相続の遺産分割協議で実印を押さない人がいる場合の対処法をケース別にご紹介!
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実印や印鑑証明は相続手続きに必要なの?
相続が発生した場合において、遺言書がない場合、相続人間で遺産分割協議が行われ、その協議がまとまるのであれば遺産分割協議書が作成されます。
遺産分割協議書とは、財産や資産を相続人の間で公平に分割するための法的文書です。遺産分割協議書の作成に関しては、作成の期限はありません。
この遺産分割協議書においては、法律上は実印の押印が義務付けられているわけではありません。しかし、遺産分割協議書は相続人全員が遺産分割内容に同意したことを証明する書類になるため、実務では遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑証明書を添付するのが通常です。
また、各相続手続きにおいて各機関から実印の押印や印鑑証明書の添付が求められる場合があり、例えば、次のような手続きにおいては、実印の押印が求められます。
・法務局での相続登記
・預貯金の払い戻し等金融機関での手続き
・死亡保険金の請求手続き
・証券会社等での株式の名義変更
そのため、実印や印鑑証明書は相続手続きに必要であると考えて差し支えありません。
なお、遺産分割協議書は、専門家に依頼しなくても作成可能ですが、専門家でない不慣れな者が作成すると不備が生じる可能性があります。そのため、できれば、専門家に作成を依頼する、又は、作成後は専門家にチェックしてもらうのがいいと思われます。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家としては、行政書士、司法書士、弁護士などが考えられ、また、一定の場合、税理士も作成することが可能です。事案の内容、遺産分割協議書作成の難易度、及び作成費用等を考慮して、適切な専門家を選ばれるのがいいでしょう。
そもそも実印・印鑑証明書とは?
実印とは、市区町村の役所に登録した公的に認められたハンコです。実印は個人や法人の身元確認のために用いられ、銀行取引や不動産取引、公的な契約などで使用されます。
印鑑登録をすると、印鑑証明書を取ることができます。印鑑証明書は、実印の正当性を証明する公的な文書です。
印鑑証明書には実印の印影や所有者の情報が記載されています。
遺産分割協議書に実印を押さないのはなぜ?認印はOK?
前述のとおり、遺産分割協議書には実印を押印しなければならないという法律上の規定はありませんが、実務上は、実印を押印するのが通常です。その上で、相続人が、実印を押さないケースとしては、概ね、①印鑑登録していない場合と、②自らの意思で押印を拒絶している場合が考えられます。
実印を押印してもらえない場合の対処法は、後述します。
なお、認印で押印した遺産分割協議書それ自体が無効になるわけではありませんが、その遺産分割協議書では相続手続きができない可能性があるので、その意味ではやはり実印を押印すべきです。
遺産分割協議書に実印が押されない場合はどうなる?
不動産の相続登記や金融機関での相続手続きなどの際には、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書と印鑑証明書を求められることが多く、そのため、遺産分割協議書に実印が押印されていない場合、当該機関が手続きを拒否することになり、相続手続きが滞ってしまうことになりかねません。
実印を押印してくれない相続人がいる場合の対応は、後述で紹介します。
遺産分割協議書に実印を押さない人にはどのようにしたらよい?対処法を解説!
前述のとおり、相続人が、遺産分割協議書に、実印を押印しないケースとしては、概ね、①印鑑登録していない場合と、②自らの意思で押印を拒絶している場合が考えられます。
上記①の場合、当該相続人に相続手続き制度を説明して、住民登録している市区町村の役所で印鑑登録の手続きをしてもらうことになるでしょう。
上記②の場合、そもそも遺産分割協議の内容に納得してない、あるいは、他の相続人と接触したくないことが考えられるため、この場合、実印に限らず、認印すら押印しないでしょう。
このような場合は、再度、遺産分割協議を行い、その協議内容を変更することを検討せざるを得ないでしょう。また、他の相続人と接触したくないという場合であれば、弁護士が窓口になることで解決するケースがありますので、弁護士に依頼するのも1つの方法です。
それでもなお、押印を拒否されるような場合は、やむを得ず、遺産分割調停などの法的手続きをとることになります。調停で合意が成立した場合、あるいは、調停が不成立となり審判に移行した場合は、いずれも実印の押印と印鑑証明書の添付は不要で相続手続きをすることが可能となります。そのため、どうしても実印を押印してくれないというケースの場合、遺産分割の調停を申し立てることになります。
なお、調停自体は、本人でも行うことは可能ですが、調停での話合いは、法的知識が必要になるので弁護士に依頼される方が無難です。
弁護士に依頼するとなると、当然、弁護士費用がかかりますが、弁護士費用は、事案の難易度、相続人の数等によって費用が異なってくることがあるため一概にいくらとは言えませんが、原則、委任された本人の負担となりますのでご注意下さい。
遺産分割協議を放置し続けるとどんなリスクがある?
今までの解説から、遺産分割協議書に実印を押してくれない人への対処法を理解できたと思います。そうしたら、すばやく対応に移りましょう。
遺産分割協議を放置することは、様々なリスクを引き起こす可能性があります。
以下では、遺産分割協議を放置し続けた場合のリスクについて解説します。
資産の不明確性
遺産分割協議を放置すると、遺産の資産や負債に関する不明確性が生じます。これにより、相続税の申告期限が過ぎてしまったり、負債が多く相続放棄をしたくても期限を過ぎてしまったり、相続手続きが出来なくなってしまう可能性があります。
財務的損失
遺産の放置により、財務的損失が生じる可能性があります。例えば、遺産に含まれる不動産や禁輸資産の価値が減少することが考えられます。また、税金の支払い期限を逃すと追加の税金負担が発生することもあります。
したがって、遺産分割協議を放置せずに適切に進めることは大きなリスクを回避し、円満に進めるために重要です。
そのため、できるだけ早く遺産分割協議書に実印を押してくれない人への対応に移り、遺産分割協議を進めましょう。
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この記事を監修したのは…
京都弁護士会所属 伸晄法律事務所
岩本 貴晴(いわもと たかはる)
相続問題は発生してしまうと、親族間の感情的対立が激化し、長期化する傾向にあります。また、実際に相続が発生した場合に紛争化しないよう、事前に防止策を講じることも重要です。当事務所では、実際の紛争処理から、事前の紛争防止まで、幅広く対応可能です。
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