祭祀承継者とは?選び方や具体的な役割、就任するメリット・デメリットやお墓の相続について

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遺産相続

祭祀承継の基本を知ろう

まずは、祭祀承継の基本を解説します。

そもそも祭祀財産って何?

祭祀財産とは、祖先を祀るために必要な財産で、民法では「系譜」「祭具」「墳墓」であると定められています。

「系譜」とは、先祖代々の系統を表すもので、所謂、家系図などのことを指し、「祭具」とは、礼拝や祭祀・儀式などに用いられる道具で、仏像や仏壇、神棚や位牌、十字架などが含まれます。

また「墳墓」とは、遺体や遺骨を埋葬するお墓や墓地、その中に含まれる墓石や墓碑など、埋葬に関連する設備全体を指します。

では、それらの祭祀財産はどのように、相続人に引き継がれていくのでしょうか。

民法896条では「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められております。

実は、祭祀財産については、この「被相続人の財産に属した一切の権利義務」に属せず、それとは異なる取り扱いをし、引き継がれていくものなのです。

祭祀承継者ってどんな人?その役割とは

「祭祀承継者」とは、その言葉からもなんとなく想像できるかも知れませんが、先祖の祭祀を主宰することを承継する人のことを指します。

祭祀財産を取得し、年忌法要などの法事や、先祖を偲ぶ行事などを主宰する人というと、イメージしやすいかも知れません。

祭祀承継者は、祭祀財産を取得し、祭祀(先祖を偲ぶ行事:年忌法要など)を主宰していくことになりますが、祭祀を行うこと自体を、義務付けられているということではなく、祭祀を行うかどうかなどを、自由に決定することができます。

これについて、家族や親族などの状況や関係性によりますが、祭祀承継者が祭祀を行うかどうかの決定をする場合、その祭祀に関係する家族や親族などと、上手くコミュニケーションを取っていくことが重要です。

たとえば年忌法要では、日時や場所、法要後の会食の有無、お供え物の準備など、多くのことを決める必要があります。

場所については、自宅や菩提寺、法要などを執り行える会館などが挙げられますが、集まる人数や、立地条件、金銭的な条件などにより、集まる家族や親族がストレスの少ない場所を選ぶことが求められます。

また、現在は、家族や親族内の各人が離れて暮らしていることも多く、その場合、遠方から来る人にとって、無理のない日時や場所を選ぶことも求められます。

そのような人が多い場合、週末の休みの日に設定したり、駅から近い場所や、駐車スペースが確保されている場所などを選ぶことも求められるでしょう。

コロナ禍において、オンラインを活用した法要の形も出来てきました。そのような方法も、選択肢として考える機会は増えてくるでしょうし、菩提寺の本堂などを使用する場合も含め、どの場所で、どのような方法・形式で行うにしても、多くの場合、菩提寺の僧侶も関係してくることでもあるので、菩提寺とのコミュニケーションも大事なことと考えられます。

もちろん、祭祀承継者の想いや環境などにより、祭祀を行わないという決定をすることもあるでしょう。その場合は、親族にその旨を伝えることが大切です。

また、祭祀承継者の役割のとして、承継した祭祀財産の管理などが求められますが、具体的には、お墓や仏壇、神棚、遺骨などの維持管理や、先述した通り、祭祀の主宰や、檀家(宗派によっては門徒・信徒)としての務めということが挙げられます。

遺骨の管理として注意すべき点は、その遺骨がどこに保管されているかということです。

たとえば、遺骨がお墓や納骨堂などに納められている場合です。

そのような場所にはほとんどの場合、管理者が定められていますが、故人がその墓地や納骨堂の使用権を持っている人だった場合、祭祀承継者は、相続が発生し、使用権を承継する旨を、その管理者に伝えていく必要があります。

納骨場所により、その承継方法も様々ですので、まずは管理者に相談してみることをおすすめします。

また、忘れてはならないのが、そのような納骨先には、維持管理費が発生する場合が多く、その支払い義務も承継されていくので、注意が必要です。

祭祀財産と相続財産の違い

祭祀承継の対象となる財産は、先述した通り、大きく分けて、系譜・祭具・墳墓が挙げられます。墳墓については、墳墓そのものに加え、墓地の所有権や使用権、そして、先祖の遺骨も墳墓に準ずるものとして、祭祀財産に含まれます。

では、相続における相続財産と祭祀財産の承継にはどのような違いがあるのでしょうか。

相続財産というと、一般的に現金や預貯金、土地や建物などの不動産、有価証券や自動車などの動産といったものが挙げられますが、それに加えて、被相続人にかかる借入金や医療費や関係施設などへの支払いなどの債務も含まれます。

遺言がない場合、相続財産の分け方は、相続人同士の話し合いによって決めるのが一般的です。この話し合いを「遺産分割協議」と呼びます。

では、祭祀財産は、上記のような方法で承継されていくものなのでしょうか。

結論から言うと、答えはノーです。

民法897条では、祭祀財産は相続財産に含まれず、祭祀を主宰すべき者が承継することと定められています。

よって、祭祀財産は、現金や預貯金、不動産などの相続財産とは別の方法で承継されていくものとなります。

祭祀承継と遺産相続の関係

祭祀財産は相続財産とは区別されて承継されます。
そのため、相続を放棄した元相続人が祭祀主宰者となって祭祀財産を承継することも可能です。

祭祀承継者の選び方

では、祭祀承継者はどのように決められていくのでしょうか。
民法897条では、祭祀承継者は次のような順序で定めるとあります。

①被相続人の指定

②指定された者がいない場合は、慣習

③慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所により定める

遺言で指定された場合の流れ

遺言が法律的に有効であれば、その内容に基づき祭祀承継者が決定されます。

また、遺言書以外にも、エンディングノートや口頭での意思表示によって指定される場合もあります。ただし、口頭での指定は証拠としての効力が弱いため、後々トラブルを避けるためには、できるだけ遺言書やエンディングノートといった記録に残しておくことが望ましいでしょう。

遺言書による指定があった場合、その指示に従って速やかに手続きを進める必要があります。特に、祭祀財産に関わるお墓や仏壇などの管理者への連絡や名義変更の手続きなど、実務面での対応が必要になることを念頭に置きましょう。

慣習に基づく決め方

祭祀承継者を決める際、慣習に基づいて選ばれることもあります。しかし、「慣習」という言葉は非常に曖昧で、人によって解釈が異なることがあります。具体的な基準がないため、慣習に従って承継者を決める場合には、柔軟な対応が求められます。

一般的には、相続が発生した地域や故人が住んでいた場所の伝統や慣例に従うことが多いです。その地域での慣習として「長男が祭祀承継者になる」「親族の中で家を継ぐ人が引き継ぐ」といったルールが存在する場合、それを目安にすることが考えられます。

ただし、現代では家族の構成や価値観が多様化しているため、必ずしも慣習通りに進めるとは限りません。家族や親族間で話し合いを行い、それぞれの事情や意向を踏まえて合意を形成することが重要です。

話し合いが難航する場合は、慣習に囚われすぎず、実際に祭祀財産を管理できる人や意欲がある人に承継を任せるのも一つの方法です。スムーズな合意を目指すためにも、親族間のコミュニケーションを大切にしましょう。

家庭裁判所での指定手続き

話し合いなどで、どうしても決めることができない場合、その判断を家庭裁判所に委ねることになります。

そこまで話がまとまらないことがあるのかと思われるかも知れませんが、先述した通り、祭祀承継者は、墓地や納骨堂の維持管理費の支払い義務や、菩提寺との付き合いも引き継ぐことになります。祭祀財産の管理にかかる費用も必要になります。

各相続人の経済状況や家庭環境などにより、揉めてしまうということはあるのです。

調停の流れの基本

調停は、裁判所の力を借りながら、話し合いで問題を解決する仕組みです。祭祀承継者を決めるときにも、この調停が利用できます。

調停を申し立てる場合、祭祀承継者になりたい人が手続きを始めます。対象となるのは、相続人やお墓や仏壇に関わりのある人です。申し立ては、相手の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。

調停では、裁判所の調停委員が間に入り、話し合いを進めます。お互いの意見を調整しながら、合意を目指します。それでも解決しない場合は、裁判所が最終的な判断を下す「審判」に移ります。

審判手続きの進め方

審判を申し立てると、裁判所が祭祀承継者を決めてくれます。

審判を申し立てるとき、調停を先に行う必要はありません。最初から審判を申し立てることができます。手続きは、祭祀承継者になりたい人が、亡くなった人が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

審判で裁判所が祭祀承継者を決める基準は、さまざまな要素を総合的に判断します。たとえば、次のような点が考慮されます。

  • 候補者と亡くなった人との関係
  • 実際に一緒に生活していたかどうか
  • お墓や仏壇がある場所と候補者の関係
  • 遺品やお墓を管理する意思や能力があるかどうか

裁判所は、形式的に「長男だから」や「長子だから」といった理由だけで決めるのではありません。亡くなった人との心のつながりや、生活の中で築いた関係が重視されます。

ただし、裁判所が最終判断を下すため、すべての人が納得できる結果になるとは限りません。証拠や状況に基づき判断されるため、事前に家族での話し合いや調停を通じて解決を目指すことが望ましいでしょう。

親族間での話し合いによる合意形成

祭祀財産は、一般的な相続財産とは異なり、優先順位が低くなったり、十分に注目されないことが多いとされています。しかし、相続が発生すれば、誰かが必ず引き継ぐ必要のある重要な財産です。

適切に対応しない場合、祭祀財産が原因で家族や親族間にトラブルが発生することもあります。このような状況は、故人や残された家族、親族が望むものではありません。

だからこそ、祭祀財産についても、他の相続財産と同じように、何があり、どのようなことが必要なのかを知る「財産の棚卸し」を行い、その上で、できるうちから、家族や親族と話し合いをしていくことが、重要なのです。

そして、財産の分け方、行き先などをエンディングノートや、遺言書などの作成を通して、書面として形に残していくことも、とても重要です。

しかし、どのように話をしていき、どのような手順で書面のような形として残していけば良いのか、なかなかイメージが浮かばないという方も多いと思います。

そのような場合、まずは、行政書士や司法書士、税理士などの専門家に、相談することをおすすめします。きっと力になってくれるはずです。

祭祀承継者は生前に変更出来るか

祭祀承継者は、一度その地位に就くと、亡くなるまで承継者の地位を保ち続けることになります。

しかし、以下の方法で生前に祭祀承継者を変更することもできます。

祭祀承継者の変更手続きの仕組みや費用

祭祀承継者の変更手続きの方法としては、主に2通りあります。ひとつは、当事者間の合意、もうひとつは、家庭裁判所に祭祀承継者指定の申し立てを行う方法です。

では、それぞれどのような手続きが必要となってくるのでしょうか。

当事者間の合意はイメージしやすいと思いますが、祭祀承継者の体調の変化や、その他の様々な事情により、他の人に引き継ぐ必要がある場合などに、引き継ぐことが可能な人と当事者間で合意するということです。家族や親族が集まったうえで話し合いを行い、当事者間の合意をするということも一手です。

また、家庭裁判所への申し立ては、承継者本人からでも、それ以外の人からでも構いませんが、必ず変更が認められるということではなく、承継者本人がその地位を保ち続けることが難しいなどの特別な事情や、承継者が祭祀財産の管理などについて、特段の事情もなく、その責任を放任してしまっているなどの、特別な事情が必要になってきます。

仮に、家庭裁判所への申し立てとなった場合、司法書士や弁護士などといった専門家に依頼することが想定されます。その場合に発生する専門家への報酬、申し立てにかかる実費などを含め、その状況に応じて、数万円から数十万円の費用が発生することが考えられます。

また、当事者間の合意などでも、場合によっては、祭祀承継者の地位を引き受けてくれる人に対して、数千円から数万円程度のお礼を渡すということも考えられます。

あくまでも、これは引き継いでくれる人へのお礼であり、気持ちの表れである面が強いため、引き継ぐ人から求めることが、あまりないようにしていくことが望まれます。

また、やむを得ず、祭祀財産の管理などの費用が、新たな承継者にとって著しく負担になってしまうような場合、もともとの承継者が、その費用の一部を負担することもあるかも知れません。

その場合は、たとえそれが兄弟間や親族間などであったとしても、必要に応じ、金銭貸借にかかる契約書や、その記録を残しておくことが、後のトラブルを回避するひとつの方法としても考えられます。

また、費用の負担が金銭の贈与などにあたる場合、金額によっては贈与税も発生してしまう場合もあります。

祭祀承継者が果たすべき責任と権利

ここでは、祭祀承継者が果たすべき責任と権利について解説します。

祭祀に関する大切な義務とは

祭祀承継者の役割には、先祖供養や財産管理といった重要な責任が含まれます。これらは家族や親族のつながりを保ち、伝統を未来へと引き継ぐための大切な役割です。

ただし、法律で厳しく義務付けられているわけではなく、状況に応じて柔軟に対応することができます。

ここでは、祭祀承継者が果たすべき具体的な責任や権利について、さらに詳しく見ていきましょう。

法要の執行とその管理

祭祀承継者は、一般的に法要を執り行う役割を担います。ただし、これは法律で義務付けられているわけではありません。そのため、法要を行わなかったとしても罰則やペナルティがあるわけではありません。最近では、時間や費用の問題から、法要を行わない家庭も増えています。

それでも、法要は先祖や故人を供養する大切な儀式です。行う場合は、祭祀承継者が中心となって計画を立て、親族に声をかけて進めるのが一般的です。日程の調整や寺院との連絡、必要な準備など、多くのことを管理する必要があります。

法要は大がかりな準備が必要な場合もありますが、家族の事情に合わせた簡素な形式で行うことも可能です。たとえば、自宅で小さな供養を行ったり、お寺で簡単な法要をお願いする方法もあります。無理のない形で継続できる方法を選ぶことが大切です。

また、親族の間で供養の方針が異なる場合もあります。その際は、話し合いを通じて皆が納得する形を模索しましょう。祭祀承継者としての役割は大きいですが、家族や親族と協力することで、負担を減らしながら供養を続けていくことができます。

お墓の維持と管理、相続について

祭祀承継者の主な役割は、お墓を大切に守り続けることです。命日やお彼岸、お盆の時期には、故人を偲びながらお墓の掃除や手入れをすることが求められます。これにより、先祖への感謝を形にする大切な役割を果たします。

お墓の維持には費用がかかります。その金額は、お墓のある場所によって異なります。たとえば、寺院墓地の場合はお布施が必要で、霊園の場合は毎年の管理費がかかることがあります。これらの費用を負担するのも祭祀承継者の責任の一つです。

祭祀承継者は、先祖供養を通じて家族や親族との絆を保つ重要な役割を担っています。お墓の維持や管理を通じて、伝統を受け継ぎ、未来に繋げる大切な使命を果たす存在です。

仏壇の保守と管理方法

仏壇を引き継いだら、毎日の手入れや供養を行うのが大切です。お盆やお彼岸には、お寺とのやり取りも祭祀継承者の役割になります。

仏壇の掃除は、手を合わせたついでに毛ばたきで軽く払うだけでも十分です。無理せず簡単に続けることが大切です。

お正月やお盆、お彼岸など、親戚が集まる時期には本格的な掃除をしましょう。この機会に仏壇をきれいにしておけば、ご先祖様への感謝を表すことができます。命日や誕生日に合わせて掃除をするのもよい習慣です。

檀家としての役割を果たすこと

「檀家」とは、所属するお寺を支える家族や家のことをいいます。檀家は、お寺への経済的な支援を行うほか、寺院で行われる法要や行事に参加し、地域の信仰を守る役割を果たします。

具体的には、お布施を通じてお寺を支えたり、行事の準備や掃除などの奉仕活動を手伝うこともあります。こうした活動は、お寺とのつながりを深めるだけでなく、地域全体の結束を強める大切な役割を担っています。

檀家として協力することで、伝統や信仰を次の世代に引き継ぐことができます。

祭祀財産の処分権限について知っておこう

祭祀財産は、継承後に祭祀承継者の所有物となります。そのため、祭祀承継者はこれらをどうするか自由に決める権利があります。たとえば、祭祀財産を処分することを決めても、他の相続人が法的に異議を唱えることはできません。

税制上の取り扱いと特例について

祭祀財産は相続財産ではなく、相続税もかかりません。相続税法第12条では、墓地や仏壇、仏具などの祭祀財産は非課税財産とされています。これにより、祭祀財産は被相続人の遺産には含まれず、相続税の対象外となります。

さらに、国税庁も「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物は相続税がかからない」とウェブサイトに明記しています。そのため、これらの評価額を計算したり、遺産分割協議の対象とする必要はありません。

ただし、祭祀財産を管理するには維持費がかかる場合があります。この場合、相続人全員が合意すれば、管理負担を引き受ける代わりに他の遺産分配を調整することも可能です。祭祀財産の特別な取り扱いを理解し、負担と役割を話し合うことが重要です。

祭祀承継者としての立場を考える

祭祀承継者は、祖先供養や家の伝統を守る重要な役割を担います。一方で、責任や負担も伴うため、立場や役割を十分に理解することが大切です。

承継者になることのメリット・デメリット

祭祀承継者になると、家の祭祀や祖先供養を自分の考えで進められるという大きなメリットがあります。たとえば、供養の方法や行事の日程を決める際、中心となって意見をまとめることができます。そのため、「家を守りたい」「供養を自分の責任で行いたい」と考える人には向いている役割です。

しかし、承継者には責任も伴います。墓地の清掃や仏壇の維持費、永代供養料など、定期的な費用負担が必要です。また、親族全員が納得する形で供養を進めるのは簡単ではありません。自分だけで決められない場合もあり、親族の意見を調整する役割を担うことが求められます。

さらに、供養の方法や費用を巡って親族間で意見が対立することもあります。その結果、承継者が板挟みになることも少なくありません。こうした点を理解し、メリットとデメリットをしっかり考えた上で承継者になるかを決めることが大切です。

承継拒否ができる場合とその制限

祭祀承継者の指定を受けた人は、これを拒否できるのでしょうか。

結論としては、拒否することはできません。

通常の相続財産は、相続放棄の制度がありますが、祭祀財産についてはそのような制度はなく、また、祭祀財産は通常の相続財産に含まれないため、たとえ相続放棄をした人でも、祭祀承継者として、祭祀財産を受け取ることはできるのです。

祭祀承継について承継者の指定をされると拒否はできませんが、その反面、承継した祭祀財産の管理や、その処分などは、その承継者の判断で行うことも可能であり、その裁量については、大きなものが与えられているところです。

しかし、祭祀財産については、先祖代々の想いや、それを目の当たりにしてきた家族や親族の想いが交差するものでもあります。

そのようなものであるからこそ、家族や親族の話し合いによって、祭祀承継者を決める場合は、今後、その祭祀財産をどのように管理していくのかなどの道筋も踏まえ、慎重な決め方が望まれます。

承継後に知っておくべき権利と制約

祭祀承継者になると、お墓や仏壇といった祭祀財産の所有権や、墓地の使用権を受け継ぎます。しかし、これに伴い祭祀を行う義務が生じるわけではありません。たとえば、「お墓を維持するのが難しい」と感じた場合、墓じまいを選ぶことも可能です。

ただし、墓じまいを行う際には注意が必要です。親族に何の相談もせずに進めると、後々トラブルになることがあります。お墓の維持が難しい理由が、費用や手間である場合、親族と話し合うことで解決できることもあります。たとえば、親族全員で費用を分担したり、管理の方法を簡略化するなど、負担を軽減する手段を考えることができます。

祭祀承継に関する大切なポイント

ここでは、祭祀承継に関するポイントをいくつか紹介します。

承継者がいない場合の対応策は?

祭祀承継者がいない場合は、遺骨が無縁墓としての扱いになり、合祀墓へ埋葬されます。

もし「祭祀承継者がいないけれどお墓を管理したい」という場合には、墓石や継承者不要の永代供養墓を検討してみましょう。

永代供養墓は、担当者がお花の設置などを行ってくれるため、祭祀承継者がいなくても、ご先祖が安心して眠れる環境が整っています。

具体的な手続きのステップを確認しよう

祭祀承継者には、お墓や仏壇、仏具を管理する責任があります。具体的には、名義変更や手入れ、法要の準備など、いくつかの手続きが必要です。それぞれの手順をわかりやすく解説します。

お墓の名義変更手続き

お墓を引き継ぐ際には、まずお寺や霊園に連絡し、名義変更を行います。この手続きは祭祀承継者本人しかできません。

名義変更に必要な書類は次の通りです。

  • 名義変更申請書:お寺や霊園から取り寄せます。
  • 墓地使用許可証:紛失している場合は再発行を依頼してください。
  • 祭祀承継者の戸籍謄本と住民票:市区町村役場で取得します。
  • 実印と印鑑証明書:登記の際に使用します。
  • 前の祭祀承継者の戸籍謄本:前の承継者が亡くなった場合は、死亡の記載があるものが必要です。
  • 親族の同意書:他の家族からの同意を確認するために必要です。
  • 遺言書(必要な場合):被相続人が遺言を残していた場合に提出します。

名義変更の費用は、5,000円から20,000円程度です。料金は霊園や寺院によって異なりますので、事前に確認しましょう。

仏壇・仏具の引き継ぎと管理

仏壇や仏具も重要な祭祀財産です。これらを引き継いだ場合、日常の手入れが欠かせません。仏壇は、日々の供養の際に軽く掃除をするだけでも十分です。毛ばたきや柔らかい布でほこりを払うなど、簡単な掃除を心がけましょう。また、古くなった仏具は、専門店で修理や買い替えを検討しましょう。

法要の準備と主催

祭祀承継者は、一般的に法要を主催する役割も果たします。法要を行う場合の手順は次の通りです。

  1. 日程の決定
    お寺や親族と相談し、法要の日程を決めます。
  2. 必要な物品の準備
    お供え物、ろうそく、お線香などを用意します。
  3. 寺院との連絡
    僧侶を依頼し、法要の内容やお布施の金額について打ち合わせをします。
  4. 法要の進行
    当日は、祭祀承継者が中心となって式を進めます。親族や僧侶と協力して行いましょう。

霊園規則との整合性を大切にすること

お墓を引き継ぐ際には、霊園や墓地の規則を守ることがとても大切です。法律上は、誰でも祭祀財産を引き継ぐことができますが、お墓の場合は少し事情が異なります。多くの霊園では、墓地の使用者に「3親等以内の親族」などの条件を設けている場合があります。

そのため、祭祀承継者を選ぶ前に霊園や墓地の使用規則を必ず確認することが大切です。不明な点があれば、直接霊園に問い合わせると安心です。

さらに、一部の霊園では、墓地使用者が亡くなってからでないと承継が認められないこともあります。もし、生前に承継を希望する場合は、霊園の規則を事前に確認し、必要な手続きや書類を揃えましょう。規則を守ることで、後々のトラブルを避けることができます。

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この記事を書いたのは…

梅園 浄

浄土真宗本願寺派 僧侶・行政書士・相続診断士・終活カウンセラー2級

梅園 浄(うめぞの じょう)

浄土真宗の僧侶としてお寺を護りながら、お寺を相続や終活など様々な悩みを気軽に相談できる場所にしたいという思いから、行政書士・相続診断士・終活カウンセラーとして相続などに携わらせていただいております。
また、様々な地域の宗教法人さまの事業サポートにも力を注いでおります。例えば、納骨堂や墓地に関してや、法人活動の中で必要な行政手続きなど、様々なお悩みについて、ご相談を承っております。

サイトURL:http://umetakegyosei.site

この記事を監修したのは…

中澤 泉

弁護士・ライター

中澤 泉(なかざわ いずみ)

弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
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