建物・家屋の相続税評価額とは?計算方法や減額方法を解説!
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建物の相続税評価額とは?相続した建物がいくらになるのか評価したものです
相続税評価額とは、相続税を計算する際に使用する財産価値のことです。相続する財産は土地や建物のような不動産資産から、現金や預金等の金融資産までと種類が多いです。
公正・公平に相続税を相続人へ課すため、国税庁は法令解釈通達「財産評価」で土地や建物、自動車、預金、有価証券等、いろいろな財産を計算する際のルールについて定めています。
建物については故人(被相続人)が利用していた家屋を相続する場合、次のように計算式が定められています。
「固定資産税評価額×1.0」
固定資産税評価額とは、固定資産税を決める際の基準となる評価額です。建物の固定資産税評価額を知りたいときは、市町村から毎年送付される課税明細書(固定資産税の納税通知書に同封)を確認しましょう。
固定資産税評価額に1倍をかけるだけなので、この評価額がそのまま相続税評価額となります。
ただし、故人が戸建てを第三者に貸していた場合や、賃貸用の集合住宅(アパート)を所有していた場合、建築中の家屋の場合など、それぞれ計算方法が異なります。
(参照:国税庁法令解釈通達「財産評価」)
「https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01.htm」
建物の相続税評価額は固定資産税を用いて出す?建物別の計算方法
建物の相続税評価額の計算方法は、各ケースによって変わってきます。こちらでは次のような事例を取り上げ計算してみます。
故人の家屋を相続
故人の利用していた家屋を相続する場合「固定資産税評価額×(1-借家権割合)」で計算します。
固定資産税評価額2,500万円の家屋ならば
2,500万円×1.0=2,500万円
相続税評価額は2,500万円です。
一方、故人が家屋を第三者に貸していた場合は、国税局長の定めた借家権の割合が適用されます。その割合は家屋の評価額の30%です。計算すると
2,500万円×(1-0.3)=1,750万円
相続税評価額は1,750万円です。
賃貸用の集合住宅を相続
故人が賃貸用の集合住宅を所有していた場合、借家権の割合の他に賃貸割合(貸している部分の床面積の割合)も加え「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で計算します。
集合住宅の床面積合計が500㎡で、貸している部屋の床面積合計が400㎡の場合
400㎡÷500㎡=80%
集合住宅の建物部分の固定資産税評価額が3億円ならば
3億円×(1-0.3×0.8)=2億2,800万円
相続税評価額は2億2,800万円です。
建築中の家屋を相続
故人の建築中だった家屋を相続した場合は、家屋の費用現価の70%に相当する金額で評価します。
費用現価とは、課税時期である被相続人が亡くなった日までに支払った建築費用の額を、被相続人が亡くなった日の価額に引き直した金額です。費用現価は建築業者が見積りをします。
見積もられた費用現価が3,000万円であったならば
3,000万円×70%=2,100万円
相続税評価額は2,100万円です。なお、亡くなる前に払い込んだ金額の差額で、次のように相続財産が増減します。
(1)既に払い込んだ金額が費用現価より多い場合
故人から工事代金として費用現価を上回る金額の2,700万円が支払われていた場合は
2,700万円-2,100万円=前渡金600万円
前渡金600万円分を相続財産に加算します。
(2)既に払い込んだ金額が費用現価より少ない場合
故人から工事代金として費用現価を下回る金額の1,100万円が支払われていた場合は
1,100万円-2,100万円=未払金1,000万円
未払金1,000万円分を相続財産から差し引きます。
建物の相続税評価額の減額方法を解説!
被相続人となる方々の中には、ご自分が所有している建物の評価額を下げ、相続人にかかる相続税の負担を軽減させたい人も多いはずです。こちらでは、相続税評価額を下げる方法を2つ取り上げます。
家屋を第三者に賃貸する
ご自分の所有する家屋が複数ある場合、使用していない家屋は第三者に貸すと相続税評価額を下げることができます。貸した場合は、相続税評価額を30%減らすことができます。
ただし、借りた人から相場に見合った賃料を受け取ることが必要です。受け取る賃料が相場と比較してかなり安かったり、無償で貸していたりしている場合は、賃貸借ではなく使用貸借として扱われ、相続税評価額は減額されません。
賃貸用の集合住宅の空室を減らす
賃貸アパートや賃貸マンションを所有している場合は、空室を減らせば建物部分の相続税評価額が軽減できます。日頃から、不動産賃貸業者に賃借人の仲介(媒介)を依頼し満室にするよう心掛けておきましょう。
ただし、賃借人が引っ越しすることになり、たまたま相続発生時に空室が出てしまうことも考えられます。たとえ空室となっても、一時的なものならば賃貸割合に含めて構いません。
また、空室をなくす対策としては、サブリースを業者や自分の資産管理会社に依頼することで、空室があっても賃貸割合が100%となります。
国税庁は一時的な空室の範囲を次のように明示しており、下記の事実関係から総合的に判断します。
1.各独立部分が課税時期前、継続的に賃貸されてきたのか
2.賃借人の退去した後で、速やかに新たな賃借人の募集が行われたか
3.空室の期間に他の用途で利用されていなかったか
4.空室の期間が課税時期の前後の一時的な期間(例:1ケ月程度空室)かどうか
5.課税時期後の賃貸が一時的なものではないか
(参照:国税庁法令解釈通達「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」)
「https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/04/12.htm」
相続した建物の固定資産税評価額を確認する方法
これまで建物別の相続税評価額の計算方法を解説してきました。自身の建物の固定資産税評価額が分かれば、解説した計算式を用いて、相続税評価額を計算することができます。
ですので、ここではご自身の固定資産税評価額の確認方法をご紹介します。
固定資産税の課税明細書を確認する
毎年5月ごろに送付される「固定資産税の課税明細書」に建物の固定資産税評価額が記載されています。
固定資産税の課税明細書は、毎年送付されますので、最新の明細書の評価額を確認しましょう。
名寄帳や固定資産税評価証明書で確認する
固定資産税の課税明細書を紛失してしまった場合は、各市区町村役場で「名寄帳」または「固定資産評価証明書」を発行しましょう。
名寄帳とは、固定資産税を課税するために市区町村が作成している固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめたものです。被相続人の不動産を一覧で確認することができます。
家屋の固定資産評価証明書とは、土地や建物など固定資産税の課税対象となる資産の評価額を証明する書類です。
家屋の固定資産税評価額は、価格または評価額の欄に記載されているのが一般的です。
相続した建物の評価をする際の注意点
建物の相続税評価額を計算する場合は次の点に注意しましょう。
賃貸用の建物を建築中に相続が始まった場合
賃貸用の集合住宅(アパート等)を建築するのは有効な節税対策です。建築費用として現金や預金を利用すれば、相続税の対象となる金融資産を減らせます。
それに加え、賃貸用の集合住宅に賃借人を募集し、満室となれば建物の相続税評価額を大きく下げることができます。
ただし、賃貸用の建物を建築中に相続が始まると、相続税評価額は費用現価の70%となります。更に借家権の割合や賃貸割合から差し引くことはできません。
また、賃貸用の建物が建つ土地は貸家建付地として、総額の約20%が差し引かれて評価されます。しかし、建築中に相続した場合はこちらも差し引くことができません。
このように、建物の完成前に相続が開始されると、期待していたほど評価額を減らすことができない事態も起こり得るのです。
相続した土地と建物は別々に評価
戸建て住宅の場合は、土地と建物が一体となった不動産資産のように考えられます。しかし、相続税評価額を計算する場合、土地と建物を別々の資産として評価します。一緒に計算すると、正確な相続税が算定できなくなるので注意しましょう。
建物の評価は固定資産税評価額をもとに計算し、土地は相続税路線価や固定資産税評価額のいずれかをもとに評価します。
さらに土地の場合は路線価方式または倍率方式で計算するので、建物とは違いやや複雑な方法を取ります。土地と建物を評価する場合は、それぞれの評価方法で計算する必要があります。
相続直前に行ったリフォームの評価漏れ>
相続が開始する直前に行った自宅のリフォームやリノベーションは固定資産税評価額に反映されていません。工事費用から減価償却費相当額を控除した額は70%で評価する必要があります。
そのため、相続の直前に行ったリフォームやリノベーションであっても評価漏れには注意が必要です。
小規模宅地等の特例は建物には使えない
小規模宅地等の特例とは、相続した宅地の評価額を80%減額することができる制度です。この制度はあくまでも宅地に適用できる制度であり、建物については使えませんので注意が必要です。
相続税の計算方法とは?土地の相続税評価額も知っておきたい!
相続税を計算する場合は土地も相続財産です。そのため、建物だけでなく土地を評価するための計算が必要となります。土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」があります。
路線価方式
主に市街地を形成する地域で採用される評価方式です。土地が面している道路(路線)を区切りとし、毎年各国税局が作成する路線価図に基づいて、路線価へ土地の面積を掛けて計算します。計算方法は次の通りです。
「路線価×補正率・加算率×宅地面積」
土地のサイズや形状はそれぞれ異なるので、補正率・加算率を評価額の調整のために用います。間口が狭い、細長い、傾斜があるというように利用し難い土地だったり、崖地のような危険を伴う土地だったりすると、評価額は低く調整されます。
一方、国道に面した土地、2つの路線に面している角地等は便利なので評価額も高くなります。なお、路線価図は国税庁の「路線価図・評価倍率表」から確認できます。
(参照:国税庁ホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表本文へ移動」)
「https://www.rosenka.nta.go.jp/」
倍率方式
郊外の路線価が定められていない地域で採用される評価方式です。国税局長が一定の地域ごとに、その地域の実情に即するよう定めた評価倍率表で土地を評価します。計算方法は次の通りです。
「宅地の固定資産税評価額×倍率」
宅地の固定資産税評価額は建物の場合と同じく、市町村から毎年送付される固定資産税の納税通知書に同封された課税明細書で確認できます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
LEXT税理士事務所 代表税理士
金森 泰弘(かなもり やすひろ)
相続・不動産・芸術芸能を専門とし、富裕層、特に不動産所有者のタックスプランニングや法人化:民事信託などを得意としている。
年間の相続相談件数は500件を超えており、youtubeやSNSなどの情報発信にも力を入れている。
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