土地などの遺産を長男が独り占めできる?兄弟間の相続トラブルの対処法!

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遺産相続

現在も長男が遺産を独り占めできる「家督制度」はある?

1947年5月2日までは旧民法が適用され、「家督制度」が行われていました。

家督制度とは「戸主(こしゅ)」と呼ばれる一家の長男が隠居、死亡した場合、戸主の長男が全財産および戸主の地位を相続する仕組みです。

しかし、現在の民法では家督制度が廃止され、法定相続人に応じた遺産分割の割合が法定されています。そのため、他の法定相続人がいる場合、必ず長男だけが単独相続できる仕組みとはなっていません。

前提として知っておくべき!長男の遺産相続分とはどれくらい?

長男であっても、基本的には民法で決められた遺産分割の割合で相続分が決まります。長男の相続分は、他の法定相続人がいるか否かで次のように異なります。

法定相続人遺産相続割合
長男のみ100%
被相続人の配偶者と長男被相続人の配偶者50%:長男50%
長男・次男長男50%:次男50%
被相続人の配偶者と長男・次男被相続人の配偶者50%:長男25%:次男25%

表からも分かる通り、長男だからといって特別に優遇されるわけではありません。

遺産相続時に長男が独り占めできるケースはどんな時?

長男が被相続人の遺産を独り占めできるのは、基本的に法定相続人が長男一人だったときです。その他にも、長男は次のようなケースで被相続人の遺産全てを取得できる場合があります。

長男を除く法定相続人が相続放棄した場合

長男を除く法定相続人が「相続放棄」したケースです。相続放棄をすれば、最初から相続人でなかったのと同じ効果が得られます。

相続放棄をする理由はいろいろありますが、被相続人の遺産を引き継ぎたくない、負債が多く相続しても損をするから引き継ぎたくない、という場合が多いです。

他の法定相続人全てが相続放棄をすれば、結果的に長男が遺産を独り占めできます。ただし、相続すれば、プラスの遺産(不動産資産・金融資産)も、マイナスの遺産(借金等)も、すべて引き継がなければいけません。

被相続人のマイナスの遺産が多く残っていた場合、多額の返済に苦しむ事態も想定されるので注意が必要です。

遺言で全財産を取得した場合

被相続人が長男を特に可愛がり、他の相続人がいるにもかかわらず、遺言書で「全財産を相続人の長男〇〇にだけ相続させる」と記載していた場合です。このような遺言内容も有効となります。

しかし、他の法定相続人が遺言内容に納得しないと、「遺留分侵害額請求権」を行使してくる場合もあります。

遺留分とは、遺言者(被相続人)の残した遺言内容がどんなものであろうと、相続人に最低限保証される相続の権利です。

この権利が行使されると、裁判所での調停や訴訟にまで発展するおそれがあるので注意しましょう。

長男を除く法定相続人が廃除・相続欠格となった場合

長男を除く法定相続人が被相続人に対し、「廃除」「相続欠格」となるような行動をとった場合があげられます。

なお、廃除・相続欠格の意味は次の通りです。

  • 相続欠格:被相続人を殺害または殺害しようとした等の事実があった場合、裁判手続き等を要せず当然に相続資格を失うこと
  • 廃除:被相続人への重大な侮辱・虐待等を理由に家庭裁判所へ申立て、相続人の地位を奪う方法

このようなケースでは相続権が剥奪され、結果的に長男だけがすべての遺産を相続します。

兄弟間で遺産相続の割合を決める流れを解説!

法定相続人が兄弟だけだった場合、遺産相続の割合を決める流れは主に3パターンあります。

法定相続分に従って分割

兄弟2人だけで他に法定相続人がいない場合、民法の規定に従い被相続人の遺産を半分ずつ取得するケースです。

  1. 遺言書がないか探す
  2. 見つからない場合は被相続人の全財産をチェック
  3. 民法の法定相続分に従い分ける

例えば、被相続人が賃貸住宅に一人暮らし、遺産といえば預金しかなかったという場合、兄弟間で分割も容易なので、この方法を利用してもトラブルは発生しないはずです。

遺産分割協議で分割

兄弟が3人以上と法定相続人が多い場合、または相続財産が不動産資産・金融資産をはじめ多数ある場合、慎重に分割する必要があります。そのため、原則として法定相続人(兄弟)全員が一堂に会し、分割内容を協議します。

  1. 遺言書がないか探す
  2. 法定相続人(兄弟)全員に連絡し、遺産分割協議を行う日時について連絡
  3. 当日に遺産分割内容を話し合う
  4. 遺産分割協議書を作成し、法定相続人全員が署名・押印する

遺産分割協議の内容を明確に記録するため、遺産分割協議書を作成した方が良いでしょう。遺産分割で法定相続人同士が揉めた場合、裁判所での遺産分割調停や審判等に発展する可能性もあります。

遺言書に従い分割

被相続人が亡くなった後、遺言書が発見された場合は原則としてその内容に従い遺産を分けます。

  1. 遺言書を発見
  2. 自筆証書遺言または秘密証書遺言は家庭裁判所で検認を行う、公正証書遺言はそのまま開封
  3. 遺言内容を確認
  4. 遺言書に従い遺産を取得する

ただし、遺言書の内容に不満がある場合、法定相続人全員の同意があれば、法定相続分で分割しても、遺産分割協議を行って分割しても構いません。

長男に遺産相続分を多くしたい!被相続人ができる方法とは

被相続人が長男を気に入っていて、遺産を他の法定相続人より多めに渡したい場合、次の方法を検討してみましょう。

遺言書で長男へ多めに遺産を指定する

遺言書で長男の取得分を多めに設定しても構いません。長男にどうしても引き継がせたい財産があれば、遺言書内に明記しておきましょう。

ただし、遺留分を無視した遺言を作成してしまうと、残りの法定相続人から遺留分侵害額請求権を行使されてしまい、相続人の間で大きなトラブルに発展する事態も想定されます。

生命保険金を長男に渡す

被相続人が死亡保険に加入し、死亡保険金(生命保険金)の受取人を長男にする方法もあります。保険金の取得は受取人固有の権利であり、他の法定相続人と分割する遺産とはなりません。

基本的に生命保険金は受取人である長男が独占できます。ただし、被相続人の遺産の大部分が生命保険金だったという場合は、相続人間の不公平が到底容認できないほど著しいものと評価されます。

このような場合は例外的に生命保険金を遺産分割で考慮する、という扱いがなされるケースもあるので注意しましょう(出典:裁判例検索「最高裁判決平成16年10月29日」)。

長男が遺産を独り占めにした場合よくあるトラブルとは?

長男が被相続人(親)と同居している場合は、被相続人の預金口座・預金残高の情報を得やすい立場といえます。そのため、被相続人の預金を全部自分が引き継ぐと主張し、他の法定相続人とトラブルになる可能性があります。

また、被相続人(遺言者)が長男を優遇し、長男にかなり有利な遺言を残す場合もあるでしょう。遺言書の内容は被相続人の意思といえますが、他の法定相続人が納得せず遺留分を主張して、裁判に発展するケースも考えられます。

長男が遺産を独り占めするのを避ける方法を解説!

長男と他の法定相続人の相続トラブルを避けるため、被相続人は前もって次のような対応策を検討しておいた方が良いでしょう。

遺言内容はなるべく公平にする

長男だけを優遇するような遺言書は作らず、各相続人へ平等に分けるような内容で作成しましょう。

例えば長男と次男2人が相続人の場合、長男が被相続人の家を継ぎたいといっていたら自宅は長男に、独立して別居している次男には自宅の価値と同程度の現金を取得させる、他の金融資産は2人で均等に分ける、という内容ならば不満は出ないはずです。

生命保険金の受取人を複数にする

自分の遺産を生命保険で残す場合、生命保険金の受取人は1人だけに限定されません。受取人を複数人で指定もできます。

例えば長男だけを受取人に指定すると、次男・三男の不満が強くなると考えたら、長男・次男・三男を受取人に指定し、均等に保険金が受け取れるよう契約内容を設定できます。

すでに遺産が使われてた場合はどうする?対処法を解説!

長男が被相続人の銀行口座を凍結する前に、被相続人の預金を引き出していたという事実が、預金の取引履歴から判明する場合もあります。こちらでは、すでに遺産が使われてたケースへの対処法を解説しましょう。

刑罰を受ける可能性

被相続人の財産を使い込んだ者がいた場合、刑罰を受ける可能性もあります。

被相続人から委任を受けて預かっている財産の使い込みなら「横領罪」、何らの権限なく無断で盗み出した場合は「窃盗罪」に該当します。

ただし、実際のところ被相続人が亡くなっているので、亡くなる直前に贈与を受けたのか、本人に依頼され預金を引き出したのか、それとも無断で盗み使い込みをしたのか、客観的な立証は困難です。

遺留分侵害額請求を行使する

相続が開始され「遺産全額を長男に渡す。」というような、長男ばかりが優遇された遺言書を発見した場合、その存在を知ってから1年以内に、他の法定相続人は遺留分侵害額請求の行使が可能です。

遺留分侵害額請求権は侵害された遺留分を、侵害した人に現金で埋め合わせするよう請求する権利です。この権利は被相続人の配偶者・子(相続開始時、子が亡くなっていた場合は孫)・親に限定されます。

請求できる遺留分の割合は、法定相続分の1/2(被相続人の親のみの場合:1/3)に限定されています。どのくらい遺留分侵害額が求められるか例をあげて解説しましょう。

(例)長男が遺言により被相続人の全財産4,000万円を取得した、次男は遺留分侵害額請求を行った

被相続人の子供が法定相続人なので遺留分は法定相続分の1/2です。更に子供は長男・次男の2人なので次男の遺留分の割合は1/4となります。

全財産4,000万円×1/4=1,000万円

次男は遺留分1,000万円を長男に請求できます。長男がその請求に応じ1,000万円を支払えば問題ありません。

遺産分割調停・審判を行う

長男が遺留分侵害額請求に応じなかったり、遺産分割協議が不調に終わったりしたら、家庭裁判所で遺産分割調停または審判を行いましょう。

遺産分割調停では家事審判官(裁判官)・調停委員で組織される調停委員会が、中立公正な立場から当事者双方から言い分を聴き、和解のための提案を行い相続トラブルの解決が図られます。

調停が不調ならば遺産分割審判に移行し、裁判官が当事者の主張・提出された資料に基づき、遺産分割方法の決定を下します。

相続トラブルは専門家に相談しよう

長男が遺産を独り占めにした等、相続トラブルが発生したら「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。

相続診断士は相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相続トラブルの悩みに適切なアドバイスが期待できます。

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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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