あなたの親は大丈夫?元気なうちに確認したい証券口座3ステップ

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遺産相続

終活を考え始めたシニア層の方の中に「証券口座をこのまま持っておくべきだろうか?」と考えを持っている方がいるかもしれません。

証券口座は自分のお金ではありますが、親が証券口座を保有していることを知らないという状況がよく見られるようになっています。

その理由に、核家族化が進んでいるのが一番の理由であり、これからますます核家族化は進んでいくとみられています。

ご挨拶が遅れました。

私は証券業界一筋15年目で資産運用のアドバイスをしながら、終活カウンセラー1級と上級相続診断士の資格を生かし、証券口座の終活と相続のサポートをしている者です。

今までシニア層のお客様を1000名以上担当してきたからこそ、やっておきたい証券口座の3ステップについて事例を交えながら今回お伝えします。

  1. 証券口座は一つにまとめましょう
  2. 証券口座の認知症対策としてラップサービスは効果的?
  3. 証券口座の相続手続きは事前の遺言作成がおすすめ

武雄さん(仮名)が私の元に相談の電話をしてきたのは、猛暑日が続く真夏のことでした。

「突然お伺いして申し訳ありません」

少し不安そうに電話をかけてきた武雄さんの話を、私はまずお伺いすることにしました。

「私の資産計画について相談したくて…」とこちらからお伺いする前に話を切り出してくださいました。

もしよろしければ直接お会いしてご相談に乗りたいと思い、そのことを武雄さんに提案すると快く承諾をしてくださいました。

そして後日、私の事務所にて武雄さんのお話を改めて聞くことになりました。

話を聞くと、武雄さんは自営業で40年間働き続けてきたそう。

「今年で70歳になるのですが、周りからの勧めもあり、仕事を引退しようと決めました」

そして、一呼吸おいて話を続けました。

「引退をすると家族に話したタイミングで、娘が手紙をくれたんです。そこには「お父さん、今までご苦労さまでした。お客様の幸せのために、従業員の幸せために働いてきた姿は、私達家族にとって誇りでした。」そんな嬉しい言葉をもらった一方で、「ps.友達が相続税で大変だったという話を聞いて不安に思ったので、お父さんも対策を考えてもらえると嬉しいな。」という、娘らしい現実的な話も書いてありました。」

と少し笑いまじりで話をしてくれました。

「娘が現実を叩きつけてくれたことで、相続のこともそうだけど、家族に迷惑をかけないためにも自分が人生を全うできる資金計画を立てなければいけないと思い、急に不安になりました。」

さっきの表情とは一変し、少し不安そうな表情をした武雄さん。

まずは武雄さんには一体どれくらいの資産があるのか、資産状況をお伺いしました。

調べると、自宅・店舗用不動産・有価証券・現金などが武雄さん名義でありました。

また、奥様は数年前に他界しており、すべての資産が武雄さんに集中している状況で、金融資産はなんと2億円ありました。

「このままでは、娘さんの言うように相続税はかなりなものになりそうですね」

私が武雄さんにそう話すと、武雄さんは

「相続税も迷惑をかけないようにと思っているのですが、私としては自分の余生は大丈夫かどうかが一番心配に思っているのが本音です」

とお話しされました。

そこで武雄さんの不安を解くために、直近の生活水準を聞き、具体的に数値化してみることにしました。

「実は70になってから老後の時間を大切にしたいと思い、家族での思い出作りに旅行したり、ずっとやりたいと思っていたギターや社交ダンスを初めました」

と、様々なものに出費をしていて比較的生活水準は高めでしたが、特段問題になるようなものではありませんでした。

「このくらいの生活水準であれば、生涯困ることはないでしょう」

と私が話すと武雄さんは少しほっとしたような表情をされました。

ですが、武雄さんと話を進めていくと、

「もしかして早い段階で有料老人ホームに入る可能性なども考慮すると、できるだけ資産は増やしておきたい」

という考えをお持ちでした。

武雄さんは有価証券については証券会社や銀行など10以上の金融機関で保有されており、銘柄数も国内株式・海外株式・投資信託・国内債券など50銘柄を超えています。

「複数の証券を持っているのですが、何が何だかもうわからない状況でして…」

そう話す武雄さんに、私は証券口座の生前整理をご提案しました。

これは複数ある証券口座を一つにまとめることです。

以前は会社や担当者によって情報格差が大きく、取扱商品も大きく異なったため、複数で証券口座を持つことは効果的でした。

しかし、今では情報はほとんど平等、取扱商品もネット証券を使えばほとんど差が無くなり、特殊な取引をしたい場合を除き、証券口座が複数あっても意味がない状況になりました。

さらにまとめることによって、損益通算も自動化されるため、今まで確定申告して税金を還付してもらっていたのを自動的に計算してくれるようになるのは手間が省けてとても良いことかと思い、提案をさせていただきました。

話を聞いた武雄さんは「確かにどこに何があるか全然把握していなかったからそうしてもらえると助かります」と笑顔でお答えくださり、早速インターネット証券の楽天証券1社にまとめることにしました。

そうすると、今まで気づいていなかったのですが、投資信託の中身が非常に偏っていたことが明らかになりました。

確かに銘柄は分かれているのですが、名前の違う米国株式インデックスを複数保有していたり、そもそも70歳を超えた富裕層の資産状況とは思えない株式型投信ばかり保有されており、リスク耐性を考慮すると一度見直しの余地はあるのではないかと私は感じました。

このことを話すと武雄さんからも

「さすがにこれでリーマンショックみたいなことが起きたら怖いですよね」とのことで、株式型投信を楽ラップ(※)や米ドル建て社債に見直すことにしました。

※楽ラップとは、楽天証券が提供している資産運用のことをいいます。楽ラップは口座凍結リスクにも非常に効果的な商品です。

楽ラップのような投資一任契約を「ファンドラップサービス」と言います。投資家のリスク許容度に沿ったポートフォリオに基づき運用を行うため、投資家が許容できるリスクの範囲内でリターンを追求するサービスのことで、資金を預けておくだけで投資先の選定などをプロがやってくれます。

契約時に武雄さんと楽天証券の間で投資一任契約を結ぶことで商品の選定からリバランスまで全て自動化されます。

そのため、仮に武雄さんが認知症になってもリバランスは継続され、さらに相続となると投資一任契約は解除され、楽ラップは自動的に解約となるため、預かり金(証券口座内の現金)として相続手続きが可能となります。

現金でしたら遺産分割も分けやすくなるので、武雄さんは「認知症になったらどうなるのだろうと心配していましたが、これなら安心ですね。」と安心した表情でお答えになりました。

あとは全体的なバランスに配慮しながら、生命保険を使った非課税枠の活用や不動産の小口化商品を使って相続税評価額の引き下げなどを総合的にアドバイスができる専門家チームをつくり、武雄さんのペースに合わせて総合的にサポートすることになりました。

最初はご自身の老後が心配と言っていた武雄さんも、見通しがついてくると残されたご家族のために何ができるかが少しずつ考えられるようになってきました。

実は、証券口座は相続が発生すると口座全体がロックされてしまい、名義変更後でなければ売買ができなくなってしまいます。

そのようなことを無くすためにも、できる限り事前に家族で話し合うこと、そして遺言と付言を書いておくことでスムーズに相続手続きができるようになります。

私と武雄さんは、早速遺言書と付言を書くことに決め、武雄さんは私の事務所を後にしました。

少し暑さも落ち着いた秋の始まりの頃、再び武雄さんが私の事務所に現れました。

手には書き終えた遺言書と付言がありました。

見てみると、

「娘へ、この間は手紙をありがとう。父さんのことをそんな風に見ていてくれたとは知らなくて嬉しかったです。私はただ、お前とお前の未来の子供達が少しでも生活しやすくなればと思い、ここまで頑張ってきました。これからも長生きをして孫と楽しい時間を一緒に過ごせれば嬉しいです。」と書かれていました。

後日、武雄さんから手紙が届きました。

手紙には「先日書いた遺言書と付言を娘に渡しました。すると、娘は目に涙をためながら「お父さんありがとう。孫の成長を見守ってもらいたいから孫とお酒が飲めるくらい長生きしてね」と話してくれました」

と書かれていました。

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この記事を監修したのは…

小林 裕

ジェニユイン・パートナーズ株式会社 取締役 / 一般社団法人証券相続普及協会 代表理事

小林 裕(こばやし ゆたか)

保有資格:証券外務員一種、終活カウンセラー、上級相続診断士

大学卒業後、準大手証券会社に入社。
新人賞、社長優秀賞などの数多くのタイトルを受賞。
その後、金融商品仲介業(IFA)に転身。
2020年12月、一般社団法人証券相続普及協会を設立。
2024年9月、『誰にでもやさしく教えてくれる 会社を退職する前に知っておくべき「退職金運用の基礎知識」』を出版し、Amazonランキング4部門1位を獲得。

サイトURL:https://www.genuine-partners.co.jp/

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