絶縁状態の兄弟での遺産相続とは?トラブルを回避する方法を徹底解説!

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遺産相続

絶縁した兄弟での遺産相続。権利はあるの?連絡は必須?

親の相続で遺言がない場合は、相続人である兄弟は全員で遺産分けの話し合いをすることが絶対条件です。1人でも欠けての遺産分割協議は出来ませんので、全ての相続人に連絡を取り全員で話し合いをしなければならない必要があります。

相続人の全員同時に話し合いが物理的に難しい場合も考えられますが、その際は電話、メールなどで順次連絡を取り意思を確認して、全員の同意を取り付けてから、遺産分割協議書を順番に郵送してやり取りの上、署名押印をする事も考えられます。ただ相続人が多いほど手間と時間がかかります。途中で書類を止めてしまう人がいたり、手続き完了までに1年以上かかるケースも珍しくはないようです。

相続人が1人でも欠けての遺産分割協議書は無効です。手続きには全ての相続人の署名と実印が必要となります。話し合いが暗礁に乗り上げて何代も前の相続手続きを怠っていたために、孫子の代に相続人が数十人となってしまっても全員に相続権はあり、1人も欠けずに全員の総意の上で手続きをしなければなりません。

そのようなことから、相続手続きは面倒ではありますが、放置をしておけばより手間と費用がかかりメリットは一つもありません。未来の子孫達に負の遺産を残したくなければ先祖からの負の遺産は自分の代で解消をしましょう。

それぞれのケースにおける連絡方法や対処方法

疎遠だったり、不仲でも連絡先が分かる場合は連絡をすればよいのですが、絶縁状態でとても冷静に話し合いをする事が出来ない場合もあるかと思います。

その際には、弁護士へ相談をして交渉の代理人となってもらう選択肢があります。ただ連絡も一切せずに、いきなり弁護士を立てると相手方も感情的になることも想像できます。諸刃の刃となり感情を害して全面戦争となり先方も弁護士を立てて裁判になる可能性もあり何年もの時間と費用もかかることになりかねません。

音信不通で連絡先が分からない場合

音信不通で連絡先が分からない場合は、連絡先を探し出さなければなりません。住民票や戸籍を取得して調べていく方法があります。

絶縁後の兄弟が転居を繰り返していたり、絶縁してからかなり時間が経っている場合は、戸籍などを調べるには司法書士などの専門家に依頼した方が費用はかかりますが確実に書類を入手してくれます。ただ行方不明者がきちんと住民票の転居届出をしていないとそれ以上の調査は出来なくなります。

行方不明の場合

行方不明の場合、警察への捜索願(現在の正式名称は行方不明者届)を届け出る方法があります。しかし警察では、事件性、緊急性のある場合に限って捜索をしますので、遺産分けの利害関係の有る相続人の連絡が付かないというだけでは捜索をしてもらうことは難しいでしょう。

事件性のある場合とは、「自分の意志とは関係なく、何らかの事件・事故に巻き込まれて行方不明になった」「失踪者に命の危険がある」と判断をされた場合のことで、すぐに積極的な捜索が始まるのが通常です。具体例では、誘拐、連れ去りなどの凶悪な事件に巻き込まれた恐れがあるとか、水難や交通事故などの生命に危険を及ぼす事故に遭遇している、遺書があり自殺の恐れがある、病人、高齢者、年少者など本人だけで生活が困難と考えられる者などがあります。

仮に事件性、緊急性があると認められれば捜索費用はかかりませんので、まず警察への相談から始めてみるのが良いでしょう。

不在者財産管理人を選任する

事件性、緊急性が無い場合は民間の探偵事務所へ依頼するなどの方法が考えられます。民間の探偵は独自のノウハウを持って事件性、緊急性の有無にかかわらずに調査で動いてくれますが、費用がかかります。相談、見積もり無料の所もあるので相談をしてみると良いでしょう。

探偵に依頼をして時間をかけてもどうしても見つからない場合には、相続人から家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立をして財産管理を代行する人を立てて遺産分割協議を進める方法があります。

不在とは、「従来の住所又は居所を去った」ことを言い当分帰来することが無い場合にその条件を満たします。その際には生死が不明であることは求められませんが、ここ数日間連絡が付かないということでは裁判所は認めてくれません。

事情を調べたうえで戸籍の附票などから現住所を調べて、手紙、電話などの方法で連絡を待つなどの方法を取ります。その上で裁判所の判断にて不在者財産管理人を選任し、財産の保存、管理を行います。

不在者財産管理人は、利害関係のない第三者が選ばれるので、利害関係の有る相続人である兄弟がなることはありません。

相続人ではない不在者の親族がいれば候補として申請をする可能性はありますが、不在者の財産を調査して目録を作り、財産の管理を行います。その結果を裁判所への報告をする義務があります。ある程度の知識がないと親族が財産管理を行うのはハードルが高いと言えます。

候補がいなければ、家庭裁判所が選任をします。司法書士や弁護士などの専門家が選ばれた場合は、職務終了まで報酬が発生し、不在者財産の中から支払いをします。

遺産分割協議は、不在者財産管理人の通常の管理の範囲を超えるので別途、家庭裁判所へ権限外行為の許可という申立てをして許可をされてからの手続きとなります。不在者財産管理人が遺産分割協議に関わる際には、法定相続分以上の財産を取得することを職務とします。それは不在者が不当な不利益を得ることの無いように裁判所が監督をしているためです。

遺産分割により取得をした相続財産は、不在者財産管理人の職務が終了をするまで該当する財産の管理を続けることになります。

不在者財産管理人の職務は、不在者が現れた時、不在者の死亡が確認された時、不在者の失踪宣告がされた時に終了します。

失踪宣言を申し立てる

不在者財産管理人選任よりも長期に渡り生死も含めて不明の場合、選択肢として不在者の生死が7年以上不明なら(戦地や遭難などの危難にあった場合は1年以上)遺産分割協議をするために、家庭裁判所に失踪宣告の申立をする方法もあります。

認められると行方不明の兄弟は法律上死亡したとみなされ、行方不明者の法定相続人へ代襲相続となります。

遺産分割協議は、従来の行方不明者以外の相続人と代襲相続人全員との間で行われることになります。

失踪宣告により相続手続き終了後に、行方不明者が出てきた場合には自動的に失踪宣告が取り消されるわけではなく、家庭裁判所への失踪宣告の取り消しの申立が必要です。

取り消しが認められると失踪宣告による死亡が初めから無かったことになります。はじめから相続が無かったことになる為相続した財産も遡及して返還をする必要があります。このように失踪宣告は生死不明者を法律的に死亡したとみなす強い効力があるので、手続きに当たっては専門家への相談をお勧めします。

相続をきっかけに兄弟が絶縁状態に!専門家が教えるよくある事例集

実家の不動産が1つ、相続人兄弟が複数であるケース

共有名義にすることはできるが、現実的に不動産を使えるのは1人、他の兄弟は別のものを相続できればよいが、相応の財産がないと遺留分を侵害してしまい、争いの基となります。

ここでは、代々続く開業医の相続の事例をご紹介します。母が亡くなり、自宅と診療所の相続で争いになった事例です。

相続人は子4名、母の介護費用は10年で6,000万円かかっており、長男が負担していました。他の3人は介護はせず、費用負担は拒み、実家の住まいと診療所の不動産の均等分割を要求してきました。

最終的に長男が折れて、介護費用は一人で被り、不動産は均等分割をしました。長男には子が無く、長男が診療所を廃業したら売却をされても仕方がないと覚悟を決めて分割協議に応じました。長男が廃業し、死亡後には実家は売却をされてマンションが建ったというスッキリとしない相続のサポートの例がありました。

代々開業医で守られた実家と診療所の不動産は売却をされて次世代に残すことはできませんでした。

トラブルにならない兄弟間での遺産相続の方法を教えて!

まずは、財産を残す方の気持ちを優先すべきという考えから、親の元気なうちに遺言で財産分与の意思を形に残しておいてもらうことが大切です。子の相続争いの責任は親の相続に関する認識不足と無対策、放置が最大の原因です。

遺言があれば遺産分割協議は、必要ありません。財産分けに対する想いも付言事項で書き綴ってあれば親の意思に従い相続争いでもめる可能性も、無対策よりは効果的かと思います。

相続争いを防ぐには日頃から兄弟の関係は出来るだけ良好にしておくことです。お互いに権利だけを主張するばかりではなく、親からの財産に感謝をして兄弟仲良くつなぐ義務もあると思います。親が努力をして作った財産が原因で兄弟間で大揉めになり絶縁状態になってしまうことを天国の親は望んでいるでしょうか?

兄弟間で、親の介護の面倒を見ていた子とそうでない子がいる場合など、それぞれの苦労や想いの価値観にずれが出ることも多くあります。

親と同居で介護をしていた子は、介護費用の出費や家族で介護の苦労があっても、面倒を見ていない子からは、理解をされずにそれどころか親の貯金を使いこんでいたなどの疑いをかけられる恐れも出てきます。

親の面倒をみていない子に対しては、親の面倒は一切見ずに財産分けの時だけ権利を主張されると、面倒を見た子の立場からすれば、面倒を見たことを認めて感謝をされたうえで、財産分けでは考慮をされないと感情的に納得いかないということも考えられます。

親の面倒を見た子は、親の財産を適切に管理していた証拠を通帳、領収証などでわかりやすく記録にまとめておくことが望ましいです。

既に絶縁状態で不仲な兄弟も世の中にはいるでしょう。最後に絶縁状態でも何かあった場合の連絡先は常に確保をしておくことは大切かと思います。

最終手段は相続放棄、どうしても相続時に兄弟間での相続争いが避けられない場合には、いっそのこと財産をきっぱりと諦めて相続争いからリタイアする方法もあります。

法律上の相続放棄という方法で他の相続人との話し合いや合意の必要はなく、家庭裁判所へ単独で行うことができます。相続放棄には期限があり、相続の発生を知った時から3か月以内の申立が必要です。

ただし、自宅は要らないけど、現金は欲しいなど財産の一部だけの放棄をする事は出来ませんので、注意が必要です。

相続放棄をすると初めから相続人でなかったことになり、子の代への代襲相続はありません。残りの兄弟が相続人となります。注意点は一度相続放棄をすると取り消すことは出来ませんので一時の感情に任せて行わずによく考えて手続きをしましょう。

遺産を相続させたくない兄弟がいる場合の対処法!

兄弟と絶縁している場合、兄弟に遺産を相続させたくないと考える方も多いでしょう。しかし、絶縁状態を理由に相続権を剝奪することはできません

ただし、絶縁をしている理由が民法で定められている要件を満たす場合、遺産を相続する権利を剥奪することができる制度があります。

こちらでは、相続の権利を奪うことができる制度を2つご紹介します。

相続廃除の申立てを行う

相続廃除とは、相続権を持っている人を相続から廃除することができる制度です。相続廃除は、民法の条文により次のように規定されています。

民法892条

”遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。”

相続廃除を申し立てることができるのは、被相続人のみであり、相続廃除となるのは、遺留分を有する推定相続人です。

推定相続人は、相続廃除されると遺留分を失うことになります。

民法の条文に規定されているように、兄弟が絶縁状態だから等どんなケースでも相続廃除できるわけではありません。一定の要件を満たしている必要があります。

  • 推定相続人が被相続人に虐待をした場合
  • 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えた場合
  • 推定相続人に上記以外の著しい非行があった場合

上記のいずれかの要件に満たす場合は、相続廃除を申立てることができます。

相続欠格を主張する

相続欠格とは、相続人が遺産を相続する権利を剥奪する制度のことです。相続剥奪の場合は、申立てできるのは被相続人のみでしたが、相続欠格の場合は、被相続人の意思なしに相続の権利を剝奪されます。

相続欠格を主張する場合も民法891条で定められた要件に当てはまっている必要があります。

  • 被相続人や他の相続人を殺害したり、殺害しようとした場合
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら、それを告発しなかった場合
  • 詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を強制したり、撤回、変更させた場合
  • 遺言書を偽造、破棄、隠ぺいした場合

相続廃除が適用された場合、取り消すことが可能ですが、相続欠格が適用された場合は、基本的に取り消すことができません。

こちらでは2つの制度をご紹介しましたが、もし絶縁した兄弟の連絡先を知っており、連絡を取れる状況であれば、相続の放棄を提案するのも良いでしょう。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

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この記事を書いたのは…

堀口 実

株式会社エム・スタイル 笑顔相続サロン日本橋 代表  東京相続診断士会 会長  上級相続診断士、終活カウンセラー、宅建士、AFP

堀口 実(ほりぐち みのる)

新卒で入社した住宅ローン会社では営業、審査から差押等の債権回収実務までを10年間経験、保険業界に転職しFP歴26年、通算36年お金に関わってきました。誰に相談をしたらよいかわからないお金の悩みで困っている人を「絶対に見捨てず寄り添うサポート」を心がけています。YouTubeにて玉すだれを使って相続を語る「円満相続玉すだれチャンネル」で情報も配信中です。

サイトURL:http://www.ms-style.net

Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCFR8i_BM8S8L9CzRD2wTnRw

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