相続時精算課税制度は孫も適用可能!メリットやデメリット、注意点を解説

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遺産相続

相続時精算課税制度とは?孫も対象?

ここでは相続時精算課税が導入された背景から適用要件について解説していきます。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、相続税対策の1つであり、被相続人の財産を相続へ移転する際に、相続財産の価額が2,500万円までは贈与税が非課税となる制度になります。

贈与税の課税方法は、平成14年までは暦年課税のみが採用されていましたが、平成15年1月1日より、相続時精算課税という制度が導入されました。

相続時精算課税が導入された背景は、近年、高齢化が進み、相続による資産の移転時期が従来よりも大幅に遅れているので、高齢者が保有する資産をいち早く次の世代へ承継させ、経済活性化を図るために導入されました。

相続時精算課税とは、60歳以上の両親または祖父母から18歳以上の子や孫への生前贈与をした場合に利用できる制度になります。

相続時精算課税制度の適用要件

相続時精算課税の適用要件は、まず、贈与者について贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母である必要があります。

次に、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であり、かつ、贈与者の直系卑属である子や孫である法定相続人である必要があります。

なお、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの贈与税の申告期限内に、贈与税の申告書と合わせて相続時精算課税選択届出書および受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類を提出する必要があります。

相続時精算課税制度の対象となる人の条件の変更の概要

相続時精算課税は上述したように、贈与者や受贈者が限定されています。

相続時精算課税の対象者の条件を変更した場合に適用できる制度として、暦年贈与があります。

暦年贈与の対象者は、相続時精算課税とは異なり、贈与者や受贈者が限定されていないです。

また、その他の違いとしては、相続時精算課税の非課税枠が2,500万円なのに対して、暦年贈与の場合の非課税枠は110万円などの違いがあります。

その他の優遇措置として、上記の他に小規模宅地の特例など、さまざまな特例がありますが、これらの特例については説明は割愛します。

孫が相続時精算課税制度を利用した場合の計算方法とは

相続時精算課税について、これまでは贈与を受けた時点で、贈与者の法定相続人であることが要件として挙げられましたが、この要件は平成27年の相続時精算課税制度の改正により、法定相続人に該当しない孫に対しても利用することが可能となりました。

ただし、孫に対して相続税精算課税を利用し、利用後に贈与者が亡くなった場合は、孫に相続税が課税されますが、その際孫への相続税は2割加算されます。

実際に具体例を挙げて、相続時精算課税を利用した場合の計算方法について以下で解説していきます。

まず、前提として祖父が孫へ現金2,000万円を贈与する場合、この祖父には配偶者である祖母、子供であるAとBがおり、Aの子供であるX(祖父から見て孫に該当)がいます。

祖父が亡くなった際の遺産総額は1億円あり、その他に相続時精算課税を利用した贈与額2,000万円がある為、合計1億2,000万円があります。 これらの財産を配偶者である祖母に4,750万円、子供A, Bにそれぞれ2,375万円、孫Xに、贈与した2,000万円を含めて2,500万円相続させることと仮定します。

基礎控除額は、3,000万円に加え、600万円×「法定相続人の人数」の金額になるため、今回の場合には3,000万円+600万円×3人(配偶者である祖母、A、B)=4,800万円となります。

よって課税遺産総額は、1億2,000万円-4,800万円=7,200万円となります。

次に、法定相続人ごとの法定相続分を計算します。

法定相続人は、配偶者である祖母、子であるA、Bの3人になり、それぞれの法定相続分は下記の通りとなります。

祖母が7,200万円×1/2=3,600万円、A及びBがそれぞれ7,200万円×1/4=1,800万円ずつ取得することになります。

次に各人の相続税額は、相続税速算表より下記の通りとなります。

祖母は「3,600万円×税率20%-控除額200万円=520万円」であり、A及びBはそれぞれ「1,800万円×税率15%-控除額50万円=220万円」となります。

よって相続税の合計額は「520万円+220万円+220万円=960万円」となります。

実際に各人が納付すべき相続税額は、相続税の総額に各人の実際に取得した財産の割合に応じて計算しますので、各人の実際に納める相続税は下記のようになります。

祖母は「960万円×(取得額4,750万円/総額1億2,000万円)=380万円」です。

A及びBは、

「960万円×(取得額2,375万円/総額1億2,000万円)=190万円」です。

そして相続税の計算で考慮する必要がある孫のXは「960万円×(取得額2,500万円/総額1億2,000万円)=200万円」となります。

ただし、法定相続人には本来該当しない孫である場合は、上記により計算した税額に2割加算をするため「200万円×1.2=240万円」が孫が納める相続税額となります。

相続時精算課税制度のメリット・デメリットとは?注意点も解説!

相続時精算課税を孫へ利用した場合のメリット・デメリットについて解説します。

まず、メリットとしては以下が挙げられます。

メリット①贈与の際にかかる贈与税額を0円または低くすることが可能

本来であれば、贈与した際には贈与税がかかります。

しかし、相続時精算課税を利用することによって0円もしくは、贈与税額を低く抑えることが可能になります。

メリット② 贈与財産が相続税の計算時に、贈与した際の評価価額で計算することが可能

相続時精算課税を利用して不動産や有価証券などを生前贈与する場合、今後発生する賃料や配当金などにより相続財産の増加を抑えることができるため、結果的に相続税の節税につながります。

また、本来であれば相続時の評価額で税額を算定しますが、相続時精算課税制度を利用すると、贈与財産は贈与時の評価額で税額が計算されることになります。

デメリットとしては以下の内容が挙げられます。

デメリット① 相続時精算課税を選択すると、暦年贈与による非課税制度が利用できない

一度、相続時精算課税を利用すると暦年贈与による非課税制度が利用できません。

贈与を長期間にかけて行った場合には暦年贈与による非課税制度を利用した方が税額を低く抑えることが可能になる場合もあるため、事前にシミュレーションをしてどちらが有利になるか計算すべきです。

デメリット② 相続時精算課税を利用した場合、小規模宅地等の特例が利用できない

小規模宅地の特例は相続時に要件を満たしていれば税額を安く抑えることができる制度になります。

しかし、相続時精算課税を利用した場合には、要件を満たさなくなるため、この制度が利用できないため、注意が必要です。

デメリット③ 贈与を受けた年の翌年には申告をする必要がある点

相続時精算課税を利用した場合には、贈与を受けた年の翌年には申告手続きが必要になるので、事務負担が増大する点が挙げられます。

以上のデメリットを考慮した場合でも保有している賃貸不動産の価額が低く、相続税の基礎控除以下の相続財産のみである場合は、そもそも相続税が発生しないため、暦年課税を利用して贈与するよりも、相続時精算課税が有利な場合があります。

相続時精算課税制度を受けるための手続きとは?どのような書類が必要?

相続時精算課税を利用するには申告手続きが必要であることは上述した通りですが、手続きの流れとしては以下の通りです。

①申告期限を把握しておく

相続時精算課税を利用した場合の申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、申告手続きをする必要があります。

②贈与税を計算する

次に贈与税額を計算します。

贈与税額は、贈与された財産の価額から2,500万円を控除した金額に対して20%の税率を乗じた金額が納めるべき贈与税額となります。

③必要書類を準備する

最後に必要書類を準備します。

必要書類は、贈与税の申告書の他に添付書類として、相続時精算課税選択届出書を準備します。

その他に、受贈者が子どもや孫である場合には、受贈者の戸籍謄本や抄本などといった、氏名、生年月日、贈与者との続柄が確認できる書類を準備する必要があります。

相続時精算課税制度のための届出書のダウンロードは、以下URLになります。

27.pdf (nta.go.jp)

孫が使える相続時のその他の特例を紹介!

相続時精算課税制度以外にも孫へ財産を承継させる際に適用できる特例として、小規模宅地の特例が挙げられます。(上述しているように相続時精算課税制度と同時の適用は不可)

小規模宅地の特例とは、生前に被相続人が居住または事業に使用していた土地について、一定の要件を満たしていれば、相続税評価額が大幅に減額される制度です。

自宅などの特定居住用宅地等の場合には、330㎡までの面積であれば80%の減額を受ける事が出来るため、相続税の節税に大きく繋がります。

相続時精算課税を使った方が良いケースは、上述したように不動産などの評価額が低く、相続財産も基礎控除範囲内であることが見込まれる場合です。

逆に評価額が高い場合には、暦年贈与により不動産以外の現金・預金等の贈与を行い、徐々に財産を少なくしてった方が相続税が少なくなることが多く、このような場合には相続時精算課税を使用しない方が良いです。

相続時精算課税制度に関しての相談先はこちら

相続時精算課税制度に関して相談したい場合には、税理士へ相談する必要があります。

また、相続時精算課税制度・暦年贈与ともに令和6年1月1日から制度の大幅な変更が予定されているので、変更予定の内容を聞き最新の情報をキャッチし、有効な相続対策をしましょう。

ただし、実際に相続が発生した場合、どこへ相談したら良いか分からない方もいるかと思うので、まずは相続診断士へ相談するのもおすすめです。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

北野 良典

代表税理士・公認会計士

北野 良典(きたの りょうすけ)

“税”に関する、最も身近な相談相手として~
下北沢駅から歩いてすぐそばに事務所を構えています。
相続の生前計画や相続申告、違う税理士に意見を聞きたいなどのご相談をいただくことが多いです。
当事務所は他の士業・金融機関と連携を強化しており、当事務所を訪れていただければどんな悩みでも解決するような存在を目指しています。何かお困りの際には遠慮なくご相談くださいませ。

サイトURL:https://kitano-kaikei.tkcnf.com/

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