遺産の平均額や内訳は?遺産の使い道や相続税の仕組みも解説

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相続した財産額の平均とは?
相続した財産額の平均とは、相続人が受け取った遺産の総額を相続事例の件数で割った値を指します。ただし、この平均額は一部の高額な相続事例に影響されるため、実際の一般的な相続額を正確に反映しているとは限りません。相続財産の内訳や地域別の差異も考慮する必要があります。
平均額のほかに、中央値も相続額を把握する際に重要な指標となります。中央値は、相続額を小さい順に並べた際にちょうど真ん中に位置する値を指し、高額なデータに左右されにくい特徴があります。このため、普通の家庭の相続財産額を知るには、平均額だけでなく中央値もあわせて見ることが大切です。
最新の調査結果に基づく相続財産の平均額
一般家庭の相続財産の平均額について見てみましょう。
①インターネット上で公表されている「三菱UFJ信託銀行株式会社が2018(平成30)年12月に実施した『相続法が約40年ぶりに改訂、遺言と相続に関する実態調査』」の【相続経験者の実情(30歳~69歳の全国の男女)】によれば、男性(341人)の平均相続金額は2,885万円、女性(323人)の平均相続金額は1,301万円、全体(664人)の平均相続金額は2,114万円という結果になっています。
全体(664人)の相続金額を人数分で割った上記の2,114万円が平均値ということになります。
相続した財産の金額分布を見た場合、金額の高い順に並べると、1億円以上の人が4.1%、5,000万円~1億円未満の人が6.5%、3,000万円~5,000万円未満の人が7.8%、2,000万円~3,000万円未満の人が8.9%、1,000万円~2,000万円未満の人が17.0%、500万円~1,000万円未満の人が19.0%、300万円~500万円未満の人が8.6%、200万円~300万円未満の人が8.0%、100万円~200万円未満の人が11.1%、100万円未満の人が9.0%となります。
また、上記の10のデータ(数値の範囲を一定の幅で区切った区間を階級といいます)をパーセントの小さい順に並べたとき、真ん中の値を中央値(メジアン)といいます。データの数が偶数のときは「真ん中の値」が2つ登場するのでそれぞれ階級値(その階級の一定の幅で中央の値をいう)を足して2で割ったものを中央値といいます。
上記では、データの数が偶数なので、5番目の階級値の400万円と6番目の階級値の2,500万円を足して2で割ったもの、すなわち1,450万円が中央値になります。
上記の数値からすると、平均相続金額は2,114万円ですが、一番多いのは500万円~1,000万円未満で、しかも1,000万円未満の人が全体の55.7%を占めているので、平均値は高額な相続額に引っ張られていると考えられ、一般家庭の相続財産の平均額は1,000万円前後と推測されます。
②また、インターネット上で公表されている「MUFG資産形成研究所が2020(令和2)年10月に実施した『退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査』」によれば、親から相続した財産額の平均は3,273万円、中央値は1,600万円になっています。
平均値の3,273万円と中央値の1,600万円には大きな差があるので、平均値は高額な相続額に引っ張られていると考えられ、一般家庭の相続財産の平均額は、平均値よりも極端な数値に影響を受けにくい中央値の1,600万円の方が参考となるでしょう。
年度別の相続財産額の推移
令和5年12月に国税庁が発表している「令和4年分 相続税の申告実績の概要」によれば、平成25年から令和4年までの相続財産の推移は以下のとおりです。
相続財産は年々増えていることがわかります。
全国と地域別の平均額の違い
「MUFG資産形成研究所が2020(令和2)年10月に実施した『退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査』によると、親から相続した財産額は地域によって差があることがわかりました。特に、関東地方や近畿地方では、親から相続した財産額が相対的に高い傾向が見られます。これには、不動産の評価額が他の地域に比べて高いことが影響していると考えられます。
地域別の親から相続した財産額の平均値は以下の通りです。
- 北海道:2,970万円
- 東北地方:2,153万円
- 関東地方:3,213万円
- 中部地方:2,857万円
- 近畿地方:3,130万円
- 中国地方:2,558万円
- 四国地方:2,157万円
- 九州地方:2,707万円
関東地方と近畿地方では、全国平均を上回る3,000万円以上の相続額が見られる一方で、東北地方や四国地方では平均相続額が2,200万円前後と比較的低くなっています。
相続発生時の平均年齢と家族構成
相続が発生するタイミングや相続人の構成は、家庭ごとに異なりますが、統計的なデータから一般的な傾向を把握することができます。適切な準備を進めるためにも、平均年齢や家族構成に関する知識を深めておくことが重要です。
相続が発生する平均年齢
厚生労働省が公表した「令和5年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳となっています。このため、相続が発生する年齢も、被相続人が80代に達したころが多いと推測されます。
相続人の平均年齢と人数
被相続人が80代で亡くなった場合、その子ども世代が相続人となるケースが一般的です。この場合、相続人の平均年齢は50代から60代であることが多いとされています。また、相続人の人数は家族構成によって異なりますが、日本では配偶者と1~2人の子どもが典型的な例です。
兄弟構成による相続額の差
兄弟の人数や構成は、相続額の分配に大きな影響を与えます。たとえば、相続人が1人の場合は、遺産全体をその1人で相続しますが、兄弟が複数いる場合は遺産を分割する必要があります。この分割の割合は、民法に基づいて決まります。具体的には、配偶者がいる場合は配偶者が1/2、残りの1/2を兄弟で等分するのが基本です。
兄弟が多い場合、1人当たりの相続額は少なくなる傾向があります。一方、兄弟が少ない場合や1人しかいない場合は、1人当たりの相続額が高くなる可能性があります。また、兄弟間の関係性や協議の進め方によっては、遺産分割に時間がかかるケースもあります。
さらに、兄弟姉妹の中に特定の財産(例えば親が経営する会社や土地)を引き継ぐ人がいる場合は、分割の仕方が複雑になることがあります。このような場合には、事前に遺言を作成しておくことや、専門家に相談することが重要です。
相続財産の内訳と具体例
国税庁が発行した「令和5年分相続税の申告実績の概要」によれば、令和5年の相続財産の金額の構成比は以下のとおりです。
- 現金・預貯金等:35.1%
- 土地:31.5%
- 有価証券:17.1%
- 家屋:5.0%
- その他:11.4%
これらの内訳を具体的に見ていきます。
現金・預貯金の割合
現金や預貯金は、相続財産の中で最も多い35.1%を占めています。具体例としては、銀行口座の預金残高や自宅に保管されている現金などが含まれます。これらは流動性が高く、相続手続きの中で遺産分割や相続税の支払いに活用されることが多いです。ただし、故人の口座が凍結されるため、遺産分割協議が終わるまで引き出しができない点に注意が必要です。
不動産の割合と注意点
土地と家屋を合わせた不動産は、相続財産全体の約36.5%を占めています。土地が31.5%、家屋が5.0%で、不動産は財産額の大きな部分を占める特徴があります。都市部における土地や建物の評価額は高くなる傾向がありますが、地方では比較的低い場合もあります。不動産は現金化しづらいため、遺産分割の際には「共有名義」にするか「売却して分配」するかなど、慎重な検討が必要です。また、不動産には固定資産税や維持管理費が発生するため、相続後の負担を考慮することが重要です。
その他の財産(株式、貴金属など)の内訳
その他の財産は全体の11.4%を占め、有価証券(17.1%)と合わせると28.5%になります。この中には、株式や投資信託、生命保険金、貴金属(例:金やプラチナ)、骨董品、車などが含まれます。有価証券は株価や市場状況によって評価額が大きく変動するため、相続時点での評価額が相続税に影響を与えます。また、貴金属や骨董品は評価が難しい場合があり、専門家による鑑定が必要になることもあります。
相続税の仕組みと課税額の計算方法

相続税とは、被相続人が亡くなり、相続や遺贈(死因贈与を含む)に伴い被相続人の財産を取得したときに支払う税金のことです。以下の手順で計算します。
- 相続人が複数の場合、各相続人が相続や遺贈に伴い取得した財産(これを「課税価格」という)を合計して、課税価格の合計額を計算します。
- 課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額を計算します(これを「課税遺産総額」という)。
- 各相続人が課税遺産総額を法定相続分に従って取得したものとして、各相続人の取得金額を計算します。
- 各相続人ごとの取得金額に相続税の速算表を用いて税率を乗じてから控除額を差し引いて相続税の総額の基となる税額を算出します。
- 各相続人ごとの算出税額を合計して相続税の総額を計算します。
相続税が課される遺産額の基準
相続税の課税対象となる遺産額は、プラスの財産(不動産、預貯金、有価証券など)から、マイナスの財産(借金、未払金など)や非課税財産(墓地、仏壇など)を引いた金額です。また、みなし相続財産や生前贈与された財産も課税対象に含まれる点に注意が必要です。
課税遺産総額の計算手順
課税価格の合計額は、以下のようにして計算します。
課税価格の合計額=
「相続や遺贈(死因贈与を含む)により取得した不動産・預貯金・有価証券・自動車・貴金属・貸付金などのプラスの相続財産」
+
「生命保険金(500万円×法定相続人の数を超える部分)と死亡退職金(500万円×法定相続人の数を超える部分)などのみなし相続財産」
+
「生前贈与された相続時精算課税にかかる財産全部」
+
「相続開始前3年以内に生前贈与された財産(暦年課税にかかる贈与)」
-
「借金・買掛金・未払金・保証債務・税金・損害賠償債務などのマイナスの相続財産」-
「非課税財産」
-
「葬式費用」
上記の財産で評価の必要なものは、価格のばらつきをなくすため「財産評価基本通達」をもとに価格を決めます。たとえば、土地は路線価または固定資産税評価額×倍率、建物は固定資産税評価額、現金・預貯金はそれぞれ死亡した日の残高、自動車は下取り査定価格などです。
なお、非課税財産は「墓地、墓石、位牌、仏壇、仏具、祭具などの日常礼拝をしている物」も含まれ、相続人が受け取った生命保険金や死亡退職金のうち、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の額までになります。
また、葬式費用とは、通夜、告別式、火葬などの過程で要する費用のことです。
法定相続人を特定する
基礎控除額、生命保険金や死亡退職金を計算するためには、法定相続人の人数が必要です。基本的には、被相続人の配偶者や被相続人と血縁関係にある人が法定相続人になることができます。
しかし、被相続人と血縁関係にある人であれば誰でも相続できるわけではなく、相続人の順位に従い法定相続人が決まります。
1.配偶者は必ず相続人になります。その他は順位の高い人から順に相続していきます。
- 第1順位 直系卑属(子および代襲相続人)
- 第2順位 直系尊属(父母や祖父母)
- 第3順位 兄弟姉妹および代襲相続人
※代襲相続人とは、本来相続するはずだった相続人に代わり、新たに相続人になった「本来の相続人の子」などのことを指します。
2.法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
3.被相続人に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、次のように制限されます。
- 被相続人に実子がいる場合は、養子の数は1人まで
- 被相続人に実子がいない場合は、養子の数は2人まで
基礎控除額を算出する
相続税では、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引くことができるため、課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば相続税がかかりません。
課税価格の合計額が基礎控除額を超えなければ、課税されることもなく申告も不要ですが、小規模宅地の特例などの適用を受ける場合には申告が必要です。
基礎控除額を計算する際にそのもととなる「法定相続人」が1人の場合、その基準となる基礎控除額は3,600万円になります。したがって、3,600万円以下は申告も納税も必要ありません。
基礎控除額の計算方法を見てみましょう。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
上記のとおり、基礎控除額は「法定相続人」の人数によって変わってきます。
例①法定相続人が2人の場合
基礎控除額:3,000万円+(600万円×2人=1,200万円)=4,200万円
例②法定相続人が3人の場合
基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人=1,800万円)=4,800万円
例③法定相続人が5人の場合
基礎控除額:3,000万円+(600万円×5人=3,000万円)=6,000万円
遺産総額を把握し課税対象を確認する
課税対象の財産を正確に把握することが重要です。不動産、預貯金、有価証券、みなし相続財産、生前贈与財産などを正確に評価し、控除対象の借金や非課税財産、葬式費用を差し引いて計算を進めます。
基礎控除額を差し引いて税額を計算する
課税遺産総額に基づいて、法定相続分に従い各相続人が取得する金額を仮定し、相続税率を適用して税額を算出します。税額は、法定相続人の人数や遺産総額によって大きく異なります。
相続税を納税した人の割合と平均納税額
「令和5年分 相続税の申告実績の概要(国税庁)」によると、以下のような結果が見られます。
- 被相続人数(死亡者数):1,576,016人
- 相続税の申告書を提出した相続人数:155,740人
- 課税割合:9.9%(被相続人数に対する申告者割合)
- 相続税を納税した人数:339,098人
- 課税価格の合計:216,335億円
- 税額の合計:30,053億円
- 1人当たりの課税価格:13,891万円
- 1人当たりの税額:1,930万円
このデータから、令和5年分では課税割合が約10%に近いことがわかります。また、課税対象者1人あたりの平均課税価格は約1.39億円、平均納税額は約1,930万円となっています。これは、基礎控除額を超える高額な遺産を持つ家庭が一定数存在することを示しています。
相続税対策と今からできる準備
相続税対策は、事前に準備することで大きな効果を発揮します。早めの対策が、家族にかかる負担を減らし、円満な相続を実現する第一歩となります。
親から受け継いだ財産の使い道を考えておく
みんなは親の財産を何に使っているのか、親の相続財産の使い道を確認しましょう。親の財産を活用する方法は人それぞれですが、具体的な使い道を考えておくことで、効率的かつ有意義に活用することができます。以下に、インターネット上で紹介されている「親の相続財産の使い道」の例をいくつか挙げてみます。
- 貯蓄する
- ローン返済に充てる
- 住宅や不動産、車などの高額な物を購入する
- 資産運用して増やす(定期預金、株式運用、不動産投資など)
- 土地を賃貸などで活用する
- 必要のない不動産は売却する
- 寄付する
- 子供の大学進学の資金に充てる
- 保険商品の購入
- 旅行・趣味など
財産の使い道を決める際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。
まず、急いで使うのではなく、将来の生活を見据えた長期的な計画を立てることが大切です。親から受け継いだ財産は、一時的な出費だけでなく、老後の生活や子どもの教育費など、長期的な視点で活用方法を考えるべきです。
次に、税金や運用に関する知識が不足している場合は、専門家に相談することをおすすめします。税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家にアドバイスを求めることで、相続税対策や資産運用に関する適切な選択が可能になります。
また、財産の使い道については、家族間での意見の共有も欠かせません。家族と話し合うことで、財産の活用方法を一致させ、相続後のトラブルを未然に防ぐことができます。
親から受け継いだ財産は、計画的に活用することで、生活や将来をより充実させる助けとなります。大切な財産を慎重に管理し、有効に活用する方法をしっかり検討しましょう。
不動産を相続する際の注意点
不動産を相続すると、相続人全員で共有する状態になります。この状態を「遺産共有」といいますが、共有のままでは不便が生じることが少なくありません。たとえば、不動産を売却したい場合には相続人全員の同意が必要です。また、共有者の一人が亡くなると、さらに新しい相続が発生し、関わる人が増えてしまいます。このような問題を避けるためには、不動産は特定の相続人が引き継ぐほうが望ましいでしょう。
また、不動産を相続した場合には「相続登記」を行う必要があります。以前は相続登記をしなくても罰則がなかったため、手続きを放置する人も多くいました。しかし、登記を行わないままにしておくと、将来大きなトラブルになる可能性があります。そのため、2024年4月1日から相続登記が法律で義務化されました。
この法律では、不動産を相続した日から3年以内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。また、所有者が住所変更した場合も登記が義務化されており、2年以上未登記の場合には5万円以下の過料が科されます。この規定は2024年以前に相続された不動産にも適用されるため、過去の相続不動産についても早めに登記を行うことが推奨されます。
生命保険や贈与を活用した節税対策
相続税を節税するためには、生前贈与や生命保険の活用が効果的です。これらを上手に活用することで、相続税の負担を軽減しながら、将来の資産分配をスムーズに進めることができます。ただし、それぞれの方法には注意点もあるため、計画的に進めることが大切です。
生前贈与は、相続が発生する前に財産を受贈者に譲渡する方法です。これにより、相続財産を減らし、相続税の節税が可能になります。
暦年贈与では、毎年110万円までの贈与なら贈与税がかからず、数年にわたって計画的に行えば相続財産を大幅に減らせます。たとえば、子ども3人に毎年110万円ずつ贈与すれば、10年間で3,300万円分の財産を税金なしで移転することが可能です。ただし、2024年から生前贈与加算の期間が3年から7年に延長され、相続開始前7年以内の贈与額が相続財産に含まれるため、注意が必要です。
一方、相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円まで非課税で贈与することができます。これにより、一度にまとまった額を移転できるのがメリットです。ただし、この制度を選択すると暦年贈与には戻れないため、慎重な判断が求められます。また、2024年以降、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられたため、利用の幅が広がりました。
生命保険も相続税対策として有効な手段です。死亡保険金には、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があり、たとえば法定相続人が4人いれば2,000万円まで相続税がかかりません。また、死亡保険金は現金で支払われるため、相続税の納税資金としても役立ちます。
生命保険を利用する際は、終身保険を選ぶことで確実に死亡保険金を受け取ることができます。ただし、保険契約者の年齢が高くなると加入が難しくなる場合があるため、早めに計画を立てることが重要です。
また、若い受贈者に現金を贈与する代わりに、生命保険に加入する方法もあります。この場合、贈与者が被保険者となり、受贈者が契約者兼保険金受取人となる形で保険を契約します。これにより、受贈者が現金を無駄遣いするリスクを防ぎつつ、死亡保険金として財産を受け取れる仕組みが作れます。
相続税専門の税理士に相談するメリット
相続税専門の税理士に相談することで、さまざまなメリットがあります。まず、相続税に詳しい税理士は、節税対策の提案をしてくれるため、無駄な税金を減らすことができます。また、相続税の申告には複雑な手続きが多いですが、税理士に依頼すれば代行してもらえるので、相続人の負担が軽くなります。
さらに、税理士は法律や税制の最新情報を把握しているため、間違いのない申告が可能です。相続財産の評価や分割についても適切にアドバイスしてくれるため、家族間のトラブルを防ぐことができます。
相続手続きは専門的で大変な作業ですが、税理士に相談すれば安心して進めることができるため、早めに依頼することをおすすめします。
相続手続きの流れと具体的な対策
相続手続きは複雑に感じるかもしれませんが、手順を押さえて順序よく進めることでスムーズに対応できます。
相続手続きの基本的なステップ
相続手続きは、遺言書の有無や財産の種類によって異なりますが、大まかな流れは次の6つのステップに分かれます。複雑に感じるかもしれませんが、それぞれの段階で必要なポイントを押さえて進めていけばスムーズに進行できます。
- 遺言書の有無を確認
最初に、故人が遺言書を残しているかどうかを確認します。遺言書があれば、その内容に従って手続きを進めます。自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。遺言書がなければ、相続人全員で協議して遺産分割を決める必要があります。 - 相続人を確定
次に、誰が相続人になるのかを確定します。被相続人の戸籍謄本を収集し、法定相続人を特定します。配偶者や子どもがいる場合が多いですが、状況によっては兄弟姉妹や親などが相続人になることもあります。 - 相続財産を確定
相続財産をすべて把握する必要があります。不動産、預貯金、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も確認します。財産の全体像をつかむことで、相続税の計算や分割方法を検討できます。 - 遺産分割協議
相続人全員で話し合い、遺産をどう分けるかを決めます。話し合いがまとまったら「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・押印します。この協議がスムーズに進まない場合、調停や裁判に発展することもあるため、冷静に進めることが大切です。 - 相続財産の名義変更
遺産分割が決まったら、不動産や預貯金などの名義変更手続きを行います。たとえば、不動産の場合は法務局で登記変更が必要です。預貯金は金融機関で手続きを進めます。 - 相続税の申告と納付
相続税がかかる場合は、相続開始を知った日から10か月以内に申告・納付を行います。基礎控除額以下の財産であれば、申告の必要はありませんが、特例を受ける場合には申告が必要なケースもあります。
手続きで困難だった点とその解決策
相続手続きでは、特に遺産分割や相続税の支払いでトラブルが発生しやすいです。ここでは、よくある困難とその解決策について説明します。
相続人同士で分割の比率や財産の分け方が決まらないことがあります。特に兄弟や姉妹間で意見が対立しやすく、それぞれの主張が強いため、話し合いが進まないケースが多いです。これは、相続する財産の種類や金額が異なること、また相続人が遺産を当てにして生活や計画を立てている場合に起こりがちです。このような状況では、まず相続人全員で遺産分割協議を行うことが必要です。財産の内容を明確にし、それを基に具体的な話し合いを進めます。話し合いで解決できない場合は、専門家や調停を利用するのも有効な方法です。
また、相続財産が高額な不動産である場合、相続税の支払いが困難になることがあります。不動産は現金化しない限り納税資金を捻出できないため、相続人にとっては大きな負担となります。特に、先祖代々受け継がれた土地や建物であれば、簡単に手放したくないという思いもあるでしょう。しかし、相続税を支払わないわけにはいきません。
このような場合には、不動産を売却して納税資金を確保するのが一般的な解決策です。売却が難しい場合や希望しない場合は、物納(不動産そのものを納税に充てる方法)を検討することもできます。ただし、物納には条件があるため、事前に税務署や専門家に相談することが重要です。
新制度「相続登記の義務化」について
令和6年4月1日から、不動産を相続した場合の「相続登記」が義務化されました。相続によって不動産を取得した人は、その不動産の所有権を取得した日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。遺言による相続や遺産分割による取得も、この義務に含まれます。
遺産分割が成立した場合は、その成立日を基準に3年以内に登記を行う必要があります。これらの義務に違反し、正当な理由がないまま申請を怠った場合には、10万円以下の過料(行政上の罰金)が科される可能性があります。
また、この制度は令和6年4月1日以前に発生した相続にも適用されます。ただし、その場合は3年間の猶予期間が設けられています。不動産を相続した場合は、できるだけ早めに登記を進めることが重要です。
なお、正当な理由がある場合には、過料の対象から除外されることもあります。たとえば、相続人が非常に多く、戸籍謄本の収集や他の相続人の特定に時間がかかる場合などが該当します。新しい制度に対応するためにも、相続が発生したら迅速に手続きを進めることをおすすめします。
相続に関するトラブルとその対策
相続でトラブルを経験した割合とは?
厚生労働省の「令和元年の人口動態統計の概況」によると、令和元年の死亡者数は、1,381,093人でした。
最高裁判所の「令和元年司法統計年報家事編」によると、令和元年の家庭裁判所への遺産分割協議調停申立件数は、15,842件でした。15,842÷1,381,093の算式により、家庭裁判所での調停となった割合は、1.1%でした。
遺産分割でのトラブルのうち、約3/4が遺産価額が5,000万円以下でした。
遺産分割でトラブルを防ぐ対策の1つとして、遺言書を作成すると良いでしょう。遺産を誰に、どれくらいの割合で残したいのか、ご自身の想いを残しておくことで、相続を円満に行うことができます。
よくあるトラブルと原因
遺産分割協議においては、相続人同士が遺産の分け方をめぐり対立するケースがよく見られます。これは、不動産のように分割が難しい財産が含まれている場合や、相続人の間で公平性に対する認識が異なることが主な原因です。例えば、「特定の相続人が多く受け取っている」といった不満が表面化すると、感情的な衝突に発展しやすくなります。また、家族間の以前からのわだかまりが再燃し、冷静な話し合いが難しくなることも少なくありません。
さらに、遺言書がない、もしくは不備がある場合もトラブルの原因となります。遺言書が作成されていない場合、法定相続分に従った分割を進める必要がありますが、これが相続人の希望と一致しないことが多く、意見の対立を招きます。また、遺言書があっても、内容が曖昧だったり、法律の要件を満たしていなかったりすると、遺言書の効力が争点となる可能性があります。遺言の内容を実行する遺言執行者が指定されていない場合には、手続きがさらに複雑化することもあります。
これらのトラブルを未然に防ぐためには、早い段階から遺言書を作成し、専門家に相談することが欠かせません。適切な準備を行うことで、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、家族間の関係を守ることにもつながります。
相続財産額を子どもに知らせていない割合は?
相続財産額を子どもに知らせていない割合は何%程度いるのでしょうか?
インターネット上で公表されている「三菱UFJ信託銀行株式会社が2018(平成30)年12月に実施した『相続法が約40年ぶりに改訂、遺言と相続に関する実態調査』」の【相続検討者の実態(30歳~69歳の全国の男女674人)】によれば、自分の子どもに相続財産を全く明らかにしていない人が52.5%となっています。
その理由としては「子どもが相続財産をあてにするのが好ましくない」が最も多く35.0%、次いで「相続財産の話をする時期ではないと思っていた」が27.0%、「どの程度の財産を子どもに相続させるか決めていない」が24.1%の順です。
ちなみに、自分の子どもにすべての財産を明らかにしている人が13.6%、3割~7割程度の財産を明らかにしている人が21.6%、ごく一部の財産(1割以下)だけ明らかにしている人が12.3%となっています。
遺言書作成の重要性と、作成率
遺言書は、亡くなった人の意思を明確に伝え、相続を円滑に進めるために非常に重要です。正しい形式で作成された遺言書があれば、法定相続分のルールよりも優先されるため、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。
遺言書がない場合、遺産分割について話し合いが必要になり、意見の違いから争いが起こることも少なくありません。しかし、遺言書があれば故人の意思が明確なため、相続人全員がその内容に従うことで手続きをスムーズに進めることができます。
また、遺言書には特定の財産を誰に渡すのかを指定したり、家族への感謝の気持ちを伝えることもできます。これにより、相続人の不安や誤解を減らし、穏やかな相続を実現できます。遺言書は早めに準備しておくことで、いざという時に役立つ大切な手段となります。
では、遺言書を作成したことがある人はどのくらいいるのかを確認しましょう。
日本公証人連合会によれば、平成29年の公正証書遺言の作成件数は、110,191件でした。自筆証書遺言の正確なデータは分かりませんが、平成28年度の司法統計によると家庭裁判所での遺言書検認件数は、17,205件でした。
遺言書を作成したことがある人の中でも、公正証書遺言を作成している方が多いことが分かります。遺言書を作成した人は、どのような理由で作成したのでしょうか。
公正証書遺言を選んだ理由
平成29年度法務省調査の「我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務」によると、公正証書遺言を作成した理由は、以下のとおりです。
- 法律の専門家である公証人が確実に有効な遺言書を作成してくれるから
- 保管が確実であるから
- 家庭裁判所による検認の手続きが必要ないから
自筆証書遺言を選んだ理由
同調査で、自筆証書遺言を作成した理由は、以下のとおりです。
- 自分で手軽に作成することが出来るから
- 作成の費用があまりかからないから
- 誰にも知られずに作成することができるから
財産目録の作成と共有
財産目録とは、遺産の内容をわかりやすく整理した一覧表のことです。具体的には、遺産の種類、数量、場所、価値などを記載します。法律上、作成は義務ではありませんが、相続をスムーズに進めるために作成しておくことをおすすめします。
財産目録があると、相続人全員が遺産の全体像を把握しやすくなります。遺産分割協議の際には、目録をもとに具体的な分割方法を話し合うことができるため、手続きがスムーズになります。もし目録がなければ、遺産の内容が不明確で話し合いが進まなかったり、「隠し財産があるのでは?」といった疑念が生じ、相続人間のトラブルにつながる可能性もあります。
また、財産目録は相続税の申告にも役立ちます。基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要です。その際には、すべての財産(プラスの財産もマイナスの財産も)を正確に申告書に記載しなければなりません。目録があれば、申告に必要な情報を簡単に整理することができ、負担が軽減されます。
さらに、財産目録は相続人全員に共有することが重要です。目録を共有することで、全員が同じ情報を基に話し合いを進められるため、透明性が高まり、不必要な疑念や争いを防ぐことができます。デジタルデータとして保管し、いつでも確認できる状態にしておくのも便利です。
家族での事前の話し合いの効果
相続に関する家族での事前の話し合いには、多くの重要な効果があります。この話し合いを行うことで、相続におけるトラブルを未然に防ぎ、家族全員が納得のいく形で遺産を分けることが可能になります。
まず、家族全員で財産の状況やそれぞれの意見を共有することで、誤解や不安が解消されます。「自分だけ情報を知らされていない」「他の人が財産を隠しているのではないか」といった疑念がなくなり、相続人同士の信頼関係が保たれます。また、事前に話し合いをすることで、それぞれの希望を理解し合い、遺産分割の方向性をあらかじめ決めておくことができ、相続後のスムーズな手続きにつながります。
さらに、生前の話し合いは、遺言書の作成をサポートする役割も果たします。家族の意見を聞いた上で遺言書を作成すれば、遺言の内容に対する納得感が高まり、相続時の争いを大幅に減らすことができます。遺言書があっても、内容が相続人の理解と大きくずれていると、相続トラブルの原因になることがあります。事前の話し合いは、このようなトラブルを防ぐ手段として非常に有効です。
また、事前に相続の準備ができていれば、相続発生時の負担を減らすことができます。相続税の申告や不動産の名義変更などの手続きは時間と労力がかかりますが、話し合いを通じて分割の方針が決まっていれば、こうした手続きを迅速かつ効率的に進めることができます。
加えて、家族での話し合いは単に相続をスムーズにするだけではなく、家族の絆を深める機会にもなります。相続という重要な問題を共有し、協力して解決しようとするプロセスは、家族全員にとって良い影響をもたらします。
相続で悩まないために今できること
この記事では、相続財産の平均額、相続人の平均年齢、相続した財産額の内訳、相続財産額を子どもに知らせていない割合、相続税を支払っている人の割合、相続税の計算方法、親の相続財産の使い道などについて解説しました。
相続はそれぞれの家族にとって、避けては通れない問題です。相続に関する悩みは残された相続人ごとに異なることでしょう。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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この記事を書いたのは…

弁護士・ライター
中澤 泉(なかざわ いずみ)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
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この記事を監修したのは…

ミライエ税務会計事務所 所長税理士
森田 和宏(もりた かずひろ)
未来へタスキを繋ぐ税理士です。
誰もがワクワクし未来に希望が持てる社会の実現を目指し、何より「想い」を大切に活動しております。
100人いたら100通りの相続のカタチがあり、想いを次の世代に繋げるための笑顔相続のお手伝いをしています。
サイトURL:https://www.miraie-taf.net/