相続する遺産がない場合は手続きが不要?相続税の申告の必要性や対策は?
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相続する遺産がない場合は相続の手続きが不要?
相続する遺産がなければ基本的に相続の手続きは不要です。
ただし、相続する遺産がないという状況とは、次のように被相続人の財産が全くないケースを指します。
- プラスの遺産:預貯金、現金、株券、建物、土地、宝石・美術品等
- マイナスの遺産:借金、未払金等
プラスの遺産はもちろん、マイナスの遺産も無いという状況でなければ、相続する遺産がないとは言えません。
ただし、このような状況は非常に稀なケースです。相続人があらためて調査すれば、被相続人の財産が発見される可能性も高いです。
遺産がない場合の相続税はどうなる?
遺産がなければ相続税の申告・納税は不要です。
たとえプラスの遺産が発見された場合でも、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の金額以内ならば、相続税はかかりません。
ただし、相続税はかからなくとも、次のような特例制度を利用する場合は、相続税申告を行う必要があります。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、相続する宅地の評価額を最大80%まで軽減できる特例制度です。宅地の評価額を下げれば、その分相続税の軽減が図れます。
特例の適用を受けるためには、相続税申告書に特例の適用を受けたいと明記し、明細書(小規模宅地等に係る計算書類)、遺産分割協議書の写し等と共に、納税地を所轄する税務署に提出する必要があります。
配偶者控除
配偶者控除(配偶者の税額の軽減)とは、配偶者であれば取得した正味の遺産額が、次の定められた金額まで非課税となる制度です。
- 1億6,000万円
- 法定相続分相当額
本制度は1億6,000万円と上限も高く設定されていますが、法定相続分相当額がかなり高額に達しても、やはり相続税は0円となります。
配偶者控除の適用を受けるためには、相続税申告書に税額軽減の明細を記載し、遺産分割協議書の写し、相続人全員の印鑑証明書等と共に、納税地を所轄する税務署に提出する必要があります。
相続税の申告はいつまでにすればよい?
相続税の申告義務が生じる場合には、被相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内に申告する必要があるという申告期限が定められています。
期限内に被相続人の死亡時における被相続人の住所地を所轄する税務署に、相続税の申告書の提出をしましょう。
申告期限が過ぎても特例は受けられる?
相続の申告は、10カ月以内と定められていますが、相続分割の話し合いが長引いてしまった等の理由から申告期限を過ぎてしまう場合もあるでしょう。
申告期限から3年以内に分割された場合は、特例を受けることができます。特例を受ける際は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する必要があります。
相続する遺産が本当にないのかを確認する方法を解説!
被相続人が賃貸物件に住み、預貯金がほとんどない状態であったとしても、遺産の調査は必要です。
まず、被相続人が保管していた書類等を確認しましょう。
- 預貯金:通帳
- 不動産:登記済権利証
- 自家用車:自動車検査証
- 借金:金銭消費貸借契約書
プラスの遺産が見つかった場合は、相続税の基礎控除から差し引いて、相続税の申告・納税が必要かを判断します。
借金等のマイナスの遺産が見つかっても、そのまま相続するならば、相続で取得した財産の価額(プラスの遺産)から借金等を差し引けます。
相続財産を放置した場合のリスクを解説!
相続財産を放置していても原則、罰則はありません。しかし、相続財産を放置した場合のリスクがありますので、解説していきます。
不動産を放置するリスク
- 2024年4月から相続登記の義務化が始まり、ペナルティが課される
- 高額の固定資産税がかかる
また、2024年4月から、不動産登記法が改正され、相続登記が義務化されます。義務化されると、相続登記を放置しておくと罰金が課されるため、注意が必要です。
借金などマイナスの財産があった場合のリスク
借金などマイナスの財産もすべて相続されます。マイナスの財産を相続したくない場合は、相続があったことが分かってから3カ月以内に「相続登記」もしくは「限定承認」の申告をする必要があります。
マイナスの財産を放置しておくと、手続きの期限が過ぎてしまい、全て相続してしまうリスクがありますので、注意が必要です。
遺留分侵害額請求権を失うリスク
遺留分侵害額請求権とは、不平等な遺言や贈与により遺留分を侵害された法定相続人が、侵害した人へ遺留分の取り戻しを請求することができる権利のことです。
遺留分侵害額請求権には以下の消滅時効があります。
- 被相続人が亡くなった日と遺留分侵害を知った日から1年以内
- 相続が開始してから10年以内
時効を過ぎると遺留分を取り戻すことができなくなるというリスクがあります。
マイナスの財産のみがある場合の手続きは?
被相続の借金等しか遺産がない場合、またはプラスの遺産より借金額の方が上回っている場合は、そのまま相続(単純相続)してしまうと、借金等の返済義務を相続人が負ってしまいます。
借金等の返済義務が重い負担となる場合は「限定承認」「相続放棄」の手続きを検討してみましょう。
限定承認
限定承認とは、被相続人から相続して得た遺産の限度内で債務(借金等)も承継する方法で、相続人全員の同意が必要です。
この手続きを利用すれば、プラスの遺産を超え、マイナス遺産を引き継ぐ必要がなくなります。
限定承認を行うには、相続の開始があった事実を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します。
申述の際は主に次の書類を用意します。手続きを行う場合は収入印紙代、必要書類を収集する際の手数料を負担します。
必要書類 | 取得場所 | 手数料 |
限定承認の申述書 | 裁判所のホームページまたは家庭裁判所の窓口等 | – |
被相続人の住民票除票または戸籍附票 | ・住民票除票:住所地の市区町村役場 ・戸籍附票:本籍地の市区町村役場 | ・住民票除票:1通約200円 ・戸籍附票:1通約300円 |
被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍) | 本籍地の市区町村役場 | ・戸籍謄本:1通450円 ・除籍謄本:1通750円 ・改製原戸籍:1通750円 |
申述人の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | ・戸籍謄本:1通450円 |
収入印紙 | 郵便局・コンビニ等 | 800円分 |
相続放棄
相続放棄は遺産を受け取らず、被相続人の債務(借金等)を債権者(お金を貸した人)に返済しない方法です。
相続放棄を行えば最初から相続人ではなかったことになるので、被相続人の遺産は相続できませんが、借金等の債務を引き継ぐ必要もありません。
手続きは、相続の開始があった事実を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します。
申述の際には主に次の書類を用意します。手続きを行う場合は収入印紙代、必要書類を収集する際の手数料を負担します。
必要書類 | 取得場所 | 手数料 |
相続放棄申述書 | 裁判所のホームページまたは家庭裁判所の窓口等 | – |
被相続人の住民票除票または戸籍附票 | ・住民票除票:住所地の市区町村役場 ・戸籍附票:本籍地の市区町村役場 | ・住民票除票:1通約200円 ・戸籍附票:1通約300円 |
死亡記載のある被相続人の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍) | 本籍地の市区町村役場 | ・戸籍謄本:1通450円 ・除籍謄本:1通750円 ・改製原戸籍:1通750円 |
申述人の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | ・戸籍謄本:1通450円 |
収入印紙 | 郵便局・コンビニ等 | 800円分 |
相続する遺産がない場合でも相続発生後に必要な手続きとは?
相続する遺産はなくても、次のようにいろいろな手続きが必要となります。
必要な届出・手続き | 期限 | 手続先 | 必要な書類 |
死亡届 | 被相続人の死亡を知った日から7日以内 ※国外にいる場合は3カ月以内 | 死亡地、本籍地、住所地のいずれかの市区町村の戸籍・住民登録窓口 | ・医師の死亡診断書(警察の死体検案書) ・届出人の印鑑 |
埋火葬許可申請 | 死亡届と共に被相続人の死亡を知った日から7日以内 ※国外にいる場合は3カ月以内 | 死亡地、本籍地、住所地のいずれかの市区町村の戸籍・住民登録窓口 | ・医師の死亡診断書(警察の死体検案書) ・届出人の印鑑 |
年金受給停止の手続 | 死亡後速やかに ※国民年金は14日以内 | 社会保険事務所または市区町村役場(国民年金課等)の窓口 | ・年金受給権者死亡届 ・年金証書 ・除籍謄本 等 |
介護保険資格喪失届 | 被相続人の死亡から14日以内 | 市区町村役場(福祉課等)の窓口 | ・介護保険証 等 |
住民票の抹消届 | 被相続人の死亡から14日以内 | 市区町村役場(戸籍課等)の窓口 | ・届出人の印鑑 ・本人確認書類(免許証、パスポート等) ※通常、死亡届を提出すると抹消される |
世帯主の変更届 | 被相続人の死亡から14日以内 | 市区町村役場(戸籍課等)の窓口 | ・届出人の印鑑 ・本人確認書類(免許証、パスポート等) ※故人が3人以上の世帯の世帯主であったとき必要 |
相続する財産がない場合でも相続対策はするべき?
自分(被相続人)には、相続人へ引き継がせる財産は何もない、と思っていても所有している財産は確認しておくべきでしょう。
こちらでは財産調査の必要性と、相続対策等に関する相談先を説明します。
財産調査の必要性
被相続人となる人が住んでいるのは賃貸住宅、さらに必要な生活費は家族からもらっている状態ならば、財産は何もないと考えがちです。
しかし、忘れていた財産がないか今一度調査をしてみましょう。例えば、預金通帳にはほとんどお金が残っていない状態でも、インターネットバンクに預金がまとまって残っているかもしれません。
ネットバンクには通帳が無いので、過去に口座を開設したまま放置しているケースも考えられます。
自分には財産はもう無いと決めつけず、保管している契約書類等にしっかりと目を通しておきましょう。
専門家に相談しよう
本当に被相続人に遺産がないのか調査したい、負債があるか否か心配だという相続人は、行政書士に「遺産調査(財産調査)」を依頼しましょう。
相続人が葬式や埋葬の準備で忙しいとき、行政書士に調査を頼めば、スムーズに相続手続きが進められるはずです。
また、相続に関しての疑問点・不明点があるなら「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相談者の悩みへ適切なアドバイスを行ってくれるはずです。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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