相続や相続登記に委任状は必要?ひな型や書き方・注意点もご紹介!
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相続時に委任状が必要なのはなぜ?相続手続きにおいて委任状が必要なケースとは
相続の手続きは原則として相続人本人で行う必要があります。しかし、他の手続きが忙しい、体調を崩し静養が必要等の理由から、本人が手続きできないケースも想定されます。
そのような時は、他の人に手続きを代わってもらう方法があります。その際、相続人本人以外の人が代わりに行政窓口等で手続きをするには「委任状」を作成し窓口に提出する必要があります。
委任状は本人が、本人以外の人に手続きの代理を頼んだ証明書です。委任状は手続きを本人の親族等に依頼する場合の他、弁護士、司法書士、行政書士のような法律の専門家へ依頼するときも必要です。
相続で委任状が必要なケースは主に次の通りです。
- 被相続人(故人)・相続人の戸籍謄本等の取得
- 遺言書(自筆証書遺言)がある場合の検認
- 被相続人の預貯金口座の名義変更・引き出し
- 相続人の不動産名義変更手続き(不動産登記)
- 相続税の申告 等
一方、相続人が次のような方々なら委任状なしで手続きできます。
- 相続人が未成年の場合→原則として親権者(ただし、未成年の相続人との続柄がわかる戸籍謄本等は必要)
- 相続人が親権者のいない未成年者の場合→原則として未成年後見人(ただし、未成年後見人の記載がある未成年者本人の戸籍謄本は必要)
- 相続人が成年被後見人の場合→原則として成年後見人(ただし、成年後見人の印鑑証明書・成年後見に係る登記事項証明書が必要)
相続登記において委任状が必要になるケースを解説!
相続登記は不動産所有者である被相続人が亡くなったとき、不動産の登記名義を相続人に変更する手続きです。仕事や他の相続手続きで忙しい、体調を崩した等の理由で代理人に任せる場合は委任状を作成します。
相続登記を代理人へ頼む際も基本的に委任状が必要
遺産分割協議で不動産の相続を取り決めたり、遺言で相続人を指定されていたりした場合は、引き継いだ相続人本人が手続きしない限り基本的に委任状を作成しなければいけません。
一方、相続登記の場合も未成年の相続人ならば親権者または未成年後見人、相続人が成年被後見人ならば成年後見人がいれば基本的に委任状は不要です。
また、民法で決められている法定相続分(例:配偶者と子供が相続人ならば、それぞれ1/2ずつ不動産を共有相続)どおりに相続登記を行う場合、他の共有相続人からの委任状は必要ありません。
法定相続分で登記手続きを進める際の注意点
法定相続分に従い登記をする場合、共有相続人の1人は手続きできない他の共有相続人の委任状を提出しなくても、登記申請が可能です。
ただし、委任状を作成しなかった相続人には、登記識別情報通知書(文字列の記載された通知書)が発行されません。
相続後に不動産売却を希望し、買主へ所有権移転登記をする場合、原則として登記識別情報通知書の文字列(12桁のアルファベット・数字)を法務局に届け出る必要があります。
登記識別情報通知書がないと手続き時に手間取る場合もあるので、委任状を作成しておいた方が無難です。
相続登記における委任状のひな型とは?【ダウンロード可】
委任状は委任者(代理を頼む側)が自身で作成できます。ただし、相続登記の際は委任状に次の内容を明記します。
上記のテンプレートを活用することで委任者本人が一から作成する必要はなく、委任状のテンプレートをダウンロードできます。
相続登記における委任状の書き方をチェック!
委任状の記入の仕方を書面上部から順に説明していきます。
代理人の住所・氏名を明記
委任状と一番上に明記し、代理人(受任者)として手続きをする人の住所・氏名を記入します。住所は住民票上の住所を正確に書き写す必要があります。代理人となる人から正確な住所を教えてもらいましょう。
登記申請を委任する旨を明記
また、代理人へ登記申請に関する一切の権利を与えたという一文も書き加えます。
例)私は、上記の者を代理人と定め、次の権限を委任する。
不動産に関する情報を明記
登記はどのような目的で行うのか、登記を変更する原因とその日付、被相続人氏名と相続人の住所・氏名を明記します。不動産表示では不動産の情報を正確に記入します。
「不動産表示」と記載してから土地と上記の例では登記の目的が、「所有権移転」となっています。この部分は、被相続人が不動産を単独で所有しているか、もしくは共同で所有しているかにより書き方が異なります。
単独で所有している場合は、「所有権移転」と記載し、共同で所有している場合は、「〇〇 〇〇(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載します。
相続する不動産が単独で所有しているのか、共同で所有しているのかは、登記事項証明書で確認することができます。
原因の部分では、相続が発生した日付を記載します。
相続人の部分では、被相続人の氏名を()内に記載します。次の行には、相続する人について記載します。相続人が1人で不動産を単独で所有している場合は、相続人の住所、氏名を記載します。
もし、相続人が複数で不動産を単独で所有している場合は、相続人の住所、氏名、そして持分(〇分の〇)を記載します。
不動産を共同で所有している場合には、相続人が1人でも相続人の住所、氏名に加え、持分を記載しましょう。
建物について記載します。土地を相続する場合は、不動産番号、所在、地番、地目、地籍を記載します。建物の場合は、不動産番号、所在、建物番号、種類、構造、床面積を記載します。
土地・建物の表示に関して、法務局で取得した全部事項証明書を参考にしましょう。全部事項証明書は最寄りの法務局で取得できます。(1通600円)
代理人の行える権限を明記
相続登記の申請で想定される諸手続き・対応を認めていることについて明記します。その際に、代理人が復代理人も選任できる一文を盛り込んでおきましょう。
代理人自身も忙しい場合があるので、代理人がさらに代理人(復代理人)を選ぶ権利を付与すれば安心です。代理人に付与する権限が漏れていると、付与していない部分は委任者本人が行わなければいけません。
委任状の作成日・委任者を明記
委任状の作成した日付と委任者の住所・氏名を記入します。氏名の後に押印も必要ですが、実印の他に認印でも構いません。
委任状は1枚に収まるのが理想的です。しかし、相続不動産の数が多いと複数枚になる場合があります。その時は委任状をホチキスで留めた上で、書類を契印でつなぎます。契印に使用する印鑑は、委任者の署名の横に押印した印鑑を使用しましょう。
上記では、不動産の相続登記の委任状の書き方を示しました。相続の手続きにより委任状の記載内容は異なります。
ここでは、相続の手続き別に委任状の記載内容をご紹介します。
戸謄・身分証明書の委任状
戸籍および身分証明書の場合の委任状には、次のことを記入します。
- 必要な証明書の申請および受領の件
- 必要な戸籍の本籍・筆頭者の氏名
- ・籍全部事項証明書(戸籍謄本)、戸籍個人事項証明書、身分証明書等の証明書
- 必要部数
自動車の名義変更の委任状
自動車の名義変更で使用する委任状は、名義変更を店舗に依頼する場合と自身で行う場合で記載内容が異なります。
名義変更を店舗に依頼する場合は、受任者が店舗、委任者が自身となります。自身で行う場合は、受任者が自身、委任者が前所有者となります。
記載内容は、下記の通りです。
- 受任者(手続きをする人)
- 受任者の住所、氏名
- 委任者の署名
相続登記における委任状を作成する際の注意点とは?
委任状を作成する際は注意すべき点があります。対応を間違えれば相続人間でトラブルが発生し、手続きが難航する可能性もあります。作成の際に字を間違えてしまった場合、白紙委任のリスク、委任者本人が作成する重要性を解説します。
字を間違えた場合
字を間違えて記入したとき最初から書き直す必要はありませんが、間違った箇所を二重線で消し、訂正印を押印します。
押印後、間違った箇所の上下どちらかに正しい字を記入します。
捨印を押せば、誤った箇所に押印せずに一括で訂正可能ですが、委任者以外の人も書類の訂正が可能になる点に注意しましょう。そのような場合、代理人(受任者)や他の相続人に文字を訂正・加筆され、内容を勝手に変更される事態も想定されます。捨印は控えた方が無難です。
白紙委任状のリスク
委任者は委任状に署名押印だけをして、記入は代理人(受任者)に一任する方法があります。(白紙委任)
白紙委任状ならば委任者の手間は省けて便利ですが、代理人(受任者)や他の相続人の恣意的な記入を許し、委任者に不利な相続内容へ改変されるリスクがあります。(例:例えば共有持分を大幅に軽減される等)
委任者自らが委任内容を決め、自身で作成する方法が最も安全です。
委任者本人が作成する意味
委任者が高齢で字を書くのに苦労する場合、署名を代筆してもらったり、押印を受任者等に任せたりするのは危険です。
本人の署名・押印ではないと判明した場合や、任せた人が三文判を押印した等という場合、委任状の効力が疑われてしまう可能性があります。
委任状の効力が裁判で争われた場合、相続登記の手続きが無効になるリスクも想定されます。委任状は、面倒でも委任者の意思が正確に表示されなければいけません。他人任せは絶対にやめましょう。
なお、弁護士、司法書士、行政書士を代理人にする場合も委任状は作成します。士業専門家なので委任状の雛形は既に作成してあり、委任者は一から作成する必要がありません。
委任者が代理人に付与したい権限は明記されているか、登記内容は合っているか、自身でよく確認したうえで署名・押印を行いましょう。
委任状の相談は相続診断士へ
相続に関する委任状の作成をはじめ、相続手続きの悩みや不明点がある場合は相続の専門資格者である「相続診断士」に相談してみましょう。
委任状作成のポイントを的確に指摘してくれる他、相談者の相続の悩みに応じた最適なアドバイスが期待できます。また、相続診断士は弁護士、司法書士、行政書士の橋渡し役を担うので、身近に依頼できる専門家がいないなら、紹介してもらうこともできます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア 代表 株式会社ミラシアコンサルティング 代表取締役
元木 翼(もとき つばさ)
◦千葉商科大学 特別講師
◦一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
◦日本弔い委任協会 理事
◦生前対策実務家倶楽部ミラシア 代表
相続、遺言、後見、家族信託などが専門。終活・相続関連の相談実績は累計1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の終活・相続対策サービスを展開している。
【保有資格】
司法書士・行政書士・宅地建物取引士・AFP
【メディア実績】
フジテレビ「とくダネ!」、朝日新聞、産経新聞、東京新聞、毎日新聞、夕刊フジ、週刊朝日、サンデー毎日他多数
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