相続限定承認手続きの流れやメリット・デメリット、注意点について紹介!
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相続限定承認とは?相続放棄との違いを紹介
通常遺産が負債よりも多ければ相続し、遺産よりも負債の額が多い場合には相続放棄をして債務を免れることができます。しかし遺産の範囲で負債を弁済すればいいという限定承認という手続きがありますが、実際に利用される件数は少なく、あまり理解されていないのが現状です。
遺産がプラスなのかマイナスなのか判断がつかない場合や、負債の方が多くとても支払うことはできませんが、被相続人の遺産の中にどうしても手放したくないものがある場合など限定承認を利用します。債務を自腹で支払う必要がないことは、相続放棄も一緒ですが、相続放棄との大きな違いは他の債務者に先んじて優先的に遺産の買取ができる制度があることや、相続放棄をした方を除く相続人全員で手続きを行わなければなりません。
相続限定承認の手続きの流れ
①限定承認は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続人全員から限定承認の申述書を提出します。相続放棄のように個々が判断するのではなく、相続人全員が足並みをそろえて手続きをしなければなりません(相続放棄をした方は相続人ではないので除く)。
相続財産の管理や、債務の弁済をする必要があるため、個々の判断で財産を好き勝手に使われると債権者を害することになるためです。
②裁判所で審査を行った後に、申出人に対して照会書が送付されます。
提出した書類を確認をし、不備があれば訂正を求められたり必要あれば追加の書類を求められます。
書類に不備がなければ、本当に手続きをしていいかの確認として、相続放棄と同じように裁判所から照会書が届きますので、各自がそれに回答します。
③受理されたことの通知書を受け取ります。
なお、相続人が複数いる場合は、その中からを相続財産の管理人を選任し、選任された方が代表して相続財産の管理や債務の弁済をしていきます。
相続限定承認に必要な書類
・家庭裁判所への申立書
・相続人全員を特定するための戸籍本一式
・相続人の住民票、被相続人の住民票除票
・収入印紙 800円
・連絡用切手代(案件により金額が変わるためその都度家庭裁判所に確認)
相続限定承認の注意点は課税対象になる
限定承認の際に注意しなければならない点としては、みなし譲渡所得課税があります。
現金など価値の上限がないもののみであれば課税されませんが、不動産や株式などのように価値に変動があるようなものは、取得価格よりも限定承認時の価格が増加している場合はその利益に対して税金が課され、それは被相続人の負担となり、準確定申告が必要になります。
単純承認には課税されることはない税金となるため、明らかに負債よりも資産の方が多い場合は限定承認を選択することにより、損をすることになります。
また、準確定申告は4か月以内にしなくてはならないため、諸手続きや、公告する期間、限定承認を選択するまでの期間など考えると、非常に時間がない中で手続きをすすめていかなければなりません。
相続限定承認のメリット・デメリット
相続する遺産の範囲内で、債務を弁済すればいいという、一見利益しかないように見える限定承認の手続きですが、実際に利用されることは単純承認や相続放棄に比べて少ないのには理由があります。メリットやデメリットをよく理解したうえで検討しなくてはなりません。
相続限定承認のメリット
一緒に住んでいない、普段連絡を取り合っていないなど、たとえ親子でも、詳細な資産や債務の情報を残さない限りは隠れた資産や債務を正確に把握するのは難しく借金などないと思っていても、隠れた債権者から、いつ請求がとどくかわかりません。
限定承認の手続きをしておけば、あとから債務が判明したとしても、引き継ぐ遺産の範囲内で、負債を弁済すればいいため、相続人が自腹を切って支払いをすることはありません。
また、相続人に金銭があればですが、債務が超過している場合にも相続放棄と違い、自宅や大事な美術品のようにどうしても人の手に渡したくないものを買い取ることができます。
相続限定承認のデメリット
デメリットは、単純に相続をする場合や、相続放棄をするよりも手続きが煩雑で、専門家に任せた場合に他の手続きよりも、費用が高額になるケースが多い。不動産に対しての譲渡所得税など、単純承認にはなかった税金も発生する可能性がありますので、遺産や負債の金額がはっきりしている場合は限定承認を選択すると結果的に負担が大きくなることもあります。
また、相続放棄や、単純承認のように相続人全員で手続きをしなければならないので、一人でも反対していると手続きをすることができません。
税金に関しては、本来単純承認すれば課税されることのなかった先述のみなし譲渡所得課税がかかる可能性がありますので、結果的に損をしてしまう可能性もあります。
相続限定承認後の手続き
①限定承認が受理された旨の通知が届いたら限定承認をした官報公告をします。
限定承認者は、債権者や受遺者に対して遺産の範囲で弁済をしていくことになりますが、遺産の額が債務の額に足りない場合は金額に応じて按分して弁済するため、まずは債権者を洗い出さなくてはいけません。
そこで2か月を下らない期間を定め、限定承認をした旨や債権者や受遺者がその期間中に申し出をしないと弁済から除斥される旨を官報で公告します。
限定承認者は5日以内、相続財産管理人が選任された場合は、10日以内に官報公告をしなければならないため、申し立てと並行して官報販売所で、官報の申し込みや掲載予定の調整をしなければなりません。
②知っている債権者や受遺者への催告
官報公告を受けても、申し出をしない債権者や受遺者は弁済を受けるリストから外されてしましますが、限定承認者が把握している債権者には個別に申し出をする旨の催告をしなければなりません。
③相続財産の換価
限定承認者は、預金等の解約手続きをし、必要あれば不動産などを売却し、それを原資として債権者に支払いを行います。
仮に遺産で返せない額の記載があれば、債権額に応じた割合で按分して支払いをします。不動産などに換価に売却が必要な場合は競売にかけて現金化をします。
④先買権の行使
自宅不動産、特定の動産など相続財産の中にどうしても欲しいものがある場合は、先買権を行使して限定承認者は優先的に買取をすることができます。適正な価格での取得が必要になるため、不動産であれば不動産鑑定士などに依頼をし、価格を算定してもらい、その金額で買い受けることになります。多額の借金があるが相続放棄をしてしまうと、すべてを手放すことになるため、大切なものだけは守りたいという場合には効果的です。
⑤遺産が残ったら遺産分割協議
全ての債権者や受遺者に支払いを済ませても遺産が残った場合は、相続人が相続する対象となるため、相続人が複数いる場合は、通常の相続と同じように遺産分割協議します。
誰が何を相続するのかの話し合いをし、金銭の分配や必要があれば、各種の名義変更及び相続手続きをします。
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この記事を書いたのは…
司法書士
御法川 明(みのりかわ あきら)
平成20年司法書士試験合格