底地の相続評価額とは?相続のメリットや注意!
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底地って何?借地との違いも
底地とは、建物所有を目的とした借地権の付着している土地のことで、貸宅地とも呼ばれます。
土地の所有者は、当該土地を借り受けた人から地代という土地の賃料収入を得ることができますが、一般的に地代は低額であるケースが多いので、固定資産税、都市計画税を支払うと実質的な手残りはほとんどないという地主さんも少なくありません。また、土地上に設定された借地権は非常に強い権利ですので、一度貸した土地は半永久的に戻ってこないとも言われています。
借地権とは、建物を建てて土地を利用するために、当該土地所有者である地主さんに対して地代を支払って土地を使用する権利のことです。地主さんの許可なく借地権付建物の売買、建替えはできませんが、借地権は非常に強い権利ですので、仮に地主さんから理不尽な立退き要求などがあっても安易に応じる必要はありません。
底地を相続するメリットとデメリットをご紹介!
底地を相続するにあたってのメリットですが、地代という借地人からの賃料収入が受け取れるようになることです。また土地賃貸借契約書に金銭を支払う旨及び具体的な金額が記載されている場合には、借地契約の更新時に更新料、借地人が建物を建替えるときには建替え承諾料を請求することができます。借地人が建物を第三者に売却するときには譲渡承諾料を受け取ることができます。
底地を相続するにあたってのデメリットですが、地代が極端に安い底地、借地人または隣地とのトラブルがある底地、土壌汚染の可能性のある底地、崖地上の底地、再建築不可の底地などの場合には注意が必要です。
地代が極端に安いと固定資産税や都市計画税を支払うと手残りがほとんどありません。このような底地を何も対策しないままで保有していると引き継がれるお子様たちが相続時に大変な思いをされてしまうことになります。
借地人とのトラブルは借地非訟のリスクがありますし、隣地とのトラブルは確定測量が必要になったときに境界確認の立会いを拒否されるリスクがあります。どちらも具体的な紛争に発展してしまった場合には多額の弁護士費用の負担や長期間に渡る心労を抱えることになります。
メッキやドライクリーニングなどの有害物質を取り扱う工場を借地人が経営していたり、隣地がこのような有害物質使用特定施設の場合には土壌汚染のリスクがあります。土壌汚染が発覚したときに借地人や隣地が汚染除去してくれない場合には土地所有者に汚染除去の責任が発生する可能性があります。土壌汚染の除去は一般的には多額の費用が発生します。
崖地上の底地は崖崩れを未然に防ぐために擁壁工事をしなくてはいけないリスクがあります。もし擁壁に構造的に問題があって崩落し、通行人や隣地に被害を与えてしまった場合にはほとんどのケースで土地所有者が責任を負うことになると考えられます。擁壁工事には多額の費用が発生します。
再建築不可の底地は火事などによって建物がなくなった場合には新たに建物を建てることができません。この場合借地権は消滅しますが更地になったことで高額の固定資産税の負担や定期的な草むしりなどの費用負担が発生します。また再建築不可に該当する更地はなかなか買主が見つからないケースがほとんどです。
底地相続に必要な手続きを解説!
底地を相続する際に必要な手続きとして、まずは相続人全員で底地を誰が相続するかを決めるための遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成することになります。
その後、法務局に相続人全員の印鑑証明書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、被相続人の死亡時の本籍入りの住民票または戸籍の附票、相続人全員の現在戸籍の謄本、底地を取得する相続人の住民票、底地の評価証明書、相続関係説明図と一緒に相続人全員で作成した遺産分割協議書を提出します。
一般的にこれらの作業は、相続登記用の委任状を作成して司法書士に依頼される方がほとんどかと思います。煩雑な手続きや煩わしい手間を考えると登記の専門家にお任せすることをおすすめします。
底地を相続する際の注意点をチェック!
底地を相続するにあたって注意して頂きたいポイントについていくつか列挙してみました。
各借地人との土地賃貸借契約書はあるか?
先代から引き継いだ底地の場合には、土地賃貸借契約書を紛失してしまっており詳しい借地契約の内容がわからないまま相続人が引き継いでいるケースを少なからずお見受けします。相続した底地の賃貸借契約内容を把握するためにも、土地賃貸借契約書が見つからない場合には、借地人に地主側にて相続があった旨を伝えて土地名義人の変更を理由に改めて契約書の復元をすることもご検討ください。
各借地人の実際の住所及び連絡先を知っているか?
相続した底地上の借地人の住所が、土地賃貸借契約書に記載されている住所と異なっていたり、連絡先が変わっていたりすることがあります。実際に借地人が住んでいる住所、連絡の取れる連絡先かどうかを相続した時点で確認しておくようにしましょう。借地契約の更新や地代滞納があったりした場合に借地人と連絡が取れないと大変困ります。
地代は適正価格か?
底地の地代は東京23区内であっても、非常に安い価格設定で賃貸されている地主さんが多い印象があります。これは土地の原賃貸借契約設定時には、現在のように土地価格が高騰しておらず、当時の貨幣価値から算出されている賃料設定のまま現在に至っていることが原因かと思われます。土地価格が上がれば当然、固定資産税や都市計画税も上がりますので、当時のままの賃料設定では、地代をもらっても税金を支払うと手残りがほとんど残らないということになります。相続した時点で将来的に地代を増額すべきかどうか、適正賃料が取れているかどうかについて把握しておくようにしましょう。
「各借地人との間にトラブルになる可能性はあるか?」
相続した底地がご自身の住んでいる場所から遠方にあったり、借地人と特に面識がない場合には、無断で借地権譲渡や建物の建替えがないかチェックしましょう。借地権付建物の直接売買はなくても借地人が当該建物に地主に無断で譲渡担保契約を設定し、それが実行されていたり、非堅固な建物から無断で堅固な建物に改築されていたりするケースがないとは言い切れません。面倒かもしれませんが、一度はご自身で直接現地を確認してみましょう。
底地の相続評価額の計算方法を解説!
底地の相続税評価額については、路線価を基準に算出します。路線価は、毎年国税庁によって定められる路線価図に各道路に接する土地評価の算定基準となる価格と借地権割合が記載されていますが、底地の評価額は、路線価の更地価格から借地権割合を引いた額になります。
路線価の具体的な見方ですが、路線価図上で300C、250Dなどの数字とアルファベットが表記されていますが、300、250という数字は30万円、25万円という1㎡あたりの金額を表し、C、DはC(底地権30%借地権70%)、D(底地権40%借地権60%)という権利割合を表しています。
それでは具体的に計算してみましょう。
「面積が100㎡、路線価表記が300C」の底地の相続税評価額は、
300,000円(㎡)×100㎡×30%(底地権割合)=9,000,000円(底地の相続税評価額)
※更地100%からC地区の借地権割合70%を差し引いて底地権割合と表記しました。
「面積が150㎡、路線価表記が250D」の底地の相続税評価額は、
250,000円(㎡)×150㎡×40%(底地権割合)=15,000,000円(底地の相続税評価額)
※更地100%からD地区の借地権割合60%を差し引いて底地権割合と表記しました。
路線価図に表記されている借地権割合はA~Gまでありますが、都市部の住宅地においては、C、D、E地区が、商業地においてはA、B地区が多い印象があります。
路線価はインターネットで簡単に見ることができますので、ぜひ一度ご所有の底地の相続税評価額についてチェックしてみてください。
尚、最終的な底地の相続税評価額については、税理士や不動産鑑定士などの専門家が路線価から算出した評価額に土地の形状に応じた間口狭小補正、側方路線影響加算、奥行価格補正などの様々な補正を行ったうえで算出します。
莫大な相続税が払えない時の対処法とは
底地を含む不動産をお持ちの地主さんの中には、所有する不動産に比べて預貯金が少ない方を一定数お見受けします。底地の評価額は、地代が安いにもかかわらず高額になるケースが多いので、納税のための資金を準備する必要がある場合には、底地を売却することも選択肢として視野に入れておいたほうがよいでしょう。
しかし、底地は更地などの通常の不動産と違ってそう簡単に売却できるわけではありません。底地上に存在する借地権がある限り、いくら相続税を払うためという理由があっても借地人から土地を明け渡してもらうことはほぼ不可能です。基本的には現状のままで売却するしかありません。
それでは実際にどうやって底地を売却するかというと、
・仲介業者に売買交渉を依頼して直接借地人に売却する
・現状のまま底地買取業者に売却する
以上二通りの方法になりますが、それぞれどちらもメリットデメリットがありますのでその点を踏まえたうえで適切な判断をするようにしましょう。
仲介業者に依頼して借地人に直接売却するメリットですが、底地買取業者に売却するよりも売却金額が高くなる可能性があります。
デメリットとしては、仲介手数料のほかに測量や地中埋設管撤去などの予期せぬ費用負担がかかることがあったり、当初の予定通り借地人に底地を購入してもらえない場合には底地の売却計画が頓挫してしまい納税資金が捻出できなくなります。売買交渉に長期間かかっても構わない、底地が売れ残っても構わない、納税資金に困っていないという地主さんの場合は別ですが、計画的な相続対策が必要な地主さんには不向きです。
現状のまま底地買取業者に売却するメリットですが、短期間で確実な底地の現金化が可能です。納税資金確保などの様々な相続対策を税理士と計画立ててスケジュールに従って進めることができます。時期や状況によっては、契約不適合責任免責特約の記載や測量費用買主負担を底地業者に条件として承諾してもらうことで、地主さんのリスクや費用負担を回避できます。
デメリットとしては、借地人に直接売却するよりも売却金額が低くなる可能性があります。また、借地人との間でトラブルを巻き起こすような業者に売却してしまうと地主さんもそのトラブルに巻き込まれる可能性があるので底地買取業者の選択は慎重に行わなければいけません。
地主さんや底地実務に詳しくない専門家の中には「底地が売れ残ってもよい状況」なのか、「確実に短期間の間で底地を換金して納税資金を確保しなければいけない状況」なのかの認識があいまいなままで、ただ単に高く売れる可能性があるというだけで「借地人との直接交渉による売却」を選択されてしまう方をお見受けすることがありますが、借地人との売買交渉が不調に終わった底地については原則として業者は買取りをしてくれません。もし、この時点で相続税の納税資金を確実に確保しなければならない事態に気付いたとしても、底地を換金するのはもう手遅れです。
相続対策で底地の売却を将来的に検討される可能性がある場合には、事前に税理士や不動産鑑定士、相続診断士などの専門家に相談しておき、いざ売却というときに「借地人と直接交渉して売却する方法」を選択したほうがよいのか、それとも「底地買取業者に一括で売却する方法」を選択したほうがよいのかについて、あらかじめご自身にとってベストな選択肢を知っておくことが重要です。
底地は売った方が相続税対策になる?気になる買取相場とは
底地を売却して賃料収入の高い不動産に資産の組み換えを行ったり、相続が発生したときに備えて相続税の納税資金として事前に底地を換金しておくことは、地主さんが置かれている状況次第では相続対策として大変有効な手段です。
底地を売却するにあたっての注意点ですが、底地は一般的な更地などの不動産とは異なり流動性は極端に低く、一般の買主さんが評価額どおりに底地を買うことはほとんどありませんので、原則として売却先は借地人か底地買取業者のどちらかになります。
底地の売却金額は、借地人に直接購入してもらえる場合と底地買取業者に購入してもらう場合では、借地人のほうが底地買取業者よりも高い金額で購入してくれる可能性がありますが、短期間での確実な底地の現金化を計画的に行わなければならない場合には、借地人との売買交渉長期化のリスクや交渉決裂による売れ残りリスクを考慮して、底地買取業者への一括売却を検討する必要があります。
それでは業者による底地の買取金額はいくらぐらいになるのか?どうやって買取金額を算出するのか?についてご説明します。
底地の買取金額の算出ですが、各借地権が存在する区画ごとに個別の土地の条件によって評価、算出していきます。各借地人が個別に底地上に建物を所有し、各借地人が自分の借地権を個別に土地所有者に主張することができますので、複数の借地人がいる場合には一体の土地であっても画一的には評価することができません。
まずは土地の個別条件によって、買取金額算出の対象となる底地が更地だった場合の業者の買取相場を算出します。
土地の個別条件は、一般の土地売買と同じように1区画あたりの土地面積(そのエリアで最も流通している土地面積より大きすぎたり小さすぎたりする場合には評価額の増減を考慮)、形状(間口、道路との高低差、奥行き、整形地か不整形地か)、開発行為の必要の有無、現況私道負担部分やセットバック部分の買取価格からの除外(売買対象は正味有効宅地面積)、全面道路幅員による評価額の増減、道路付け(建築基準法上の接道義務を満たさない場合は再建築不可物件としての評価)などについて、各借地権が存在する区画ごとに調査をしてそれぞれの物件ごとに細かい状況を把握します。
そのうえで各借地人の属性、各土地賃貸借契約の内容、各借地人との過去経緯について総合的に考慮して底地全体の買取金額を算出しますが、おおまかには路線価を基準とした底地権割合の30%から80%の間くらいの金額が買取価格としてのひとつの目安になります。
※業者が提示する底地買取価格は借地人との売買交渉がされていないことが前提になります。
底地の相続税は誰に相談すればいい?おすすめをご紹介!
底地を多数所有している地主さんが、相続発生時に一体いくら相続税を支払う必要があるのか事前に把握しておきたいとき、実際に相続が発生して納税のために相続税の支払い額の計算をしなければいけなくなったときには、必ず相続実務に強い税理士に相談してください。
一般の方の中には、税理士であれば誰でも相続税の申告ができるとお考えになられている方もいらっしゃいますが、法人会計をメインにしている事務所も多数あり、税理士全員が同じスキルを持っているというわけではありません。
インターネットで検索した時に、相続業務を行うという税理士事務所がたくさんあってお悩みになるかもしれませんが、相続業務は税理士にとって単価が大きく臨時収入として期待する税理士も多く、相続税の申告書自体は比較的容易に作成できることから、本来税務リスクが大きいにもかかわらずリスク度外視で引き受ける税理士事務所も少なくありません。
そこで相続に精通している税理士かどうかを見極めるためにいくつか質問をしてみましょう。
これまで何件の相続税申告の経験があり、年間申告件数は?
統計的に一般的な税理士1人が相続税申告書を提出するのは年間1件前後、年間5件あれば多いほうですが、これが相続実務に強い税理士事務所の場合だと担当者ベースで30~50件ですので、担当者1人あたりが年間30件以上の実務対応をしている税理士事務所であればまずは安心かと思います。
業務対応についてどのような組織編成で、どういった取り組みをしているか?
大きな事務所だから安心というわけではありませんが、小人数で業務を行っている税理士事務所に依頼する場合だと急なアクシデントに対応出来る体制が整っているかどうかは非常に大事なポイントです。例えば依頼する税理士に事故があったときはどういうリスクヘッジを図るのか?についてはぜひ質問しておくべきでしょう。
報酬体系は事前に明確にされているか?
相続実務に数多く取り組んでいる税理士事務所は報酬体系が明確です。ホームページで公開している事務所もありますが、報酬体系についての質問に対して、担当者がしっかり説明できるかどうかについてチェックしましょう。また報酬が安いという理由だけで税理士事務所を選んでしまうと、時間や手間をかけずに適当な申告をされてしまい後々税務調査が入り追徴課税されてしまうリスクがありますので、専門性や経験を重要視して税理士選びをするようにしてください。
以上が相続税の相談先として選ぶべき税理士のポイントになりますが、それでも税理士選びにお悩みになる場合には、相続診断士などの身近な専門家に信頼できる税理士を直接紹介してもらうこともおすすめの方法です。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください
この記事を書いたのは…
株式会社ディア・エージェンシー 代表取締役
山川 渡(やまかわ わたる)
1979年徳島県生まれ。宅地建物取引士、相続診断士。
大東文化大学卒業後、多種多様な商材を扱う営業代行のベンチャー会社勤務を経て、2008年に底地を専門に扱う不動産会社に転じ、地主さんと借地人さんをメイン顧客とした権利関係調整業務に従事する。2012年、底地、借地権、古アパート(居抜き)等の権利付不動産のコンサルティングをメインとした株式会社ディア・エージェンシーを設立。現在に至る。
サイトURL:http://www.dear-a.co.jp/