遺贈と死因贈与の違いとは?選択のためのヒントやメリットを解説!
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遺贈とは
遺言者(被相続人)の遺言によって、所有している財産を移転する方法を「遺贈」と呼びます。遺言者は誰にどんな財産を移転するか、一方的に決めることができます。遺贈を行うには遺言書を作成する必要があります。
遺贈には次の4種類があります。
・包括遺贈:遺産の全部または一定の割合を与える遺贈
・特定遺贈:遺言者が指定した分の相続財産を与える遺贈
・負担付遺贈:一定の負担(例:親の介護等)を課し、それが履行された場合に財産を与える遺贈
・後継ぎ遺贈:遺言の効力が発生後、遺産を受け取った人が死亡した場合、遺言者の指定した人に目的物を与える遺贈
死因贈与とは
死因贈与は贈与者が死亡した後、あらかじめ指定した財産を贈与する方法です。基本的に特定財産を贈る内容の契約ですが、包括的な贈与もできます。
ただし、契約を締結する際には受贈者(贈与を受け取る人)の合意が必要です。
死因贈与は双方の合意により口頭でも契約締結できますが、後日のトラブル防止のため「贈与契約書」を作成した方が安心です。
また、死因贈与を執行するため、執行者(死因贈与の手続きを進める人)の指定も可能です。執行者がいれば不動産の所有権移転登記の際、受贈者と協力して手続きが進められます。執行者は受贈者本人を選んでも構いません。
一方、執行者を選任していないと執行の際、相続人全員の協力が必要になります。
遺贈と死因贈与の違い・共通点とは‖それぞれのメリットとデメリットを解説!
ここでは遺贈と死因贈与の特徴を比較し、メリット・デメリットを解説します。
遺贈と死因贈与の比較
それぞれの共通点、相違点は下表のとおりです。
項目 | 遺贈 | 死因贈与 |
贈与方法 | 遺言書の作成 | 口頭の約束でも可能 ※契約書で書面化した方が安全 |
法的性質 | 単独行為 | 契約(当事者の合意) |
財産の贈与者 | 遺言者(15歳以上の者) | 原則として成年 ・2022年4月~:18歳以上 ・それ以前:20歳以上 ※未成年の場合、法定代理人の同意が必要 |
財産を受け取る人 | 遺言者が指定した受遺者 ※相続人以外の指定可能 | 贈与契約を結んだ受贈者 |
効力発生時期 | 遺言者の死亡時 | 贈与者の死亡時 |
負担の発生時期 | 遺言者の死亡後に限定 | 生前負担も可能 |
債務の承継 | 包括遺贈の場合 | 承継しない |
贈与者の撤回 | 自由な撤回が可能 | 相手方(受贈者)の同意が必要 |
受遺者(受贈者)の拒否 | 一方的に拒否可能 | 合意した以上、基本的に拒否できない ※ただし、受贈物の権利を放棄可能 |
税金 | 主に相続税 | 主に相続税 |
遺贈と死因贈与のメリット
それぞれのメリットは次の通りです。
遺贈のメリット
遺贈は遺言書で遺言者が誰に財産を引き継いでもらいたいか意思表示する制度です。そのため、遺言者本人が相手方の同意を得ずに、自由に取り決めができます。作成した遺言書を破棄し、新たに決めなおすことも可能です。
また、遺言書を誰の目も届かない場所へ保管しておけば、相続発生まで遺言書の内容を知られる心配はありません。
死因贈与のメリット
死因贈与は契約であるため、口頭でも成立します。ただし、後々に契約内容に関するトラブルが起きないよう、契約書の作成が望まれます。
また、贈与者側は生前から受贈者の合意の下で、負担付き契約の履行を設定できます。例えば贈与者本人の介護をしてもらう代わりに、亡くなった時に受贈者へ財産を贈与する、というような契約も可能です。
一方、受贈者側は死因贈与の効力が発生した場合、契約の際に取り決めた財産だけを取得でき、贈与者の債務(借金等)は承継しません。
遺贈と死因贈与のデメリット
それぞれ次の点に注意しましょう。
遺贈のデメリット
遺贈は遺言者の一方的な意思表示で成立しますが、受遺者の判断で遺贈を放棄できます。つまり、遺言者の希望通りに財産の引き継ぎが行われないケースもあります。
また、遺言書には厳格なルールがあり、遺言者本人だけで作成できる自筆証書遺言の場合、日付・自署押印等の記載漏れがあると、遺言書自体が無効になってしまいます。
死因贈与のデメリット
死因贈与は契約であるため一方的に贈与者側で贈与内容の取り決めはできず、受贈者と話し合いをして合意へ達しなければ有効な契約にはなりません。
また、契約を締結させた以上、贈与者側・受贈者側ともに、一方的な判断で贈与の撤回や受取拒否をすることはできません。
遺贈と死因贈与はどちらを選べば良い?最適な選択肢をパターンごとに解説!
被相続人が遺贈・死因贈与の双方を準備していた場合、書類に明記した日付の新しいものが優先されます。
なお、死因贈与を契約したにもかかわらず、契約書として書面化していないと、契約日が不明確になるおそれもあるため、契約書の作成をおすすめします。
ここではパターンごとに遺贈・死因贈与のどちらを選ぶべきかを解説します。
遺贈を選択すべきケース
家族に知られず、財産を誰に引き継ぐかを決めたい場合は遺贈が最適です。遺言書の存在を家族に教える必要は無いため、遺言者が亡くなり、遺品整理の際に発見されるよう保管しておくことができます。
また、相続財産の中に不動産資産(土地・建物)が多い場合も遺贈を選んだ方が無難です。法定相続人に不動産を引き継ぐ場合、不動産取得税はかからないためです。
相続税が課される可能性はありますが、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以内に各相続人の課税遺産総額が収まれば、申告・納税は不要です。
死因贈与を選択すべきケース
ご自身が亡くなった後、その配偶者の介護を負担させる人(子など)に対しては遺贈で指定しても構いません。ただし、生前の負担付遺贈は認められません。
一方、生前にご自分が介護を受けたいならば、負担付死因贈与を選ぶべきです。死因贈与は双方の合意で契約するため、贈与者が介護してもらう見返りに受贈者に贈与する内容も有効です。
また、受取を拒否してもらいたくない財産(例:家族みんなで住んでいた家等)を贈与する場合も、死因贈与が最適です。贈与者・受贈者が合意の上で契約する形をとるので、一方的な撤回・拒否は認められません。
遺贈と死因贈与をする際のそれぞれの手続きを解説!
遺贈と死因贈与は手続きが異なります。ここでは手続き方法について解説します。
遺贈の手続き方法
遺贈の流れ、必要書類等は次の通りです。
1.自らの財産・相続人等を把握し、誰に何を引き継がせるのか検討
2.遺言書の作成
3.相続開始まで大切に保管
なお、遺言書を作成する場合、主に次の書類が必要です。
自分で手書きしたい場合:自筆証書遺言
自筆証書遺言は自筆での記載が必要です。
・財産に関する書類:預金通帳、不動産の登記簿謄本等
・戸籍謄本(相続人を確定するために必要):本籍地の市区町村役場で取得
・印鑑:認印でも有効、実印が好ましい
より確実に遺言を残したい場合:公正証書遺言
公証人が遺言者の希望に従い遺言書を作成してくれます。作成した遺言書のうち1通は公証役場で、もう1通は遺言者が保管します。
・遺言者本人の本人確認資料:運転免許証等
・財産に関する書類:預金通帳、不動産の登記簿謄本等
・戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得
・住民票(相続人以外の人に遺贈する場合):市区町村役場で取得
・印鑑:実印
・印鑑登録証明書:市区町村役場で取得
死因贈与の手続き方法
遺贈の流れ、必要書類等は次の通りです。
1.自らの財産・相続人等を把握し、誰に何を贈与させるのか検討
2.相手方と話し合い合意を得る
3.死因贈与契約書の作成(2通)
4.贈与者・受贈者がそれぞれ契約書を大切に保管
なお、死因贈与契約書を作成する場合、主に次の書類が必要です。
契約者同士で決めたい場合:死因贈与契約書
契約であるため、少なくとも財産の情報を明記した書類、印鑑等は必要です。
・財産に関する書類:預金通帳、不動産の登記簿謄本等
・本人確認書類:運転免許証等
・印鑑:認印でも有効、実印が好ましい
より確実に贈与を行いたい:死因贈与契約公正証書
公証役場が関与し契約書を公文書化することで、より確実に破棄や内容の改ざん等のトラブルを予防できます。
・契約当事者の本人確認資料:運転免許証等
・財産に関する書類:預金通帳、不動産の登記簿謄本等
・契約当事者の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得
・契約当事者の住民票:市区町村役場で取得
・印鑑:実印
・印鑑登録証明書:市区町村役場で取得
遺贈や死因贈与は課税対象?
遺贈・死因贈与ともに相続税がかかる点は共通しています。遺贈または死因贈与を受けたのが法定相続人の場合、相続財産と一緒に相続税申告を行います。
一方、法定相続人以外の人が財産を受けた場合には、相続税申告の中に自分も含めてもらわなければなりません。
その他、不動産を遺贈または死因贈与された場合には不動産取得税、登録免許税(不動産の名義変更の際に納める税金)の支払いが必要です。税率は下表をご覧ください。
税金 | 遺贈 | 死因贈与 |
不動産所得税 | ・法定相続人:非課税・法定相続人以外:4% | 一律4% |
登録免許税 | ・法定相続人:0.4%・法定相続人以外:2% | 一律2% |
不動産を譲渡する際、死因贈与の場合が大きな負担となる点に注意しましょう。
遺贈や死因贈与に関する相談先はこちら
遺贈や死因贈与に関する悩みは、相続の身近な専門家である「相続診断士」へ相談してみましょう。相続診断士は相続の質問・疑問にアドバイスしてくれる有資格者です。
その他にも相続診断士は、相続に詳しい法律の専門家への橋渡しも行ってくれます。例えば遺贈や死因贈与が原因で揉め事になった場合は弁護士を、相続税や不動産取得税の相談や手続きに関しては税理士を紹介してくれます。
遺贈・死因贈与のどちらにすべきか悩んだ場合は、相続診断士の助言を参考に、自身にとって最適な方法を選び、冷静に手続きを進めていきましょう。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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