未成年に対する贈与は有効?贈与契約書の書き方やテンプレートを解説!
贈与契約書とは何?贈与契約書を代筆する必要のあるケースや遺言書との違いを解説
贈与契約書とは、一体どのようなものなのでしょうか。代筆する必要のあるケースや遺言書との違いを解説します。
贈与と贈与契約の違いとは
まず、贈与と贈与契約は似たような言葉ではありますが、法律上は別の物とされています。
贈与とは、贈与者が一方的に財産を譲渡するものであり、受贈者の合意、承諾などは不要です。
他方、贈与契約とは、贈与者が贈与することを約束し、受贈者がこれに合意することによって成立します。
これらは、大きくは以下の2つの点で違いがあります。
①贈与であれば、贈与者は、贈与実行前であればいつでも取り消しが可能(ただし、書面による贈与である場合は取り消しできません。)であるのに対し、贈与契約では、贈与のときほど簡単には取り消せず、以下に記載する親権者による取り消しなど、取り消しのために一定の理由が必要になります。
また、
②贈与であれば、相手方の年齢、意思能力などは問題とならないのに対して、贈与契約では原則として成人である必要があり、未成年者が行う場合には親権者の同意が必要となる場合があります。
贈与契約書とは
実際に贈与があったことを税務署や第三者に対して証明できるよう、贈与契約として贈与者と受贈者の間で交わす契約書のことです。
生前贈与の場合は、贈与者の死後相続人間でトラブルが起こることや、税務署から本当に贈与がされたか、もしくは譲渡されたのが本当に贈与によるものかについて指摘を受ける可能性があります。そういったリスクを回避するためにも、契約書を交わしておくことが大切です。
贈与契約書を代筆する必要のあるケース
未成年者に対する贈与契約で代筆が必要なケースとして、主に以下の2つが挙げられます。
- 未成年であるケース
- 幼児で自分の名前が書けないケース
上記のケースに該当する場合は、代理人による代筆が必要です。幼いために自署ができないケースは、親権者が代筆します。
親から未成年の子へ贈与契約をするのはどんなとき?遺言との違い
親が子どもの将来のためにと、子ども名義の通帳にお金を貯めることがよくありますが、通帳は子ども名義であっても、実はそれだけでは子どものお金として判断されません。実質、親の財産ということになり、そのまま親が亡くなった場合は相続財産として遺産分割の対象になってしまいます。
子どもの財産として認められるためには、きちんと贈与契約を結ぶことが大切です。契約書を作成しておくことが、贈与の証明になります。
一方遺言との違いとしては、遺言は親が亡くなった後の話です。親が存命のうちは成立せず、どれだけ貯めても子どもの財産にはなりません。
死因贈与と遺贈との違い
自身の財産を特定の人物に遺すため、遺言書を作成するケースがあります。贈与の場合も同様に、自身の死を条件に財産を贈与する方法があり、これを死因贈与といいます。それぞれの違いを比べてみましょう。
死因贈与契約 | 遺言(遺贈) |
・事前に受ける側の承諾が必要 ・財産の内容を秘密にできない ・契約書を交わした場合は放棄できない ・契約が有効であれば確実に譲れる ・生前にしてほしいことを条件にできる ・未成年者は親権者の同意が必要 ・書面によらなくても成立する | ・事前に受ける側の承諾は不要 ・財産の内容を秘密にできる ・死後に放棄すれば成立しない ・遺産分割協議の結果次第では遺言書どおりの分配方法にならないこともある ・生前にしてほしいことを条件にできない ・未成年者でも15歳以上であれば親権者の同意は不要 ・書面によらなければ成立しない |
2つは似た制度に思えますが、比べてみると異なる点は多いです。中でももっとも大きな違いは、死因贈与は書面によらなくても口頭のみで契約が成立することに対し、遺贈の場合は遺言書を作成しなければ効果が生まれないことです。
自分の望みを叶えるにはどちらが適しているかを考慮し、選択するとよいでしょう。
未成年者にも贈与契約は有効?保護者の同意が必要?
未成年者でも贈与契約を有効に結べるのか、保護者の同意は必要なのか、順番に解説します。
未成年者でも贈与契約は可能
未成年者でも贈与契約はできます。贈与は、贈与者の「あげます」という意思表示に対し、受贈者の「もらいます」という意思表示が合致すれば成立する契約です。最低限このことが理解できる年齢であれば、契約自体は成立します。
ただし、親権者の同意を得るか、親権者を代理として契約を結ばなければ後から親権者によって贈与契約が取り消される可能性があります。そのため、契約書を交わす際は、親権者の署名押印が必要と考えた方がよいでしょう。未成年者が署名できるなら署名押印し、それに加えて親権者も署名押印します。
また、贈与契約ではなく、ただの贈与であれば、贈与を受けるのに、年齢による制限はありません。たとえ0歳でも受贈者になれます。他方、贈与契約を未成年者としたい場合は、未成年者が意思表示ができなくても、親権者が合意して契約すれば、未成年者が贈与の事実を知らなくても契約は成立します。
未成年者の贈与契約時における親権者の同意が不要な場合
単に権利を得るだけの単純贈与契約であれば、親権者の同意は不要であり、親権者が取り消すこともできません。たとえば、事前に約束していたお小遣いをもらう場合などが該当します。
ただし、例えば贈与税の申告が必要なケースは単に権利を得るだけとはいえず、親権者の同意が必要です。なお、同意が不要な場合は、未成年者にも契約の内容を理解し意思表示ができる程度の意思能力が必要であるとされています。
未成年者との贈与契約書の作成方法と作成する際の必須事項
贈与契約書はどのように作成すればよいのでしょうか。未成年者との贈与契約書の作成方法と、作成する際の必須事項について解説します。
贈与契約書を結んだほうがいい理由
贈与契約の際には、契約書を交わすことをおすすめします。たとえ口頭での約束であっても贈与契約は成立しますが、契約書を交わしていないと贈与の存在を誰にも証明できず、履行していない部分に関しては気まぐれで解除するなどということも容易にできてしまうためです。
受贈者が未成年者であればなおさらです。契約が有効に成立したことや親権者の同意があったことを証明するのは難しく、受贈者が成年者である場合よりもトラブルになる可能性が高いといえます。
契約書を交わしておくことで、第三者に対して贈与の存在を証明でき、記録としても残せます。
贈与契約書の作成方法
当事者の記入欄も含めてパソコンで作成しても押印さえしていれば効力に支障はありませんが、当事者の記入欄に関しては直筆のほうが信頼度が上がるためおすすめです。
逆に、当事者の記入欄までパソコンで作成すると、誰でも作成できてしまい信ぴょう性に欠けてしまいます。
受贈者側は、未成年本人の署名押印だけでなく親権者の署名押印もあった方が安全です。このとき使用する印鑑は、必ずしも実印である必要はありません。シャチハタのような浸透印でなければ認印でも構いません。しかし、確かに本人が押印したという証明になるため実印での押印が望ましいです。
契約書は同じものを2通作成し、贈与者と受贈者それぞれが1通ずつ保管します。契約書作成後に、公証役場で確定日付を付与してもらえば、さらに確実性が増します。
贈与契約書を作成する際の必須事項
贈与契約書には決まった様式が用意されておらず、基本的には自由に作成が可能です。しかし、第三者に対して贈与の存在を証明するためには、贈与の内容を明確にしなければなりません。一般的に、以下のような項目を記載することが多い傾向にあります。
- 贈与者の氏名、住所
- 受贈者の氏名、住所
- 贈与の日付
- 贈与財産の内容
- 贈与の方法
- 贈与契約を締結した日
記載すべき事項を正しく記載し、贈与者と受贈者がそれぞれ署名押印します。受贈者が未成年者である場合は、未成年者の記入欄の下に親権者も署名押印します。
受贈者が幼児である場合など、自分で署名押印できない場合は、法定代理人として親権者の署名が必要です。ただ、たとえ上手く書けなかったとしても自署が可能であるならば、本人が自署するに越したことはありません。本人の自署があったほうが信憑性が増します。
代筆は、法定代理人である親権者のみが行えます。親権者以外の人が代筆した場合は、贈与が取消される可能性があることを覚えておきましょう。
贈与の対象が不動産である場合は、全部事項証明書などで登記の情報を確認し、そのとおりに記載します。
土地の場合 | 建物の場合 |
・所在 ・地番 ・地目 ・地積 | ・所在 ・家屋番号 ・種類 ・構造 ・床面積 |
未登記の建物である場合は、固定資産課税台帳記載事項証明書の情報を記載します。課税台帳の情報は、不動産の所在地を管轄する市区町村で確認できます。
未成年者との贈与契約書を作成する際のテンプレート集
前述のように、贈与契約書の書き方に特に決まりはありません。しかし、記載すべき事項を漏れなく盛り込んだ内容にし、記載する項目についてはミスなく記載する必要があります。
テンプレートを使用すれば、氏名や金額などの必要事項を書き換えるだけで簡単に作成が可能です。参考となるテンプレートをいくつか紹介します。
未成年者が署名できる場合の参考テンプレート
受贈者である未成年者が自ら署名できる場合は、たとえば以下のように記載します。
贈与財産が金銭である場合
贈与契約書 贈与者◯◯(以下「甲」という)と受贈者△△(以下「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結した。 第1条 甲は、現金◯◯万円を乙に贈与することを約し、乙はこれを承諾した。 第2条 甲は、第1条に基づき贈与した現金を、令和◯年◯月◯日までに、乙名義の下記預金口座に振り込むものとする。なお、この振込に要する費用は甲の負担とする。 銀行名:◇◇銀行 支店名:◇◇支店 口座種類:◇◇預金 口座番号:◇◇◇◇◇◇ 上記契約を証するため、本証書を2通作成し、甲乙双方が署名押印のうえ、それぞれ1通を保有するものとする。 令和◯年△月△日 (甲) 住所 ◯◯市△△◯丁目◯番◯号 氏名 ◯◯ 印 (乙) 住所 ◯◯市◇◇町◯番地 氏名 △△ 印 |
贈与財産が不動産である場合
贈与契約書 贈与者◯◯(以下「甲」という)と受贈者△△(以下「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結した。 第1条 甲は、甲の所有する下記の不動産(以下「本件不動産」という)を乙に贈与することを約し、乙はこれを承諾した。 土地 所在 ◯◯市△△◯丁目 地番 ◯番 地目 宅地 地積 ◯◯㎡ 建物 所在 ◯◯市△△◯丁目◯番地 家屋番号 ◯番 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階 ◯◯㎡ 2階 ◯◯㎡ 所在 ◯◯市△△◯丁目◯番地 未登記 種類 物置 構造 軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建 床面積 ◯◯㎡ 第2条 甲は本件不動産を、令和◯年◯月◯日までに乙に引渡し、かつその所有権移転登記を行う。所有権移転登記の手続きに関する一切の費用は乙の負担とする。 第3条 本件不動産に係る公租公課は、所有権移転登記の日までに相当する部分は甲、その翌日以降に相当する部分は乙の負担とする。 上記契約を証するため、本証書を2通作成し、甲乙双方が署名押印のうえ、それぞれ1通を保管するものとする。 令和◯年△月△日 (甲) 住所 ◯◯市△△◯丁目◯番◯号 氏名 ◯◯ 印 (乙) 住所 ◯◯市◇◇町◯番地 氏名 △△ 印 (乙の親権者) 住所 ◯◯市◇◇町◯番地 氏名 △☆ 印 (乙の親権者) 住所 ◯◯市◇◇町◯番地 氏名 △◇ 印 |
(乙)の箇所に、未成年者本人の住所と氏名を直筆で記入し押印します。親権者も同じように記入、押印します。
親権者が両親である場合、夫婦間で贈与契約に同意することについて了解が得られている場合には父母どちらかの署名があれば問題はありませんが、両方が署名押印できるのであればしておきましょう。
不動産の贈与は、贈与額に応じて印紙の貼り付けが必要です。金額記載がなければ200円分の収入印紙を貼り付けます。
未成年者が署名できない場合の参考テンプレート
以下は未成年者が署名できない場合の例です。「上記契約を〜」以前の文言は自ら署名できる場合と同様であるため、ここでは省略しています。
上記契約を証するため、本証書を2通作成し、甲および乙の親権者が署名押印のうえ、甲乙双方がそれぞれ1通を保有するものとする。 令和◯年△月△日 (甲) 住所 ◯◯市△△◯丁目◯番◯号 氏名 ◯◯ 印 (乙) 住所 ◯◯市◇◇町◯番地 △△法定代理人(父) 氏名 △◇ 印 (乙の親権者) 住所 ◯◯市△△◯丁目◯番◯号 氏名 △☆ 印 (乙の親権者) 住所 ◯◯市◇◇町◯番地 氏名 △○ 印 |
以上のように、親権者が法定代理人として署名することで、未成年者本人の署名がなくても有効な契約が成立します。
未成年者と贈与契約書を結ぶときの注意点
未成年者と贈与契約書を結ぶにあたって、注意すべきことはどのようなことでしょうか。注意点を2つ紹介します。
親権者が徹底的に財産を管理する必要がある
受贈者が未成年者である場合、贈与された財産は親権者が管理します。親権者はその財産を間違っても自身のために使ってはならず、未成年者の財産として徹底的に管理しなければなりません。決して、子どものものは親のものというわけではありません。
ただ預かるだけでなく、贈与税がかかる場合は申告する必要もあります。そして、未成年者が成年に達したときには管理していた財産をすべて未成年者本人に引き渡さなければなりません。成年に達した日以降は、どれだけ大金であっても未成年者本人が管理しなければなりません。
贈与時の口座の管理方法
贈与のつもりで受贈者名義の口座に振り込みをしても、贈与と認められない場合があります。たとえば、贈与者が通帳やキャッシュカードを管理していれば贈与が成立したとはいえず、税務署から相続税逃れのために名義を移しただけではないかと判断されてしまう可能性があります。
その場合、贈与財産ではなく相続財産とみなされ、相続税の対象となる場合があることに注意しなければなりません。
相続財産とみなされないためには、以下の2つに注意しましょう。
- 贈与財産が実際に受贈者に移転しているか
- 移転後の管理は誰が行っているか
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未成年に対する贈与や、贈与契約書の書き方について解説しました。未成年者への贈与は、注意すべき点が成年者の場合よりも多いことや、財産や口座の管理を完璧にこなせる人がなかなかいないことから、越えるべきハードルが高いです。
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この記事を監修したのは…
法律事務所A.I.Links
加藤 丈晴(かとう たけはる)
私は2012年に独立し、現在は四谷に事務所を構えております。他士業とのつながりを活かし、法務・労務・交渉の総合アドバイザーとして企業、個人を問わず数多くの御依頼をいただいております。今年で独立満10年となりますが、社会的・法的弱者の支援をすることを志して弁護士を目指した当時の気持ちを忘れることなく、依頼者の信頼に応えるべく弁護士業務に臨んでおります。
サイトURL:https://www.ai-links.jp/