共有持分権とは?権利の意味やメリット・デメリットを解説!
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共有持分権とは?共有持分・共有名義についてもチェック!
共有持分権とは、1つの不動産を2人以上の所有者で共有する場合、各々の不動産全体の持分割合に応じた権利を指します。
例えば5,000万円の不動産を、甲と乙の2人が共同で所有する目的で購入する場合、不動産の名義人は甲と乙となります(共有名義)。なお、共有名義人は夫婦でも他人でも問題ありません。
購入の際の購入費用5,000万円のうち、甲が3,000万円・乙が2,000万円を負担した場合、共有持分は甲が5分の3・乙が5分の2となります。
なお、1つの不動産を甲が5分の3所有し、乙が5分の2所有するというように分けるのではなく、甲・乙が共に不動産全体を使用できます。
ただし、不動産の短期賃貸借契約締結(例:土地は5年以内、建物は3年以内)や、共有物の使用方法の決定等の管理行為を行うとき、共有持分の価格の過半数を有する甲は単独で行えます。一方、乙は共有持分の価格が過半数に満たないので、甲の同意を得ない限り管理行為は行えません。
このように、共有持分の割合によっては単独で権利を行使できる場合もあれば、共有者の同意を得ないと行使できない場合もあるのです。
共有持分にするメリット・デメリットって何?
共有持分にすると住宅ローンを利用する場合は有利となる一方、売却等を共有者単独でできない制約もあります。
共有持分のメリット
主に夫婦が共同で住宅ローンを組むときに有利な点、税制上の優遇措置を受けられる点がメリットです。
住宅ローンを組む際に控除が受けられる
共有名義で不動産を購入する場合、夫婦で住宅ローンを組むと住宅ローン控除が夫婦双方で受けられます。
毎年末の住宅ローン残高または住宅取得価格のうち、少ない方の金額1%分が10年間にわたり所得税額から控除されます。ただし、最大控除額は1年目〜10年目が400万円、11年目〜13年目は80万円と決められています。
夫婦の片方のみが不動産を所有する場合、5,000万円の不動産の購入に住宅ローンを組むと
5,000万円×1%×10年=500万円
となりますが、最大控除額400万円に抑えられてしまいます。
一方、夫婦で借入金5,000万円をそれぞれ2,500万円負担した場合、
・夫:2,500万円×1%×10年=250万円
・妻:2,500万円×1%×10年=250万円
となり、住宅ローン控除を夫婦双方で受けられるため、実質500万円分が控除できます。夫婦双方で住宅ローンを組んだ方が、控除の適用範囲は広がります。
不動産売却の際の控除額も増える
不動産売却する場合、譲渡所得税が課せられますが「3,000万円の特別控除」という特例が適用されるケースがあります。
この特例が適用される場合、不動産の売却した利益が3,000万円以内なら、その全額が控除対象です。更に夫婦の共有不動産を売却する場合、夫婦双方が3,000万円の特別控除の対象なので、夫婦各々の利益から3,000万円ずつ控除できます。つまり、実質6,000万円分の特別控除が受けられます。
共有持分のデメリット
所有者単独で不動産の売却等ができない点、知らない人が共有者になるおそれがある点はデメリットといえます。
売却等が自由にできない
共有名義の不動産は売却、大規模修繕、抵当権の設定、長期間の賃貸契約締結等をはじめとした処分行為について、持分割合にかかわらず全員の同意を必要とします。
そのため、共有者の一人が処分行為に反対すれば、不動産を今後どうするか話が進まなくなります。
ただし、建物の壁紙の交換、雨どいの補修等のような現状維持のための修繕は、各共有者が単独で行えます。
いつの間にか知らない共有者となっている可能性がある
共有不動産の処分行為は共有者全員の同意が必要であるものの、共有者本人の共有持分は自由に売却できます。基本的に共有持分を売却する場合、他の共有者に売却する旨を伝えるのがマナーです。
しかし、何らかの理由で他の共有者が売却した事実を知らない事態はあり得ます。気づいた頃には、知らない人が共有者になっているケースもあるでしょう。 不動産を勝手に使用されるおそれがあるので、共有者の変更には注意が必要です。
共有持分権者にかかる税金や費用を解説!共有不動産の固定資産税は誰が払うの?
共有名義の不動産にも固定資産税がかかります。しかし、税務署から共有者それぞれに納税通知書が送付されるわけではありません。
共有者の誰かに納税通知書が納付され、共有者全員が連帯して納付する連帯納税義務を負います。つまり、持分に対してのみ納税義務を負うのではなく、各々が独立かつ連帯して全額について納付する義務を負います。
共有者の1人が全額納付すれば他の共有者の納税義務も無くなります。1人だけで負担するのが嫌なら、共有者間で話し合い、事前に負担割合を決めておく必要があるでしょう。
なお、共有不動産を維持するための修繕費等も負担が必要です。軽微な修繕は共有者単独で可能ですが、大規模修繕は共有者全員の同意が必要となります。
共有持分は売却できる?その方法とは
共有不動産の売却は共有者全員の同意が必要です。一方、共有持分だけの売却ならば共有者単独で自由に売却できます。
売却の方法としては、まず他の共有者に持分を買い取ってもらう方法があります。相手方と共有持分売買契約を締結し、契約成立後に持分の移転登記を法務局で行います。
もし、相手方が買取に応じてくれない場合は、他の人に持分を譲渡しても構いません。また、共有持分買取業者に買い取ってもらえる場合があります。
買取業者に持分を売却する際、まず不動産の査定をしてもらった後、金額を提示してもらいます。提示金額に納得できたら、契約締結後に共有持分の名義を書き換え、売却代金を得ます。
なお、共有持分のみの買取価格は時価より相当安くなるため、共有持分を売却しようと考える方は、そのことを理解したうえ進める必要があります。
不動産の共有持分を放棄するとどうなる?手続きや流れ
共有持分の放棄も共有者単独で自由に行え、放棄された持分は他の共有者に移ります。
放棄された共有持分の帰属について
放棄された持分は共有者が2人だけの場合、共有者の1人が放棄すると、持分全てが他の共有者へ移ります。しかし、共有者が多いと持分の帰属する割合はやや複雑となります。例をあげて計算してみましょう。
(例)8,000万円の不動産を甲・乙・丙3人で共有していた場合
・甲:共有持分割合4分の2(4,000万円)
・乙:共有持分割合4分の1(2,000万円)
・丙:共有持分割合4分の1(2,000万円)
乙が持分を放棄すれば、甲と丙が持分割合に従い4分の1を按分します。
甲:4分の1×3分の2=12分の2(共有持分割合は元の4分の2と合算して、3分の2)
丙:4分の1×3分の1=12分の1(共有持分割合は元の4分の1と合算して、3分の1)
共有持分を放棄する手順について
共有持分の放棄は共有者が単独で可能です。ただし、登記手続きは他の共有者と協力して手続きを進めます。
1.共有持分の放棄を決める(放棄前にその意思を他の共有者へ伝えておく方が良い)
2.持分を放棄する共有者・他の共有者がそれぞれ必要書類を準備
3.共有不動産の所在地を管轄する法務局で、持分全部移転登記を申請
4.登記完了後、新たに発行された登記識別情報通知・登記完了証等を受領、同時に移転不動産登記簿謄本を取得
持分を放棄する共有者・持分を取得する共有者双方が、次の必要書類を準備します。
(1)持分を放棄する共有者
・登記申請書:法務局で取得
・登記済権利証または登記識別情報
・印鑑登録証明書:市区町村役場で3か月以内に発行された書類を取得
・固定資産税評価証明書:市区町村役場で取得
・実印
・本人確認書類:運転免許証、パスポート等
(2)持分を取得する共有者
・現在の住所が載っている住民票:市区町村役場で取得
・認印
・本人確認書類:運転免許証、パスポート等
その他、登録免許税(固定資産税評価額の2%)を納付します。
共有持分にする際の注意点
不動産を共有したままにしていると、共有者1人が亡くなった後、複数の相続人が共有者となる場合があります。相続による不動産の共有者が増えてしまうと、権利関係が複雑となり、誰と誰が共有している不動産なのかわからなくなるおそれもあります。
共有不動産をどのように管理または処分するか、なるべく早い段階で決めておかないと、子や孫の代で所有権に関するトラブルの発生が懸念されます。
共有者間や相続人間で紛争となる不安があれば、共有不動産をどのように管理・処分するか、弁護士や司法書士のような法律の専門家に相談した方が良いでしょう。専門家の視点から有益なアドバイスが期待できます。
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この記事を監修したのは…
株式会社プロサーチ 代表取締役
松尾 企晴(まつお きはる)
「不動産を持っていて相続に悩む方の問題解決」を専門とするプロサーチ株式会社代表取締役。家族信託、
アパートなどの不動産相続対策など幅広いジャンルに精通しこれまで5,000人以上の悩みや不安を解決。
『話をじっくり聴く』、『お客様のありたい姿を引き出す』という提案ありきではない姿勢に定評がある。