相続人以外でも寄与分は主張できる?「特別寄与料」について徹底解説!
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相続人以外でも寄与分は主張できる?
寄与分は被相続人の財産維持に貢献した人がいた場合、その貢献度に応じ相続財産を増額するという制度です。貢献した人には被相続人の財産管理や事業のサポートをした人の他、被相続人の療養看護を行った人も含まれます。
しかし、この寄与分を主張できるのは相続人のみであり、相続人以外の方々には認められない制度です。
そのため、実際に被相続人の相続人ではない親族の方々(被相続人に子供がいた場合の兄弟姉妹等)が、無償で労務を提供するケースに対応できないデメリットがありました。
相続人以外でも受け取れる「特別寄与料」とは?
無償で被相続人へ貢献した相続人以外の親族の不公平を是正するため、2018年の民法改正で新たに「特別寄与料」の請求権が創設されました(民法第1050条)。
特別寄与料は、被相続人の財産管理をした、財産を増加させた、療養看護をした等に寄与した相続人以外の親族が、遺産分割の際に相続人へ主張できる権利です。
なお、特別寄与料の金額の決定は、まず特別寄与料を主張する人と相続人との話し合いで決めることになります。
特別寄与料を請求するための条件!請求できる人は相続人以外の親族のみ!
特別寄与料が請求できるのは、次の3つの条件を満たしている必要があります。
相続人以外の親族であること
特別寄与料を請求できるのは、相続人以外の親族に限定されています。被相続人の親しい友人・知人には認められません。
相続人以外の親族とは6親等内の血族、3親等内の姻族を指します。
例えば、被相続人の配偶者・子供が相続人となる場合は、直系卑属(孫やひ孫)、直系尊属(被相続人の父・母等)、被相続の兄弟姉妹が該当します。
なお、内縁のパートナーは被相続人との婚姻届を提出しておらず、親族と認められないので、特別寄与料の請求はできません。
無償で療養看護やその他の労務提供をした
相続人以外の親族が被相続人のために、無償で被相続人の財産を増加させたり、療養看護をしたり等、労務の提供を必要とします。
実際に労務の提供をしなければ、たとえ被相続人のために財産給付(例:被相続人の事業に出資した等)を行っても、特別寄与料の条件は満たしません。
被相続人の財産の維持または増加につながった
相続人以外の親族の労務提供により、被相続人の財産の維持や増加に寄与している必要があります。
療養看護が財産の維持または増加につながったと認められるのは、扶養義務の範囲を超えた労務提供で、被相続人が自らの看護・介護費用を支出せずに済んだ場合です。
例えば療養看護に携わった親族が、寝たきりの被相続人のため日常的に食事のサポートや摘便、素人には難しい痰の吸引も行っていた、というケースがあげられます。
相続人以外に財産を残したい!残す方法はある?
被相続人は、自分のためにいろいろと貢献してくれた相続人以外の親族のために、次のような方法で財産の贈与が可能です。
生前贈与を行う
被相続人が生前に貢献してくれた相続人以外の親族へ、金銭等を贈与する方法です。
毎年110万円以内に抑えて金品を贈れば、受贈者(贈与を受ける人)に原則として贈与税はかかりません(暦年贈与)。
なお、生前贈与は誰に対しても行えるので、いろいろと貢献してくれたが特別寄与料に該当しない、友人・知人・内縁のパートナーへも贈与が可能です。
遺贈を行う
遺言で法定相続人以外の人にも財産を譲る方法です。自分のために尽くしてくれたが相続権のない親族であっても、遺言書でその人に無償譲渡する旨を明記すれば、財産の譲渡が可能です。
もちろん、親族以外の友人・知人・内縁のパートナーへの遺贈も認められます。本制度を利用すれば、自分が亡くなった後に貢献してくれた方々へお礼ができるはずです。
特別寄与料の計算方法・相場を解説!上限額はある?
特別寄与料はいくらでも請求して良いわけではなく、被相続人が残した財産から、まず受贈者が遺贈を受け、その残った金額が上限額となります(民法第1050条第4項)。
この上限額を超えなければ、特別寄与料を請求したい相続人以外の親族は相続人と話し合い、自由に特別寄与料の金額を決めても構いません。
ただし、一般的には次のような方法で計算しています。
被相続人の療養看護に寄与した(療養看護型)
療養看護型の場合は「介護日数×介護報酬相当額×裁量割合」で計算するのが一般的です。
介護報酬相当額は概ね1日5,000円〜8,000円程度といわれており、裁量割合は0.5〜0.9を乗じますが、0.7を採用するケースが多いです。
具体例をあげて計算してみましょう。
- 介護日数:200日
- 介護報酬相当額:1日6,000円
- 裁量割合:0.7
200日×6,000円×0.7=840,000円
特別寄与料は84万円となります。
被相続人の事業に寄与した(家業従事型)
家業従事型の場合は「特別寄与者が通常得られたであろう給与額×(1-生活費控除割合)×寄与期間」で計算するのが一般的です。
特別寄与者が通常得られたであろう給与額は、基本的に国の統計資料、賃金センサスの平均賃金等を参考にします。
また、生活費控除割合は、生前に被相続人から生活費相当額を受け取っていた割合です。
具体例をあげて計算してみましょう。
- 特別寄与者が通常得られたであろう給与額:25万円(月収)×12ヶ月=300万円
- 生活費控除割合:0.2
- 寄与期間:2年
300万円×(1-0.2)×2年=4,800,000円
特別寄与料は480万円となります。
特別寄与料を請求する方法をわかりやすく解説!
特別寄与料は相続人に請求しますが、まずは話し合いで決着を図ります。特別寄与料の金額が話し合いでまとまらない場合、家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」の申し立てが可能です。
相手方の住所地の家庭裁判所または当事者の合意で決めた家庭裁判所で調停を行います。
提出書類は基本的に次の通りです。
- 申立書:申立書1通・その写しを相手方の人数分用意、家庭裁判所の窓口等で取得
- 申立人・相手方の戸籍謄本:各本籍地の市区町村役場で取得(1通450円)
- 被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本:本籍地の市区町村役場で取得(450円~750円)
- 収入印紙:申立人1人につき1,200円分
- 連絡用の郵便切手
家庭裁判所では審理のために必要な場合、追加書類の提出を要求する場合があります。
なお、特別寄与者が相続開始のあった事実・相続人を知った時から6か月が経過した場合、または相続開始の時から1年を経過した場合、申立てを行えなくなるので注意しましょう。
特別寄与料を請求する際に注意すべき点!
特別寄与料を請求する前には、相続税額の2割加算の適用対象となる点に注意しましょう。
なぜなら、特別寄与料に相当する金額を、被相続人から遺贈により取得したとみなされるからです。
したがって、特別寄与者も相続税の対象となり、法定相続人以外の人物なので、相続税額の2割加算が適用されてしまいます。
ただし、遺産総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に収まるなら、特別寄与者も相続税が課される心配はありません。
特別寄与料の請求が拒否された!対処法や救済措置法を解説!
2018年の民法改正で新たに創設された制度なので、まだ日が浅く、相続人に周知されていない場合もあるでしょう。
特別寄与料のトラブルの解決方法や対策、相談は誰にすれば良いのかを解説します。
特別寄与料のトラブルの解決方法や対策
特別寄与料の話し合いに相続人が応じても「特別寄与料の金額に根拠がない。」という理由で請求を拒否される可能性もあります。
このようなトラブルを事前に想定し、特別の寄与(例:事業のサポート、療養看護等)の内容、それに関してかかった費用等をメモに記録しておきましょう。
また、特別の寄与に関連する領収書をとっておき、証拠として保管する方法も有効です。
証拠を提示しても特別寄与料の金額に相続人が納得しない場合は、家庭裁判所に関与してもらい、特別の寄与に関する処分調停で解決を図ります。
特別寄与料で悩んだら専門家に相談しよう
特別寄与料の計算方法がいまいちわからない、特別寄与料の話し合いが相続人とうまくいかない、という場合は法律の専門家である「弁護士」に相談しましょう。
弁護士は特別寄与料に関する的確な助言を行ってくれます。また調停で解決を図る際は、特別寄与者の立場にたって主張・立証をしてくれるはずです。
なお、特別寄与料をはじめ相続全般について相談したいならば「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相談者の悩みへ適切なアドバイスを行ってくれるはずです。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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