不当利得返還請求訴訟の費用【2026年】弁護士費用相場を解説

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遺産相続

不当利得返還請求とは?相続で問題となるケースと法的根拠

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不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産や労務で利益を受け、他人に損失を与えることです。民法第703条は「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と定めます。

相続で多いのは、被相続人の預貯金を管理していた相続人による「使い込み」です。典型例は次のとおりです。

  • 親の口座から無断で多額の現金を引き出し私的に使用
  • 被相続人名義の賃貸不動産の家賃を特定の相続人が一人で受け取り続けた
  • 被相続人の意思に基づかない高額な贈与を自分や家族に行った

これらの利益は本来、遺産として相続人全員で分けるべきものです。損失を被った他の相続人は、相続分に応じて返還を請求できます。

不当利得が成立する4要件

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要件 内容 相続での具体例
受益者の利益 受益者が財産上の利益を得る 引き出した預金を自分のために使った
損失者の損失 損失者に財産上の損失が発生 他の相続人の遺産が減った
因果関係 利益と損失に直接的関係がある 引き出しで遺産が減少した
法律上の原因の欠如 利益を受ける正当な理由がない 被相続人の意思や正当な使途がない

成立に受益者の故意・過失は不要で、客観的に4要件が満たされれば返還義務が生じます。法律上の原因がないことを知っていた「悪意の受益者」は、利息を付して返還し、なお損害があれば賠償責任も負います(民法第704条)。

不法行為に基づく損害賠償請求との違い

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使い込みの回収は「不法行為に基づく損害賠償請求」でも可能です。

  • 時効:不当利得は権利を行使できると知った時から5年(または行使できる時から10年)。不法行為は損害および加害者を知った時から3年(または不法行為時から20年)。
  • 弁護士費用・遅延損害金:不法行為では弁護士費用相当額(認容額の約1割が目安)や不法行為時からの遅延損害金が認められる場合がある。不当利得の遅延損害金は原則、請求(催告)の翌日から発生する。

どちらで請求するかは弁護士と相談して選択してください。

訴訟にかかる費用の全体像|訴訟費用と弁護士費用

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費用は「訴訟費用」と「弁護士費用」に分かれます。

  • 訴訟費用:収入印紙代や郵便切手代など手続き自体の費用
  • 弁護士費用:相談料・着手金・成功報酬・実費・日当

訴訟費用は原則として敗訴側が負担します(敗訴者負担の原則。民事訴訟法第61条)。一部勝訴・一部敗訴では裁判所が割合を定めます。ただし「訴訟費用」は収入印紙代や郵便切手代などに限られ、弁護士費用は原則含まれません

訴訟費用の内訳

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訴訟提起時は、請求金額(訴額)に応じた収入印紙を訴状に貼付します。(出典:e-Gov法令検索|民事訴訟費用等に関する法律

訴額 収入印紙代
100万円 1万円
500万円 3万円
1,000万円 5万円

(出典:裁判所「手数料額早見表」

このほか書類送達用の郵便切手を予納します。金額は各裁判所で異なるため提訴先で確認してください。令和6年(2024年)の民事訴訟法改正で郵便費用は2026年5月21日から手数料に一本化され、予納郵券制度は廃止されます。施行後の取扱いは提訴時に最新情報を確認してください。

(出典:各裁判所「予納郵便切手一覧表」等

弁護士費用は不当利得返還請求では原則自己負担で、勝訴しても全額請求できるわけではありません。例外として不法行為に基づく損害賠償請求として構成した場合は、弁護士費用相当額(認容額の約1割が目安)が認められることがあります。

弁護士費用の相場と費用シミュレーション

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弁護士費用は事務所や事案で異なります。以下は特に断りがない限り消費税抜きの目安です。

相談料

相談時間 一般的な料金 備考
30分 5,000円~10,000円 標準的な料金設定
1時間 10,000円~20,000円 複雑な案件
初回相談 無料~5,000円 無料の事務所もある

まずは無料相談で見通しと費用の概算を確認しましょう。

着手金(請求金額別)

着手金は受任時に支払い、原則として結果に関わらず返還されません。

請求金額 着手金の相場
300万円以下 請求額の8%(最低10万円程度)
300万円超3,000万円以下 請求額の5%+9万円
3,000万円超3億円以下 請求額の3%+69万円
3億円超 請求額の2%+369万円

旧日本弁護士連合会報酬基準(2004年廃止)を参考にした相場で、現在は各事務所が自由に設定します。交渉・調停のみで終わる場合は減額されることもあります。

成功報酬(回収金額別)

回収金額 成功報酬率
300万円以下 回収額の16%
300万円超3,000万円以下 回収額の10%+18万円
3,000万円超3億円以下 回収額の6%+138万円
3億円超 回収額の4%+738万円

成功報酬は回収できた場合のみ発生します。

実費・日当の目安

費用項目 金額相場 発生タイミング
内容証明郵便代 1,000円~2,000円程度 請求書送付時
印紙代 訴額に応じて変動 訴訟申立時
予納郵券 6,000円程度~(裁判所により異なる) 訴訟申立時
証拠収集費用 実費 必要に応じて
日当(半日) 3万円~5万円 出廷・交渉時
日当(1日) 5万円~10万円 遠方・長時間

近年はWeb会議で日当が発生しない案件もあります。

費用シミュレーション(500万円請求・400万円回収)

500万円を請求し400万円を回収したケース(税抜きの目安):

  • 収入印紙代:訴額500万円で3万円
  • 郵便切手代:6,000円程度(裁判所により異なる)
  • 着手金:500万円 × 5% + 9万円 = 34万円
  • 成功報酬:400万円 × 10% + 18万円 = 58万円

弁護士費用(着手金+成功報酬)合計92万円、訴訟費用と合わせ約95.6万円(別途消費税・実費・日当)です。料金体系は事務所により異なるため、依頼前に必ず見積もりを取りましょう。

弁護士費用を抑える5つの方法

1. 法テラスの民事法律扶助を利用する

法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕のない方が法的サービスを受けられるよう国が設立した機関です。収入・資産要件を満たし、勝訴の見込みがないとはいえないなどの要件を満たせば民事法律扶助を利用できます。

世帯人数 手取月収額の基準 家賃等を負担している場合の上限
1人 182,000円以下 253,000円以下
2人 251,000円以下 304,000円以下
3人 272,000円以下 335,000円以下
4人 299,000円以下 362,000円以下

(出典:法テラス民事法律扶助の収入要件。基準は地域・要件により異なる場合があり、最新は法テラスで確認

費用は通常より安価で、月々5,000円~10,000円程度の分割払い(立替金の償還)が可能です。生活保護受給者は償還が猶予・免除される場合があります。

2. 複数の事務所から相見積もりを取る

同一の資料・情報を提供し、着手金・報酬金・実費の内訳を書面で求めて比較します。費用だけでなく、経験・実績・相続案件への対応力も総合的に判断しましょう。

3. 初回無料相談を活用する

複数の弁護士の意見を聞き、見通しと費用概算を把握できます。相談時は以下を確認しましょう。

確認項目 質問内容
案件の勝算 成功可能性はどの程度か
回収見込み 実際に回収できる金額の見込みは
解決期間 解決までどの程度かかるか
費用総額 最終的にかかる費用は
リスク 敗訴した場合の費用負担は

4. 弁護士費用保険を確認する

自動車保険・火災保険や単独の弁護士費用保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、相談料や着手金が補償される可能性があります。ただし自動車保険等の特約は交通事故などに限定され、相続トラブルは対象外の場合があります。補償範囲を保険会社に確認しましょう。

5. 分割払い・後払い対応の事務所を探す

委任契約締結前に相談し、毎月の支払可能額、支払期間(6ヶ月~2年程度)、口座振替による支払方法を具体的に提案すると応じてもらいやすくなります。

手続きの流れ|交渉から訴訟・強制執行まで

まず任意交渉から始め、不調なら調停や訴訟へ進みます。

STEP1:証拠収集と内容証明郵便による請求

預金の取引履歴、振込明細、契約書、領収書、メールやLINEのやり取りを時系列で整理します。証拠が揃ったら相手方に内容証明郵便で返還請求します。内容証明郵便は、いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度で、後の手続きで請求の事実を立証できます。

STEP2:交渉・話し合い

任意の話し合いで解決できれば費用と時間を節約できます。和解する場合は合意内容を書面(合意書・公正証書)に残しましょう。

STEP3:民事調停の申立て

交渉がまとまらない場合、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に民事調停を申し立てます。調停委員が間に入り話し合いによる解決を目指します。訴訟より柔軟で費用も低く抑えられますが、相手が応じなければ不成立です。

STEP4:訴訟の提起

調停も不成立なら、地方裁判所(訴額140万円以下は簡易裁判所)に訴訟を提起します。訴状に収入印紙を貼付し郵便切手を予納します。第一回口頭弁論を経て、争点整理・証拠調べ・尋問が行われ判決に至ります。

遺産の使い込みは、被相続人の生前の引き出し分は遺産分割の対象外が原則で、不当利得返還請求訴訟(または不法行為に基づく損害賠償請求)で解決します。相続開始後に処分された遺産は、相続人全員の同意があれば遺産分割の対象に含められます(民法第906条の2)。

STEP5:判決と強制執行

勝訴判決が確定しても相手が支払わない場合は、強制執行で相手の財産(預貯金・不動産・給与など)から回収します。財産が分からない場合は、裁判所の「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」で相手の預貯金口座や勤務先等の情報を取得できる場合があります。

訴訟で勝つための証拠と立証責任

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不当利得返還請求では4要件を満たす事実の立証責任は原則として請求する側(原告)が負います。特に「受益者が利益を得た事実」と「法律上の原因がないこと」を客観的証拠で示す必要があります。

有効な証拠の具体例

  • 被相続人名義の預金口座の取引履歴(金融機関から取り寄せる)
  • 引き出された現金とほぼ同額が相手名義の口座に入金された記録
  • 被相続人の入院・介護状況を示す資料(本人が引き出せなかった裏付け)
  • 不動産の賃料の入金先を示す通帳や賃貸借契約書

ある事案では、長男が管理する被相続人の口座から約1,700万円の使途不明な引き出しが判明し、引き出し直後に長男口座へほぼ同額の入金があったことを弁護士の調査で立証。訴訟提起後に和解が成立し解決金を回収しました。

引き出した金銭の使途は不当利得の成否を分けます。被相続人のための生活費・治療費や社会通念上相当な範囲の葬儀費用は不当利得と認められにくい一方、管理者自身の個人的支出や被相続人の意思に基づかない高額な贈与は不当利得と認定される可能性が高くなります。

証拠が手元にない場合の集め方

  • 弁護士会照会(23条照会):弁護士を通じ、所属弁護士会経由で金融機関などに取引履歴の開示を求める
  • 調査嘱託:訴訟提起後、裁判所を通じて第三者に情報提供を求める
  • 金融機関への開示請求:相続人は単独で被相続人の口座の取引履歴の開示を請求できる(最高裁平成21年1月22日判決)

専門的な手続きを伴うため弁護士への依頼が有効です。

判例から見る|認められるケース・認められないケース

認められないケース(法律上の原因あり)

  • 生活費・医療費:母の介護をしていた娘が母の預金から生活費・介護費用を出金していた事案では、領収書等を基に母のための費用であることを具体的に主張・立証する必要がありました。
  • 相当な範囲の葬儀費用:前掲の長男の事案でも、生活費・葬儀費用として認められた部分は返還対象から外れ、説明のつかない残額が問題となりました。
  • 本人の意思に基づく贈与・謝礼:介護をしていた娘が母の了承のもと月10万円を手間賃として受け取っていた事案があります。

認められたケース

被相続人の預金を兄が使い込んだ疑いがあった事案で、兄は「被相続人に頼まれた」と全面的に争いました。裁判所は預金管理として許容される範囲を超えた引き出し分を不当利得と認定し、返還を命じました。許容範囲を超えた支出は、本人に頼まれたという主張だけでは認められません。

紛争を防ぐため、生前の財産管理は領収書や記録を保存し支出目的を明確にしましょう。

時効と対処法

不当利得返還請求権の消滅時効は、権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で完成します(民法第166条第1項)。相続の使い込みでは、引き出しの事実と相手を知った時点が起算点となるのが一般的です。継続的な引き出しは各引き出しごとに時効を判断します。

時効の進行を止める方法

  • 裁判上の請求(訴訟・調停):手続き中は完成が猶予され、確定判決等で時効が更新(リセット)
  • 催告:内容証明郵便で請求すると6ヶ月間完成が猶予。その間に訴訟提起等が必要
  • 承認:相手が債務を認めると時効が更新
  • 協議を行う旨の合意:書面で合意すると最長1年間(更新あり)完成が猶予(民法第151条)

時効が迫る場合は、まず内容証明で催告し6ヶ月以内に訴訟提起する流れが基本です。時効成立後でも、被相続人と財産管理者の間に委任契約があったと評価できる場合は委任契約に基づく受取物引渡請求などを検討できますが、これらも時効にかかるため早期の判断が重要です。

請求された側(被告)の対処法

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内容証明郵便や訴状が届いたら、まず請求内容と根拠を冷静に確認します。無視すると不利になり、答弁書を提出せず口頭弁論期日にも出頭しないと相手の主張がそのまま認められる可能性があります。心当たりのある出金は、使途を示す領収書や記録を集めましょう。

有効な反論のポイントは次のとおりです。

  • 法律上の原因があった:生活費・医療費、相当な範囲の葬儀費用、本人の意思に基づく贈与など
  • 時効が成立している:請求権がすでに消滅時効にかかっている(時効は援用しなければ効果が生じない)
  • そもそも利益を得ていない:被相続人本人が出金・使用していた

訴訟には答弁書の提出期限があり、対応が遅れると不利になります。請求書や訴状が届いた段階で、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

自分で行う(本人訴訟)場合の注意点

  • メリット:弁護士費用がかからない、手続きを自分で把握できる
  • デメリット:書面作成や法的主張の負担が大きい、証拠収集や立証が難しい、平日に裁判所へ出向く必要がある

訴状や準備書面を正確に作成し、証拠を適切に提出する必要があります。事実関係を時系列で整理し、請求の根拠と金額を明確にしましょう。期日には必ず出頭し、裁判所からの求釈明に的確に対応します。

次のケースは弁護士への依頼が有効です。

  • 請求金額が高額な場合
  • 相手が弁護士を代理人に立てている場合
  • 預金の取引履歴調査など証拠収集が必要な場合
  • 時効が迫っている場合
  • 法律構成(不当利得か不法行為か)の判断が必要な場合

不当利得返還請求訴訟の費用に関するよくある質問(Q&A)

Q. 弁護士費用を相手に請求できますか?

原則として自己負担です。ただし不法行為に基づく損害賠償請求として構成した場合は、認容額の約1割程度の弁護士費用相当額が認められることがあります。

Q. 費用倒れになる可能性はありますか?

請求金額が少額の場合や相手に資力がない場合は、回収額より費用が上回る「費用倒れ」のリスクがあります。依頼前に回収見込みと費用総額を確認しましょう。

Q. 請求を無視されたらどうすればいいですか?

任意交渉で無視される場合は民事調停や訴訟へ進みます。判決確定後も支払わない相手には、強制執行で預貯金や不動産から回収できます。訴訟提起によって相手が和解に応じるケースもあります。

Q. 証拠がなくても請求できますか?

立証責任は請求する側にあるため証拠は重要です。手元になくても、弁護士会照会や調査嘱託、金融機関への取引履歴開示請求で集められる場合があります。まずは弁護士に相談しましょう。

不当利得返還請求は、証拠の収集・立証や法律構成の選択など専門的な判断が求められます。費用面に不安がある場合も、法テラスや弁護士費用保険、分割払いなど負担を抑える方法があります。まずは初回無料相談を活用し、回収の見込みと費用の概算を確認することから始めましょう。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

野崎 智裕

さくら共同法律事務所 弁護士・弁理士

野崎 智裕(のざき あきひろ)

京都大学文学部人文学科行動・環境文化学系社会学専修卒業後、京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻を経て
平成30年9月 司法試験合格
ミツカン創業家裁判やカルテル巡る関西電力株主訴訟などを担当。顧客の本来利益を追求する姿勢が顧客からの信頼を得ている。

サイトURL:https://www.sakuralaw.gr.jp/profile/nozaki/index.htm

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