相続登記義務化!登記しないとどうなる?罰則の内容や手続きの方法を具体的に解説

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相続登記義務化の基本
相続登記とは、不動産の所有者(被相続人)が亡くなったとき、不動産を引き継ぐ人に名義を変更する手続きのことです。
被相続人の不動産を引き継ぐ人が、法務局に登記申請することによって行います。
不動産を引き継ぐ人は被相続人の遺言で指定されている場合もあれば、法定相続や遺産分割協議で決定される場合もあります。
制度が生まれた背景と目的
これまで相続登記は申請期限が明確化されておらず、登記手続きをしなくても罰則等は無いため、申請しない相続人も多い状況でした。
その結果、所有者不明の土地が増え、不動産売買や空き地の活用が進まないという問題が起きていました。
そこで、民法・不動産登記法が改正され、2024年4月から相続登記が義務化されるのです。
施行日と対象者
2024年4月からの相続登記の義務化により、相続により不動産を引き継いだ人は、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しなければいけません。
過去の相続案件も含まれる?
2024年3月31日以前の未登記不動産も義務化の対象であり、施行日から3年以内に申請する必要があります。
そのため、過去に被相続人の土地や建物を相続し、相続登記が済んでいるのかわからない人は、現在の登記情報がどうなっているかをまず確認しましょう。法務局の窓口やオンラインで登記情報の確認が可能です。
登記事項証明書を取得する場合の手数料は次の通りです。
- 書面請求:1通600円
- オンライン送付請求:1通500円
- オンライン請求・窓口交付:1通480円
インターネットで登記情報提供サービスによる登記情報を閲覧(手数料332円)もできます。この登記情報はプリントアウトできるものの、法的な証明力はないので注意が必要です。
所有者不明土地問題との関係
「所有者不明土地」とは、登記簿を調べても持ち主が誰かわからない土地や、持ち主がわかっていても連絡がつかない土地のことです。
こうした土地は、公共事業や災害復旧で必要になった場合でも、持ち主が不明だと使用許可を得られないため、活用が進まなくなります。たとえば、道路や防災設備を建設する際に所有者の承諾が必要ですが、誰の土地か特定できなければ交渉すらできません。その結果、計画が大幅に遅れたり、中止に追い込まれることもあります。
また、放置された土地は雑草が生い茂り、不法投棄や不法占有が発生しやすく、周辺の環境や治安にも悪影響を与える可能性があります。
この問題の原因の一つが「相続登記が行われないこと」です。相続登記をしないと、土地の所有者が亡くなったまま登記簿が更新されません。その状態が長引くと、相続人が増えたり、行方不明になったりして、土地の所有者が特定できなくなります。このような事態を防ぐために、相続登記が義務化されたのです。
相続登記義務の具体的な内容
相続登記の義務化により、不動産を引き継いだ人が必ず守らなければならない手続きが定められました。具体的な内容について詳しく解説します。
登記申請の期限について
相続登記の申請期限は、次のように明確に定められています。
相続登記の義務化:相続により不動産を取得した場合、取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。また、2024年3月31日以前に発生した未登記不動産についても、義務化施行日(2024年4月1日)から3年以内に申請する必要があります。
住所・氏名の変更登記の義務化:不動産所有者の住所や氏名が変更された場合、変更日から2年以内に登記を行う必要があります。2024年4月1日以前に未変更だった場合は、施行日から2年以内(2026年3月31日まで)に申請しなければなりません。
登記手続きの一部が簡略化:法定相続分通りの相続や遺贈による取得では、取得者が単独で申請できるようになり、手続きが簡略化されました。これにより、相続人全員や遺言執行者の協力がなくても名義変更手続きが可能です。
この改正により、手続きが明確化されただけでなく、利便性が向上しています。ただし、期限を守らない場合には罰則が課せられるため注意が必要です。
義務を果たさなかった場合の罰則
2024年4月以降、不動産の未登記や住所・氏名の未変更に対して以下の罰則が設けられています。
- 相続登記未申請:正当な理由がなく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料が課されます。
- 住所・氏名変更未申請:正当な理由がなく期限を過ぎた場合、5万円以下の過料が課されます。
過料は相続登記や変更登記を怠った場合の罰金に相当し、期限内に手続きを行わないリスクを伴います。適切な計画を立て、期限を守ることが重要です。
免除される「正当な理由」とは?
相続登記や変更登記の義務は、正当な理由がある場合には一時的に免除される可能性があります。ただし、この「正当な理由」が認められるかどうかは、法務局の登記官が個別の状況を精査して判断します。具体例としては以下のようなケースが挙げられます
- 相続人が非常に多く、必要な書類を集めるのに時間がかかる
- 遺言の内容に争いがあり、解決が進んでいない
- 相続人が重い病気を抱えている
- 経済的に厳しい状況にある
これらの理由が認められると、一定期間登記申請が猶予されることがあります。ただし、猶予期間が与えられたとしても、義務が免除されるわけではありません。最終的には必ず手続きを完了させる必要があるため、専門家への相談や早めの準備が重要です。
相続登記を怠るとどうなる?罰則やリスクについて
こちらでは、相続登記を放置すると将来どんな事態となるのかについて解説しましょう。
相続登記せず放置している相続人が多い理由
以前は相続登記について、明確な期限や罰則もありませんでした。その割に、登記申請にはいろいろな書面を準備するので、手間がかかります。
また、申請の際に登録免許税の納付も必要で、相続不動産の固定資産評価額に0.4%の税率をかけた金額となります。
不動産の評価額が高いと登録免許税も高額になってしまいます。下表を参考にしてください。
固定資産評価額 | 登録免許税 |
1,000万円 | 4万円 |
2,000万円 | 8万円 |
5,000万円 | 20万円 |
1億円 | 40万円 |
そのため、煩雑な手続きと登録免許税がかかるのを理由に、申請を放置する人も多い状態でした。
不動産取引における障害とは
相続登記を行わないと、不動産を引き継いだ人が正式な所有者として認められません。その結果、不動産を自由に活用することが難しくなります。不動産を有効に利用するためには、相続登記による名義変更が必要です。この手続きを怠ると、次のような問題が発生します。
まず、未登記の不動産を売却する場合、大きな障害が生じます。不動産会社は登記が完了していない物件について、「未登記のままでは売却ができない」と判断するため、取引に進むことができません。売却を希望する場合、相続人の名義に変更することが前提となります。
また、売却だけでなく、不動産の自由な利用も制限されます。たとえば、相続した不動産を担保として融資を受けたい場合や、不動産を賃貸物件として活用したい場合でも、所有者が明確でないと手続きが進みません。金融機関や契約先が、所有者としての権利が確認できないためです。
不動産を円滑に売却・活用し、トラブルを未然に防ぐためにも、相続登記を速やかに行うことが不可欠です。登記を完了させることで、不動産の名実ともに正式な所有者として認められ、自由な活用が可能になります。
相続関係が複雑化する可能性
相続登記を長い間しないままにしておくと、相続人の数がどんどん増えて、権利関係が複雑になります。
たとえば、父親が亡くなった後、相続人が子ども2人だったとします。もしその子どもが相続登記をしないまま亡くなると、その子どもの子ども、さらにその子どもの配偶者や兄弟など、関係者が次々に加わります。最初は2人だった相続人が、数十年後には10人以上に増えることもあります。
こうなると、土地や建物をどうするかを相続人全員で決めるのはとても難しくなります。誰か一人でも話し合いに参加しなかったり、意見がまとまらなかったりすると、登記手続きが進まず、土地を売ったり活用したりするのが不可能になることもあります。
こうしたリスクを防ぐためにも、早めの相続登記が重要です。
税制優遇措置が受けられなくなる可能性
相続登記を期限内に行わないと、税制優遇措置が受けられなくなる可能性があります。この優遇措置は、相続登記を促すために設けられた制度で、条件を満たせば登録免許税が一部または全額免除されます。たとえば、土地の評価額が100万円以下の場合や、亡くなった相続人の名義に相続登記をする場合などが対象です。
優遇措置を受けるには、2025年3月31日までに登記申請を行う必要があります。これを過ぎると通常の税率(固定資産税評価額の0.4%)が適用され、税負担が増えることになります。
相続登記手続きの実践ガイド

相続登記の申請方法には窓口、郵送そしてオンライン申請の3つがあります。必要書類とともに紹介します。
必要な書類と申請の流れ
必要書類は窓口、郵送、オンライン申請で共通しています。
申請前に以下の書類を準備しておきましょう。
- 相続人全員の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得、1通450円
- 相続人全員の印鑑登録証明書:各住所地の市区町村役場で取得、1通200円
- 不動産相続人の住民票:住所地の市区町村役場で取得、1通200円
- 被相続人の戸籍謄本(改製原戸籍、除籍謄本):出生から死亡までを収集、本籍地・の市区町村役場で取得、1通450円~750円
- 被相続人の住民票の除票:住所地の市区町村役場で取得、1通200円
- 固定資産評価証明書:不動産所在地の管轄法務局で取得、1通200円~300円
- 収入印紙:郵便局・コンビニ等で取得
- 遺言書または遺産分割協議書:法定相続の場合は不要
- 委任状:代理申請する場合に必要
窓口申請
窓口申請をするには、相続不動産の住所地を管轄する法務局にて、次の手続きを進めます。
- 必要書類の収集
- 相続登記の申請書に必要事項を記入し、押印
- 申請書・必要書類を法務局に提出・登録免許税の納付
- 手続き完了後、登記完了証・ 登記識別情報通知書が交付される
郵送申請
郵送申請も窓口申請と同様に必要書類を準備し、相続不動産の住所地を管轄する法務局に申請します。
封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と明記し、書留郵便により送付しましょう。
返信用封筒と切手を同封すれば、登記識別情報通知書・完了証や原本還付手続きを行った添付書類が、本人限定受取郵便で返送されます。
オンライン申請
オンライン申請は次の手順で進めていきます。
- オンライン申請に必要な環境を整備:申請者情報の登録・申請用総合ソフトのインストール
- 申請書作成・必要書類の取集
- 申請情報へ電子署名付与:マイナンバーカード等を取得
- 申請情報送信
- 登録免許税納付:電子納付
- 書面で作成された添付情報を、法務局に持参か郵送
- 登記完了証取得
登記申請を迅速に済ませたい場合、オンライン申請はとても便利な方法です。
ただし、申請がオンラインで完結するわけではなく、書面で作成された添付情報を、オンライン申請の受付日から2日以内(初日・休日等を除く)に、法務局に持参または書留郵便等で送付しなければいけません。
かかる費用の内訳と目安
相続登記には、一定程度費用がかかります。具体的な金額は不動産の評価額や地域、依頼する内容によって変わりますが、全体として数万円から数十万円程度かかると考えておきましょう。
以下で主な内訳を解説します。
登記事項証明書の取得
まず、不動産の状況を調べるために「登記事項証明書」が必要です。これを取得する際に、1通あたり480~600円の費用がかかります。不動産が複数ある場合は、その数だけ証明書を取る必要があります。また、固定資産税評価証明書の取得にも1件400円程度の手数料がかかります(地域によって異なります)。
戸籍謄本などの取得
相続登記では、被相続人や相続人の戸籍や住民票など、多くの書類を揃える必要があります。特に被相続人の「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」を取得するには数通が必要になるため、これだけで5,000~10,000円程度の費用がかかることがあります。
登録免許税
さらに、登録免許税という税金も発生します。この税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」で計算されます。例えば評価額が3,000万円の土地であれば、登録免許税は12万円です。
ただし、先述の通り、一定の要件を満たせば免税されます。
司法書士への報酬
手続きを司法書士に依頼する場合は、報酬が追加で発生します。費用の相場は7~15万円程度ですが、不動産の数や評価額、地域によって異なります。都市部では地価が高いため、司法書士の報酬も高くなる傾向があります。報酬額は事前に見積もりを出してもらうことが可能ですので、比較検討するとよいでしょう。
専門家に頼るべきケースとは?
相続登記は自分で手続きすることもできますが、状況によっては専門家である司法書士に依頼する方が効率的で確実です。以下のようなケースでは、専門家のサポートを検討しましょう。
相続人が多い場合や不動産が複数ある場合
相続人の人数が多いと、集める書類の量が増え、遺産分割協議が複雑化する傾向があります。特に、相続人全員の同意を得る必要がある場合、話し合いが長引いて手続きが進まないこともあります。司法書士に依頼することで、必要書類の手配や手続きがスムーズに進み、負担を軽減できます。
相続する不動産が遠方にある場合
相続する不動産が住んでいる場所から遠くにある場合、その地域を管轄する法務局で手続きをする必要があります。遠方への移動が頻繁になると、時間や費用の負担が大きくなります。オンライン申請も選択肢にありますが、正確に手続きを進めるのは簡単ではありません。そのため、現地事情に詳しい司法書士に依頼するのが安心です。
不動産の権利関係が複雑な場合
長年放置されていた不動産は、相続人が増え、権利関係が複雑になることがあります。例えば、複数の相続人が権利を持つ共有状態では、権利割合の計算や調整が必要です。このような状況では、法律の知識が求められるため、司法書士に手続きを任せることで確実に進められます。
音信不通や関係が悪い相続人がいる場合
相続人の中に長期間連絡が取れない人や、関係が悪化している人がいる場合、話し合いが難航することがあります。感情的な問題が絡むと、当事者同士では冷静な交渉が難しくなることも。こうした場合、第三者である司法書士が介入することで、円滑に手続きを進めることが可能です。
急いで相続登記を済ませる必要がある場合
不動産の売却や相続登記の期限が迫っている場合、自分で手続きを進めるには時間が足りないことがあります。特に、相続登記の義務化により、期限内に手続きを終える必要性が高まっています。司法書士に依頼すれば、迅速かつ正確に手続きが進められます。
相続登記義務化に伴う制度改正について
相続登記義務化に伴い、いくつかの制度が改正され、相続手続きがより明確化されました。
住所変更登記も義務化される?
2021年の不動産登記法の改正により、2026年4月1日から住所や氏名の変更登記が義務化されます。不動産を所有している人は、住所や名前が変わった場合、その変更から2年以内に登記を申請する必要があります。
さらに、2026年4月1日より前に住所や名前が変わっているにもかかわらず、変更登記をしていない場合は、2028年3月31日までに変更登記を申請しなければなりません。この改正は、不動産登記情報の正確性を保つことで、所有者不明土地の発生を防ぐことを目的としています。
新設された相続人申告登記制度とは
遺産分割協議がまとまらず、相続登記が進まないケースもあります。このまま放置すると、3年以内に登記を行わなければ過料が科される可能性があるため、対策として2024年4月から「相続人申告登記制度」が導入されました。
この制度では、不動産の所有者が亡くなったことと、自分がその相続人であることを法務局に申し出るだけで、最低限の登記義務を果たしたことになります。手続きは簡易化されており、書類は郵送だけでなくオンラインでも提出可能です。通常必要な押印や電子署名も不要で、相続人が単独で申請できます。
ただし、この申告登記は、あくまで「相続人である」ことを証明するものであり、不動産の所有権移転にはなりません。不動産を売却したり担保として利用したりするためには、正式な相続登記を行う必要があります。遺産分割協議が完了した場合、その日から3年以内に正式な相続登記を進める必要があります。
相続土地国庫帰属制度の概要をチェック
相続した土地を「使う予定がない」「管理が負担」といった理由で手放したい人が増えています。このような土地が放置されると、将来、所有者不明土地が増える原因となるため、新たに「相続土地国庫帰属制度」が設けられました。この制度を使うと、一定の条件を満たせば土地を国に引き取ってもらうことができます。
相続や遺贈によって土地を取得した人が申請でき、法務大臣の承認が必要です。土地の共有者がいる場合は、共有者全員で共同申請することが条件です。売買などで取得した共有者がいても、相続や遺贈で取得した共有者がいる場合は申請が可能です。申請された土地が「通常の管理や処分で過剰な費用や手間がかからない」と判断された場合に承認され、申請者が一定の負担金を支払うことで国に所有権が移ります。
この制度は2023年4月27日に始まり、それ以前に相続した土地も対象になります。たとえば、数十年前に相続した土地でも申請可能です。この制度により、管理が難しい土地を手放せる仕組みが整い、所有者不明土地の増加を防ぐことが期待されています。
相続登記義務化への準備と対策
相続登記を行う上での適切な準備を怠ると、罰則を受けたり、不動産の活用が難しくなったりするリスクがあります。この章では、相続登記義務化に備えるための具体的な対策を解説します。
遺言書作成を事前に考えよう
相続登記の義務化に備えて、遺言書を作成しておくことが重要です。
まず、遺言書があれば相続人同士で話し合う必要がなくなります。特に、不動産を誰が相続するかが明確に決まるため、トラブルを避けることができます。さらに、遺言書があると、不動産を受け取る人が単独で相続登記を進められるため、手続きが簡略化されます。
また、相続登記に必要な書類も少なくて済むため、手続きにかかる労力と時間を大幅に減らせます。遺族が無駄な負担を抱えず、迅速に相続登記を完了できる点も遺言書を用意する大きな利点です。
相続登記義務化の時代を迎えるにあたり、遺言書の準備はトラブル回避と手続き簡略化のための最善策といえます。早めに対応しておくことをおすすめします。
不要な不動産は処分を検討してみて
相続を見据えて、生前に不要な不動産を処分することを検討するのも有効な対策の一つです。相続する不動産が多いほど、相続登記の手続きが複雑になり、費用や労力がかかるからです。
たとえば、使っていない土地や遠方にある不動産は、売却することで負担を減らせます。不動産を維持するには固定資産税の支払いなどのコストがかかりますし、管理を怠ると周囲に迷惑がかかることもあります。早めに手放せば、将来の手続き負担を軽減できます。
また、生前に処分しておけば、相続人同士で不動産の分割をめぐるトラブルを避けることができます。不動産が現金化されていれば、分割が容易になり、家族間での話し合いもスムーズに進むでしょう。
不要な不動産を抱えたままにしておくと、相続後に手続きが滞ったり、処分が難しくなったりする可能性があります。こうしたリスクを防ぐためにも、生前のうちに処分を検討することが重要です。
相続登記が難しい場合の対処法
相続登記義務を果たしたくても、音信不通の相続人がいる、話し合いがまとまらないといった理由で進められないケースがあります。このまま放置すると、3年以内に登記をしない場合、罰則として過料が科される可能性があります。正当な理由で過料を免れても、義務を履行したことにはならないため、何らかの対応が必要です。
そのような場合、先述の「相続人申告登記の申出」を活用するのが一つの手段です。この制度を利用すれば、最低限の登記義務を果たすことが可能です。ただし、これだけでは不動産の所有権を取得したことにはならず、売却や担保設定といった不動産の活用には正式な相続登記が必要です。
相続人申告登記を行っておけば、義務の未履行による罰則リスクを回避できますが、相続登記が完了していない状態では不動産を自由に扱えない点を理解しておくことが大切です。
義務を果たすだけでなく、最終的には正式な手続きまで進めることを計画しておくと安心です。
よくある質問
ここでは、相続登記の義務化についてのよくある質問を紹介します。
登記義務はどこまで適用されるの?
相続登記の義務は、2024年4月1日以降に相続した不動産だけでなく、それ以前に相続した分にも適用されます。対象となるのは、土地や建物などの所有権です。たとえ遺産分割が成立している場合や、遺言による遺贈があった場合でも登記が必要です。
登記の期限は、不動産を相続したことを知った日、または施行日(2024年4月1日)のどちらか遅い日から3年以内となります。もし遺産分割協議で不動産を取得した場合は、協議が成立した日から3年以内に登記を行う必要があります。
これにより、過去の相続分も含めて所有者不明の不動産を減らすことが目的とされています。早めに手続きを進めることが大切です。
手続きは具体的にどうすればいいの?
相続登記を自分で行う場合の流れを簡単に説明します。手続きは4つのステップに分かれています。
ステップ1:必要書類を準備する
相続登記には、申請書や戸籍謄本、住民票などの書類が必要です。これらの書類は市役所や区役所で取得できます。遺産分割協議を行った場合は、協議書も作成する必要があります。書類を集める段階で費用がかかることもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
ステップ2:申請書を作成する
必要書類が揃ったら、登記の申請書を作成します。申請書の内容には決まった形式があり、不備があると手続きがやり直しになることもあります。作成時は慎重に進めましょう。
ステップ3:法務局に申請する
書類が揃ったら、法務局に申請します。申請方法は窓口での提出、郵送、オンラインの3種類があります。一般的には窓口か郵送で申請するケースが多いです。
ステップ4:登記完了通知を受け取る
申請に問題がなければ、1~2週間ほどで手続きが完了します。完了後には「登記識別情報通知」が交付されます。これがいわゆる権利証です。通知を受け取ったら、登記事項証明書で名義が変わっていることを確認しましょう。これで相続登記は終了です。
相続登記は自分でも手続きできますが、書類の不備や作業の手間を考えると、専門家に相談することも一つの選択肢です。
費用や期間について知りたいことは?
費用や期間について知りたいことがある場合、お近くの法務局にお問い合わせください。
法務局手続案内予約サービスを利用すると便利です。
親が不動産を持っていたかもしれないが、詳細が分からない。この場合でも相続登記の義務はあるの?
相続登記の義務は、特定の不動産を相続で取得したことを「知った日」から始まります。そのため、具体的にどの不動産を相続したのか分からない場合は、相続登記の義務は発生しません。不動産が特定できた段階で、登記手続きを進めることが必要になります。
相続登記をしないことで、過料が科されるまでの流れを教えて
過料が科されるまでに、以下の手順が踏まれます。
- 催告書の送付
登記官が義務違反を確認すると、相続人に登記を行うよう催告します。この催告書で期限が指定されます。 - 期限内に登記が行われない場合
指定された期限までに登記が行われない場合、登記官は裁判所にその違反を通知します。ただし、相続人からの説明があり、正当な理由が認められた場合は通知は行われません。 - 裁判所による判断
裁判所が通知を受けると、義務違反があったかどうかを判断します。その結果、要件に該当すれば、過料を科す裁判が行われます。
このように、相続登記を怠ると最終的に裁判所から過料が科される場合がありますので、催告を受けた際は早めに対応しましょう。
相続登記義務化に関する注意点とアドバイス
相続登記義務化については、注意すべき点があります。不動産の取引や手続きが絡む中で、詐欺的な勧誘や複雑な相続問題に巻き込まれる可能性も。これらのリスクを避け、スムーズに進めるためのポイントを解説します。
詐欺的勧誘には注意
相続登記の義務化により、所有者不明土地が減ると期待されていますが、その一方で新たな問題も懸念されています。義務化に伴い、不動産業者が相続人に土地活用や買取を積極的に勧誘するケースが増える可能性があります。特に、相続人が過料を心配している状況では、そうした不安につけ込むような勧誘が行われることも考えられます。
また、先述の国庫帰属制度を利用したいけれど条件を満たさず手放せない土地を、不当に安い価格で買い取ろうとする業者も現れるかもしれません。不動産登記の情報は誰でも閲覧できるため、相続人の名前や住所をもとにした勧誘が増えると予想されています。
すべての勧誘が悪質なわけではありません。中には有益な提案もありますが、勧誘内容をしっかり確認することが大切です。特に、契約を急かされたり、不審な条件が含まれている場合は注意してください。怪しいと思ったら、家族や専門家に相談することをおすすめします。詐欺的な勧誘に引っかからないためにも、冷静に判断しましょう。
複雑なケースでは専門家を頼ろう
相続登記で相談があったり、忙しくて申請の手続きが進まない場合には、不動産登記の専門家である司法書士に相談しましょう。
相談者にわかりやすいアドバイスが期待でき、登記申請を依頼すればスムーズに手続きも進めてくれます。
なお、相続登記をはじめ相続に関して疑問点・不明点があれば「相続診断士」へ事前に相談するのもよいでしょう。相続診断士は相続全般に深い知識を有するため、適切な助言を行ってくれはずです。
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相続に関する疑問がある方には、相続診断士による無料相談窓口もご利用いただけます。どうぞお気軽にご相談ください。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください