山林を相続するデメリットとは?判断基準といらない場合の相続時の手続きを解説!
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山林の相続は必要?相続財産に含まれているのか?
山林とは、用材や薪炭材、竹材、その他の林産物の生産を行う樹木、竹を集団的に生育させるため用いる土地です。山林は不動産資産として相続財産の対象となります。
農家等の相続の場合、山林を所有しているケースは珍しくなく、農地経営をしていなかった被相続人が、田舎に山林を持っていたというケースも想定されます。
山林はその地域の生態系を保全するために必要不可欠な存在である他、相続すると相続税の猶予特例もある等、山林の相続人は税制上の優遇措置を受けられる可能性があります。
山林を相続するメリット・デメリットを解説!
山林を相続すると土地の活用や税制上の優遇措置が得られる反面、相続の手続きに手間と時間がかかる可能性もあります。
山林を相続するメリット
「特定森林経営計画が定められている区域内」にある山林を相続等で取得した相続人が、自ら山林経営を行えば、相続税の8割程度が「山林納税猶予税額」として猶予対象となります。
また、山林を伐採・整地すれば、駐車場やトランクルーム経営、太陽光発電装置の設置等の土地活用ができるケースもあります。
山林を相続するデメリット
山林の相続は法務局への相続登記の他、地方自治体への届け出もしなければならず、手間がかかります。
山林を相続後90日以内に市区町村役場へ「所有者の届出」が必須ですが、土地活用を目的に相続山林を最寄りの森林組合に売りたい、または管理を任せたいという場合は、森林組合へも相続の報告をしましょう。
また、山林を所有すれば固定資産税を課され、管理義務が発生します。管理が十分でないと行政からの立ち入り調査され、指導や勧告を受ける可能性があります。
そのため、管理に手間や時間もかかってしまいます。管理の委託も可能ですが、管理費用を支払う必要が出てくるはずです。
山林を相続するか判断する基準とは?
山林を相続する人は山林の活用法が可能かどうか、慎重に判断する必要があるでしょう。
例えば被相続人が所有していた頃、山林を買い取りたいという人がいたならば、その山林にある程度価値を見出した人がいるとわかります。
自分が山林を相続し、購入したいという相手がいれば売却しても構いません。他に、キャンプ場や太陽光発電装置の設置等で人気が出ると判断したら、自分が土地活用を行っていくのも良い方法です。
逆に、山林を相続すればプラスの相続財産よりもマイナスの相続財産が大きくなってしまうと感じたり、山林の固定資産税・管理費の負担が大きいと感じたりしたら、相続しない方が良いでしょう。
山林を相続することで生態系の保全に貢献できる?
山林は町や農村の身近に存在する貴重な自然資源です。降雨の際に木々が水分を蓄え、他の動植物を育み、地下水に浸透した水は農地へ流れ込む、この自然の循環を担う大切な役割が、山林にはあります。
自然環境保全に興味のある人ならば、被相続人が大切に管理してきた山林を、今度は自分が守っていくことで生態系の保全に大きな貢献ができるはずです。
もしも相続人が高齢となり、自分で管理が難しくなっても、管理代行業者に頼めば山林の保全をこれからも維持していけます。
山林を相続する際の手続き方法
山林を相続した場合は、市区町村役場に所有者届出、法務局での相続登記、森林組合への報告がそれぞれ必要です。
市区町村役場への所有者届出
山林を相続後、90日以内に市区町村役場へ「所有者届出」をしなければなりません。
次の書類を収集・添付し、森林の土地が所在する市区町村役場へ提出します。
- 森林の土地の所有者届出書:市区町村役場窓口・ホームページで取得可能
- 当該土地の位置を示す地図
- 当該土地の登記事項証明書、その他の届出の原因を証明する書面
市区町村役場への所有者届出
山林を相続したら「所有名義」を被相続人から相続人へ変更しなければなりません。
主に次の書類を収集・添付し、森林の土地が所在する法務局へ提出します。
- 登記申請書:法務局窓口またはホームページからダウンロードして取得可能。
- 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得。出生から死亡までの戸籍謄本(1通450円)または除籍謄本(1通750円)の収集が必要。
- 相続人の戸籍謄本または除籍謄本
- 被相続人の住所に関する書類:住民票の写し(1通200円〜300円)等、住所地を管轄する市区町村役場で取得可能
- その他:遺言書または遺産分割協議書等
森林組合への報告
山林を相続後、義務ではないものの森林組合に報告し、山林の売却や管理の希望を伝えておいた方が良いでしょう。
森林組合へ売却・管理の希望を意思表示すれば、当組合が山林の買手または借り手を見つけてくれる可能性があります。
山林は広大で険しいので、無理に自分一人で山林活用をしようと考えず、森林組合の力を借りましょう。
山林の用途変更は可能?山林開発のメリットとデメリットを解説!
山林をそのままで維持・管理するのが厳しいのならば、山林開発で収益をあげられる方法も検討してみましょう。山林開発のメリットとデメリットは次の通りです。
山林開発のメリット
山林を開発すれば次のような活用法が期待できます。
- 山林を賃し出して活用:地方自治体・林業を行っている業者等に貸し出す等
- 山林の木材を売却:木材の売却で利益を得る
- レクリエーションの場として活用:キャンプやハイキング等の場として提供
- 太陽光発電:日当たりの良い斜面等へソーラーパネルを設置
- 山林から宅地へ用途変更: 山の全体または一部を切り崩して、住宅地にする等
特に山林から宅地へ地目変更ができれば、住宅地を建設し、大きな収益をあげられるかもしれません。
ただし、例えば保安林に指定されている土地ならば、地目変更する際、まず保安林の解除をしなければいけない等、様々な制限や手続きが必要となってきます。
山林開発のデメリット
山林開発をしたからといって、実施している活用法が必ずうまくいく保証はありません。
例えば林業を経営し、林産物を売る等しても、最近は大きな利益を得られないケースが多いです。
また、キャンプやハイキング等の場として提供しても、自然景観が魅力的だ、自動車で向かうのに便利等、利用者を引き付ける場所でなければ、なかなかうまくいかないはずです。
相続する際に知っておきたい!地域や自治体の山林保全の取り組みについて
国や地方自治体では、山林保全のための様々な対策を実施しています。山林保全を支援する制度は次の通りです。
- 森林・山村多面的機能発揮対策交付金:林野庁が実施している制度。森林所有者、地域住民等が協力し、山林の保全管理・資源を利用するための活動に対し、年度ごとに500万円を上限として支援する。
- 各地方自治体の補助金制度:都道府県・市区町村共に地域の実情に合った金額を設定し、山林の維持管理を金銭的にサポートしている。
- 森林・林業セミナー:林野庁や都道府県・市区町村が森林・林業に関する基礎的、専門的な知識・技術の習得を目指してセミナーを開催している。
交付金・補助金制度ばかりではなく、山林の管理や開発に関する知識・技術の習得を目指すセミナーも盛んに開催されています。
山林を相続したくない時はどうする?対処法を解説!
山林を相続しても明らかに維持・管理の負担が大きく、有効な活用法も見つからない場合は「相続放棄」を検討してみましょう。
相続放棄は遺産を受け取らない代わりに、被相続人の債務を返済しないという方法です。もともとは被相続人の借金額が多く、遺産相続をしたら多額の返済が必要となるため、借金の相続を避けるために用いられます。
相続放棄は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ期限内に申述します。ただし、相続人が相続開始を知ってから3カ月以内に家庭裁判所へ申立てなければいけません。
なお、申述する際は収入印紙800円分を用意し、申述書や被相続人の住民票除票・戸籍謄本、申述人の戸籍謄本等を提出します。
山林を相続後に手放したいときの対処法を解説!
山林を相続したものの、相続人本人ではとても維持・管理が難しい場合は、次のような方法を検討しましょう。
- 寄付する:地方自治体や民間会社に山林を寄付する
- 売却する:森林組合や山林バンク(全国の山林売買のマッチングサイト)を利用し、買主を探す
- 相続土地国庫帰属制度の利用:相続等で取得した不要な山林を国に返却できる制度
なお、相続土地国庫帰属制度は無条件で利用できるわけではなく、次の条件を満たす必要があります。
- 建物がある土地や一定の勾配・高さの崖等がない山林であること
- 制度利用時、10年分の管理費用相当分の負担金を納める
- 申請する前に相続登記をしている
山林の相続税評価の計算方法
山林の相続税評価方法は、山林の種類ごとに次のような計算方法で算定します。
- 純山林(市街地から離れ宅地の影響が及ばない山林)および中間山林(宅地の影響が多少及ぶ山林)→倍率方式
- 市街地山林(市街地にあり宅地の影響を大きく受ける山林)→比準方式または倍率方式
倍率方式とは、固定資産評価額に一定の倍率を掛け算し、相続税評価額を算定する方法です。
例えば、山林の固定資産評価額が150万円、評価倍率が3.0ならば、相続税評価額は450万円(150万円×3.0)となります。
一方、比準方式とは、山林を宅地として評価したとき価額から、宅地転用の造成費用を控除して評価額を算定する方法です。
例えば、1㎡あたり20万円の宅地としての価値があり、宅地転用の造成費用が1㎡あたり10万円かかる山林(面積が150㎡)のケースならば、(20万円-10万円)×150㎡=1,500万円
よって、1,500万円が相続税評価額となります。
山林の権利について!過去に起きたトラブル例と対処法を解説!
山林を相続したものの、維持管理になかなか手が回らず、所有している山林で土砂崩れが発生、近隣の住民などに被害を与えたという例があります。
この場合には、近隣の住民と次のようなトラブルが発生するおそれもあります。
- 近隣の住民の敷地に流入した土砂・がれきの撤去費用の請求
- 土砂崩れで被害を受けた近隣の住民の損害賠償請求
損害賠償請求については、例えば過去に土砂崩れの可能性が何度も指摘されていたものの、それを無視し続けた場合、山林の所有者の過失が認められ、賠償金を命じられる可能性が高いです。
維持管理に限界を感じたら、なるべく早く森林組合や地方自治体に相談し、寄付や売却、相続土地国庫帰属制度の利用を実行した方が良いでしょう。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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