遺言書の効力とは?有効期限や無効となるケース、遺留分を解説!

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遺産相続

遺言書の種類にはどのようなものがある?

遺言書には、主に2つの種類が存在します。それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか。順番に解説します。

自筆証書遺言

その名のとおり、遺言者が自筆で作成する遺言書のことです。筆記用具や用紙に指定はなく、紙とペン、印鑑さえあれば思い立ったときに作成が可能です。

基本的にすべて自書する必要がありますが、財産目録についてはパソコンでの作成も認められています。手軽に作成でき、自分で作成するため作成時点においては費用がかからないのがメリットです。

ただ、第三者の目がない分間違った方法で作成して無効になってしまったり、紛失してしまったり、死亡後に見つけてもらえなかったりするリスクや相続人による隠蔽、変造などの可能性もあります。作成の際は正しい方法で作成し、自宅で保管せず法務局に預かってもらうことをおすすめします。

法務局で預かってもらう場合は、保管手数料がかかります。法務局で保管しない場合でも、相続発生後に検認手続が必要になりこちらも費用がかかってまいります。

公正証書遺言

公的機関である公証役場の公証人に作成してもらう遺言書のことです。原案を考える必要はありますが、公証人に相談でき、最終的に公証人が関与して作成することになるため、ほかの形式よりも信頼性が高いです。

また、入院中で動けないという場合でも、公証人が病院まで出向いてくれるため、作成を諦める必要がありません。

手数料や手間、日数などはかかりますが、内容の改ざんや変造の心配がありません。また、原本は公証役場で保管してもらえますので、紛失のリスクもありません。なお、手数料は遺言の目的である相続財産の価額によって異なります。

目的の相続財産の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円超え〜200万円以下7,000円
200万円超え〜500万円以下11,000円
500万円超え〜1,000万円以下17,000円
1,000万円超え〜3,000万円以下23,000円
3,000万円超え〜5,000万円以下29,000円
5,000万円超え〜1億円以下43,000円
1億円超え〜3億円以下43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額
3億円超え〜10億円以下95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額
10億円を超える場合249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

上記に加え、遺言加算という特別の手数料が定められており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1,000円が加算されます。

遺言書の効力とは?8つの効力に関して具体例とともに解説!

遺言書には、どのような効力があるのでしょうか。ここでは、おもな8つの効力について解説します。

1.相続分の指定

共同相続人の全員または一部の者が相続する相続分を、法定相続分とは異なった割合で定める、またはこれを定めることを第三者に委託することをいいます。

たとえば「家にひとり遺されることになる妻に相続財産の80%を相続させ、2人の子供には相続財産の10%ずつを相続させる。」というように、割合で相続分を指定するケースがあります。このような相続分の指定がなされた場合、共同相続人は指定された相続分に応じて、具体的にどの財産をだれが相続するのか、遺産分割協議を開いて決めることになります。

2.相続人以外への遺贈

遺産は通常、法定相続人に相続されますが、遺言を作れば法定相続人以外の人に渡すこともできます。これを遺贈といいます。
たとえば、以下のような人に遺贈するケースが考えられます。

  • 献身的に介護してくれた長男の嫁
  • 配偶者の兄弟姉妹
  • 内縁の配偶者 など

また、遺贈によって特定の法人や慈善団体などに寄付することもできます。天涯孤独で相続人が1人もいないという場合や、相続人はいるが誰にも渡したくないといった場合に寄付が選ばれることがあります。

たとえば以下のような寄付先があります。

  • 自然を守るため、自然保護団体に寄付する
  • 恵まれない子どもたちのために、発展途上国支援団体に寄付する

3.子どもの認知

遺言により、子を認知できます。生前は明かせなかったとしても、死後であればカミングアウトできるという場合もあるでしょう。遺言書によって認知された子と遺言者とは、法律上の親子関係が認められるようになるため、認知された子は相続に関して他の子と同様の権利を得ます。

4.未成年後見人の指定

相続人が未成年者であり、遺言者が死亡することによって親権者がいなくなってしまう場合、遺言者は子どもの未成年後見人を遺言によって指定し、子どもの財産管理などを任せることができます。

なお、遺言によって未成年後見人に指定された人は、指定されたからといって必ず就任しなければならないわけではなく、拒否することも認められています。

5.相続人の廃除

相続人から遺言者に対し虐待や重大な侮辱などがあった場合、その人を遺言者の相続人から廃除して相続する権利を剥奪することができます。
たとえば、廃除の申し立てを行うケースには、以下のような場合があります。

  • 何年も働かない息子から長年にわたり暴力を振るわれてきた
  • 遺言者に多額の借金の肩代わりを強制的にさせた
  • 重大な犯罪を犯し有罪判決を受けている

6.遺産の分割の禁止

遺言者は、遺言によって相続開始の時から5年を超えない期間に限り、遺産の分割を禁止することも可能です。

たとえば、以下のような場合に活用されることがあります。

  • 被相続人の死亡直後は冷静な遺産分割協議が不可能と予想される
  • 相続人の中に未成年者がいる

7.遺言執行者の指定

「遺言執行者」とは遺言書の内容を執行する人のことをいいます。

遺言執行者になるのに特別な資格は必要なく、未成年や破産者でない限り誰でもなれますが、やらなければならないことが多く負担が大きくなることから、弁護士や司法書士などの専門家が指定されることが多いです。

8.生命保険の受取人の変更

保険金の受取人を変更するには、本来であれば契約を変更しなければなりませんが、遺言書で変更することも可能です。

なお、保険金の受取人を変更するという内容の遺言書を見つけた場合には、なるべく早く保険会社に受取人変更の通知をしましょう。通知が間に合わず、変更前の受取人に保険料が支払われてしまっても、保険金を再度支払うよう請求することはできません。

遺言書の効力に有効期限はあるの?

遺言書に有効期限はありません。何十年も前に作成されたものであっても正しい方法で書かれていれば有効です。いつでも撤回でき、内容の修正や新たにつくり直すことも可能です。新たにつくり直した場合は、古いものが撤回されたものとみなされ、新しい日付のものが有効になります。

また、遺言書は、遺言者が亡くなったときから効力が生じます。遺言によって遺産を引き継ぐ見込みのある人であっても、遺言者が存命のうちは遺産に関して何の権利もありません。

遺言書に書いたらなんでも実現される?効力が及ばない場合を解説!

残念ながら、遺言書に書いたものはなんでも実現されるというわけではありません。たとえば、公序良俗に反する内容は、遺言に書かれていても実現することは許されません。

ほかにも、特定の人だけに多くの遺産が分配され、他の相続人がほとんど遺産を受け取れないような内容の遺言書の場合には、他の相続人から多くの遺産を分配された人に対し、最低限受けられるはずの権利を侵害されたとして、その侵害額を請求されることもあります。

相続人が最低限受けられる権利のことを「遺留分」といいます。何人も相続人がいるにもかかわらず、特定の1人にすべての財産を相続させるといった内容の遺言書は、言い換えればほかの相続人の遺留分を侵害していることになります。

だからといって、それだけで遺言書自体が無効になることはありませんし、遺言の内容の実現が妨げられることはありません。しかし、ほとんど遺産を受け取ることができなかった相続人には、多くの遺産を受け取った者に対して侵害額相当の金額を請求する「遺留分侵害額請求権」という権利があり、それを行使することができます。

遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分の侵害があったことを知った時から1年間、もしくは相続の開始から10年が経過すると消滅します。また、遺言者の兄弟姉妹にはそもそも遺留分が認められていません。

「遺留分侵害額請求権」は2019年7月1日に民法改正されたものです。相続開始日が2019年7月1日以降の場合は適用されますが、2019年7月1日より前の場合は民法改正前の「遺留分減殺請求」が適用されるので注意しましょう。

こんな場合は遺言書の効力が無効となる?無効となるケース・無効とならないケースを解説!

どのようなケースが無効となるのでしょうか。無効となるケースと無効とならないケースを、遺言書の種類別に見ていきましょう。

どの形式の遺言書でも効力が無効となるケース

どの形式の遺言書でも共通の、無効となるケースです。

  • 遺言者に事理を弁識する能力がなかった
  • 遺言者が15歳未満
  • 誰かと共同で書いてしまった
  • 錯誤による遺言
  • 公序良俗に反する内容

遺言者は、15歳以上であり、事理を弁識する能力を有していることが条件です。事理を弁識する能力とは、遺言の内容や遺言をすることによって発生する効力をきちんと理解できるだけの能力をいいます。

また、錯誤とは簡単にいえば勘違いです。勘違いにより遺言書を作成してしまった場合は、民法上無効となります。

2人以上で同じ用紙に一緒に遺言する「共同遺言」は禁止されていますので、必ず一人1通、それぞれで作成しましょう。

自筆証書遺言の効力が無効となるケース・ならないケース

公的機関である公証役場の公証人が関与して作成する公正証書遺言と違い、自筆証書遺言の場合、作成段階での不備などが原因で無効となってしまうことがあります。自筆証書遺言の作成ルールについて解説します。

無効となるケース無効とならないケース
・自筆で書かれていない(財産目録はパソコンや資料添付可。ただし全ページに署名または押印が必要。無ければ無効)
・氏名が署名ではなくスタンプ
・作成日付がない、または正確な年月日が特定できない
・スタンプ型印鑑による押印や拇印

自筆証書遺言の本文は原則としてすべて自筆で書かなければなりません。また、いくら夫婦などの近しい関係であっても、必ず遺言者1名につき遺言書は1通でなければなりません。

作成日付は、正確な年月日が特定できる書き方でなくてはなりません。「令和◯年○月吉日」は認められません。

また、書き損じが生じた場合にその修正方法が間違っていると、本当に望むことが実現できない可能性があります。加筆や修正の方法にはルールがあります。詳しくは後述しますが、ルールに則っていない修正では修正したことが認められず、修正前の内容に戻ってしまうのです。

なお、多くの書類において認められていないスタンプ型印鑑は、自筆証書遺言の作成では禁止されていませんが、いわゆる実印など遺言者が管理していたことがわかる印鑑で押印する方が無難でしょう。

せっかく作成するのですから、無効になってしまわないよう気をつけましょう。

公正証書遺言の効力が無効となるケース・ならないケース

次は、公正証書遺言の場合です。

無効となるケース無効とならないケース
・証人に要件がない
・証人の人数が不足している
・口がきけないために意思を口頭で伝えられない
・耳が聞こえないため読み聞かせが聞こえない

公正証書遺言に関しては、公証人が関与することもあり、自筆証書遺言のように書き方で無効になってしまうことはほとんどないといえますが、意外に見落としがちなのは証人です。

公正証書遺言を作成するには証人が2人以上必要ですが、うっかり証人になることができない人(欠格者)に依頼してしまうことがないよう注意しなければなりません。欠格者は以下の人たちです。これらの人が証人となって作成された遺言書は無効です。

  • 未成年者
  • 遺言者の推定相続人
  • 遺贈を受ける人
  • 推定相続人と遺贈を受ける人の配偶者、直系血族
  • 遺言書を作成する公証人の配偶者と4親等内の親族
  • 公証役場の職員

一方、無効とならないケースとして、遺言者が口がきけない状態や耳が聞こえない状態で作られた場合が挙げられます。筆談や通訳人による通訳などにより公証人と意思疎通できれば、公正証書遺言の作成が可能です。

勝手に開封したら罰則も!遺言書を見つけた際の対応

遺言書は、発見しても勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に提出し、検認を行う必要があります。

遺言者から直接遺言書を預かっていた場合なども同様です。勝手に開封する行為は法律違反に該当し、違反した場合、5万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。

遺言書の効力が無効と判断されないポイント・書き方とは?

遺言書の効力が無効と判断されないためには、どういったことに気をつければよいのでしょうか。遺言書の種類別に解説します。

自筆証書遺言の書き方ポイント

全文自筆で書きましょう。財産目録のみパソコンで作成してもかまいませんが、本文をパソコンや代筆で作成すると無効となってしまいます。

遺言者の氏名は正しく書き、作成日が特定できるようはっきり正確に記入します。押印は実印を使用することをおすすめします。
 
書き損じた場合は訂正することができます。ただし、訂正や加筆に関しては細かいルールが定められているため、注意が必要です。

訂正したい場合は、訂正したい文字を二重線を引いて削除し、近くに正しい文字を記入します。訂正した箇所の近くに、遺言書の印鑑と同じ印鑑で押印します。また、余白や遺言書の末尾に「〇行目、〇字削除、〇字加入」と記載し署名します。

文字を書き足したい場合は、該当の箇所に吹き出しを書き、そこに加入する文字を記入し遺言書の印鑑と同じ印鑑で押印します。また、余白や遺言書の末尾に「〇行目、〇字加入」と記載し署名します。

なお、訂正後の文字や印影は、ほかの文字と重ならないようにしてください。

訂正の仕方に不安がある場合には、手間がかかっても、一から書き直しすることをおすすめいたします。

公正証書遺言の書き方ポイント

自筆証書遺言とは違い、公証役場の公証人が関与して作成します。相談しながら原案を作るため、遺言者が用意するのはメモ程度で構いません。誰に何をどれだけ相続させるかなど、事前にしっかりと考えをまとめておくことが重要です。

円満に遺言内容を実現させるためには、遺留分に配慮することが大切です。相続人それぞれの遺留分を把握したうえで、それでも公平な遺産分割にならない場合は、その理由を付言事項に記載するのがおすすめです。

付言事項に法的効力はありませんが、遺言書に込めた想いや事情などが伝われば、遺留分を侵害される立場の人もわかってくれるかもしれません。また何より感謝の気持ちを伝えることも重要です。

遺産相続トラブルを回避するための対策

遺言書の効力や有効期限、無効になるケース、遺留分などについて解説しました。相続や遺言といった問題は、死を連想させることからあまり考えたくないことかもしれませんが、誰もが直面する問題です。

遺産相続トラブルも、他人事ではありません。それほど遺産がないから大丈夫、うちは揉めないだろうと楽観視していたケースほど「争族」になりやすい傾向にあるともいわれています。

遺言書を作成したいけれど自分だけでは難しいという場合は無理をせず、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。遺産相続トラブルを避けるために、遺言書の作成について前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

酒井 睦

司法書士さかい事務所

酒井 睦(さかい むつみ)

最大手の相続専門司法書士事務所において、面談担当として2000件以上の相続・終活手続きに携わりました。東京都中央区と中野区、埼玉県さいたま市、川口市、吉川市、千葉県柏市などで、無料相談会を定期的に行っております。お気軽にご利用くださいませ。

サイトURL:http://sakai-js.com/

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