税制改正でタワマン節税はどう変わる?改正の背景や相続税評価額の算定方法!

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遺産相続

タワマン節税とは?タワーマンションが相続税の節税となる理由

タワーマンション節税(タワマン節税)とは、タワーマンションの特性を活かし、相続税評価額を実際の時価より大幅に軽減する手法です。

タワーマンションの特性は次の通りです。

  • 土地:1住戸あたりの敷地面積が狭いので、一戸建て住宅より相続税評価額が低い
  • 建物:高層階の方が市場価格は高くなるので、相続税評価額との乖離が大きい

このような特性から富裕層の有効な相続税対策として、タワマン節税が利用されてきました。

2018年から新築物件に関してのみ次の評価額の計算方法で、上の階ほど評価額が高くなるように調整が図られます。

「1階の評価額+0.25%×(階数-1)」

しかし、市場価格との乖離は相変わらず大きく、タワマン節税は依然として有力な節税対策となっていました。

タワマン節税の税制改正となった背景とは?

2024年1月から市場価格との乖離を縮小し、適正な税収が確保されるように新しい評価方法が導入されます。こちらでは、新しい評価方法が導入された経緯を説明しましょう。

不動産購入は有効な節税対策

相続人の相続税負担が重くなると想定された場合、金融資産(例:預金等)で相続財産を残すのではなく、不動産資産(土地・建物)で残した方が有効な節税となります。

不動産の相続税評価額は基本的に時価の7〜8割に抑えられて計算されるので、例えば時価1億円の不動産ならば相続税評価額は7,000〜8,000万円です。評価額が低い分、相続税の負担は軽減されます。

更に、タワーマンションは1つの土地に戸数が多い物件であり、土地の評価額の計算に用いる所有面積は、1戸あたりの土地持分が小さくなるので、土地の評価額は低く算定されるのです。

また、タワーマンションは高層階ほど日照・眺望が良く人気も高いので、市場価値が相対的に高い傾向にあります。

タワマンの住戸は、戸建て住宅よりも相続税評価額が低く税負担は軽いものの、市場価値は極めて高い物件が非常に多く存在し、タワーマンションを所有しない方々との間で不公平な状態が継続していました。

新しい評価方法導入は社会的公平性を向上のため

以前からタワーマンションの実際の市場価格と相続税評価額との乖離を利用した節税目的や租税回避を狙った取引により、公平な税収確保に問題が生じていました。

このような背景から不動産の評価方法に改正が加えられ「公平な租税評価の確保」と「租税回避の抑制」が図られます。

本改正により、富裕層の過大な税軽減を抑え、社会的公平性を向上させる効果が期待できます。

税制改正によりどう変わる?変更点を解説!

2024年1月から、国税庁が新通達で定めたマンションの相続税評価額の評価方法で計算しなければいけません。

新たな評価方法は2024年1月以降、相続・贈与で取得したタワマンをはじめマンション全体に対して適用されます。そのため、既に購入しているマンションも対象になるので注意しましょう。

新たな計算方法は次の通りです。

「現行評価額 × 評価乖離率 × 評価水準(最低評価水準0.6)」

こちらでは2つの変更点を解説します。

乖離率

計算式に新しく導入された指標です。タワマン等の不動産の市場価格、そして相続税評価額の乖離の幅を示します。

乖離率の評価には4つの要素を考慮します。

  • 【1】マンションの築年数:築年数が新しければ乖離率は低く、古い場合は高い。
  • 【2】総階数指数:階数の影響を補正する要素で「総階数÷33」で計算、計算した値が1.0を超える場合1.0とする。
  • 【3】部屋の所在階:高層階の部屋は評価が高く、所在階が高ければ乖離率は低い
  • 【4】部屋の敷地持分狭小度:一室の利用権の面積を専有面積で割る、敷地持分狭小度が高ければ乖離率は高い

新たな計算ルールに当てはめると、乖離率は次のように計算します。

【1.築年数×(-0.033)】+【2.総階数指数(総階数÷33)×0.239】+【3.対象となる部屋の所在階×0.018】+【4.住戸の敷地持分狭小度×(-1.195)】+3.220=乖離率

評価水準

市場価格に対する公平な評価の確保のため導入された指標です。評価水準の計算には、算出した乖離率を利用します。

まず「1÷乖離率」で計算し、その結果から次の3パターンいずれかで算定します。

評価水準相続税評価額相続税評価額の計算方法
評価水準>1市場価格より高い現行評価額×乖離率
0.6≦評価水準≦1市場価値とあまり差がない現行評価額=乖離率
評価水準<0.6市場価格より大幅に低い現行評価額×乖離率×0.6

税制改正後のタワーマンションの相続税評価額の算定方法

こちらでは具体的な事例をあげ、新たな評価方法で計算してみましょう。

(例)50階建てマンションを相続した

  • 現行の相続税評価額:9,000万円
  • 築年数:6年
  • 総階数:50階
  • 対象となる部屋の所在階:40階
  • 敷地面積:6,000㎡
  • 一室の敷地権割合:1/100
  • 一室の専有面積:60㎡

STEP1:乖離率を算定

各要素を確認し、乖離率を計算します。

  • 総階数指数:50÷33=1.52→1.0を超えるので1.0
  • 敷地持分狭小度(一室の利用権の面積÷専有面積):(6,000㎡×1/100)÷60㎡=1

乖離率の計算式に当てはめると、

(築年数6年×-0.033)+(総階数指数1×0.239)+(対象となる部屋の所在階40階×0.018)+(住戸の敷地持分狭小度1×-1.195)+3.220=乖離率2.786

STEP2:評価水準を出し、相続税評価額算定

評価水準の計算方法は1÷乖離率なので

1÷乖離率2.786=評価水準0.359

評価水準が0.6未満となっており、相続税評価額は市場価格より大幅に低い状態です。

よって相続税評価額の計算方法は「現行評価額×乖離率×0.6」となります。

現行の相続税評価額9,000万円×乖離率2.786×0.6=1億5,044万円

新たな評価方法で計算した相続税評価額は1億5,044万円です。

税制改正後の注意点とは?タワマン節税の影響は?

こちらでは、タワマン節税が改正される際の注意点、そして新たな評価方法で不明点がある場合、誰に相談すれば良いのかも説明します。

改正の際の注意点

新たな評価方法による算定で、実際の市場価格と相続税評価額との乖離は大幅に修正されるはずです。そのため、タワーマンションを利用した節税効果は薄れるものと解されます。

また、新たな評価方法は2024年1月以降、相続・贈与で取得したタワマンをはじめマンション全体に適用されます。2024年1月以降に購入したマンションは対象ではない点に注意しましょう。

ご相談は専門に

マンションの相続税評価額に関して新たなルールが設定され、いろいろな不明点や疑問点があるなら相続税に詳しい「税理士」へ相談しましょう。

税のプロである税理士なら、新たな評価方法をわかりやすくアドバイスしてくれます。また、他の節税方法を指南してもらえる可能性もあります。

また、マンションの相続をはじめ相続全般に疑問や不明な点があれば、相続の身近な専門家である「相続診断士」へ相談するのも良いでしょう。相続診断士は様々な相続の質問・疑問に応えてくれる有資格者です。

不動産に関する相続税への対応を相続診断士とよく話し合えば、事前に注意すべき点等を把握できます。

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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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