公正証書遺言は撤回(取消・修正)できる?3つの方法や費用も解説!

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遺産相続

遺言の撤回は可能?遺言書の種類ごとに解説!

遺言は、どのような形式であっても撤回できます。遺言書の目的は、遺言者の死後、遺産をどのように分けるかについて意思表示するためのもので、自由に撤回や変更ができるべきものだからです。

ここでは、遺言書の種類別に撤回方法を解説します。

自筆証書遺言の撤回

撤回方法は、遺言書をどのように保管しているかによって異なります。

遺言者本人が所持している場合は、その遺言書を完全に破棄することで撤回と同じ効果が生じます。そのほか、「令和◯年◯月◯日付自筆証書遺言を撤回する」といった文言を明記した書面を作成し、署名・押印することでも撤回は可能です。

一方、法務局にて保管されている場合は、遺言者本人が法務局に撤回書を提出します。

ただしこの場合、法務局に保管されているものは撤回できても、遺言書自体が撤回されるわけではありません。遺言書自体を撤回するには、自ら所持しているものを破棄するか、新規で作成する必要があります。

公正証書遺言の撤回

公正証書遺言の撤回方法はいくつかあります。それは、公証役場に対する撤回の申述と、新規で遺言書を作成する方法などです。遺言者が所持している遺言書の正本や謄本を破棄するだけでは足りません。

なぜなら、公証役場に原本があるためです。公証役場に原本が残っている以上、撤回はできません。

ただし、受遺者が遺言者より先に亡くなった場合や、遺贈の対象が滅失した場合など、遺言書に記載されている内容が実現できなくなったときは、とくに手続きをせずとも撤回と同等の効果があります。

秘密証書遺言の撤回

秘密証書遺言の場合も、完全に破棄すれば撤回とみなされます。一般的には遺言者本人が保管することが多いですが、それ以外の者が遺言書を保管している場合でその返還の求めに応じないときは、撤回する旨を記載した遺言書を新規で作成しなければなりません。

公正証書遺言を撤回(取消)する方法とは?それぞれにかかる費用も解説

公正証書遺言の撤回方法はいくつかあります。
ここでは3つ紹介します。

撤回方法①:公証役場で撤回

公証役場に対して行う、撤回の申述という方法があります。

この場合は、証人2名の前で、公証人に対して遺言書を撤回したい旨を申述します。そして公正証書に署名捺印する流れです。ちなみに、手数料は11,000円かかります。また、手続きには発行から3か月以内の印鑑証明書と実印が必要です。

注意しなければならないのは、撤回後、遺言書がない状態になることです。撤回の申述はただ遺言書を撤回するだけの手続きであるため、改めて遺言書を作りたいというのであれば、はじめから新規で作成することをおすすめします。

撤回方法②:新たに遺言書を作成

遺言書を新規で作成するのも遺言を撤回する一つの方法です。

「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と民法第1023条に定められているとおり、新規で遺言書を作成すれば、以前のものを撤回できます。

新規で作成する際は、以前のものを撤回することについての文言を遺言内容に盛り込みます。そうすることで古いものが撤回され、新しいものが効力を持ちます。以前の正本と謄本は、撤回後に破棄したほうがよいでしょう。

また、作成の仕方によっては、新規で作成した遺言書が無効になることもあるため注意が必要です。たとえば、撤回する遺言書が公正証書遺言で、新規で作成するのが自筆証書遺言である場合、自筆証書遺言は自分で作成しなければならない分ミスをする可能性が高く、ミスによって遺言書が無効になってしまうことがあります。

そのほか、法務局に預けていなければ紛失の危険性も考えられます。このようなリスクを避けるためには、新規で作成する遺言書を公正証書遺言にすることがベターでしょう。

ただし、公正証書遺言の作成は、たとえ2回目以降でも1回目と同じ手数料が発生します。手数料額は財産の価額によって異なり、100万円以下であれば5,000円、10億を超える場合は20万円以上かかります。

撤回方法③:遺言内容に抵触する

新規で作成した遺言書が以前の遺言内容に抵触する場合も、撤回したとみなされます。

このことは民法第1023条第2項にて「前項の規定は、遺言が遺言者の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する」と定められており、該当すれば他の方法によらずに撤回が可能です。

なお、前項の規定とは、後から作成した遺言書が以前の遺言内容に抵触する場合に、後から作成した遺言書をもって撤回したとみなすとした規定です。

たとえば、遺言書に長男に車を相続させる旨の記載がされているが、その後に車を廃車にしたり売却したりするとその遺言内容は実現不可能となり、車を長男に相続させる旨の遺言書は撤回したとみなされます。

気をつける点としては、遺言内容に抵触している行為かどうかが自分では判断しづらい可能性があることです。抵触していることに気づかず、知らないうちに撤回してしまっていたというケースも珍しくありません。

ただ、この方法であれば、費用をかけずに撤回が可能です。

遺言書を破棄したら撤回になる?

遺言書を破棄することによって撤回になるかどうかは、遺言書の種類によっても異なります。
遺言書の種類別に解説します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言の場合は、自ら所持する遺言書を破棄すればそれで済みます。しかし、法務局で保管している場合は、所持しているものを破棄しても法務局に保管しているものが存在しているため、撤回したことになりません。撤回するには、遺言者本人が法務局に撤回書を提出する必要があります。

公正証書遺言

公正証書遺言の場合は、所持している正本や謄本をただ破棄しただけでは撤回したことにはなりません。公証役場に原本が保管されている以上、所持しているものを破棄しても意味がないためです。また、原本は公証役場に依頼しても破棄してもらえません。

撤回するには、撤回の申述や新たに遺言書を作成するなど、他の方法で行う必要があります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言の場合は、完全に破棄してしまえば撤回したとみなされます。シュレッダーにかけたり燃やしたりして、原型が残らないよう処分しましょう。

公正証書遺言の撤回文の書き方や撤回時の流れを解説!

公正証書遺言を撤回する手段の一つに、遺言書を新規で作成する方法があります。この場合、新規で作成する遺言書の本文の中で、以前のものを撤回することを宣言します。

全部撤回する場合
・遺言者は、令和◯年◯月◯日付の公正証書遺言をすべて撤回する
・遺言者は、令和◯年◯月◯日法務局所属公証人△△作成の令和◯年◯号の公正証書遺言をすべて撤回する。

一部撤回する場合
遺言者は、令和◯年◯月◯日法務局所属公証人△△作成の令和◯年◯号の公正証書遺言の中の、第◯条の「遺言者は、別紙に記載の土地◯◯をAに相続させる」とする部分を撤回し、「遺言者は、別紙に記載の土地◯◯をBに相続させる」と改める。
その余の部分は、すべて上記公正証書遺言に記載のとおりとする。

撤回文には、遺言書の作成日や種類、撤回する範囲など、最低限記載しなければならない事項があります。上記の文例を参考にして作成するとよいでしょう。また、流れとしては以下のとおりです。

  1. 新たに遺言書を作成し、上記のような文言を明記する
  2. その中に新しい遺言内容を記載する
  3. 手元にある前の遺言書を破棄する

新規で作成した遺言書に撤回したい箇所や範囲を記載することで、その部分が無効になります。反対に、有効になるのは新たに記載した遺言内容です。

なお、遺言書の形式は、撤回の際に別の形式に変えられます。たとえば、当初自筆証書遺言で作成したものを、公正証書遺言で撤回することも可能です。

公正証書遺言の撤回前後に注意すること

注意したいのは、撤回の申述や遺言内容の抵触によって遺言書を撤回した場合、遺言書のない状態に陥る点です。

新たな遺言書を検討している場合は、新たなものを作成する必要があるでしょう。しかし、撤回の申述をした後に新規で遺言書を作成するとなると二度手間になり、費用もその分多くかかってしまいます。

そのため、撤回の申述は行わず、はじめから遺言書を作り直したほうが手間を減らせるうえ無駄な費用もかかりません。

また、これは他の形式の遺言書にも共通することですが、一度撤回をすると、撤回する前の状態に戻すことはできません。

そのため、撤回は慎重に行う必要があります。万が一、撤回したあとでその遺言書の効力を復活させたい場合は、さらに新しく以前と同じ内容の遺言書を作成するよりほかありません。

その他公正証書遺言書を撤回したい場合は、手元にある正本を破棄しても撤回にはならないため、公証役場にて何らかの手続きが必要になることも覚えておきましょう。

遺言書撤回に関する相談先はこちら

公正証書遺言を撤回する方法や費用について解説しました。遺言書は、自分の死後、大切な人に意思を伝えられる数少ない手段です。作成した後で気持ちや状況に変化が生じれば、撤回して新たに作り直したいと思うこともあるでしょう。

遺言書に関する問題や悩みごとは、相続診断士に相談することをおすすめします。遺言書作成についてサポートしてくれるほか、必要があればほかの専門家への橋渡しもしてくれる心強い味方です。自分1人で悩むのではなく、専門家を頼ることもぜひ検討してみてください。

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