助成金制度です。なお、生活保護受給者の他、成年後見制度の申立て費用を支払うことで生活保護が必要となる人も利用範囲に含まれます。
・申立て費用の助成:上限100,000円(審判申立手数料、登記手数料、郵便料金、鑑定料)
・成年後見人の報酬助成:報酬付与の決定額(月額)または(1)在宅生活者月額28,000円(2)在宅生活者以外月額18,000円のいずれか低い金額
支給の要件は次の通りです。
・対象者が判断能力の十分ではない高齢者や障害者であること
・生活保護受給者または申立て費用を支払うことで生活保護が必要となる方であること
・成年後見制度の一つである法定後見制度の申立てを行った方であること
・家庭裁判所の審判が確定した日から3か月以内に本助成金制度を申請していること
成年後見助成基金
公益社団法人である「成年後見センター・リーガルサポート」が実施している助成基金で、申込み期間は毎年4月です。生活保護受給者だけではなく、低所得者(預貯金額260万円以下等)も利用可能です。
・助成内容:被後見人等1人に原則として月額1万円(最長5回まで申請可能)
支給の要件は次の通りです。
・2021年3月末までに就任の確定した成年後見人等が後見事務を1年以上行ってこと
・利用者が後期高齢者または知的障害者・精神障害者等であること
・利用者の預貯金額が260万円以下、かつ他に資金化できる適当な資産がないこと
・報酬付与審判申立てをしていない期間であること
民事法律扶助制度
成年後見制度における報酬の立て替えや後見人の業務にかかる費用の一部を、当事者が負担できない場合に、国や地方自治体が支援する制度です。
支給の要件は次の通りです。
・日本国民および在留外国人であること
・資力が一定額以下であること
・民事法律扶助の趣旨に適していること
成年後見制度の申請・助成に関する相談先とは
成年後見の助成金制度を設けている市区町村、成年後見センター・リーガルサポートに相談することをおすすめします。
(1)お住まい市区町村
成年後見制度利用支援事業は全国の市区町村で実施しています。支援に対応している部署は市区町村の総合相談窓口でお尋ねください。
(2)成年後見センター・リーガルサポート
1999年12月に高齢者、障害者等の支援を目的として、全国の司法書士によって設立された公益社団法人です。全国の都道府県に50の支部(北海道は4支部)があり、電話相談や面接相談に対応してくれます。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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