親が亡くなったらすること一覧!葬儀から相続・銀行手続きまで期限順に解説
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【死亡日当日~2日目】死亡届の提出、火葬許可証の取得、通夜
親族が亡くなって最初にすべきなのは「死亡届」の提出です。これは記載された人が死亡したことを証明する書類で、死亡の事実を知った日から7日以内に死亡者の死亡地か本籍地、または届出人の所在地の役所に提出する必要があります。 死亡届は、市区町村役場や病院等に備え付けられています。期日に遅れると、5万円以下の過料を徴収される可能性があるので気を付けましょう。
死亡届には自分で必要事項を記入し、市町村区の役所に提出します。死亡届には、以下のことを記載します。
- 死亡者の氏名・性別・生年月日
- 死亡時刻と死亡場所
- 死亡者の住所・本籍
- 配偶者の有無
- 死亡者の仕事など
- 届出人の住所・本籍・氏名・生年月日
死亡届を提出する際には、あわせて医師が発行した「死亡診断書」の提出が求められます。死亡診断書の発行は有料で、明確な料金は決まっていませんが、相場は5000円程度です。
死亡届とは別に、葬儀を執り行うために「火葬許可証」という書類も必要になります。火葬許可証は市町村区役所で発行しているので、以下の内容を記載した「火葬許可申請書」を提出しましょう。
- 届出人の住所・本籍地
- 死亡届と届出人の続柄
- 届出人の氏名・生年月日
- 死亡者の住所と本籍地
- 死亡者の氏名・性別・生年月日
- 死亡時刻・死亡場所
- 火葬場所と火葬日時など
また、故人が亡くなったら、遺族は病院等から遺体の搬送を求められるので、葬儀社に連絡し、遺体搬送車(寝台車)を手配してもらう必要があります。
その場合、死亡届等の手続きも一括で葬儀社が代行してくれることが通例です。プロに任せた方が安心なので、代行依頼をおすすめします。
上記の手続きと並行して、通夜を行わなければなりません。通夜には、故人の納棺を家族・親族で行う「仮通夜」と、故人が生前交流のあった人々を招いて行う「本通夜」があります。仮通夜は死亡日の夜に、本通夜は一般的に翌日の夜に行いますが、明確な決まりはありません。
通夜の日程が決まったら、葬儀の日程とあわせて、速やかに個人と親交のあった人々に告知をします。訃報は電話で、通夜の場所や日時はメール等で伝えることが多いようです。
【3日目】葬儀、火葬
通夜の翌日に執り行われるのが、葬儀・告別式です。喪主は主催者となるため、葬儀の実務を担う「世話役」は別の親族等にお願いし、できるだけ参列者の弔問を受けることに専念しましょう。ご焼香や、僧侶の読経、喪主による挨拶等を行ったあと、霊柩車で個人を火葬場へと出棺します。
出棺後、火葬場に到着したら、火葬許可証を提出します。火葬後、骨上げが終わると、係員が骨壺と火葬済印の押された「埋葬許可証」を渡してくれます。埋葬許可証は納骨の際に必要になるので、大切に保管しておきましょう。
【4~7日目】葬儀後の手続き(精算)
葬儀・火葬が終わったら、諸費用の清算や事務の引継ぎなどを早めに済ませましょう。
芳名帳、香典帳、香典、供花、供物帳、弔辞、弔電、支出金の領収書などを世話役から受け取り、事務の引継ぎをします。
引継ぎの後、お手伝いしてくれた世話役に謝礼を渡します。金額や地域によって変動するため、葬儀社に確認しておくことをおすすめします。
葬儀社への支払いは、後日請求書が来るのでその際に対応すれば大丈夫です。その他、斎場や仕出し店の清算も早めに済ませましょう。
葬儀費の領収書は、あとから国民健康保険の葬祭費の請求の際に使うので、保管しておいてください。
【4~10日目】役所で故人の諸手続き
故人が世帯主だった場合、世帯主の変更が必要です。故人が亡くなった日から14日以内に「世帯主変更届」を提出しましょう。変更手続きには、届出人の本人確認書類や印鑑が必要になるので注意してください。
【11~14日目】故人の諸契約の解約手続き
役所関連の手続きだけではなく、故人が生前に交わしていた諸契約の解約手続きも忘れずに行いましょう。
故人の住居の賃貸借契約の解約
故人が亡くなると、賃貸借契約は相続人に承継され、相続人が家賃の支払いを行わなければなりません。居住の必要がない場合には、賃貸契約はすみやかに解約しましょう。解約で戻ってきた敷金は、代表相続人が受け取ることになります。
電気・ガス・水道の解約
故人の住んでいた家をもう使わない場合には、電気・ガス・水道の解約手続きをします。同居の家族がいて、電気・ガス・水道を継続して使用する場合には、名義変更の手続きが必要です。
携帯電話・インターネットの解約
故人の携帯電話を解約したり名義変更したりするための手続きは、各キャリアによって異なるので、ウェブページなどで詳細を確認しましょう。故人がインターネットの回線を契約していた場合には、契約先に連絡して停止の手続きをします。
NHK受信料の解約
遺族が故人の家に住んでテレビを使い続ける場合には、NHK受信料の支払いの名義変更をする必要があります。テレビを使用しない場合には、NHKのフリーダイヤルに連絡して解約しましょう。
クレジットカードの解約
カード会社に連絡すれば、すぐに会員資格の取り消し処理が行われます。まずは電話で問い合わせてみましょう。
【14日以内】健康保険・介護保険、年金の手続き
故人が亡くなった後は、健康保険・介護保険・年金の手続きが必要になります。期限とともに解説していきます。
故人の健康保険の資格喪失届
故人が国民健康保険・後期高齢者医療保険に加入していた場合には、亡くなった日から14日以内に故人の居住地の市町村区役所に資格喪失届を提出します。
故人がその他健康保険組合に加入していた場合には亡くなった日から5日以内に加入先の保険組合に資格喪失届を提出します。
故人が会社員の場合、退職手続きとまとめて対応してくれる会社がほとんどです。また、資格喪失届を提出するタイミングで、故人の扶養に入っていた被扶養者は、新たに国民健康保険に加入することが必要です。
故人の介護保険資格喪失届
故人が65歳以上(第1号被保険者)、または40歳から65歳未満で介護保険の被保険者だった場合には、故人が亡くなった日から14日以内に介護保険の資格喪失手続きをしましょう。
要介護・要支援の申請中に亡くなった場合には、届出が必要です。各市区町村の役所で「要介護・要支援認定申請取下げ申請書」を取得し、介護保険課の窓口に提出しましょう。
なお、40歳以上65歳未満で要介護・要支援の認定を受けていない人は、介護被保険者証を持っていないので手続きは必要ありません。
故人の公的年金受給停止
国民年金は亡くなった日から14日以内、厚生年金は亡くなった日から10日以内に、故人の公的年金の受給停止の手続きを行いましょう。
【14日以降】遺産相続手続きの開始
上記の手続きがひと段落したら、本格的な遺産相続手続きが始まります。まずは遺品を整理しつつ、遺言書があるかを確認しましょう。遺族の方だけでは遺品を整理、処分することが難しい場合には、業者に依頼することも有用です。その際には、相見積もりを取ると、費用が節約できます。
遺言書がある場合
遺言書には、被相続人が全文を描いた「自筆証書遺言」と、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」、被相続人本人が書いて公証役場で手続きをする「秘密証書遺言」の3種類があります。いずれも故人が自宅で保管している場合がほとんどなので、探してみましょう。
注意していただきたいのは、遺言書を見つけたとしても、その場で開封してはならないということです。基本的に遺言書は、家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。検認とは、遺言書の存在と内容を相続人全員に知らせ、遺言書の偽造や追加修正などを防止するための手続きです。このプロセスを経ずに、無断で遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料が発生する可能性があります。
遺言書を検認・開封が済んだら「遺言執行者」を決めましょう。遺言執行者には、相続財産の管理や遺言の執行に必要なすべての行為をする権利と義務があります。不動産の名義変更の手続き、金融資産や預金の相続手続きなど、様々なことをしなければなりません。不安に思う場合には、弁護士に相談しましょう。
遺言がない場合
遺言がない場合には、遺産の分割を相続人全員で話し合う「遺産分割協議」の準備をします。
まずは、相続人が誰なのかをを確定させるために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を役所から取り寄せましょう。相続人が確定できたら、相続人全員に連絡し、遺産相続の話し合いを行う旨を伝えましょう。
また、相続財産の内容が一目でわかるよう、財産目録を準備しておきましょう。
相続人が確定出来、財産目録ができたら、いよいよ遺産分割協議を開始します。だれが何をどれくらい相続するかは、話し合いによって自由に決められます。
当事者で解決できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停をしなければなりません。遺産相続はトラブルに発展しやすいため、心配なら早めに弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄・限定承認
もしもプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、相続放棄や限定承認という方法も検討してみてください。相続放棄とは、文字通りプラスの財産もマイナスの財産も一切放棄すること。放棄すると相続人でなかったことになり、その子や孫などが代わりに相続することもできなくなります。相続放棄は単独でできます。
一方、限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。マイナスの財産が多かった場合は、超過分を支払う必要がないので、負債がどのくらいあるかわからないときに便利です。限定承認は相続人全員が合意して共同で行う必要があります。
相続放棄と限定承認は、相続があることを知ってから3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。期限を過ぎてしまうと、無条件で相続することになるので気を付けましょう。
【1ヵ月以内】相続税の手続き開始
相続税の申告と納税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行うルールになっています。
申告には、所定の申告用紙と相続財産に関する資料をまとめて税務署に提出する必要があり、時間がかかりますので、早めに動きだしましょう。
相続税の申告のために必要な書類は以下の通りです。
- 本人確認書類
① 番号確認書類(マイナンバー(12桁)を確認できる書類)
② 身元確認書類(以下のいずれかの書類)
・マイナンバーカード(個人番号カード)
・運転免許証
・身体障害者手帳
・パスポート
・在留カード
・公的医療保険の被保険者証 など
・相続税申告書 - 相続人を示す書類
以下のいずれかの書類
① 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
② 図形式の法定相続情報一覧図の写し(子の続柄が実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限ります。 )(注1) なお、被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本の提出も必要です。
③ ①又は②をコピー機で複写したもの - 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
- 各相続人の印鑑証明書(遺産分割協議を行った場合)
- その他相続財産を証明する書類(不動産登記簿、預貯金の残高証明書など)
- その他必要書類
必要な書類はケースバイケースになるので、自分の相続にはどの書類が必要なのか不安な場合には税理士に相談することをおすすめします。
【3ヵ月以内】遺産分割協議書の作成
遺産分割協議または遺産分割調停で、全員の意見がまとまると、「遺産分割協議書」という書類を作成することになります。これには、相続人全員が分割内容を確認したこと、この内容で合意したことを証明し、後のトラブルを防止する役割があります。
必ず相続人全員の実印が必要で、各々が一通ずつ所持します。
この遺産分割協議書がないと、基本的には不動産等の相続登記、銀行預貯金の払い戻し、名義変更などの相続に関する手続きが行えません。また、相続税の更正請求もできません。
遺産分割協議書の形式は特に決まっていませんが、遺産分割協議書には、一般的に以下のことを記載します。
- 被相続人の名前、相続日(亡くなった日)、本籍地、最終住所地
- 協議した相続人の住所、生年月日、名前
- 相続財産についての具体的な分け方
遺産分割協議書に不備があれば法務局や金融機関で受け付けてもらえず、不動産の名義変更や預貯金の払戻などを受けられない可能性もあります。
不安な場合には、弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼することも一手です。
【4ヵ月以内】故人の所得税の確定申告(準確定申告)
準確定申告とは、故人がしなければならない確定申告を相続人が変わって行うことです。故人が亡くなった場合、本人が確定申告をすることはできないので、相続人全員が確定申告の義務を引き継ぐことになります。
故人が亡くなったことを知った日から4か月以内に、故人の住所地を管轄する税務署に申告する必要があります。
故人が確定申告しなければならない場合、例えば事業所得や不動産所得がある場合や2000万円を超える給与所得がある場合、公的年金等による収入が400万円を超える場合などには、準確定申告が必要です。
一方で、故人に確定申告の必要がない場合、給与を受け取っているのが1か所からだけであり事業所側で年末調整をされている場合、年間の年金収入が400万円以下でありその他の所得が20万円以下である場合などには、準確定申告は不要です。
準確定申告は、以下のいずれかの方法で行います。
- 申告書を紙で作成し税務署に直接持参するか郵送する
- 電子申告
準確定申告が難しい場合には、相続税の申告も併せて税務署に相談することもできます。税理士に依頼するのも一つの手段です。
【10ヵ月以内】相続税の申告と納付
相続税の申告と納税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行うことが必要です。「【1ヵ月以内】相続税の手続き開始」で準備した書類と資料を被相続人の住所地を所轄する税務署に提出します。
実際の納税は、税務署か、最寄りの金融機関で行います。申告期限までに申告しても、税金を期限までに収めなかった場合には延滞税がかかることがあるので気を付けてください。
税金は金銭で一度に納めるのが原則ですが、相続税については、特別な納税方法として延納と物納制度があります。
延納は何年かに分けて納めるもので、物納は相続などで取得した財産そのもので納めるものです。
なお、この延納、物納を希望する場合は、申告書の提出期限までに税務署に申請書などを提出して許可を受ける必要があります。
【1年以内】その他必要な手続きの完了
上記以外にも、故人が亡くなった後にやらなければならないことがいくつかあるので、紹介します。
高額医療費の還付(診察付きの翌月の1日から2年以内)
高額医療費制度とは、1か月の医療費が上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。故人が高額医療費制度を受けていた場合、市町村区役所、健康保険組合などに申請すれば、還付金を受け取れます。
国民年金の死亡一時金の請求(亡くなってから2年以内)
故人が国民年金の第1号被保険者として36か月以上保険料を納めていて、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けていなかった場合、故人が亡くなってから2年以内であれば、遺族は死亡一時金を受け取れます。故人が居住していた市区町村役所か年金事務所、年金相談センターへ申請しましょう。なお、遺族基礎年金を受け取る場合には、死亡一時金は支給されないので、注意しましょう。
国民健康保険の葬儀費の請求(亡くなってから2年以内)
故人が国民健康保険課後期高齢者医療保険に加入していた場合、故人が亡くなってから2年以内に市区町村区役所に請求することで、葬祭費を請求できます。自治体によって金額が違うので、問い合わせてみるとよいでしょう。
健康保険の埋葬料の申請(亡くなってから2年以内)
故人が健康保険組合や社会保険に加入していた場合、埋葬料が受け取れます。埋葬料は一律5万円で、故人が亡くなってから2年以内に保険の加入先へ必要書類を提出すれば受け取れます。
生命保険の死亡保険金の請求(亡くなってから3年以内)
故人が生命保険に加入していた場合、保険金受取人は保険金を受け取れます。加入している生命保険によって必要な書類が違うので、保険会社に連絡してみましょう。
故人の未支給年金の請求(亡くなってから5年以内)
年金受給者が亡くなった時点で受け取っていない年金は、受給者が死亡した当時生計を同じくしていた遺族が未支給年金として受け取れます。
遺族年金の請求(亡くなってから5年以内)
故人が年金を受給する前に亡くなった場合、故人のよって生計を維持されていた遺族は遺族年金を受け取ることができます。
自分で対応が難しい場合の専門家への相談方法
遺言の執行や遺産分割協議、相続税の申告や準確定申告など、相続に関する手続きは複雑で時間がかかるものばかりです。こういった手続きは、プロである弁護士・税理士に依頼することで、負担が軽くなります。
初回相談を無料としている弁護士・税理士事務所もあるので、まずは電話やメールで予約の上、弁護士・税理士事務所を訪問してみることをおすすめします。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を書いたのは…
弁護士・ライター
中澤 泉(なかざわ いずみ)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
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