司法書士に頼めることを解説!依頼すべき相続などのケースや、司法書士の選び方
司法書士とは
司法書士とは何か、どのような業務を行っているかについて解説します。司法書士の全体像を理解していただけると幸いです。
司法書士とは何か?
司法書士とは、弁護士や行政書士と並ぶ法律系の国家資格です。司法書士になるには、司法書士試験に合格するか、法務大臣の許可を受ける必要があります。
司法書士の主な業務内容
司法書士の主な業務は、その名の通り、「司法に関する様々な書類」を作成することです。より具体的には、裁判所や法務局に提出が必要な登記や訴訟、成年後見などに関する書類を依頼人に代わって作成します。
他の専門家との比較
司法書士は法律の専門家ですが、他にも、弁護士や行政書士などの法律を専門としている業種があります。それらとの違いを詳しく説明していきます。
司法書士と弁護士の違い
司法書士も弁護士も法律系の難関資格ですが、登場する場面で違いがあります。
司法書士は、当事者がすでに合意している場面で登記を行ったり、書面を作成したりするのが主な仕事です。一方、弁護士は、当事者が争っている場面で、交渉や訴訟を代行して、トラブルを解決するのが主な仕事です。
司法書士は、原則として法律行為(何らかの意思表示をすることによって権利・義務を発生・消滅させる行為)の代理はできません。
たとえば、相続において、弁護士は相続人に代わって遺産分割協議の代理を行えますが、司法書士はその代理ができません。一方で、司法書士は相続された不動産の相続登記を行うことが得意です。法律的には弁護士も登記業務を行うことは可能ですが、司法書士の方が専門性が高いので、登記業務は司法書士に依頼することをおすすめします。
司法書士と行政書士の違い
行政書士は、司法書士の資格より比較的取得しやすい法律系の資格です。
司法書士は、不動産登記や相続などの法務業務を専門とするのに対し、行政書士は、行政手続きの法的サポートを行います。また、行政書士が書類作成を主な業務とするのに対し、司法書士は書類作成以外の業務も行います。
たとえば、中古車販売の会社を設立する場合、司法書士は「設立登記」という登記業務を行い、行政書士は「古物許可申請」という行政上の手続きを行います。
司法書士、弁護士、行政書士の比較
司法書士、弁護士、行政書士の比較を一覧表にまとめました。参考にしてみてください。
士業による業務の違い | 司法書士 | 弁護士 | 行政書士 | |
---|---|---|---|---|
債務関係 | 任意整理 | △ ※認定司法書士は140万円以下のみ可 (認定司法書士以外の司法書士も書類作成は可) | 〇 | ✕ |
破産・民事再生 | △ ※裁判所提出書類の作成のみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | 〇 | ✕ | |
過払金返還請求 | △ ※認定司法書士は140万円以下のみ可 (認定司法書士以外の司法書士も書類作成は可) | 〇 | ✕ | |
交通事故 | 示談交渉・訴訟 | △ ※認定司法書士は140万円以下のみ可 (認定司法書士以外の司法書士も書類作成は可) (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | 〇 | ✕ ※決定事項の書面化のみ可 (自動車賠償責任保険・共済に対する請求書類の作成は可能) (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) |
離婚 | 協議 | ✕ | 〇 | △ ※決定事項の書面化のみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) |
調停・訴訟 | △ ※裁判所提出書類の作成のみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | 〇 | ✕ | |
相続 | 遺産分割協議 | ✕ | 〇 | △ ※決定事項の書面化のみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) |
調停・訴訟 | △ ※裁判所提出書類の作成のみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | 〇 | ✕ | |
刑事関係 | 刑事弁護 | ✕ | 〇 | ✕ |
告訴状作成 | △ ※検察庁に対するもののみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | 〇 | △ ※検察庁以外に対するもののみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | |
登記業務 | 不動産・商業等 | ◎ | 〇 | ✕ |
行政関係 | 訴訟 | △ ※裁判所提出書類の作成のみ可 (ただし、法律常識に従った内容に限られ、法的専門的知識に基づく内容の書面の作成はできない) | 〇 | ✕ |
不服申立手続 | ✕ | 〇 | △ ※特定行政書士のみ可 (特定行政書士以外の行政書士も書類作成は可) | |
各種申請書作成 | ✕ | 〇 | ◎ |
司法書士に依頼できる業務一覧
司法書士に依頼できる業務は主に5つで、「不動産登記に関する業務」、「会社・法人の登記手続き」、「相続手続きのサポート」、「家族信託に関するサービス」、「簡易裁判所での代理訴訟」があります。それぞれについて、どのようなものか解説していきます。
不動産登記に関する業務
不動産登記とは、土地や建物に関する情報(所有者、面積、担保の有無など)を、法務局が管理する「登記記録」に記載し、これを広く社会に公開することによって、不動産取引の安全を図るための制度です。
司法書士は、不動産の売買・贈与・相続などによる名義変更や、抵当権、借地権に関する登記など、不動産の権利に関する登記についての手続きを代理して行います。
会社・法人の登記手続き
会社・法人は、社名や役員名、資本金額などの、法律に定められた事項を「登記記録」に記載することが義務付けられています。
そのため、会社設立時には必要事項を記した登記申請書を法務局に提出しなければなりません。社名を変更したり、代表取締役が交代した場合などにも、法務局に登記記録変更申請書の提出が必要となります。
こうした法人の登記申請の代理人を務めるのが司法書士です。
相続手続きのサポート
相続手続きに欠かせない、不動産の名義変更、戸籍の収集、相続関係図の作成、遺産分割協議書の作成も、司法書士が代理する業務です。
それ以外にも、相続放棄手続き、特別代理人や遺言執行者の選任申立て、遺産分割調停の申し立てなどに必要となる書類も、司法書士が作成できます。
家族信託に関するサービス
家族信託とは、本人の所有する財産を子供や配偶者に預け、信託契約に従って管理したり運用してもらう仕組みです。
信託契約書の作成、財産管理のルール等を決定するためのサポートを行ったり、契約締結後の相談に乗ったり、信託登記の手続きを行うのが司法書士です。
簡易裁判所での代理訴訟
簡易裁判所とは、少額で軽微な紛争を簡易迅速に解決するための裁判所です。法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、簡易裁判所での140万円以内の民事訴訟や調停等の代理人としての業務を行います。
具体的な業務内容
司法書士の業務内容は多岐にわたります。それぞれについて、具体的に解説していきます。
不動産登記業務の詳細
不動産登記に記載される事項は、「物理的な状態」と「権利関係」のふたつに大別できます。
「物理的な状態」とは、不動産の所在地や面積など、不動産の位置や大きさ、形状などのこと。「権利関係」とは、不動産の所有権や抵当権など、その不動産について誰がどのような権利をもっているのかを示したものです。
このふたつのうち、司法書士が扱うのは「権利関係」についての申請や手続きです。不動産の買手や売手といった関係者と打ち合わせを行い、必要な書類を作成し、スムーズに登記を申請できるように手配します。
相続手続きにおける司法書士の役割
相続とは、被相続人から相続人が遺産を引き継ぐ手続きです。司法書士は、その法律の知識を生かして、相続がスムーズに行われるようサポートします。
まずは相続人が誰になるかを戸籍謄本をもとに調査し確定します。並行して相続財産の詳細を調査し、その価値を評価。その後、相続財産をどのように分割するか、相続放棄をするか、といった選択肢を相続人に提示します。
相続財産に不動産が含まれる場合は、不動産登記の手続きも代行します。
成年後見制度の利用サポート
認知症や知的障がい・精神障がい等の理由で、自分の財産を管理することが困難な人のために、家庭裁判所が「成年後見人」等を選任してその財産を守る「成年後見制度」という仕組みがあります。
司法書士は、この運用をサポートするために、成年後見登記、財産の調査・管理、収入の把握、金融機関や各官庁への届出、預貯金の入出金確認、必要経費の支払い、医療・介護サービスの契約や施設の入退所・処遇の監視、住居確保、家庭裁判所への報告などを行います。
依頼者が亡くなった場合は、財産目録の作成、財産の引渡し、成年後見終了登記、家庭裁判所への最終報告といった手続きを進めます。
遺言書作成と生前対策の支援
遺言書は個人で作成することもできますが、遺産相続時のトラブルなどを避けるためには、専門的な知識を有した司法書士に作成を代行してもらうことをおすすめします。
生前対策とは、自分が認知症になったり、亡くなったりしたときに備え、残された家族が困らないよう、財産に関する対策を行うことをいいます。
自分が認知症になったときに財産を管理してもらう人を選んでおく「任意後見手続き」、生きているうちに財産を無償で譲る「生前贈与手続き」など、様々な生前対策が制度として用意されています。司法書士は、依頼人のニーズに合わせて、適切な生前対策を提案し、手続きを代理します。
債務整理と裁判手続きの対応
借金が返済できなくなった場合に、借金を減らしたり、支払いの猶予を持たせたりするために行うのが債務整理手続きです。
債務整理手続きの方法には「任意整理」、「特定調停」、「個人民事再生」、「自己破産」の主に4つがあります。
「任意整理」とは、債権者との間で支払い方法について交渉を行う手続きです。「特定調停」とは、簡易裁判所に調停を申し立てて、調停委員と協力しながら債権者と交渉し、分割弁済を行う手続きのことをいいます。「個人民事再生」とは、原則として3年間で一定の金額を分割して返済する計画を立て、この計画について裁判所が認めることによって残りの債務が免除される手続き。「自己破産」とは、裁判所に破産の申し立てをして、債務者の全財産で支払えるだけ支払い、免責を受ければ残りの債務が免除される手続きです。
司法書士は、借金に関する相談、140万円以下の任意整理、1社あたり140万円以下の特定調停の手続き、自己破産・個人再生の手続きの書類作成などを担います。
また、一時期話題となった過払い請求(消費者金融が取りすぎた利息の返還を求める請求)も、140万円以下であれば裁判上の請求、それ以上であれば書類の作成を代理することができます。
司法書士の選び方
世の中には司法書士事務所がたくさんあります。多くの司法書士事務所の中から、どういった司法書士を探して依頼をすればいいのでしょうか?ここでは、司法書士の選び方・探し方について解説していきます。
信頼できる司法書士を選ぶためのポイント
司法書士を選ぶ際には、まずは依頼を検討している司法書士のホームページをチェックし、どのような司法書士なのかを確認するといいでしょう。ホームページに料金体系が明確に表示されているか、対応内容の記載がきちんとしているか、そして実績が豊富かどうかの確認をしておくと安心です。お問い合わせフォームを利用するのも一つの手段でしょう。
そのうえで司法書士事務所に相談に行き、自分の話をしっかりと聞いてくれるか、理解できるまで説明してくれるか、できることとできないことを明確に伝えてくれるか、いくつかの方法を提案し、選択肢を与えてくれるかなど、信頼できるかどうかのポイントをチェックしましょう。
相続に強い司法書士の探し方
相続に強い司法書士の探し方として、円満相続ラボ公認の相続案件に対応可能な士業からお探しすることをおすすめします。対象エリアから検索でき、無料相談対応事務所も多数掲載しています。
その際は、相続の実績がどの程度あるかあわせて確認するといいでしょう。
費用と依頼のポイント
司法書士は報酬を自由に決められるので、事務所によって費用はまちまちです。ここでは、費用のだいたいの相場と、依頼するポイントについて解説していきます。
司法書士に依頼する際の費用相場
司法書士の代表的な業務の費用相場は、以下の通りです。
- 会社設立手続き:10万円程度
- 不動産売買による所有権移転登記手続き:5万円程度
- 不動産贈与による所有権移転登記手続き:4万5000円程度
- 不動産相続による所有権移転登記手続き:6万5000円程度
- 成年後見書類作成業務:6万円程度
- 裁判書類作成業務:8万円程度
- 債務整理:20万円程度
詳しい費用については、依頼しようと考えている司法書士事務所に問い合わせることをおすすめします。
司法書士への依頼を検討した方がいい場合
相続に関して司法書士が対応できる業務は幅広く、一般的に弁護士より報酬も安くなっているので、相続人間で争いが起きていない場合は、まずは司法書士への相談を検討してみてもいいのではないでしょうか。
また、成年後見や家族信託に特化している司法書士も多く、相続の生前対策を行いたい人にも、司法書士への依頼は有用です。
スムーズな相続のための司法書士相談
相続手続きには、戸籍謄本を集めたり、財産目録を作成したり、遺産分割協議書を作成したりなど、様々な作業が必要になります。相続人が多数に上り、財産の種類や額も大きい場合、これらを相続人だけで行おうとすると、非常に骨が折れます。
スムーズにストレスなく相続手続きを行うためには、一度司法書士に相談してみることをおすすめします。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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