【相続事例】親の介護をした長男が遺産分割協議で寄与分を主張した事例

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遺産相続

相続手続きは、想像以上に複雑で、思わぬトラブルを引き起こすことがあります。特にきょうだいがいる場合や、その配偶者が意見を述べてくると、事態はさらに複雑化します。本記事では、あねがわ司法書士事務所の姉川智子司法書士が、長年介護をしてきた子どもが遺産分割で不公平を感じ、きょうだい間で意見が対立した結果、手続きが進まなくなり、精神的にも疲弊してしまった事例をもとに、その解決策を解説します。

きょうだい3人の遺産分割協議に現れた“妹の夫”

佐藤一彦さん(仮名・71歳)は、2ヵ月前に亡くなった母キヨ子さん(仮名・93歳)の相続財産について、弟の誠二さん(仮名・65歳)と妹の敦子さん(仮名・62歳)のきょうだい3人で誰にどう分けるかの遺産分割協議をしようと持ちかけました。

キヨ子さんの財産は、預貯金2,000万円、自宅不動産1,500万円、その他の資産500万円、総額4,000万円ほどの規模でした。

3人で話を進める予定でいたところ、妹敦子さんの夫の秀敏さん(仮名・68歳)が、「自分の親の相続の際に自分で手続したから、全部わかっているから任せてもらいたい」と話し合いに入ってきました。

相続手続についてわかっているならありがたいと、一彦さんは秀敏さんの提案を受け入れることにしました。しかし、いざ話し合いの場では、秀敏さんはきょうだいそれぞれの意見は聞かずに「法定相続分のとおりに財産を分けないといけないから」と、母親の財産はきょうだいできっちり三等分する前提で進んでいきました。

妹の夫「介護してたとしてもダメ!」従ったが……司法書士からの言葉に“大後悔”

一彦さんとしては、キヨ子さんと長年同居してきたのは自分であり、加えてキヨ子さんの晩年は一彦さんの妻が自宅で介護にあたっていたため、妻にもいくらか財産を分けてほしいと思っていました。その話を秀敏さんにしても「義姉さんは相続人ではないからそれはダメだ!」と聞き入れてもらえませんでした。

一彦さんもそれ以上強くは言えず、秀敏さんの提案通りの遺産分割協議をまとめることにしました。秀敏さんの作成した遺産分割協議書に相続人全員の実印を押して金融機関に持参したところ、「敦子さんの印影が実印と違うのでやり直してきてください」と言われました。よく見ると、確かに印鑑証明書の印影とは少し違うようでしたが、とても似ていたので誰も気づきませんでした。

仕方なくまた遺産分割協議書を作り直して全員の印鑑を押しなおして預金の解約はできたものの、今度は不動産の名義変更をしようと法務局に持参したところ、「不動産の表示が登記簿と違う」ということでまた修正しなければなりませんでした。

何度も作り直して、そのたびに手続が止まり、それぞれの窓口に何度も出向いたことで、一彦さんはすっかり疲れてしまって、きょうだいの仲も次第にぎくしゃくしていきました。

そんな折に相談に乗ってもらった司法書士から、財産は必ずしも法定相続分で分けないといけないわけではないこと、相続人の親族へも遺産を分けることが可能な制度があることを知って、大いに後悔しました。遺産分割協議のやり直しもできるとのことでしたが、きょうだいの仲がこじれてしまった今では、やり直しの話し合いはまとまりそうにもありません。

「介護をした妻」から“特別寄与料の請求”をすることも可能だった

民法第906条には「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と規定されており、法定相続分の規定は一つの目安にすぎません。また、故人について、相続人の親族が無償で介護していたなどの特別の寄与が認められるものについては、特別寄与料の請求が可能です。

以前は相続人でないと寄与分の請求も認められませんでしたが、2018年の民法改正により、相続人以外の親族からの請求も可能となりました(民法第1050条第1項)。

遺産分割協議には、まず相続人それぞれの想いをよく聞いて、故人に対する生前の貢献度や、死後に不動産やお墓・お仏壇などの祭祀を継承する人にかかってくる費用などを考慮してバランスを取っていくことも大切です。そのうえで法律の規定に沿って全員が納得いくように分けていくためには、専門家が関与し、アドバイスを受けることが重要になってきます。相続の事情は千差万別ですので「過去に手続した経験があるから大丈夫」とは必ずしも限りません。

遺産分割のトラブルを避けるために。今すぐできる対策

一度まとめた遺産分割協議を再びやり直すことは現実的にも難しくなるため、相続が開始したら早い段階から専門家に相談することをお勧めします。

また、遺産の分割で揉めないよう、元気なうちに自身にはどのような財産があるか、誰にどう引き継いでほしいのかを遺言やエンディングノートに残しておくことも大切です。あなた自身の言葉で伝えることが、死後のトラブルを防ぐことに繋がります。

あなたの大切な人たちが将来揉めることがないよう、今のうちからご家族で話し合う機会を作っていかれることを願っています。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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この記事を書いたのは…

姉川 智子

司法書士

姉川 智子(あねがわ ともこ)

宮崎県出身。福岡大学法学部卒。平成21年司法書士試験に合格後、博多や東京にて司法書士業務に従事。令和5年より、佐賀県鳥栖市にてあねがわ司法書士事務所を開設。相続登記、不動産登記の他、親族トラブルへの相談対応も多数。自身も16歳の時に実父を亡くす経験をしており、相続手続は「想い」と「手続」どちらの対策も必要と感じ、司法書士として多数の相続手続に携わる傍ら、縁ディングノートプランナーとして想いを遺す縁(エン)ディングノートの普及に努める。プライベートでは1男1女の母として育児に奮闘中。

サイトURL:https://anegawa-legal.com/ https://enman-souzoku.co.jp/media/inheritance-experts/sagatosu-anegawa-shihoshoshi/

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