相続遺産は特有財産に当てはまる?特有財産の証明方法を徹底解説!

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遺産相続

特有財産とは?共有財産との違いは

財産分与とは、夫婦が離婚をする際に、婚姻中に協力して得た財産(共有財産)を分配する方法です。ただし、何でも分配できるわけではありません。「特有財産」は財産分与の対象外です。

特有財産とは、夫婦の協力なしに得られた財産を指します。

次のような財産が特有財産となります。

  • 夫婦の一方が相続した遺産
  • 夫婦の一方が婚姻前に得た現金、預金
  • 夫婦の一方が婚姻前に購入した家や自動車
  • 夫婦の一方が贈与された物 等

なぜなら、遺産等は婚姻中に夫婦が協力して得た財産とはいえないからです。ただし、これらの財産もケースによっては財産分与の対象となる可能性があります。

特有財産は財産分与の対象となる?対象となったケースを紹介!

裁判所では、夫婦の一方が相続により引き継いだ財産は、夫婦の協力で得られたものではないので、夫婦が婚姻中に取得した他の財産と同一視し、分与の対象物件に含ませるのは、特段の事由がない限り許されないと判示しています(高松高決昭和63年10月28日)。

しかし、夫婦の一方が遺産を相続後、他方が代わりに遺産の価値を維持または大幅に向上させた場合は、財産分与の対象となる可能性があります。

例えば、夫が被相続人の住宅を相続後、その住宅が傷みはじめ、妻が共有口座の預金を利用して、修繕代を支払ったケースがあげられます。

特有財産に当てはまるもの・当てはまらないものの要件を解説!

婚姻中、基本的に夫婦が協力して得た財産は共有財産として財産分与の対象となります。その他、夫婦の一方の給与や退職金も、婚姻中に支払われたお金として財産分与の対象となる可能性が高いです。

それとは逆に、夫婦がそれぞれ婚姻前に取得した財産や、婚姻中でも夫婦のどちらかに贈与された物、夫婦の一方が得られた相続財産は、特有財産に該当します。

なぜなら、これらの財産は婚姻中に夫婦が協力して得た財産とは言えないためです。

特有財産に当てはまるか判断するポイントとは?

特有財産に当てはまるのかは、婚姻中に夫婦の協力により得た財産といえるかどうかが判断のポイントです。

基本的に特有財産と認められる相続財産であっても、相続財産を引き継いだ人の配偶者が、その財産の資産価値の維持・向上に貢献していた場合、財産分与の対象となる可能性があります。

例えば、夫が相続した旅館は特有財産といえます。しかし、婚姻中に妻が女将として経営を切り盛りしていた場合、その貢献度に応じて金銭を受け取る権利があります。

特有財産は誰が立証するもの?

特有財産かどうかがよくわからないと、財産分与の対象として共有財産と推定されます。したがって、特有財産であると主張する側に立証責任が生じると考えられています。

特有財産であるか否かを争う場合、共有財産とは明確に区分されている事実の証明、夫婦の協力で形成された財産ではない、という点を立証する必要があるでしょう。

特有財産を立証する方法を解説!証明するために必要なものをケース別に

こちらでは、調停や裁判に進んだ際、引き継いだ遺産を特有財産としてどのように立証するのかについて取り上げましょう。

遺産の種類証拠等
預金相続時に得た金融資産を、相続人専用の預金口座に移した証拠(預金通帳、取引履歴)を提示する。
夫婦が日々の生活費等に使用する共有の預金口座でない点を主張する。
不動産登記事項証明書や遺言書等を証拠として、相続登記を行い相続人である自分に、名義変更した旨を主張する。
なお、自分の配偶者が財産を資産価値の維持、向上に貢献していていない旨も述べる。
自動車自動車の所有権は自分にあると証明するため、車検証や自動車税納税証明書等を提出する。
なお、配偶者が当該自動車をよく運転していても、自動車のメンテナンス費用を肩代わりせず、資産価値の維持に貢献していていない旨も述べる。
生命保険保険金受取人として、被相続人から自分が受取人に指定された旨を証明するため、保険契約書等を提出する。

特有財産を調停で決める方法!手続きを流れに沿って解説!

財産分与について夫婦が協議し、物別れに終わった場合は、家庭裁判所に話し合いの場を移し、調停で解決を図ります(調停離婚)。

調停は非公開で行い、原則として夫婦双方が出頭します。

  1. 離婚前に財産分与等の調停を行う場合、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所 に「夫婦関係調整調停(離婚)の申立」を行う、離婚後の場合は「財産分与請求調停」を行う
  2. 家庭裁判所から選出された調停委員が、夫婦それぞれの意見をヒアリング後、アドバイスや解決案を示して、合意するように働きかける
  3. 合意すれば調停調書が作成される

なお、調停不成立となれば次の手続きへ進みます。

  • 夫婦関係調整調停(離婚)不成立→裁判離婚
  • 財産分与請求調停不成立→引き続き審判手続で審理後、家庭裁判所が決定

特有財産と認められなかった場合の財産は?立証責任は誰にある?

相続で取得した金融資産を相続人である自分の預金口座に入れたとしても、その口座が夫婦の共有で自由に夫婦が生活費やレジャー等の費用に使用できる状態ならば、特有財産と共有財産が混在した状態といえます。

この場合は特有財産を主張する側が共有財産ではないと主張するべきです。ただし、長年夫婦の共有口座として利用してきた場合は、財産分与の対象として判断される可能性が高いです。

財産分与の対象として判断された場合、夫婦それぞれ1/2ずつの分配となるのが一般的です。

特別財産を巡るトラブル事例を紹介!トラブルが起きたときの対処法も解説!

自分の相続した財産を利用してきた頻度が、自分より配偶者の方が多い場合、配偶者が「実質的によく利用してきたのは自分だから、この相続財産は分与対象だ」、と主張する可能性があります。

しかし、あくまで共有財産と認められるかどうかは、配偶者が相続財産の維持や価値の向上に努めたかどうかで判断されます。

例えば被相続人から相続した自動車を、相続人である自分ではなく配偶者の方がよく利用しても、自動車のメンテナンス費用等を配偶者が負担してきた事実のない場合、やはり自動車は相続人である自分の特有財産となるのです。

配偶者が相続財産の財産分与を主張してきた場合は、財産の維持や価値の向上に努めた証拠(領収書等)の提示を求めてみましょう。

そのような証拠が無ければ、相続人である自分に有利となります。

財産隠しは不利になる!正直な財産額の提示を!

財産隠しは不利になります。例えば、預金をこっそりタンス預金にしたり、ネット銀行に預けたりして「預金を使用してしまい、もう無い。」と自分が言い張った場合、後日配偶者に調査され、指摘されたら調停や裁判で非常に不利となります。

このような財産隠しは、本来、窃盗罪や横領罪が成立する可能性もあります。しかし、刑法には、「親族相盗例」という規定があり、夫婦ならば窃盗罪や横領罪が成立するケースでも刑が免除されます(刑法第244条第1項)。

とはいえ、財産を隠せば相手は当然反発し、話し合いで解決するのは困難となるおそれもあるでしょう。

円満に進めるためにも夫婦で協力して財産を調査したうえで、離婚成立に向けて財産分与を話し合う姿勢が大切です。

特有財産の取り扱いの最新判例を紹介!

こちらでは、2022年の特有財産として現存している事実が証拠上認められなくても、民法768条3項の「一切の事情」として考慮し、財産分与の額を算定できるとした判例を紹介します(東京高決令和4年3月25日)。

【事実の概要】

離婚した元夫婦間の財産分与請求事案で、元夫が、別居時における元夫名義の預金の一部に、約7年前に自分の相続した約2,900万円の預金等の特有財産が含まれている、と主張しました。

しかし、東京地方裁判所では相続によって取得した資金が、別居時の残高に残存していた事実を裏付ける資料はないとし、本件預金全額を財産分与対象財産に含め、5441万円の支払を命じます。元夫はこれを不服として東京高等裁判所に抗告しました。

【決定の概要】

抗告審も本件預金を特有財産とは認めませんでしたが、元夫の相続した2,900万円近くにも上る預金は高額であり、元妻には収入がなかったので、上記相続財産を取得していたため、財産分与対象財産が増加し、あるいはその費消を免れたと推認されるとしました。

この相続預金取得の事実を、財産分与における一切の事情として考慮できるとし、財産分与額を地裁の判断よりも441万円低い5,000万円に変更しました。

特有財産に関する疑問に回答!

こちらではよくある質問について回答しましょう。

別居時に夫婦それぞれが得た遺産は特例財産?

別居後は、夫婦の協力関係が失われていると判断されます。別居開始時にあった財産が財産分与の対象なので、別居後に相続して得た財産は特例財産であり、財産分与をする必要はありません。

相続した現金を夫婦共有の口座に入れたら無条件で共有財産になる?

そうとは言い切れません。

自分が相続した現金を貯蓄用の共有口座に入れた場合、入金した分が特有財産となり財産分与の対象外と判断できるはずです。

つまり、たとえ夫婦の共有口座に入れたとしても、相続分の現金として判別できるならば特有財産として認められます。

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