贈与税と所得税の二重課税はある?違い・確定申告の要否・2024年改正対応版
【この記事の結論】
個人から個人への贈与では、贈与税と所得税が同時にかかることはありません(所得税法第9条第1項第15号)。二重課税の心配は不要です。ただし、贈与の相手が法人か個人か、また贈与された財産をその後どう活用するかによって、所得税・住民税が別途発生するケースがあります。
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【記事内容を動画で解説】
「贈与を受けたら、贈与税のほかに所得税も取られるの?」と不安に感じる方は少なくありません。結論から言えば、個人間の贈与では二重課税はありません。これは法律で明確に定められており、基本的に「贈与税だけ払えば終わり」です。
ただし、すべての贈与で贈与税だけで済むわけではありません。贈与の相手が法人か個人か、また贈与された財産をその後どう活用するかによって、所得税や住民税が別途発生するケースがあります。この記事では、その仕組みをひとつひとつ丁寧に解説します。
原則として個人間の贈与は「贈与税」のみがかかる
所得税法第9条第1項第15号は、「贈与により取得する財産に係る所得」を所得税の非課税所得として規定しています。つまり、個人から個人への贈与によって得た財産は、所得税の課税対象外です。(※条番号は掲載時点のものです。最新の条文はe-Gov法令検索でご確認ください)
住民税は所得税と連動して課税されます。所得税の対象外であれば、住民税も対象外となります。したがって、「贈与税+所得税+住民税」という三重課税はもちろん、贈与税と所得税の二重課税も発生しません。
贈与税は、財産を受け取った人(受贈者)に課される税金です。1月1日〜12月31日の1年間に受け取った財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた金額に対して、10〜55%の累進税率で計算されます。
例外:法人から個人への贈与は「所得税」になる
法人(会社など)から個人が財産をもらった場合は、贈与税ではなく所得税の対象となります。会社から役員・従業員へ財産が無償で渡された場合は「給与所得」、取引先や関係のない第三者への贈与は「一時所得」として扱われます。
「贈与税と所得税、どちらがかかるのか」は、贈与する側が個人か法人かによって決まります。贈与を受ける際は、相手が誰かを最初に確認しましょう。
贈与税・所得税・住民税の基本的な違い
贈与税とは?
贈与税は昭和22年に導入され、昭和28年の改正により現在の形(受贈者課税)となりました。財産を受け取った人が納める税金で、課税方式は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。
暦年課税
1月1日〜12月31日の1年間に受け取った財産の合計から110万円の基礎控除を差し引いた課税価格に、累進税率(10〜55%)をかけて税額を計算する方式です。申告・納税期限は翌年の2月1日〜3月15日です。
相続時精算課税
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に利用できる制度です。贈与時は累積2,500万円までの特別控除が適用され(超過分には一律20%)、贈与者が亡くなった際に贈与財産を相続財産に加算して相続税で精算します。
2024年(令和6年)の税制改正では、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。改正前は基礎控除が一切なかったため、この改正により制度の使い勝手が大幅に向上しました。
| 【重要】相続時精算課税は一度選択すると撤回できません。同一の贈与者からの贈与は、以後すべて相続時精算課税が適用されます(暦年課税には戻れません)。選択前に必ず専門家へ相談してください。 |
国税庁の発表(2025年5月)によると、令和6年分の相続時精算課税の申告人員は直近10年間で最多を記録しました。申告納税額がない方が約7.2万人、ある方が約0.6万人と急増しており、制度への関心の高まりが数字に表れています(出典:国税庁「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」2025年5月発表)。
所得税とは?
所得税は、1月1日〜12月31日の1年間の「所得(儲け)」に対してかかる税金です。労働による給与、不動産の賃料収入、株式の売却益など、何らかの対価として得た財産が課税対象となります。
贈与税との本質的な違いは「対価があるかどうか」です。労働や資産の譲渡などの対価として得たお金には所得税が、対価なく個人からもらったお金には贈与税がかかります。
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住民税とは?
住民税は、前年の所得に応じて翌年に課税される地方税です。所得に応じた「所得割」と、一律に課される「均等割」の2種類で構成されます。
課税対象は「所得」であり、贈与によって得た財産は所得に含まれないため、贈与そのものに住民税は課されません。ただし、贈与された財産を売却・賃貸するなどして所得が発生した場合は別の話です(後述)。
要注意!贈与に絡んで「所得税」が発生する3つのケース
贈与税と所得税の二重課税は原則としてありませんが、「贈与に関連して」所得税や住民税が発生するケースは存在します。以下の3つは特に見落としやすい落とし穴です。
ケース①:生命保険金の受取り
生命保険金にかかる税金は、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組み合わせによってまったく異なります。「生命保険の保険金=相続税」と思い込んでいると、想定外の税負担を招くことがあります。
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 | 理由 |
| 夫 | 夫 | 妻・子 | 相続税 | 亡くなった人の財産をご遺族が受け取るため |
| 夫 | 妻 | 夫 | 所得税・住民税(一時所得) | 自分が払った保険料を自分で受け取るため |
| 夫 | 妻 | 子 | 贈与税 | 生きている夫(契約者)から子へ財産が移るため |
たとえば、夫が契約者・保険料負担者で、被保険者が妻、受取人が夫本人の場合は「所得税・住民税(一時所得)」が課されます。生命保険の契約を見直す際は、受取人の設定が税負担に直結することを意識しましょう。(出典:アフラック公式「保険金受取人によって異なる税金の扱い」)
ケース②:不動産などの低額譲渡・みなし贈与

市場価格より著しく低い価格で財産を売買した場合、その差額部分が「みなし贈与」として贈与税の課税対象となることがあります(相続税法第7条)。「著しく低い」の基準は一律ではなく、財産の種類や取引の実態によって個別に判断されます。
たとえば、時価3,000万円の不動産を親から子に1,000万円で譲渡した場合、差額の2,000万円相当が子への贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。同時に、売主である親には実際の売却価格(1,000万円)に基づく譲渡所得税が発生します。
| 【注意】「格安で譲渡すれば節税になる」と安易に考えると、買主(子)は贈与税、売主(親)は譲渡所得税という二重のリスクを抱えることになります。不動産の売買・贈与を検討する際は、事前に税理士へ相談することが不可欠です。 |
なお、2024年4月からは不動産の相続登記が義務化されました。株式会社鎌倉新書が2025年に実施した「第3回 相続手続きに関する実態調査」によると、「義務化を知ったため登記を行った(または現在手続き中)」と回答した人は46.6%に上り、不動産の相続・贈与手続きへの関心が高まっていることがわかります(出典:株式会社鎌倉新書、PR TIMES 2025年)。
ケース③:贈与された財産(不動産や株式)を運用・売却した場合
「贈与税を払えば、あとは自由に使える」と思いがちですが、贈与された財産を売却・運用して利益が出た場合は、所得税・住民税が別途かかります。ここが最も見落とされやすい落とし穴です。
不動産の落とし穴:「概算取得費」による税負担の急増
親からマンションを贈与され、数年後に売却したケースを考えます。売却益は「売却価格-取得費」で計算され、その金額に対して譲渡所得税・住民税がかかります。
問題は「取得費」の扱いです。親が購入した当時の売買契約書などを引き継いでいない場合、取得費として認められるのは売却額の5%のみ(概算取得費)となり、税負担が大幅に膨らみます。贈与を受ける際は財産だけでなく、購入時の売買契約書や領収書も一緒に引き継ぐことが重要です(出典:不動産SHOPナカジツ)。
また、居住用財産(マイホーム)として要件を満たす場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を活用することで税負担を大幅に軽減できます。
株式の落とし穴:贈与税の非課税と売却時の課税は別問題
親から株式を贈与された場合、受け取った時点の時価に対して贈与税がかかります。その後、株価が上昇したタイミングで売却すると、売却益に対して所得税・住民税(合計約20.315%)が別途課されます(内訳:所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。
「110万円以下の贈与だから贈与税は非課税」と思い込み、売却時の課税を想定せずに換金してしまうトラブルが見受けられます。贈与税の非課税枠と売却時の課税は別々の問題です(出典:MASTORY)。贈与を受けた株式を売却する場合は、事前に税負担を試算しておきましょう。
贈与税の申告と所得税の確定申告の手続きの違い
贈与税と所得税(確定申告)は、申告の条件・時期・申告先がそれぞれ異なります。混同すると申告漏れやペナルティにつながるため、正確に把握しておきましょう。
| 項目 | 贈与税 | 所得税(確定申告) |
| 申告期間 | 翌年2月1日〜3月15日 | 翌年2月16日〜3月15日 |
| 申告が必要なケース | 年間の贈与額が110万円超 | 給与以外の所得が20万円超など |
| 申告先 | 受贈者の住所地の税務署 | 納税者の住所地の税務署 |
| 申告者 | 財産を受け取った人(受贈者) | 所得を得た人(納税者本人) |
贈与税の申告期間は2月1日〜3月15日で、所得税の確定申告(2月16日〜3月15日)より半月早く始まります。同じ年に贈与と売却益などが発生した場合は、それぞれ別の申告手続きが必要になります。
申告期限の3月15日を過ぎると、無申告加算税(原則15%、一定額超は20%)や延滞税が発生します。期限に余裕をもって準備を進めましょう。
住民税への影響と増額を防ぐための控除対策
贈与そのものには住民税はかかりませんが、贈与された財産を活用して不動産所得や譲渡所得が発生した場合は、所得税と住民税がセットで課されます。
住民税の増額を抑えるための主な対策は以下のとおりです。
- 所得控除の活用:配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除などを確定申告で漏れなく申告する
- 税額控除の活用:住宅ローン控除など、直接税額を減らせる控除を確認する
- 必要経費の計上(個人事業主・フリーランスの場合):所得を圧縮することで住民税の課税標準を引き下げる
- 小規模企業共済への加入(個人事業主の場合):掛金が全額所得控除となり節税効果がある
これらの控除は、申告しなければ自動的には適用されません。見落としがないよう、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
贈与税はいくらかかる?非課税のケースと具体的な計算例
贈与税がかからない財産とは(生活費・教育費などの非課税枠)
以下のような財産は、贈与税の課税対象外です(出典:国税庁No.4405)。
- 扶養義務者間の生活費・教育費:親から子への学費や生活費など、通常必要と認められる範囲のもの
- 社会通念上相当な額の祝い金・香典・見舞金
- 宗教・慈善・学術その他公益目的の寄付金
- 公職選挙法で認められた選挙運動費用
| 【注意】生活費・教育費として受け取ったお金を使わずに預貯金にした場合や、株式・不動産の購入資金に充てた場合は、贈与税の対象となる可能性があります。詳しくは国税庁No.4405「贈与税がかからない場合」をご参照ください。 |
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暦年贈与と相続時精算課税制度の比較(2024年税制改正対応)
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(2024年改正で新設) |
| 特別控除枠 | なし | 累積2,500万円まで(超過分は一律20%) |
| 相続時の扱い | 死亡前7年以内の贈与分を相続財産に加算(※注) | 全額を相続財産に加算(毎年の基礎控除分を除く) |
| 主な利用条件 | 誰でも利用可 | 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ |
| 制度の撤回 | いつでも変更可 | 一度選択すると撤回不可 |
(※注)生前贈与加算の経過措置について 2024年1月1日以後の贈与から段階的に7年へ延長されます。相続が2031年1月1日以後に発生した場合に初めて「7年分すべて加算」が完全適用されます。2024〜2030年に相続が発生した場合は3〜7年の範囲で段階的に適用されるため、相続が近い方は特に注意が必要です。
【シミュレーション】500万円の贈与を受けた場合の計算例
贈与税の計算式は「(課税価格 − 基礎控除110万円)× 税率 − 控除額」です。以下は国税庁No.4408の税率に基づく計算例です。
① 特例税率での計算(祖父母・親 → 18歳以上の子・孫)
- 課税価格:500万円 − 110万円 = 390万円
- 贈与税額:390万円 × 15% − 10万円(控除額)= 48.5万円
② 一般税率での計算(夫婦間・兄弟間、または親 → 18歳未満の子)
- 課税価格:500万円 − 110万円 = 390万円
- 贈与税額:390万円 × 20% − 25万円(控除額)= 53万円
特例税率の速算表(一部抜粋、国税庁No.4408より):
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
同じ金額を贈与された場合でも、贈与者との関係や受贈者の年齢によって適用税率が変わります。贈与を計画する前に、どちらの税率が適用されるかを確認しましょう。
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申告漏れやペナルティを防ぐために専門家を活用しよう
贈与税・所得税・住民税の関係は、一見シンプルなようで、実際の取引内容によって判断が複雑になります。以下のような点で判断に迷う場合は、早めに専門家へご相談ください。
- 贈与の相手が個人か法人か
- 贈与された財産を売却・運用していないか
- 生命保険の契約形態(受取人の設定)は適切か
- 低額譲渡によるみなし贈与のリスクはないか
- 相続時精算課税を選択すべきか(一度選択すると撤回不可)
- 生前贈与加算の経過措置は自分に当てはまるか
これらの判断を誤ると、申告漏れによる無申告加算税(原則15%、一定額超は20%)や延滞税が発生するリスクがあります。贈与や相続に関する手続きは、早めに専門家へ相談することが節税と安心への近道です。相談先の目安:相続トラブルの解決なら弁護士、登記手続きなら司法書士、贈与税・所得税の申告なら税理士が適切です。ただし、「そもそもどの専門家に相談すればよいかわからない」という方には、まず相続診断士に相談することをおすすめします。
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【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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この記事を監修したのは…
LEXT税理士事務所 代表税理士
金森 泰弘(かなもり やすひろ)
相続・不動産・芸術芸能を専門とし、富裕層、特に不動産所有者のタックスプランニングや法人化:民事信託などを得意としている。
年間の相続相談件数は500件を超えており、youtubeやSNSなどの情報発信にも力を入れている。
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