相続時に印鑑証明書が必要なケースとは?悪用されるリスクについても解説!

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遺産相続

そもそも印鑑証明書って何?簡単に解説!

印鑑証明書は、市町村役場に登録されている印鑑が「本人が登録した印鑑」=「実印」であるということを証明する書類です。正式には「印鑑登録証明書」と呼ばれます。この印鑑証明書は、特に本人の意思確認が必要となるような重要な取引時や契約時に「実印」の押印とともに使われます。

この印鑑証明書には次のような内容が記載されています。

・印影(実印)
・登録者の氏名・住所・生年月日・性別等

印鑑登録は誰でもできるの?

印鑑証明書を取得するためには、まずは住民登録がある市町村役場での「印鑑登録」が必要です。


「印鑑登録」って何?

印鑑登録とは、個人が社会生活の中で必要となる手続きや法律行為を行うために使用する印鑑を、住民登録がある市町村役場において、あらかじめ登録しておくことです。

「印鑑登録」は誰でもできるの?

印鑑登録の申請は、15歳以上で意思能力がある方ならばすることができます。本人だけではなく代理人からの登録申請もできます。

ただし、代理人からの登録申請の場合は、市町村役場から「印鑑登録をする本人」宛てに照会書の郵送があるため、本人が登録申請をするよりも登録完了までに時間がかかります。

印鑑登録後は「印鑑登録証(印鑑カード)」が交付されます。詳しくは住民登録がある市町村役場のホームページ等でご確認ください。

印鑑証明書を取得したいけど印鑑登録ができない場合はどうする?


相続人が海外に居住している場合、印鑑登録ができないため印鑑証明書を準備することができません。その場合は、印鑑証明書の代わりに在外公館で発行する「サイン証明(署名証明)」を利用します。

一般的には、実印の押印が求められる書類に本人がサインをして、そのサインについて「本人のサインである」ということを、大使館や領事館、現地の公証人から証明をしてもらうという方法です。詳しくは、各国の日本国総領事館や、印鑑証明書の提出先にご確認の上、準備されることをおススメします。

印鑑証明書は市町村役場窓口の他、コンビニでも取得することができます。本人が市町村役場窓口で受け取る場合は次の書類等が必要です。

印鑑証明書には有効期限がある?

印鑑証明書は、相続手続きや不動産登記などの重要な手続きにおいて必要ですが、実は有効期限がありません。つまり、発行された印鑑証明書は、特定の期間内であれば有効とされます。

一般的には、発行日から数ヶ月間や1年間など、使われる場面によって期限が設定されることがあります。例えば、不動産登記の場合は発行日から3ヶ月以内に提出する必要が多いですが、有効期限が設定されていないため、実際の手続きや機関によって異なる場合もあります。

そのため、印鑑証明書の有効期限については、相続サイトや関連する機関の公式ウェブサイトなどで確認することをおすすめします。

また、印鑑証明書は手続きの際に必要な書類ではありますが、時期や手続きの内容によっては、最新の印鑑証明書を提出する必要があることもあります。そのため、手続きをする際には、最新の印鑑証明書を取得しておくことが重要です。

印鑑証明書の取得方法を解説!

・印鑑登録証(印鑑カード)
・本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)
・手数料(1通300円程度)

市町村役場窓口では代理人が取得することもできます。その際に必要な書類は次の通りです。

・委任者の印鑑登録証(印鑑カード)
・代理人の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)
・手数料(1通300円程度)

委任状は必要ありませんが、申請書に委任者の「氏名、生年月日、住所」を正しく記入することが必要です。

コンビニでは店内に設置されているマルチコピー機を利用し、マイナンバーカード(利用者証明用電子証明書搭載のもの)と手数料のみで取得が可能です。

ただし、本人のみの利用に限られ、手続きの際は暗証番号(4桁)を入力する必要があります。

相続手続きに印鑑証明書は必須?印鑑証明が必要な相続時のケースとは?

誰かが亡くなり相続が開始された場合、手続きの際に実印を必要とする場合があります。その際、実印が本物であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。

また印鑑証明書の添付は、相続人本人の意思を証明するという意味もあります。ここでは印鑑証明書が必要な相続時の手続きを解説します。

遺産分割協議書の作成時


印鑑証明書は、遺産分割協議書を作成する際には、必ず必要になります。

亡くなった人(被相続人)の遺言書がない場合は相続人全員で話し合って財産の分け方(遺産分割)を決めます。この話し合いのことを「遺産分割協議」といい、この話し合いで決めた内容を書面にまとめたものを「遺産分割協議書」といいます。

「遺産分割協議書」は、相続のことを定めた法律(民法)で明記された相続分(法定相続分)とは違う割合で遺産分割を行う場合や、遺言書があっても、遺言書に明記されていない財産を分割する場合に作成されます。

「遺産分割協議書」を作成する際は、相続人全員が遺産分割協議書に実印を押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります。

・相続登記(不動産の名義変更)《法務局》
・相続税の申告《税務署》

遺産分割協議書作成時に、相続人に未成年者や認知症の方がいる場合は印鑑証明書は必要なのでしょうか。

未成年者や認知症の方は、判断能力がないとされるため、遺産分割協議に参加をすることができません。その場合は家庭裁判所に「特別代理人」の選任申し立てをして、そこで選任された特別代理人が未成年者や認知症の方の代理人として遺産分割協議に参加することになります。

特別代理人には相続人ではない親族や弁護士等の専門家が選ばれます。そして、特別代理人が遺産分割協議に参加する場合は、未成年者や認知症の方の印鑑証明書ではなく、その特別代理人の印鑑証明書が必要になります。

相続財産の取得時

亡くなった人(被相続人)の財産を相続人が引き継ぐため、金融機関や保険会社等で手続きを行います。 次のいずれのケースでも印鑑証明書を求められる場合があります。なお、印鑑証明書自体には有効期限はありませんが、提出先から「発行から3カ月以内のもの」等の条件を指定されるケースがほとんどです。

(1)預貯金の名義変更・解約《金融機関》

金融機関は口座を保有していた人が死亡した場合、他人の勝手な引き出しを防止する目的で、口座が凍結されます。凍結されると引き出し・送金・口座振替等もできなくなります。

口座凍結を解除してもらうには、名義変更または口座の解約が必要です。遺言書がない場合は、原則相続人全員の印鑑証明書が必要です。

(2)株式(有価証券)の名義変更《証券会社》

相続財産に株式などの有価証券が含まれている際には、故人が保有していた株式を相続人が引き継ぐ場合も、売却する場合も、基本的にはいったん相続人への名義変更が必要です。引き継ぐ相続人が証券口座を持っていなければ口座の開設が必要です。遺言書がない場合は、原則相続人全員の印鑑証明書が必要です。

(3)死亡保険金の請求《保険会社》

亡くなった人(被相続人)が契約者・被保険者となり死亡保険契約等を契約していた場合、死亡保険金受取の際は、保険会社側から印鑑証明書を要求される場合もあります(例:受取人が複数人指定されている場合等)。

印鑑証明書が悪用される可能性はある?実際のトラブル事例をもとに解説!

印鑑証明書だけでは、悪用されることはないでしょう。しかし、相続手続きの際に、実印・印鑑証明書の取扱いは厳重に行うべきです。なぜなら、相続手続きに関する書類(遺産分割協議書等)に実印が押印され、印鑑証明書も添付されていた場合「本人の意思に間違いない」という証拠となるためです。

ここでは、具体的にどのような悪用方法が想定されるのか、実際のトラブルのケースについても解説します。

考えられる悪用方法

実印・印鑑証明書が他の相続人に渡ると、相続人間で話し合いもせず単独で遺産分割協議書を作成したり、借金の連帯保証人にされたり、被相続人の預貯金等を勝手に引き出したりする等、他の相続人を差しおいて自らの私利私欲に悪用する者もいます。

たとえ印鑑証明書だけでも、その印影から実印を偽造される可能性もあります。そのため、実印、印鑑証明書の適切な取扱いが求められます。

実際のトラブル事例

ここでは他の相続人へ実印・印鑑証明書を渡したばかりに、遺産分割協議書を偽造され、相続人同士で紛争となったケースを紹介します。

(例)

・被相続人:父親(遺言書を作成せず死亡)
・相続人は兄Aと弟Bのみ
・相続人A:自己に有利な相続分を得るため、弟Bの実印・印鑑証明書を悪用
・相続人B:兄Aに頼まれ自分の実印・印鑑証明書を兄Aに渡してしまった

[1.概要]

相続人Aから被相続人である父名義の銀行預金を解約したいので、実印・印鑑証明書を急いで渡して欲しいと告げられ、言われるがまま相続人BはAに自分の実印・印鑑証明書を渡した。

しかし、AはBが行うべき署名・押印を第三者にさせ、遺産分割協議書を偽造した。Bは反発したが、Aは自ら家庭裁判所に調停を申立て、自己の正当性を主張し、Bに被相続人の遺産を開示すらしない。

[2.対応]

このケースでは、遺産分割協議書が偽造であるという証明を行うことになります。また、Aが開示してくれない遺産の調査はB自身が行い、遺産の状況を把握する必要があるでしょう。

遺産の調査や調停の交渉をする場合、Bだけでは対応が非常に困難です。相続に詳しい弁護士へ依頼し、交渉等を委任した方が無難です。

相続時の印鑑証明書の安全な取り扱いや悪用リスクを抑えるための方法を解説!

印鑑証明書の悪用を予防するには、次の対応を心がけましょう。

・印鑑登録は必要になるたび登録する
・遺産分割協議書への署名・押印、印鑑証明書の添付は相続人全員が一堂に会してから行う
・印鑑証明書は余分な枚数を持たない

印鑑証明書が必要となる場面はそう多くありません。つまり、手続き等で必要となる度に市町村役場の窓口で登録する方法も検討しましょう。印鑑登録の抹消は窓口で簡単に行えるので、厳重な保管が難しい場合はこの方法も有効です。

また、相続で遺産分割協議を要する場合は、親族といえども印鑑証明書を渡さず、遺産分割協議書作成への署名・押印は相続人全員が一堂に会して行い、その際に印鑑証明書も添付するべきです。

なお、印鑑証明書が必要だからといって、手元に多く持っているのは問題です。その分、他人から盗まれる可能性が高くなるためです。必要な時に、必要な枚数をその都度取得する、という心がけが大切です。

印鑑証明書を紛失してしまったときの対処法

印鑑証明書を紛失してしまうと、悪用されてしまうかもしれません。以下に、印鑑証明書を紛失した際の対処法と手続き方法を説明します。

警察署への届け出

紛失した印鑑証明書は、まず警察署へ届け出ましょう。警察への届け出は、紛失証明書としての役割を果たします。警察署では、紛失した印鑑証明書の内容や使用用途などを詳細に伝える必要があります。

紛失届の提出

警察署で紛失届を提出した後は、管轄役所の窓口に印鑑登録亡失届を提出しましょう。役所では、紛失届に必要な書類や手続きの詳細を教えてくれます。紛失届の提出には、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証やパスポートなど)が必要ですので、必ず持参しましょう。

印鑑登録亡失届は、本人による申請が原則です。やむを得ず代理人の方が申請する場合は、委任状が必要となります。

新しい印鑑登録の手続き

紛失した印鑑証明書は無効となりますので、新しい印鑑登録が必要となります。管轄役所での手続きには、新しく登録する印鑑、新しい印鑑の登録料と本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)が必要です。手続きの際には、印鑑の種類や使用用途を明確に伝える必要があります。

関係機関への連絡

紛失した印鑑証明書を使用する機関にも、紛失の旨を伝えましょう。例えば、銀行や公的機関、会社などにあらかじめ紛失の連絡を行っておくことで、不正利用の防止につながります。

以上が、印鑑証明書を紛失してしまった場合の対処法と手続きです。紛失した際には、まずは冷静に対応し、警察への届け出や役所での手続きを適切に行うことが重要です。もし不明な点があれば、専門の窓口に相談することもおすすめです。

もしも印鑑証明書が悪用されてしまったらどうすればよい?

印鑑証明書が悪用され、遺産分割協議書が偽造された場合、次のような罪に問われる可能性もあります。

・詐欺罪:人を騙して財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする行為
・有印私文書偽造罪:他人の印章や署名の偽造、不正使用等を行い私文書の偽造・変造をする行為

まず印鑑証明書が悪用されたら、速やかに警察署へ被害届を提出しましょう。ただし、印鑑証明書を悪用したのが親族等の場合「親族間で話をつけるようにしてほしい」と、警察は積極的に動いてくれないこともあります。

そのような場合には弁護士等の専門家に、今後どのような対応をとるべきか相談することが大切です。

相続の印鑑証明書に関する相談は、誰にすれば良い?

印鑑証明書をはじめとした相続全般に関する相談は、相続の身近な専門家である「相続診断士」が最適です。相続診断士は印鑑証明書の扱い方や、相続に関する質問・疑問にアドバイスしてくれる専門家です。

その他にも相続診断士は、相続に詳しい法律の専門家への橋渡しも請け負っています。例えば印鑑証明書にかかわるトラブル等があった場合は弁護士を、相続に関する相続人調査・遺産分割協議書の作成が必要なら行政書士を紹介してくれます。

本記事のような内容について、監修者、相続診断士 中島美春宛にご相談をご希望の場合はこちらから個別にご相談いただくことができます。

なかしま美春行政書士事務所:https://egao-support.com/
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本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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この記事を監修したのは…

中島 美春

なかしま美春行政書士事務所 / 特定行政書士 / 相続診断士

中島 美春(なかしま みはる)

2011年2月の開業から現在まで「書類作りで笑顔をサポート」。とあるお客様の相続手続きをきっかけに相続業務に力をいれていくことを決意。笑顔相続道第7期修了後は、九州・福岡に「笑顔相続」を広めるために活動中。生前の相続対策(遺言書作成サポート等)だけではなく、相続後の死後事務サポート等も行っている。

サイトURL:https://egao-support.com/ https://fukuoka-souzoku-yuigon.com/

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