未払いの養育費には財産開示手続を申立てよう!手続き方法を解説!

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財産開示手続を使って養育費を請求する方法を解説!

こちらでは財産開示手続とは何か、強制執行申立ての要件と財産開示手続との関係について解説します。

財産開示手続とは何か

財産開示手続とは、債務者(例:金銭等を支払う義務がある人)を裁判所に呼び出し、その所有する財産を開示させる手続です。

例えば、離婚の際に元配偶者(債務者)と話し合い、子供の養育費の支払について取り決めたにもかかわらず、その支払が滞っているケースでこの手続きを実行できます。

ただし、財産開示手続をしたからといって、元配偶者にすぐ養育費を支払わせる効果があるわけではありません。あくまで財産開示手続は、元配偶者から開示された財産へ強制執行するために必要なプロセスの一つにとどまります。

強制執行申立ての要件と財産開示手続との関係

強制執行の要件は次の通りです。

  • 申し立てる人が債務名義を有している
  • 基本的に債務名義を債務者へ送達した
  • 債務名義への執行文の付与(裁判所書記官または公証人が、強制執行できる効力について証明する文言を付与)がある
  • 基本的に執行文等を債務者へ送達した

債務名義とは、強制執行で実現される請求権の存在・内容を示した公的な文書です。

ただし、強制執行が行われたとしても、債務者の財産がどのくらいあるのか、財産の存在が明確ではなかったため、完全な弁済を得る(お金を得る)ことができないケースもあります。

その場合に債権者(例:金銭等を受け取る権利がある人)が、債務者から財産を明らかにしてもらい、再度強制執行するための前段階として、財産開示手続が行われるのです。

令和元年に改正された財産開示手続!どう変わった?

債務者が財産開示手続を無視したり嘘をついたりした場合、従来のペナルティは30万円以下の過料のみでした。

また、財産の情報提供は債務者本人のみが対象で、債務名義の種類によっては財産開示手続が認められないものもあり、あまり実効性のない手続きと言われていました。

しかし、2020年4月1日の民事執行法改正以降は、罰則の強化や申立て要件の緩和が図られ、より実効性のある手続きとなっています。下表をご覧ください。

財産開示手続従来改正後
ペナルティ30万円以下の過料6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
債務名義の制約仮執行宣言付き判決、執行証書、確定判決と同一の効力を有する支払督促では財産開示手続不可どんな債務名義でも、財産開示手続は認められる
財産情報の取得債務者本人のみ債務者本人・第三者からも情報取得可能

改正後、債務者は財産開示を誠実に行わないと、最悪の場合は懲役刑を受ける可能性があります。また、どんな債務名義でも認められるようになり、養育費の支払いを巡り争っている債権者も申し立てやすくなっています。

その他、第三者からも情報取得が可能なので、金融機関・公的機関等が保有する情報を開示してもらい、債務者の財産へより確実な強制執行ができるようになりました。

財産開示手続を申し立てることが出来るのはどんな人?

債務名義を有する人が、財産開示手続を申し立てられます。従来から調停調書・審判書・判決書・和解調書・請求の認諾調書いずれかがあれば、申立ては可能でした。

それに加え法改正以降は、新たに次の債務名義でも申立てできるようになっています。

  • 公正証書(強制執行認諾条項付き):公証役場にて公証人が作成した書類
  • 仮執行宣言付判決:判決の確定前に執行力を付与する裁判
  • 支払督促:簡易裁判所を通じ、支払を督促(返済を促す)してもらう手続

特に離婚等の際、元配偶者(債務者)が養育費の支払を怠ったとき、直ちに強制執行へ服する旨を承諾した公正証書があれば、裁判や和解調停を経ずして、財産開示手続が可能となります。

債権者は迅速に財産開示手続を行い、スムーズに養育費のための強制執行へ移れるはずです。

財産開示手続の申立に必要書類や費用を紹介!

こちらでは、申立ての際に必要な書類および費用を紹介しましょう。共通の必要書類は次の通りです。

  • 申立書:地方裁判所の窓口等で用紙を取得
  • 債務名義還付申請書・受領書:地方裁判所の窓口等で用紙を取得
  • 執行力のある債務名義の正本(正本の他に写し1通)
  • 債務名義の送達証明書・確定証明書(原本の他に写し1通)
  • 戸籍謄本(本籍地の市区町村役場で取得)または住民票(住所地の市区町村役場で取得)等

申立ての日前6か月内に実施された強制執行等で、申立人が完全な弁済を受けられなかった場合、次のような書類を準備します。いずれも裁判所から通知される書類です。

  • 配当表又は弁済金交付計算書の写し・配当期日呼出状写し
  • 不動産競売開始決定写し
  • 債権差押命令写し

一方、申立人が通常行うべき調査をして、その結果判明した財産へ強制執行等を実施しても、完全な弁済を得られないと疎明(推測)があった場合、次のような書類を準備します。

  • 財産調査結果報告書:地方裁判所の窓口等で用紙を取得
  • 疎明資料:財産開示期日調書や不動産登記事項証明書、給与の債権差押命令正本(写し)等が該当

申立ての際の費用は次の通りです(大阪地方裁判所の場合)。

費用金額
申立手数料(収入印紙)2,000円分
郵便切手7,220円分
※内訳500円・100円・84円・20円・10円・5円・2円・1円(各10枚)

申立人本人だけで手続きを進める場合は、概ね1万円程度で申立てが可能です。

財産開示手続の申立方法、申立後の流れや手続きにかかる時間を解説!

申立人が申立書・必要書類を提出する裁判所は、原則として債務者(元配偶者)の現在の住所地を管轄する地方裁判所です。

申立後の手順は次の通りとなります。

  1. 財産開示実施決定:裁判所による審査の後、問題がなければ実施を決定する
  2. 裁判所は、申立人と債務者へ財産開示実施決定正本を送付
  3. 裁判所は財産開示期日(確定後1か月くらい)を指定、申立人・債務者を呼び出し
  4. 裁判所は債務者の財産目録提出期限(財産開示期日の10日前くらい)を指定し、債務者へ通知
  5. 財産開示実施期日:非公開で開催され、債務者は財産について陳述
  6. 財産開示手続終了

厳密に申立後の手続き期間は法定されてはいませんが、財産開示実施が確定してから約1か月後に、債務者は財産について陳述する必要があります。

そのため、財産開示手続の終了までに少なくとも1ヶ月以上はかかるとみて良いでしょう。

財産開示手続の申立後にトラブルが発生!対処法について解説

財産開示手続を申し立てても、元配偶者が財産開示に応じず支払いを拒否している、財産を隠した・財産を移転したという場合もあるはずです。

このような場合では元配偶者に対し、次のような対応策が想定されます。

  • 財産開示実施期日に出頭拒否・虚偽発言を行った→6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 財産を隠し、財産はないと主張→第三者(金融機関等)からも情報を取得する
  • 強制執行を回避する目的で財産の移転が行われた→移転した財産も強制執行(差し押さえ)される可能性が高い

強制執行を回避する目的で財産の移転が行われたケースとして、主に自分の銀行口座ではなく他の家族名義の銀行口座に入金した、自分の所有する不動産等の名義を意図的に変更した等、があげられます。

元配偶者がこのような不審な対応をとれば、強制執行(差し押さえ)の対象となる可能性は十分にあります。

財産開示手続を行う際の注意点を解説!

ここでは、財産開示手続を行う上で注意すべき点を3つご紹介します。財産開示手続を行う前に、以下を確認しましょう。

債務者に対する法的拘束力が弱い

財産開示手続は、債務者に対する法的拘束力は強くありません。

債務者が、禁止されている行為に該当する場合は過料が発生しますが、罰金などの刑罰が課されることはありません。

対象とならない財産がある

財産開示手続には、対象とならない財産がありますので、注意が必要です。対象とならない財産は、以下の通りです。

  • 債務者の生活に必要不可欠な衣類や用具
  • 債務者の1カ月の生活に必要な食料や燃料

債務者の生活を保証するための財産は、財産開示手続の対象となりません。

財産開示手続が無効になることもある

財産開示手続の申立てを行っても状況によっては、無効になるケースがあります。

無効となる要件は以下の通りです。

  • 過去3年以内に対象の債務者について財産開示手続が実施されている場合
  • 債務者の所在地が不明な場合
  • 倒産手続が既に開始されている場合

養育費に関する問題は専門家に相談しよう

申立人が財産開示手続を行う場合、既に判明している財産だけだと養育費の回収が困難である点を立証しなければなりません。

具体的には既に判明している元配偶者の預金だけでは回収が難しい、勤め先を調べたがその所在等について判明しなかった、という事実を文書で示す必要があります。

法律の素人にはなかなか難しい作業と言えるので、申し立てる際は法律の専門家である「弁護士」に相談し、手続きを依頼した方が良いでしょう。

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