遺留分侵害額請求(減殺請求)の調停とは?申立方法や注意点について解説!

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遺産相続

遺留分侵害額請求(減殺請求)とは?侵害された財産を取り戻す制度!

そもそも遺留分とは、遺産を引き継ぐ相続人(遺留分権利者)が、故人(被相続人)の財産から法律上取得することが保障された最低限の取り分です。

遺留分権利者がこの遺留分を侵害された場合、財産の返還を請求する権利があります。これを遺留分侵害額請求と呼びます。

2019年の民法改正までは、遺留分減殺請求と呼ばれ、遺留分権利者がこの権利を行使すると、侵害した相手は、遺贈や贈与で取得した財産の遺留分に相当する分の財産について、原則として現物で返還する必要がありました。

つまり、遺留分侵害額請求では、遺留分権利者が相手方から返還される財産を選択することはできませんでした。例えば、不動産等の分けられない財産は共有状態となり、遺留分を侵害した相手方との法律関係が複雑になるリスクもあります。

そこで2019年の法改正により、遺留分が侵害された場合に原則としてその分に相当するお金を請求できる仕組みになりました。この仕組みなら財産を分けやすく、遺留分侵害の速やかな救済が期待できます。

遺留分侵害額請求に応じてくれない場合はどうする?遺留分調停について解説!

遺留分権利者の遺留分が侵害されたからといって、いきなり裁判所で調停等を行うわけではありません。ここでは遺留分侵害額請求の流れを見ていきましょう。

1.遺留分を侵害している相続人等と話し合い、合意ができたら合意書を作成

2.合意できない場合、内容証明郵便で遺留分侵害額を請求します。このとき相手方と合意に至らなくても時効(相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で権利が消えること)を止めることが可能

3.内容証明郵便でも合意できない場合、家庭裁判所に調停を申立てる

4.調停も不調に終わった場合、地方裁判所(請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所)へ訴訟を提起する

家庭裁判所で遺留分に関する調停を行う場合、調停委員会に仲介してもらい話し合いで解決を図ります。

遺留分を侵害された遺留分権利者またはその承継人(相続人等)が申立人となります。申立先は次のいずれかです。

・相手方の住所地の家庭裁判所

・当事者が合意で定める家庭裁判所

なお、事前に内容証明郵便で請求書を送ると、日付が記載され確実に消滅時効の進行を半年間は中断できます。その間に申立の準備を余裕を持って進めることができます。

調停で遺留分侵害額請求を行うメリットは?第三者を交えて冷静に話し合える!

家庭裁判所で遺留分に関する調停を行うメリットは、主に次の2つが挙げられます。

調停委員が紛争解決のために関わってくれる

家庭裁判所での調停は、調停委員と紛争の両当事者の三者で行われます。原則として紛争当事者が同席しないよう交互に調停室に入るなど配慮して進められます。また、調停委員が中立の立場から双方の意見を聞き取ります。そのため、当事者が冷静な状態で調停を行えます。

当事者で合意に達すれば、双方の意見を反映した柔軟な調停内容での解決に至ることとなります。

他方で調停委員から妥当と考えられる解決案が提示されるケースもありますが、当事者が条件に納得できなければ無理に合意する必要はありません。

高度な法律の知識がなくても進められる

申立後、調停期日では主に口頭での話し合いで調停が進められていきます。申立人に高度な法的知識は必要とされず、調停委員のアドバイスに納得できれば解決する可能性も高いです。

ただし調停手続は調停委員が当事者から事情を聴きつつ進行するので、調停での時間は限定されます。そのため、調停委員に事情を理解してもらうために前もって遺留分に関する事実関係を整理し、書面を提出しておいた方が円滑な進行を期待できます。

遺留分侵害額の請求調停の流れや申立方法とは

遺留分が侵害されたとわかったら、速やかに遺留分侵害額の請求を行う必要があります。この請求権は遺留分の侵害を知った時から1年で時効消滅となり、また相続開始から10年が経過すると消滅してしまいます。(除斥期間)

ここでは調停の流れや申立方法を解説します。

調停の流れ

大まかな調停の手順は次の通りです。解決までの期間は1年程度が目安と言われています。期日は1回に2時間程度、裁判官1名と調停委員2名で構成された調停委員会で話し合いが行われます。

1.家庭裁判所で受理後、申立人と裁判所で調停第1回期日の日時を調整

2.家庭裁判所が相手方に呼出状を通知(相手方は日程不都合で不参加の場合もあり)

3.期日第1回、2回…:1~2ヶ月に1回程度の頻度で開催

4.調停成立の場合は調停調書を作成し、不成立の場合は訴訟提起へ

調停の申立方法

遺留分を侵害された本人またはその承継人(相続人等)が申立人となり、相手方の住所地または当事者が合意した家庭裁判所に申し立てます。

必要書類は次の通りです。

・遺留分侵害額の請求調停の申立書:裁判所のホームページまたは家庭裁判所の窓口で取得

・土地遺産目録、建物遺産目録、現金・預貯金・株式遺産目録:裁判所のホームページまたは家庭裁判所の窓口で取得

・被相続人の出生時~死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得

・遺言書または遺言書の検認調書謄本コピー:遺言書が作成されている場合(法務局または公証人役場で取得)

・被相続人の遺産に関する証明書:不動産登記簿謄本(法務局で取得)、固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)、預貯金通帳コピーや残高証明書(金融機関で取得)

※上記のほかに追加で書類が必要となる場合があるため、事前に申立先の家庭裁判所に確認しておくと良いでしょう。

申立費用は申立人だけで申請する場合、収入印紙1,200円分、家庭裁判所との連絡用郵便切手を負担します。なお、申立書等に添付して提出する必要書類の手数料は次の通りです。

・戸籍謄本:1通約450円

・除籍謄本・改製原戸籍:1通約750円

・不動産登記簿謄本(登記事項証明書):1通約600円

・固定資産評価証明書:1通約300円

遺留分侵害額の請求調停を行う際の申立書を記載する上でのポイントを解説!

遺留分侵害額の請求調停の申立書は、家庭裁判所側が手続きを受理する際、必ずチェックする書類です。曖昧な記載が無いよう、具体的な申立ての趣旨・理由の明記が求められます。

(1)申立ての趣旨

相手方に対して求めるものが明記されなければいけません。例えば欄内には「遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求めます」と簡潔に記入します。

(2)申立ての理由

次のポイントを明確にしましょう。

・被相続人は誰であるか(本籍地も記入)、その相続人は誰かを明記

・被相続人に遺言書はあるか、債務があるか等を明記

・遺留分が侵害された事実(例:遺贈によって遺留分が侵害されている等)を明記

・調停に至るまでのプロセス(例:内容証明郵便を送ったが相手方は話し合いに応じなかった等)を明記

調停で遺留分侵害額請求を行う際の注意点は?話し合いが長期化する可能性あり!

遺留分に関する調停は解決までの期間は概ね1年、長くて2年程度かかります。調停の期日も1、2回で終わるのは稀で、複数回開かれるケースがほとんどです。

また、調停は話し合いで解決する仕組みのため、裁判官が判決で遺留分の請求を認めるか否かについて決めるわけではありません。

話し合いで当事者同士が合意に至らなければ、地方裁判所または簡易裁判所(請求金額が140万円以下の場合)に遺留分侵害額請求訴訟を提起し、問題の解決を図ります(原則として、遺留分侵害額請求は調停で解決できない場合にのみ訴訟を提起することが出来ますが、調停で解決できないことが明白な場合は、調停を経ることなく訴訟を提起する例外的な場合もあります)。

速やかな解決を望むならば、調停前になるべく遺留分を侵害している相手方とよく話し合い、互いに歩み寄る努力が必要です。そうすれば話し合いの長期化は避けられるはずです。

遺留分侵害額の請求調停を検討している場合の相談先は?弁護士に相談するのが一般的!

調停は申立人だけでも手続きを進められます。しかし、調停等の話し合いに経験と実績のある弁護士等へ相談や依頼をした方が、調停は有利に進むでしょう。

法律の専門家の見地から申立人へ的確な助言を行うことが期待できます。ただし、相談料は1時間で10,000円程度かかります。

調停の際に弁護士をたてる場合は着手金が20万円~30万円、成功報酬は獲得できた金額の10%が目安です。

費用はかかりますが法律の専門家の助力を受ければ、侵害された遺留分を獲得する可能性は高くなります。

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この記事を監修したのは…

岩井 知大

ヘリテージ総合法律事務所 代表弁護士

岩井 知大(いわい ともひろ)

所属弁護士会 神奈川県弁護士会
出身地:熊本県
出身大学:早稲田大学政治経済学部
主な取扱い分野:相続・事業承継分野、労働法務分野

相続に関するお悩みは、うまく解決をすれば家族の絆を強くする事ができますし、後手に回ると深刻な対立を生じさせます。
年間100件以上の相談実績を生かし、先立つ側にとっては不安なく最後のときを迎えられる、また残される側にとっては家族・親族の絆が深められる解決を目指します。

サイトURL:https://heritage-law.jp/ https://enman-souzoku.co.jp/media/yokohama-heritage/

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