車の相続手続き完全ガイド!名義変更の流れと必要書類をわかりやすく解説

車の相続手続きの全体像
車を相続する際には、名義変更や税金の支払い、ローンの処理など、さまざまな手続きが必要です。スムーズに進めるためには、全体の流れを把握し、適切な対応をとることが大切です。
相続発生時にまず確認すべきこと
相続が発生したら、まず故人の持ち物を整理し、相続手続きが必要なものを確認しましょう。特に自動車は、名義やローンの状況によって対応が変わります。事前にしっかり調べることが大切です。
故人の名義の確認方法
自動車の名義が誰になっているかを確認するには、車検証(自動車検査証)を見ます。車検証は車の中に保管されていることが多いので、まずはダッシュボードなどを探してみましょう。
特に、ローンが残っている車は、所有者(名義)と使用者が異なることが一般的です。例えば、車検証の所有者欄がディーラーやローン会社の名前になっている場合、その車はまだ故人のものではなく、ローン会社の管理下にあります。
所有者がローン中・リース契約中の場合の対応
自動車にローンが残っている場合、次のどれを選ぶかで対応が変わります。
①ローンを完済して相続する
相続人がローンを一括返済すれば、正式に名義を自分のものにできます。ただし、まとまった資金が必要です。
②新しくローン契約を結ぶ
一括返済が難しい場合、新しい所有者(相続人)としてローンを引き継ぐ手続きを行うことも可能です。ただし、審査があり、承認されなければ引き継げません。
③ローンを引き継がずに手放す
ローンの支払いを継続しない場合、所有権はローン会社やディーラーに戻ります。これは、「所有権留保」といって、ローンが終わるまで車の正式な持ち主はローン会社になっているためです。この場合、相続人はその車を引き継げません。
リース契約の場合、車は元々リース会社の所有物です。そのため、相続の対象にはなりません。契約内容に従い、リース会社に返却するか、契約者を変更する手続きを行う必要があります。
車の相続に関する基本ルール
車の持ち主が亡くなると、その車は相続財産の一部となります。相続人の間で誰が引き継ぐのかを決め、必要な手続きを進めなければなりません。また、相続放棄を選択すると、車の扱いに制限が出るため、注意が必要です。
相続財産としての車の扱い
車は「相続財産」に含まれるため、所有者が亡くなると名義変更や処分の手続きが必要になります。手続きをするのは、基本的に相続を受けた人です。
ただし、ローンで購入された車はディーラーや信販会社の名義になっていることがあり、その場合、相続人が自由に処分することはできません。
相続放棄を選択した場合の影響
相続放棄をすると、車の管理や処分の責任は他の相続人に移ります。しかし、相続人全員が相続放棄した場合、車を管理する人がいなくなり、特別な手続きが必要になります。
相続する人がいなくなると、車の処分は裁判所が選任する相続財産清算人が担当します。この清算人が財産の整理を行い、車を売却したり、廃車にしたりするのが一般的です。
ただし、相続財産清算人を選ぶには、数十万~百万円ほどの費用がかかるため、実際に手続きを進めるケースは少ないのが現状です。相続人が全員放棄する場合は、誰がその費用を負担するのかを事前に決めておくとスムーズです。
車にローンが残っている場合、所有権はディーラーや信販会社にあります。そのため、相続放棄をしても、車は相続財産に含まれません。ディーラーローンの場合は、車をローン会社に返却するだけで手続きが完了します。
一方、銀行などのマイカーローンを利用していた場合は、車の所有者は故人になっています。この場合、相続放棄をした人は車を処分できず、ローン会社への連絡が必要です。
車のローンが完済され、所有者が故人になっている場合は、その車の価値によって扱いが異なります。
- 価値がない車(目安:購入から5年以上経過)
廃車にしても財産処分とはみなされず、自由に処分できます。
- 価値がある車(高年式や高額車両)
勝手に売却すると、単純承認とみなされる可能性があるため注意が必要です。処分に困った場合は、売却して現金化し、裁判所に報告する方法もあります。
車の相続手続きの流れ
車の相続手続きには、名義変更や税金の申告、必要書類の準備など、いくつかのステップがあります。手続きをスムーズに進めるために、全体の流れを理解し、必要な対応を早めに行いましょう。
相続人の確定と所有者の決定
まずは、相続人が誰であるのかを確定します。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集め、それをもとに相続関係図を作成します。
相続人が確定したら、相続人全員に連絡し、被相続人の死亡と、遺言があればその旨、なければ遺産分割協議を行う旨を伝えます。
被相続人が遺言書を残している場合、その内容に従って車を引き継ぐ人が決まります。名義変更の際には、遺言書を添付し、必要な書類を揃えて手続きを行います。
必要な書類の例は、以下のとおりです。
- 遺言書(公正証書遺言の場合は原本または謄本)
- 亡くなった方の戸籍謄本
- 新しい所有者の印鑑証明書
遺言書があれば、相続人同士で話し合う必要はなく、スムーズに手続きができます。
遺産分割協議と所有者の決定方法
遺言書がないと、相続人同士で話し合い(遺産分割協議)をして、誰が車を引き継ぐのか決める必要があります。
手続きの流れは、以下のとおりです。
1.相続人全員で協議をする
→誰が車を相続するか決定。
2.遺産分割協議書を作成
→相続人全員の実印を押し、名義変更時に提出。
3.名義変更の手続き
→車の新しい所有者が必要書類を揃えて申請。
以上で、車の相続手続きは終了です。
誰が車を相続するかを決めるために、遺産分割協議を行います。
単独相続・共有相続の違い
単独相続とは、被相続人の財産を1人の相続人が相続することです。一方、共同相続とは、2人以上の相続人が財産を相続することをいいます。
基本的には、相続人の一人が単独で相続する方法が望ましいとされています。単独で相続すれば、手続きもスムーズで、後々の管理も簡単になります。
ただし、車の価値が高く、誰が相続するか決められない場合は、一時的に共有状態にするという選択肢もあります。しかし、共有状態が続くと処分が難しくなるため、最終的には単独での所有に移行するのが理想的です。
また、共有相続を選ぶ場合でも、後のトラブルを防ぐために、処分方法について事前に取り決めをしておくことが重要です。
名義変更の手続き
車を正式に相続するには、名義変更が必要です。手続きをしないまま乗り続けると、売却や廃車ができず、税金の支払い義務も発生するため、早めに済ませることをおすすめします。
運輸支局での手続きの流れ
車の名義変更は運輸支局で行います。基本的な流れは次のとおりです。
1.必要書類を準備する
相続による名義変更には、以下の書類が必要になります。
まずは、事前に用意する書類です。
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票
- 印鑑証明書
- 車検証
- 車庫証明書(※必要な場合)
次に、運輸支局で取得する書類です。
- 手数料納付書
- 自動車税・自動車取得税申告書
- 申請書
2.運輸支局で名義変更の申請をする
準備した書類を持参し、管轄の運輸支局へ行きます。申請書を記入し、必要な手数料を支払った後、手続きを進めます。不備がなければ、車検証が新しい名義で発行されます。
3.自動車税の申告を行う
運輸支局には自動車税の申告窓口があります。ここで新しい車検証を提出し、自動車税の手続きを行います。もし自動車取得税が発生する場合は、税額に応じた支払いが必要になります。
4.ナンバープレートの交換(必要な場合)
住んでいる地域が変わるなどでナンバーを変更する場合は、古いナンバープレートを返納し、新しいものを取得します。希望ナンバーがある場合は、事前に申し込んでおくとスムーズです。
車庫証明の取得方法
名義変更の際、車を保管する場所が変わる場合は、新しい住所で車庫証明を取得しなければなりません。
1.警察署で申請する
車庫証明の申請書は、最寄りの警察署で受け取ることができます。必要事項を記入し、手続きを行います。
2.申請から約1週間で発行
書類に不備がなければ、申請から1週間ほどで車庫証明書が交付されます。
3.車庫証明が不要なケース
車の保管場所が変わらない場合や、一部の地域では車庫証明が不要となる場合があります。事前に確認しておきましょう。
名義変更にかかる期間と費用
車の名義変更は、必要書類がすべて揃っていれば、1日~数日程度で手続きが完了します。ただし、車庫証明の取得が必要な場合は、約1週間程度かかることがあります。
車の名義変更には、以下の費用がかかります。
- 名義変更の手数料:500円~1,000円程度
- 車庫証明の申請費用:2,500円~3,000円(地域による)
- ナンバープレート変更費用:1,500円~2,500円(希望ナンバーは別途費用が必要)
- 自動車取得税:取得価額の3%(必要な場合のみ)
自分で手続きが難しい場合は、販売店や行政書士に依頼することもできます。ただし、代行手数料が別途かかるため、事前に費用を確認しておきましょう。
普通自動車・軽自動車・二輪車の名義変更の違い
ここでは、自動車の種類ごとの名義変更の違いを説明します。それぞれ少しずつ違うので、注意しましょう。
普通自動車の名義変更手順
普通自動車を相続した場合、運輸支局で名義変更の手続きを行います。手続きの流れは以下の通りです。
1.必要書類を準備する
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 相続人の戸籍謄本
- 印鑑証明書(相続人のもの)
- 車検証
- 車庫証明書(必要な場合)
- 申請書(運輸支局で取得)
- 手数料納付書(運輸支局で取得)
- 自動車税申告書(運輸支局で取得)
2.運輸支局で手続きする
書類を持参し、運輸支局で名義変更の申請をします。不備がなければ新しい車検証が発行されます。
3.自動車税の手続きをする
名義変更後、新しい所有者が自動車税を支払う必要があります。運輸支局内の税申告窓口で手続きを行います。
4.ナンバープレートの変更(必要な場合)
住んでいる地域が変わる場合、ナンバープレートの交換が必要です。古いナンバーを返納し、新しいナンバーを取得します。希望ナンバーがある場合は、事前に予約することも可能です。
軽自動車の名義変更手順
軽自動車の名義変更は、普通自動車と比べて手続きが簡単です。軽自動車検査協会で手続きを行います。
1.必要書類を準備する
- 車検証
- 相続人の住民票(戸籍謄本は不要)
- 申請書(軽自動車検査協会で取得)
- 手数料納付書(軽自動車検査協会で取得)
- 自動車税申告書(軽自動車検査協会で取得)
2.軽自動車検査協会で手続きする
必要書類を提出し、新しい名義で車検証を発行してもらいます。
3.車庫証明は不要(ただし一部地域では必要)
軽自動車は基本的に車庫証明が不要ですが、都市部では届出が必要な場合があります。事前に確認しましょう。
4.ナンバープレートの交換(必要な場合)
軽自動車も地域が変わる場合はナンバープレートの交換が必要です。
二輪車(原付・軽二輪・小型二輪)の名義変更
バイク(原付・軽二輪・小型二輪)の名義変更は、車種ごとに手続きが異なります。
原付(50cc以下)・小型特殊自動車は市区町村役場で以下の手続きを行います。
1.必要書類を準備する
- 旧所有者の廃車証明書
- 新所有者の住民票
- 申請書(市区町村役場で取得)
2.市区町村役場で手続き
書類を提出し、新しいナンバープレートを発行してもらいます。
軽二輪(125cc超~250cc以下)は、軽自動車検査協会で以下の手続きを行います。
1.必要書類を準備する
- 車検証
- 旧所有者の廃車証明書
- 新所有者の住民票
- 申請書(軽自動車検査協会で取得)
2.軽自動車検査協会で手続き
書類を提出し、新しい名義で登録します。ナンバープレートはそのまま使用できます。
小型二輪(250cc超)は、運輸支局で手続きを行います。
1.必要書類を準備する
- 車検証
- 旧所有者の廃車証明書
- 新所有者の住民票
- 申請書(運輸支局で取得)
2.運輸支局で手続き
書類を提出し、新しい名義で登録します。小型二輪は車検が必要なので、次回の車検日も確認しておきましょう。
名義変更に必要な書類
車の相続手続きでは、必要な書類を正しく揃えることが重要です。相続の方法によって求められる書類が異なるため、事前に確認し、スムーズに手続きを進めましょう。
相続の状況別必要書類一覧
自動車は相続財産の一つであり、金銭のように分割することができません。そのため、多くの場合、相続人のうちの一人が単独で所有するか、複数の相続人が共有名義で引き継ぐことになります。状況に応じて必要な書類が異なるため、ここでは相続方法ごとの書類についてくわしく説明します。
相続人が単独で名義を引き継ぐ場合
相続人が一人で自動車を引き継ぐ場合、以下の書類が必要になります。
1.除籍謄本
- 被相続人(亡くなった人)の戸籍で、相続人全員が確認できるもの
- 婚姻などで別の戸籍に移っている場合は、原戸籍謄本が必要
- 発行日から3か月以内のもの
2.遺産分割協議書
- 相続人全員の合意が記された書類
- すべての相続人の実印が必要
3.印鑑証明書
- 車を相続する人のもの
- 発行日から3か月以内のもの
4.委任状(代行業者やディーラーに依頼する場合)
車を相続する人が実印で押印したもの
5.その他の必要書類
- 自動車検査証(車検証)
- 申請書(OCRシート1号)
- 手数料納付書(登録印紙500円を貼付)
- 車庫証明(車の保管場所が変わる場合、発行日から約1か月以内のもの)
- 自動車税申告書
複数の相続人で共有名義にする場合
相続人全員で車を共有する場合、名義変更の手続きが単独相続よりも複雑になります。共有名義にすると、将来の売却や処分の際に全員の同意が必要になるため、慎重に検討しましょう。
必要な書類は、以下のとおりです。
1.除籍謄本
- 被相続人の戸籍で、相続人全員の情報が記載されているもの
- 婚姻などで戸籍から除外されている場合は、原戸籍謄本が必要
- 発行日から3か月以内のもの
2.印鑑証明書
- 共有名義人全員分(未成年者の場合は住民票)
- 発行日から3か月以内のもの
3.委任状
- 共有する相続人全員が実印で押印したもの
- 未成年者が含まれる場合は、親権者の記載が必要
4.その他の必要書類
- 自動車検査証(車検証)
- 申請書(OCRシート1号)
- 手数料納付書(登録印紙500円を貼付)
- 車庫証明(車を保管する相続人の名義で取得)
- 自動車税申告書
遺言書がある場合の必要書類
遺言書があり、自動車の相続人が指定されている場合、基本的には遺言書の内容に従います。この場合、相続人全員で協議を行う必要はありません。
必要書類は以下のとおりです。
1.遺言書
- 公正証書遺言の場合はそのまま使用可能
- 自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で「検認手続き」が必要
2.除籍謄本
被相続人のもの(発行日から3か月以内)
3.印鑑証明書
遺言で指定された相続人のもの(発行日から3か月以内)
4.その他の必要書類
- 自動車検査証(車検証)
- 申請書(OCRシート1号)
- 手数料納付書(登録印紙500円を貼付)
- 車庫証明(必要な場合)
- 自動車税申告書
名義変更手続きに必要な書類の詳細
名義変更には、戸籍謄本や遺産分割協議書など、相続を証明する書類が必要です。加えて、車検証や印鑑証明書など、車の手続きに関わる書類も揃えなければなりません。準備漏れがないよう、事前にチェックしましょう。
申請書の書き方
申請書には、以下のように記載しましょう。
1.申請する運輸支局の名称
書類の右上にある「運輸支局」の欄に、申請する管轄の運輸支局(陸運局)の名前を記入します。
(例)「東京運輸支局」「大阪運輸支局」など
2.申請の種類
「登録」欄にチェックを入れ、「移転登録(相続)」にチェックを入れます。
3.車両情報
- 自動車登録番号(ナンバープレート番号)
→現在のナンバーを記入(例:品川500あ1234)
- 車台番号
→車検証に記載されている「車台番号」を記入
- 自動車の種類
→乗用車・貨物車・バスなどを選択
- 用途
→自家用、営業用などを選択
4.旧所有者(被相続人)の情報
- 氏名(または法人名)
→亡くなった人(被相続人)の氏名を記入
- 住所
→車検証に記載の被相続人の住所を記入
5.新所有者(相続人)の情報
- 氏名
→相続する人(新しい所有者)の氏名を記入
- 住所
→新しい所有者の住所を記入(住民票の住所と同じにする)
- 電話番号
→日中連絡が取れる電話番号を記入
6.使用者の情報(必要な場合)
相続人が別の人に車を貸して使用する場合(例えば、家族が使う)には、使用者の氏名・住所を記入
7.手数料の納付
手数料納付書(運輸支局で入手)に500円の登録印紙を貼り、受付窓口で一緒に提出します。
8.申請者の署名・押印
「申請者」欄に、相続人の氏名を記入し、実印を押します。(認印不可)
代理人が手続きする場合は、「代理人」欄にも氏名・住所を記入し、代理人の押印が必要です。
印鑑証明書・戸籍謄本の取得方法
車の相続手続きには、印鑑証明書と戸籍謄本が必要です。
それぞれの取得方法をわかりやすく解説します。
印鑑証明書は、実印の登録をしている市区町村役場で発行されます。
印鑑証明書は、市町村役場か、コンビニのマルチコピー機で取得することができます。
1.市区町村役場の窓口で申請する
【必要なもの】
- 印鑑登録証(印鑑カード)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 手数料(300円程度)
役場の窓口で印鑑証明書の交付申請書を記入し、提出します。
その場で発行してもらえます。
2.コンビニで取得する(対応自治体のみ)
【必要なもの】
- マイナンバーカード(事前に印鑑登録が必要)
- 手数料(200円~300円程度)
市区町村によっては、コンビニのマルチコピー機で印鑑証明書を取得できます。
役所が閉まっている早朝や夜間、土日祝日でも利用可能で便利です。
次に、戸籍謄本の取得方法について説明します。
戸籍謄本(こせきとうほん)は、被相続人(亡くなった方)と相続人の関係を証明する書類です。
2024年3月1日から、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村役場で取得可能になりました。
戸籍謄本は、以下のように取得します。
1.役所の窓口で直接申請する
【必要なもの】
- 請求者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 手数料(1通450円程度)
- 委任状(代理人が請求する場合)
役所の窓口で「戸籍謄本交付申請書」に記入し、提出します。その場で発行してもらえます。
2.郵送で取り寄せる
役所に行けない場合は、郵送での請求も可能です。
【必要なもの】
- 請求書(役所のHPからダウンロード可能、または便箋に必要事項を記入)
- 本人確認書類のコピー
- 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
- 返信用封筒(切手を貼り、自分の住所を記入)
- 委任状(代理人が請求する場合)
- 役所の住所宛に郵送し、1週間ほどで返送されます。
3.コンビニで取得する(対応自治体のみ)
コンビニ交付サービスを導入している自治体では、マイナンバーカードがあれば、コンビニで戸籍謄本を取得できます。
【必要なもの】
- マイナンバーカード
- 手数料(1通450円程度)
- 利用登録申請(本籍地と住所が異なる場合は事前登録が必要)
ただし、すべての自治体が対応しているわけではないので、事前に確認しましょう。
遺産分割協議書の作成方法
相続が発生した際、自動車も遺産の一部となります。相続人が複数いる場合は、誰が自動車を引き継ぐのかを明確にしておくことが大切です。
遺産分割協議書を作成する際は、自動車を特定できるように記載する必要があります。車検証を参考に、以下の情報を記載しましょう。
- 登録番号(ナンバープレートの番号)
- 車名(メーカー・車種)
- 型式(車のモデル)
- 車台番号(車の識別番号)
車検証は通常、車のグローブボックスなどに保管されているため、確認して記載しましょう。
車の相続後の選択肢

車を相続した後、そのまま乗るのか、売却するのか、廃車にするのかを決める必要があります。それぞれの選択肢について、必要な手続きや注意点を解説します。
相続した車を引き続き使用する
相続した車をそのまま使う場合は、名義変更の手続きを済ませた後も、いくつかの対応が必要です。
自動車保険の名義変更が必要
亡くなった人が契約していた自動車保険は、そのままでは使えません。次のどちらかの方法で対応しましょう。
- 保険の名義変更(引き継いで使う場合)
- 新たに契約し直す(現在の契約を解約して、新規加入)
事故に備え、必ず任意保険に加入しておきましょう。
相続した車の税金の負担
車を所有すると、毎年4月1日時点の名義人に自動車税が課されます。
売却や廃車をしない限り、相続した人が負担することになるので注意しましょう。
相続した車を売却する
車を手放す場合は、売却するのも一つの手段です。必要な手続きなどについて解説します。
売却前に必要な手続き
売却するには、名義変更を済ませた後、以下の書類を準備します。
- 車検証
- 自賠責保険証明書
- 自動車納税証明書
- 印鑑登録証明書
- 実印
- 譲渡証明書(売却先で用意される)
- 住民票(住所変更があった場合)
書類が揃えば、買取業者や中古車販売店で査定を受け、売却手続きを進めます。
査定・売却のタイミングと注意点
車を売却する際には、以下の点に注意しましょう。
- 車検の有効期限が長い方が高く売れる
車検が切れる直前よりも、残り期間があるうちに売る方が査定額は高くなりやすいです。
- 早めに売るのがベスト
古い車ほど価値が下がるため、売ると決めたら早めに手続きを進めましょう。
- 複数の業者で査定を受ける
一社だけで決めず、複数の買取業者に査定を依頼すると、より高値で売れる可能性があります。
相続した車を廃車にする
相続したものの、車が必要でなくなった場合には、廃車にすることも可能です。手続きの流れや費用を解説します。
廃車手続きの流れ
車を完全に処分する場合、運輸支局で永久抹消登録の手続きを行います。
必要書類は、以下のとおりです。
- 車検証
- 自賠責保険証明書
- リサイクル券
- 実印と印鑑登録証明書
- ナンバープレート
手続き後、「一時抹消登録証明書」が発行され、廃車が正式に完了します。
廃車時にかかる費用と還付金
廃車には費用がかかる場合があります。
業者に依頼すると1万〜3万円程度の費用が発生することが一般的です。
しかし、鉄スクラップとして売却すれば、逆に買取してもらえることもあり、費用がかからない場合もあります。
また、自動車税や重量税の還付を受けられる可能性があります。
廃車手続きが完了したら、運輸支局内の税事務所で還付申請を忘れずに行いましょう。
車の相続に関連する税金
車を相続すると、相続税以外にもさまざまな税金の支払いが発生する可能性があります。自動車税や重量税、自賠責保険の扱いについても把握し、適切な手続きを進めましょう。
車は相続税の対象になる
車も相続財産の一部として扱われ、税務上の評価が必要です。
見落としがちですが、相続手続きを進める際には車の価値も正しく計算し、申告を忘れないようにしましょう。
相続税の計算方法と評価基準
車を相続した場合、相続税が発生するかどうかを確認する必要があります。
相続税の課税対象となるかは、遺産総額が「基礎控除額」を超えているかによります。
基礎控除額の計算式:
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば、相続人が2人なら、基礎控除額は4,200万円となります。
遺産総額がこれを超える場合、相続税の申告が必要になります。
車の評価は、「一般動産」として扱われ、被相続人が亡くなった時点での市場価値を基準に算出されます。
相続税を算出する際には、車の評価額を決めなければなりません。以下が代表的な評価額の決定方法です。
1.中古車買取相場を基準にする方法(最も一般的)
- 年式、メーカー、車種、走行距離、カラーなどを元に、買取業者の相場を調べる
- ネットで無料査定できるサイトを活用すると便利
- ただし、傷やオプションの影響は考慮されないため注意
2.実際の売却価格を基準にする方法
- 相続後に車を売却した場合、その売却価格を相続税の評価額とする
- 親族間などで相場よりも安く売った場合は適用できない
3.査定額を基準にする方法
- ディーラーや中古車買取業者に査定を依頼し、その金額を評価額とする
4.減価償却を用いる方法(例外的なケース)
- 市場での売買実例がない場合、新車価格から減価償却で評価
- 税務上の耐用年数に基づいて価値を計算
- あまり一般的ではないが、特定のケースで利用される
通常は、1.の「中古車買取相場を基準にする方法」や2.「売却価格を基準にする方法」が最も使われます。
相続税の申告・納付の期限
相続税の申告・納付期限は、相続開始(亡くなった日)から10か月以内です。
この期間内に、遺産の評価を済ませ、税務署へ申告・納付を行う必要があります。
自動車税・重量税・自賠責保険の扱い
相続した車には、税金や保険の手続きが必要です。これらを適切に処理しないと、未納分の支払い義務が発生したり、車の使用が制限される可能性があります。ここでは、自動車税の扱いや保険の手続きについて解説します。
未納の自動車税はどうなる?
車の所有者が亡くなると、その車にかかる自動車税は相続人に引き継がれます。
自動車税の基本ルールは、以下のとおりです。
- 毎年4月1日時点の所有者に納税義務がある。
- 亡くなった人が未納の税金がある場合、相続人が支払う。
- 名義変更後は、新しい所有者がその年度の自動車税を支払う。
たとえば、4月1日に被相続人が存命で、その後に亡くなった場合でも、相続人はその年の自動車税を負担することになります。
未納がある場合は、相続人が支払う必要があります。
名義変更時に自動車税事務所で税申告を行いましょう。
名義変更後の車検証を受け取ったら、運輸支局の自動車税事務所で税申告を行いましょう。その際、「自動車税申告書」だけでなく、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本・遺産分割協議書)も提出します。
車を相続した後の税金の負担
車を相続した後は、さまざまな税金が発生します。特に自動車税・重量税・自賠責保険の管理が必要です。
1.自動車税
- 毎年4月1日時点の所有者が支払う。
- 普通自動車は都道府県税、軽自動車は市町村税。
- 車を売却・廃車にする場合でも、手続きをしなければ課税される。
2.重量税
- 車検のタイミングで支払う税金。
- 廃車手続きをすれば、未経過分が還付される場合がある。
- 車検の残り期間によっては、相続後に早めの手続きが必要になることも。
3.自賠責保険の扱い
- 車の所有者が変わると、自賠責保険も名義変更が必要。
- 相続人がそのまま車を使う場合→名義変更。
- 車を売却・廃車にする場合→解約手続き。
- 解約すると、残存期間に応じた保険料の返金を受けられる。
相続手続きを専門家に依頼する方法
相続した車の手続きを自分で進めることもできますが、書類の準備や役所への申請など、専門的な知識が必要になる場面もあります。そのため、行政書士や司法書士、ディーラー、買取業者などの専門家に依頼するのも一つの選択肢です。ここでは、それぞれの依頼方法とメリット、注意点について詳しく解説します。
行政書士・司法書士に依頼するメリット
相続手続きに関する書類の作成や申請を専門家に任せることで、手続きがスムーズに進み、ミスを防ぐことができます。行政書士と司法書士のどちらに依頼するかは、必要な手続きの内容によって異なります。
行政書士に依頼する場合、遺産分割協議書の作成や名義変更に必要な書類の作成・提出を代行してもらえます。相続人が多く、手続きを円滑に進めたい場合には特に役立ちます。ただし、不動産の相続登記のような専門的な業務には対応できないため、そのような場合は司法書士に依頼する必要があります。費用は3万円~10万円程度が相場となります。
一方、司法書士に依頼する場合は、行政書士と同様に名義変更に関する手続きを代行できるだけでなく、不動産の登記なども含めたより広範囲な手続きに対応できます。特に、相続放棄の手続きや相続に関する法律的な問題が絡む場合には、司法書士に相談するのが適しています。ただし、費用は行政書士よりもやや高く5万円~15万円程度になることが一般的です。
どちらに依頼する場合でも、書類の不備を防ぎ、スムーズに手続きを進められるという大きなメリットがあります。ただし、依頼する専門家によって料金が異なるため、事前に見積もりを取ることが大切です。
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相続に関する疑問がある方には、相続診断士による無料相談窓口もご利用いただけます。どうぞお気軽にご相談ください。
ディーラー・買取業者に手続きを代行してもらう
車の売却を考えている場合、ディーラーや買取業者に名義変更の手続きを依頼する方法もあります。
ディーラーに依頼する場合は、名義変更と同時に車の下取りを行うことができるため、一括で手続きを済ませられるのが大きなメリットです。特に、同じディーラーで新車を購入する場合は、スムーズに手続きを進めてもらえることが多く、メーカー独自のサポートが受けられることもあります。ただし、買取価格が市場価格よりも低くなることがあるため、価格にこだわる場合は慎重に検討する必要があります。また、古い車やローンが残っている車などは下取りの対象にならないこともあるため、事前に確認が必要です。
買取業者に依頼する場合は、売却と名義変更を同時に進めることができるため、手間がかからない点が魅力です。買取専門業者では、複数の業者を比較して高額買取が可能なケースもあるため、車をできるだけ高く売りたい場合にはおすすめです。また、廃車予定の車でも引き取ってもらえることが多く、廃車手続きにかかる手間を省くことができます。ただし、業者によっては手数料がかかる場合もあるため、契約内容をしっかり確認することが重要です。
手続き代行にかかる費用と注意点
手続き代行にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
依頼先 | 料金の目安 | 主なサポート内容 |
行政書士 | 3万円~10万円 | 遺産分割協議書の作成、名義変更書類の作成 |
司法書士 | 5万円~15万円 | 遺産分割、名義変更、不動産登記手続き |
ディーラー | 無料~3万円 | 名義変更、下取り手続き |
買取業者 | 無料(手数料含む) | 売却・名義変更の手続き |
注意点は、主に以下の3つです。
- 手続きの範囲を確認する
依頼先によって対応範囲が異なるため、事前に確認が必要です。
- 手数料や追加費用に注意
業者によっては名義変更手数料が発生することもあります。
- 車の状態を確認
未納の税金やローン残債がある場合、手続きが複雑になるため注意しましょう。
よくある質問と注意点
最後に、車の相続に関して、よくある質問と回答、注意点について解説します。
車の名義変更の期限はある?
法律では、相続した車の名義変更は15日以内と定められています(道路運送車両法12条)。これは、所有者が亡くなった後、正式な相続人が決まった時点から適用されます。
期限内に手続きをしないと、最大50万円の罰金が科される可能性があります(同法109条)。ただし、実際に罰則が適用されるケースは少ないです。
それでも、名義変更をしないと売却や廃車ができず、税金の支払い義務も続くため、放置は避けましょう。早めの手続きが安心です。
相続した車を放置するとどうなる?
相続した車の名義変更をしないと、売却や廃車ができません。さらに、自動車税の請求が続き、未納が続けば延滞金や差し押さえのリスクもあります。
また、保険が無効になり、事故時の補償が受けられなくなるため、乗り続けるなら名義変更と保険の手続きが必須です。
放置するとバッテリーの劣化や管理費用がかかるほか、違法駐車やトラブルの原因にもなります。車を使わない場合は早めの売却や廃車が必要です。
車の名義が亡くなった人のままでも車検を受けられる?
亡くなった所有者の名義のままでも車検は受けられます。ただし、その後も乗り続ける場合、売却や廃車ができない、税金の請求が続くなどの問題が発生します。車検とあわせて名義変更を行いましょう。
代理人による手続きは可能?
代理人による車の名義変更手続きは可能です。親族だけでなく、司法書士や弁護士などの専門家にも手続きを委任することができます。
その際は、委任状が必要となるので、忘れず準備しましょう。
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この記事を書いたのは…

弁護士・ライター
中澤 泉(なかざわ いずみ)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
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