遺留分計算シートの入手先や使い方とは?遺留分の計算方法も解説!

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遺産相続

遺留分ってそもそも何?ケースごとに遺留分の割合を解説!

遺留分とは法定相続人が最低限の遺産を受け取る割合のことです。相続発生時に法定相続人の遺留分が侵害されている場合(例:遺言が特定の相続人に遺産を全額譲渡する内容となっていた等)、遺留分侵害額請求権を行使できます。

この遺留分を主張できる人は故人(被相続人)の配偶者、子(代襲相続人含む)、直系尊属(父母、父母がいない場合は祖父母)に限られます。兄弟姉妹(代襲相続人の甥姪)は主張できません。

遺留分の割合は次の通りです。

相続人遺留分割合
配偶者のみ1/2
子のみ1/2(複数いれば等分)
配偶者と子供1/2
配偶者と直系尊属1/2
親のみ1/3(両親がいれば等分)
直系尊属のみ1/3

遺留分の計算方法とは?ステップごとに解説!

ここでは、遺留分の計算方法について解説します。遺留分の計算式は以下の通りです。

(遺留分のもととなる基礎財産)×遺留分の割合

相続が開始すると、法定相続人は常に配偶者のみ、子のみ、直系尊属のみとなるわけではなく、配偶者と子、配偶者と被相続人の父母等という形になることもよくあります。

各相続人の立ち位置や相続人が何人いるかによっても、遺留分割合は大きく変わってきます。

法定相続人のケース別に具体的な数値を用いて遺留分の計算方法を解説します。

法定相続人が配偶者と子の場合

法定相続人に故人の配偶者(妻または夫)と子がいる場合、次のような遺留分割合となります。

・配偶者:1/4
・子:1/4(子が複数いれば1/4の枠内で等分)

遺留分をどれくらい主張できるのか、例を挙げて計算してみます。

(例)遺産が2,100万円ある場合:妻・子A・子B

それぞれ次の遺留分の金額を主張できます。

・配偶者→2,100万円×1/4=525万円
・子A→2,100万円×1/8=262.5万円
・子B→2,100万円×1/8=262.5万円

法定相続人が配偶者と親の場合

法定相続人に故人の配偶者(妻または夫)と親がいる場合、次のような遺留分割合となります。

・配偶者:1/3
・親:1/6(子が複数いれば1/6の枠内で等分)

遺留分をどれくらい主張できるのか、例を挙げて計算してみます。

(例)遺産が2,100万円ある場合:妻・父親・母親

それぞれ次の遺留分の金額を主張できます。

・配偶者→2,100万円×1/3=700万円
・父親→2,100万円×1/12=175万円
・母親→2,100万円×1/12=175万円

遺留分計算シートとは?遺留分を計算するなら計算シートがおすすめ!

故人から見て、どんな法定相続人がいるかによって遺留分の割合が変わり、非常に煩雑な計算となるおそれがあります。そんな遺留分の計算を簡単に行える便利なツールが存在します。

そのツールが「遺留分計算シート」です。この計算シートは「東京地方裁判所プラクティス委員会第三小委員会」(主に裁判官等がメンバー)によって作成され、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会に提供されました。

もちろん、弁護士以外の人たちも気軽に計算することができます。パソコンに表計算ソフトのExcel(エクセル)がインストールされていれば誰でも使用可能です。

東京弁護士会のホームページからダウンロードして利用します。

遺留分計算シートを活用するタイミングとは?

遺留分の算定にあたって、財産の評価は、相続開始時を基準として行います。そのため、相続開始時に活用すると良いでしょう。

遺留分計算シートの使用方法を順番に解説!

遺留分計算シートの入力の仕方は非常に簡単です。ここでは入力の手順を説明していきます。この計算シートは「基礎となる財産一覧表」「遺留分減殺計算表」の2つで構成されています。

「基礎となる財産一覧表」を入力すると、財産が自動計算され、「遺留分減殺計算表」に結果が反映されます。

第1ステップ:相続人・受遺者・受贈者を入力

まずは遺留分侵害額請求に関する相続人等を、基礎となる財産一覧表に入力していきます。

入力例としては、故人が遺言書にて、遺産(金融資産2,100万円)の全てを配偶者である妻に譲る旨の内容だった場合を想定し、長男・長女・次男が妻へ遺留分を主張したケースで進めていきます。

遺留分権行使者欄で、遺留分を主張する人のところに「○」を入力します。

第2ステップ:故人(被相続人)の遺産等を入力

基礎となる財産一覧表には次の欄が設けられています。

・遺贈:遺贈(被相続人が遺言書を作成し、無償で財産を譲ること)、相続分の指定、遺産分割方法の指定された財産も入力
・死因贈与:贈与者の死亡で効力が生じる贈与
・未処理遺産:未分割の財産がある場合に入力
・生前贈与:相続開始前1年以内の贈与、遺留分権利者にとって損害になることを知ってなされた贈与、相続開始前10年以内の特別受益も入力
・債務:相続債務(借金等)を負担する場合に入力

被相続人が亡くなった時点で有していた財産は全て遺留分査定の基礎となる財産になります。

遺留分算定の基礎となる財産の計算方法は、以下の通りです。

プラスの財産+生前贈与の財産+特別受益-債務

基礎となる財産一覧表には、この計算が反映されているため、金額を入力すると自動計算され、遺留分減殺計算表のシートに反映されます。

今回の例では、妻だけに金融資産(現金)2,100万円を譲渡する遺言内容なので、遺贈の「財産の種類・名称」欄に「現金」と入力し、妻だけが2,100万円取得する旨を入力します。

第3ステップ:遺留分減殺計算表を確認

基礎となる財産一覧表に入力した後は、遺留分減殺計算表を見てみましょう。長男・長女・次男が主張できる遺留分額が明記されています。

今回の例の場合、長男・長女・次男はそれぞれ175万円を妻へ請求することができます。そのため、妻は合計525万円を子達に渡すこととなります。

遺留分を計算するときの注意点とは?寄与分や特別受益に注意

相続が開始すると、相続人間で遺産の取り分をめぐり、特別受益や寄与分が問題となることもあります。ここでは、特別受益や寄与分が遺留分にどんな影響を及ぼすのかを解説します。

特別受益と遺留分

特別受益とは、特定の相続人が被相続人から受け取った特別な利益を指します。

特別受益に該当する資産等

特別受益に該当するのは次の資産等です。

・事業用資産:家業を継ぐ相続人へ株式(中小企業の承継)や、農地(農家の承継)の贈与
・不動産:土地・建物等の居住用不動産の贈与
・金銭・有価証券・金銭債権:多額の金銭等の贈与
・高等教育資金:主に大学進学や留学等
・婚姻・養子縁組費用:持参金や支度金等の相続財産の前渡し

ただし、お小遣いや扶養義務の範囲内の金銭の贈与、義務教育等の費用や生命保険金の受け取りは特別受益とみなされません。

特別受益がある場合の遺留分計算

特別受益がある場合の遺留分計算も遺留分計算シートで対応できます。

ここでは遺留分を主張している長女が、相続開始前の5年以内に被相続人から100万円の現金(特別受益)を受け取っていたと想定して再計算してみます。

基礎となる財産一覧表で、生前贈与欄の「財産の種類・名称」欄に「現金」と入力し、長女が100万円を取得していた旨を入力します。

その結果、遺留分減殺計算表に特別受益が反映され、遺産総額は2,200万円となります。

したがって、各相続人の遺留分は変動します。長女は特別受益分の100万円が差し引かれて83万3,333円、長男・次男はそれぞれ183万3,333円を妻に請求することができます。

特別受益の時効

特別受益の持ち戻し期間は、以前まで法律で定められていませんでしたが、2019年の法改正により、原則として被相続人が亡くなる10年以内の贈与に限定することになりました。

寄与分と遺留分

寄与分とは被相続人に大きく貢献した相続人等へ、本来の相続分以上の財産を取得させる制度です。寄与分に該当するのは、次のような貢献を行う場合です。

・家業に従事:家業に無報酬やそれに近い状態で従事し、財産の維持・増加につながった
・金銭等を出資:本人・その事業へ金銭等を出資し、財産の維持や増加または借金の返済等を行った
・療養看護:無報酬やそれに近い状態で看護し、看護費用等の負担を防止した
・扶養:特定の相続人が扶け・養い、財産維持につながった
・財産管理:特定の相続人が財産管理を適正に行い、支出の軽減につながった

残念ながら寄与分は遺留分の算定では考慮されず、遺留分計算シートにも寄与分の欄は設けられていません。

遺留分の請求方法を流れに沿って解説!

ここでは、遺留分を請求する方法を解説します。

法定相続人・遺産の確認する

まず、法定相続人は誰なのか、遺産はどのくらいあるのかを調査し、確定する必要があります。

請求を行う相続人との話し合いを行う

相続人や遺産が確定できたら、遺留分を侵害している相続人に話し合いを行います。もし、相続人が話し合いに応じない場合は、内容証明郵便を用いて遺留分侵害額を請求します。

遺留分侵害請求には、相続開始から10年以内という時効が定められていますが、内容証明郵便を送れば消滅時効は、6カ月猶予されます。

話し合いは長期化するケースが多いため、内容証明郵便を送ることをおすすめします。また話し合いの際、弁護士等の法律の専門家に間に立ってもらうことをおすすめします。

家庭裁判所に調停を申立てる

もし当事者同士の話し合いでは合意できなかった場合は家庭裁判所に調停を申立てを行います。

地方裁判所へ訴訟を提起する

家庭裁判所での調停でも解決できない場合は、地方裁判所へ訴訟手続きに移ります。

調停で遺留分請求を行うメリットや、具体的な調停の申立方法などは、下記の記事をご覧ください。

遺留分の計算に関しての相談先はこちら

遺留分計算シートが提供され始めてから、このツールの更新はいまだ行われていません。今後、法律の改正があった場合や近年の判例・裁判例に則した計算ができないことで、正確な計算ができない可能性も想定されます。

あくまで遺留分計算シートは、遺留分を算定する際の目安として活用すべきです。遺留分に関して不安がある場合や相続人間で揉めている場合には、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

弁護士の相談料は1時間で無料~1万円程度です。遺留分割合の算定だけでなく、相続問題について協議から裁判までをトータルでサポートしてくれるのが弁護士です。

遺留分の計算も正確に行ってくれるので、悩みや不明点がある場合は弁護士に問い合わせるのが確実です。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

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