【事例】遺留分対策の「教育資金贈与」と「孫への遺贈」で家を守った!親の面倒を見ない弟が実家を狙う

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遺産相続

「親の面倒を見ないのに、実家を渡せと言う弟」と長女の相続トラブル事例。認知症のタイムリミットが迫る中、「孫への遺贈」と「教育資金の一括贈与(非課税枠1,500万円)」を活用し、弟の遺留分を減らして実家を守り抜いた専門家の解決策を解説します。

「先生……弟は、私たち家族をこの家から追い出して、実家を自分のものにしようとしているんです」

相談室に現れた60代の女性(Hさん)は、同席したお嬢様の手を強く握りしめ、震える声でそう切り出しました。

Hさんは現在、ご両親と同居し、日々の介護や身の回りのお世話を一手に引き受けています。

一方、弟さんは昔からご両親に多額の金銭的援助を受けていたにもかかわらず、親の面倒は一切見ず、寄り付くことすらありません。

それどころか、弟さんは最近になってこんな暴言を吐くようになったのです。

「親が死んだら、姉貴家族には出て行ってもらう。この家は俺がもらうからな」

ご両親の思いは明確でした。「自分たちの面倒を見てくれているHさんと、可愛い孫たちに財産を残したい。もう長男には1円も渡したくない」。

しかし、Hさんの胸には激しい怒りとともに、底知れぬ不安が渦巻いていました。なぜなら、実家(土地・建物)の一部を、なぜか弟さんが持っていたからです。

この記事では、タイムリミットが迫る中、理不尽な要求をする親族から「家族と実家を守り抜いた生前対策の解決事例」をご紹介します。

1. プロの診断:「意思能力」と「不動産の共有」という2つの時限爆弾

Hさんのお話を聞き、財産状況(実家の土地建物4,000万円、預金4,000万円)を確認した瞬間、私(専門家)は強い危機感を覚えました。

「これは、一刻の猶予もない状態だ」と。

当時の状況がいかに危険だったか、プロの視点で解説します。

マズい点①:タイムリミット(認知症の進行)が迫っている

専門家:

「Hさん、お父様とお母様は、最近物忘れなどはないですか?」

Hさん:

「実は……最近、日によって言っていることが分からなくなることがあって……」

専門家:

「そうですか。このまま認知症が進み『意思能力(物事を正しく判断する力)』がないと診断されると、遺言書を書くことができなくなります。そうなってしまうと、法定相続分通り、弟さんが財産の半分を主張することができるようになり、ご実家は間違いなく泥沼の争いになります」

マズい点②:不動産の「共有」という足かせ

さらに厄介だったのが、ご両親が住む実家の「所有権(持分)」の一部を、なぜか同居していない弟さんが持っているという「歪(いびつ)な権利関係」でした。

専門家:

「弟さんが権利の一部(共有持分)を持っている以上、勝手に家を売ることもできませんし、弟さんの『出て行け』という主張も完全な法外とは言い切れません。対策をしなければ、最悪の場合、本当に住む場所を失ってしまいます」

2. 解決のプロセス:「孫への遺贈」と「生前贈与」で弟の取り分を減らす

残された時間はわずか。ご両親の意思能力がはっきりしている「今」しか、対策は打てません。

私は、弟さんからの「遺留分(法律で保障された最低限の取り分)」の請求も想定した上で、Hさん一家を守るためのウルトラCの提案を行いました。

提案①:「孫」に実家を遺贈する(一代飛ばし)

専門家:

「ご両親の『弟には渡したくない』という意思を反映させるため、遺言書を作成します。ただし、Hさん(娘)ではなく、Hさんのお子様(孫)に不動産を『遺贈(遺言で譲ること)』しましょう」

Hさん:

「私ではなく、孫(娘)にですか?」

専門家:

「はい。これにより、次の相続(Hさんからお子様へ)の際にかかる相続税を節約(一代飛ばし)できます。さらに、財産が孫の手に渡ることで、弟さんへの強い牽制になります」

提案②:預金を「教育資金贈与」し、弟の遺留分を減らす

専門家:

「弟さんは必ず『遺留分』を請求してくるでしょう。遺留分は『亡くなった時の財産』を元に計算されます。つまり、今のうちに財産を減らしておけば、弟に渡す金額も合法的に減らせます。

私たちは、ご両親の預金4,000万円のうち、同居しているお孫さんたちへ「教育資金の一括贈与(非課税枠:孫一人につき最大1,500万円まで)」を行いました。

【比較表】対策しなかった場合 vs 今回の対策

この対策によって、将来の争いと税金がどう変わったかを見てみましょう。

項目対策しなかった場合(最悪のケース)【今回の解決策】孫への遺贈+教育資金贈与
実家の行方弟と共有になり、家を追い出される可能性大孫(Hさんの子)の単独名義に。
住む場所が守られる。
弟の取り分(遺留分)預金4,000万円をベースに計算され、多額の現金を請求される贈与で預金が減っているため、請求される金額が大幅にダウン
トータルの相続税Hさんが相続し、将来孫へ相続する際に2回税金がかかる孫への遺贈により、相続税が1回分浮く(一代飛ばし)

最大の難所:公証役場での確認

最も緊張したのは、遺言書の作成当日です。ご両親の意思能力が微妙な状態だったため、公証人が「遺言を作成できる状態か」を厳しくチェックしました。

私たちが事前にしっかりと準備と打ち合わせをしていた甲斐もあり、無事に「公正証書遺言」を作成することができました。(万が一に備え、自筆証書遺言も並行して準備するという念の入れようでした)

3. 結末:「これで夜、安心して眠れます」

すべての対策(遺言書の作成と、生前贈与の手続き)が完了した日、Hさんとお嬢様は、これまでの重圧から解放されたように、深く息を吐き出しました。

「両親が亡くなった後、弟がどう出てくるか……正直、怖さはまだ残っています。でも、先生に対策をしてもらったことで、最悪の事態(家を追い出されること)は防げると分かりました。何より、『何かあっても相談できる先(先生)がいる』と思えるだけで、本当に安心しました」

Hさんの目には、怒りや不安ではなく、家族を守り抜いた安堵の光が宿っていました。

4. 専門家からのアドバイス

「住んでいない人の『共有持分』は、将来の争いの種になる」

今回の事例からお伝えしたい教訓は2つあります。

  1. 「まだ大丈夫」と思っているうちに認知症は進む
    対策は、親御さんの頭がはっきりしている「今」しかできません。意思能力がなくなれば、専門家でも打てる手はゼロになります。
  2. 生前贈与は「節税」だけでなく「トラブル防止」にもなる
    今回の「教育資金贈与」のように、財産を早めに下の世代へ移すことは、相続税を減らすだけでなく、トラブルの元となる親族への「遺留分」を減らす強力な武器になります。

「親の面倒を見ていない兄弟が、権利ばかり主張してきて困っている」

「親の認知症が心配だが、何をすればいいか分からない」

そうお悩みの方は、手遅れになる前に、一刻も早く専門家にご相談ください。私たちと一緒に、大切な家族と家を守る防波堤を作りましょう。

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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

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この記事を監修したのは…

土田 慧

STF株式会社取締役副社長兼STF司法事務所代表司法書士

土田 慧(つちだ さとし)

・昭和57年 東京都生まれ
・平成17年 東京都立大学法学部法律学科 卒業
・平成18年 司法書士試験合格 司法書士・土地家屋調査士柿原事務所に勤務
・平成23年 個人事務所として独立、現在に至る

勤務時代に多種多様な不動産案件にかかわり、実務経験を積む。時代の流れを感じ、いちはやく自分自身に働き方改革を施し、テクノロジーを駆使しながらノマド型に活動。某会計ソフト会社の運営する会社設立サイトの立ち上げに関わったりと、士業にこだわらず、常に新しい視線を取り入れることを意識し活動中。

型にとらわれない柔軟な発想で問題解決へのアプローチやアイディアを創造することが得意です。見た目に反して(笑)体育会系なので、行動力と精神力には自信あり。「とりあえず聞いてみよう」で、皆さんのお役に立てることができると思いますので、気軽にお声掛けください。

サイトURL:https://www.stfshiho.com/

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