土地の贈与税はいくら?税率や計算方法を解説!
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土地の贈与税がかかる場合とかからない場合をチェック!
贈与税とは、個人から財産を取得した際に課される税金です。
では、実際に土地を贈与した場合に贈与税がかかる場合とかからない場合を確認します。
土地の贈与税がかかる場合
1.時価よりも著しく低い価額で購入した場合
2.土地の購入後に単独名義から共有名義に変更した場合
3.土地の購入後に無償で共有名義から単独名義に変更した場合
上記のように対価を支払わない又は著しく低い価額で財産を譲り受ける場合には、その譲り受けた者は利益を享受することになるため、その利益相当額につき贈与税がかかります。(みなし贈与)
土地の贈与税がかからない場合
1.法人からの贈与により取得した場合
2.公益事業を行う者がその事業の用に供するために取得した場合
3.被相続人からの贈与財産
4.110万円以下の土地を取得した場合(基礎控除内)
なお、贈与税がかからない場合においても、所得税や相続税が課税される場合があります。
贈与税の税制制度とは?~暦年課税と相続時精算課税~
贈与税の課税制度には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、一定の要件を満たす場合には「相続時精算課税」を選択することができます。
暦年課税
暦年課税とは原則的な課税方法であり、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除の110万円を差し引いた残額に対して課税されます。
つまり、贈与を受けた財産の合計額が110万円以下である場合には贈与税はかかりません。
なお、受贈者・贈与者の年齢は問いません。
相続時精算課税
相続時精算課税とは一定の要件を満たした者が「相続時精算課税選択届出書」を提出した場合に選択できる課税方法であり、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から特別控除額の2,500万円を控除した残額に対して課税されます。贈与を受けた財産の合計額が2,500万円以下の場合は贈与税はかかりません。
ただし、前年以前にこの特別控除を受けた場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除額となります。
例えば、令和3年に1,000万円の特別控除を受けた場合、令和4年で受けられる特別控除額は1,500万円までとなります。
なお、適用対象者の条件は以下のとおりです。
・受贈者…贈与者の直系卑属及び孫のうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者
・贈与者…贈与をした年の1月1日において60歳以上である者
暦年課税による贈与税計算方法を解説!
前述のとおり、暦年課税では1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除である110万円を差し引いた残額に一定の税率を乗じて税額を計算します。
なお、贈与税の税率は「特例贈与財産」と「一般贈与財産」によって区分されています。
・特例贈与財産
この贈与税率速算表は、18歳以上の者が親などの直系尊属から贈与を受けた場合に使用します。
例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などが特例贈与財産に該当します。(夫の父からの贈与等は該当しません。)
基礎控除後の財産の価額 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | – | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
例えば、父から18歳以上の子が1,000万円の土地の贈与を受けた場合
→ 基礎控除後の課税価格 1,000万円 – 110万円(基礎控除)= 890万円
贈与税額の計算 890万円 × 30%(税率)- 90万円(控除額)= 177万円(税額)
一般贈与財産
この贈与税率速算表は「特例贈与財産」に該当しない場合に使用します。
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年(18歳未満)の場合などが一般贈与財産に該当します。
基礎控除後の財産の価額 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | – | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
例えば、夫から1,000万円の土地の贈与を受けた場合
→基礎控除後の課税価格 1,000万円 – 110万円(基礎控除)= 890万円
贈与税額の計算 890万円 × 40%(税率)- 125万円(控除額)= 231万円(税額)
相続時精算課税による贈与税の計算方法や注意点とは!
前述のとおり、相続時精算課税は60歳以上の父母や祖父母が18歳以上の子や孫に対して、財産を贈与した場合に選択することができます。
贈与税額の計算方法
暦年課税に比べて単純で、贈与財産の合計額から特別控除額2,500万円を控除した残額に一律20%の税率を乗じて税額を計算します。
ただし、前年以前にこの特別控除を受けた場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除額となります。
例えば、令和3年と令和4年にそれぞれ、60歳以上の父から18歳以上の子が2,000万円の土地の贈与を受けた場合
→ 2,000万円 – 2,000万円(特別控除額)= 0円(税額)令和3年分
特別控除額=2,500万円 – 2,000万円 =500万円
2,000万円 – 500万円(特別控除額)= 1,500万円
1,500万円 × 20% = 300万円(税額)令和4年分
注意点
相続時精算課税を選択した際に注意すべきポイントがいくつかあります。
1.相続時精算課税を選択すると、その選択に係る贈与者からの贈与については以後すべて相続時精算課税が適用される(途中で暦年課税に変更できない)
2.贈与税額を計算する際に基礎控除を受けることができないので、贈与財産が110万円以下であっても贈与税の申告の必要がある
3.贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に「相続時精算課税選択届出書」及び贈与税の申告書を提出する必要がある
中でも気を付けるべきは、110万円以下であっても贈与税の申告が必要になるというポイントです。暦年課税であれば年間で110万円以下の贈与ならば贈与税がかからず申告も不要ですが、相続時精算課税では基礎控除の適用がありません。
暦年課税と相続時精算課税はどちらを選択するのが良い?
暦年課税と相続時精算課税にはそれぞれのメリットがあり、どちらを選択するべきなのか判断に迷うことがあるかと思います。
そこで以下2つのパターンを紹介します。
・パターン1
父の財産が4,000万円で子供1人に5年間500万円ずつ贈与していて、贈与から6年目に父が死亡した場合
(法定相続人は1人)
・パターン2
父の財産が8,000万円で子供1人に5年間500万円ずつ贈与していて、贈与から6年目に父が死亡した場合
(法定相続人は1人)
上記例のとおり「相続財産がどのくらいあるのか」「何年に渡って生前贈与を行うのか」などによってどちらを選択すべきなのか判断します。
財産が多ければ多いほど、相続税額が大きくなるので暦年課税による生前贈与を活用して相続財産を減らしておくことで節税に繋がるでしょう。
相続税は、相続財産から基礎控除額(上記例の場合3,600万円)を差し引いた残額に応じて税率を乗じて計算します。相続から3年以内に贈与した財産は相続財産に加算されます。
また、上記例で5年間ではなく更に長期にわたって贈与した場合には暦年課税による基礎控除110万円をさらに有効活用できるため有利な選択となります。
例えば、パターン2において、25年間100万円ずつ贈与していたとしたら、暦年課税を選択している場合、贈与税は0円となります。そのため、相続時精算課税に比べて大幅に節税することができます。(節税額=680万円-334.5万円=345.5万円)
つまり一般的には、計画的に長期にわたって贈与を受ける場合には暦年課税を選択した方が有利になり、一度に高額の贈与を受ける場合には相続時精算課税を選択した方が有利になるといえます。
暦年課税のデメリットとしては、低税率で財産を移動させることに時間がかかるという点です。
例えば、1,000万円の現金を非課税で贈与するには、10年掛かります。
一方、相続時精算課税のデメリットとしては、一度適用してしまうと暦年課税に戻すことはできない上に、基礎控除がないため110万円以下の贈与であっても申告が必要という点です。
また、相続時精算課税によって土地を贈与した場合には、小規模宅地等の特例を適用できなくなってしまいます。
土地の贈与税の負担を減らしたい!節税対策をご紹介
土地の贈与税の負担を減らすことができる制度についていくつか紹介します。
配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合には基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという特例です。
なお、贈与を受けた年の翌年3月15日までに当該不動産に贈与を受けた者が住んでおり、その後も引き続き住む見込みがあることが条件です。
また、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
使用貸借による土地の借受け
土地の使用貸借とは、無償で土地を借受けることを指し、基本的に親子間で行われます。
親子間であれば無償の貸借であったとしてもみなし贈与として認められないため、結果的に贈与税が課されません。
土地の評価額を下げる
贈与税の計算の基となる土地の価額を下げることで、相続税を安く抑えるという方法もあります。
土地の評価額はその土地の用途によって決定されるため、自分で自由に使用している土地(自用地)よりも第三者に貸し付けている土地(貸宅地)の方が安く評価されます。
このように課税制度の選択以外にも贈与税を節税できる方法がありますので、各々に合った最善の方法を検討することが重要です。
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