【相続税対策!】住宅取得資金贈与の特例とは?要件や手続き方法・必要書類を徹底解説!
Contents
- 1 住宅取得資金贈与の特例とは?贈与税の節税に効果がある?
- 2 住宅取得資金贈与の特例を利用するための条件を解説!
- 3 令和4年度に改正された住宅取得資金贈与の特例の内容を解説!
- 4 住宅取得資金贈与の特例を利用するための手続き方法
- 5 住宅取得資金贈与の特例を利用する際の必要書類と費用は?
- 6 省エネ等の住宅の場合は住宅取得資金贈与の非課税額が高くなる?
- 7 住宅取得資金贈与の特例を利用した場合の確定申告のやり方!
- 8 住宅取得資金贈与の特例を利用すると相続時に困ることや注意点!
- 9 デメリットもある!住宅取得資金贈与の特例を利用し失敗した事例を紹介!
- 10 住宅取得資金贈与の特例を共有名義で利用する時のポイント!
住宅取得資金贈与の特例とは?贈与税の節税に効果がある?
贈与税とは、贈与者からお金や物品をもらった受贈者(贈与を受け取った人)に課せられる税金です。
贈与されたら無条件で贈与税が課せられるわけではなく、贈与された金額が年間110万円を超えなければ基本的に非課税となります(暦年贈与)。
ただし、子どもや孫に対して父母や祖父母が住宅資金を贈与する場合は、非常に多額の資金となる場合が多く、受贈者とである子どもや孫が重い税負担に苦しむ可能性はあります。
そのため、家族間での円滑な資金贈与ができるよう、国が「住宅取得資金贈与の特例」を設けたのです。本特例を利用すれば最大1,000万円の贈与税が軽減されます。
住宅取得資金贈与の特例を利用するための条件を解説!
本特例を受けるには次の2つの要件を満たす必要があります。
受贈者等の要件
受贈者は、次の要件すべてを満たさなくてはいけません。
- 贈与時に贈与者の受贈者が直系卑属(子どもや孫)である
- 受贈者は贈与された年の1月1日に18歳以上である
- 贈与された年の年分の所得税の合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用家屋の床面積40㎡~50㎡未満:1,000万円以下)
- 贈与税の申告(2009年分~2021年分)で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けていない
- 受贈者の配偶者や親族から住宅用家屋の取得等をしたものではない
- 贈与された年の翌年3月15日までに資金全額を充て、新築等をする
- 贈与時に日本国内に住所を有する
- 贈与された年の翌年3月15日までに家屋へ居住、または遅滞なく家屋への居住が確実と見込まれる
住宅等の要件
新築または取得、増改築等の場合で要件は異なります。
(1)新築または取得
- 「住宅用家屋の床面積が40㎡~240㎡以下」+「家屋の床面積の2分の1以上が居住の用に供される」
- 住宅用家屋が「未使用」「1982年1月1日以後に建築」「地震に対する安全性に係る基準に適」「耐震基準に適合」のいずれかに該当している
(2)増改築等
- 「住宅用家屋の床面積が40㎡~240㎡以下」+「家屋の床面積の2分の1以上が居住の用に供される」
- 工事が自己の所有で現に居住している家屋へ行われ、一定の工事に該当するという証明書がある
- 工事費用の額が100万円以上、費用額の2分の1以上を自己の居住する部分の工事に要した
令和4年度に改正された住宅取得資金贈与の特例の内容を解説!
令和4年(2022年)度に本特例が改正され、次のように特例内容が変わりました。
- 2021年12月31日に特例終了予定→2023年12月31日までに延長
- 受贈者の年齢要件(改正前)20歳→(改正後)18歳に引き下げ
- (改正前)住宅取得契約の締結時期によって条件あり→(改正後)契約の締結時期が条件から除外
- (改正前)中古住宅の築年数基準を適用→(改正後)1982年1月1日以降の家屋は新耐震基準適合とみなされる
- (改正前)最大1,500万円の贈与税を軽減→(改正後)最大1,000万円の贈与税を軽減
本特例の改正により、特例が利用しやすくなった反面、贈与税の非課税枠が500万円も縮小した点に注意しましょう。
住宅取得資金贈与の特例を利用するための手続き方法
本特例の利用には次のような手続きを行います。
- 親または祖父母から新築、増改築等に関する資金が贈与される
- 提出書類を準備する
- 贈与された年の翌年2月1日~3月15日までに、納税地の所轄税務署へ贈与税申告の手続きをする
たとえ、本特例を適用し贈与税が0円となる場合でも、贈与税申告を行う必要があります。
住宅取得資金贈与の特例を利用する際の必要書類と費用は?
本特例を利用したいならば、提出書類を集める必要があります。なお、贈与税申告手続きの際に手数料は不要です。
(1)共通の提出書類
主に次のような書類を収集します。
- 贈与税申告書:税務署窓口等で取得可能
- 戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得、1通450円
- 住宅性能証明書:登録住宅性能評価機関で取得
- 建設住宅性能評価書の写し:登録住宅性能評価機関で取得
(2)新築または取得
主に次のような書類を収集します。
- 住宅省エネルギー性能証明書:登録住宅性能評価機関で取得
- 耐震基準適合証明書:都道府県知事等に申請
(3)増改築等
主に次のような書類を収集します。
- 増改築等工事証明書:建築士や登録住宅性能評価機関等が発行
- 確認済証・検査済証の写し
省エネ等の住宅の場合は住宅取得資金贈与の非課税額が高くなる?
本特例では贈与税の非課税額は省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅は500万円と、500万円もの開きがあります。
省エネ等住宅へ該当するには、いずれかの次の基準に適合していなければいけません。
- 断熱等性能等級4以上か、一次エネルギー消費量等級4以上
- 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上か免震建築物
- 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上
つまり、火災や地震に強い住宅、環境に優しい住宅、高齢者に優しい住宅であれば、その分だけ大きな税制上の優遇措置が受けられます。
住宅取得資金贈与の特例を利用した場合の確定申告のやり方!
本特例を利用する場合、贈与税申告は必要であるものの、確定申告の際に都度手続きが必要と言うわけではありません。
ただし、本特例との併用が可能な「住宅ローン控除」も利用したいならば、確定申告を行います。
住宅ローン控除は、最長13年にわたり「住宅ローンの年末時点残高等×0.7%」を所得税・住民税から控除できる制度です。
住宅取得資金贈与の特例を利用すると相続時に困ることや注意点!
住宅取得資金贈与は基本的に被相続人からの生前贈与として扱われます。
そのため、資金贈与した事実を考慮せずに、被相続人が遺言を作成したり、遺産分割をしたりすれば、資金贈与を受けなかった相続人から強い不満が出て、相続争いに発展するかもしれません。
特例の税制上の優遇面ばかりでなく、将来の相続トラブルを視野に利用するかを判断することが求められます。
トラブルを避けるために、相続時には遺言で資金贈与した相続人の遺産を軽減したり、遺産分割協議の際に分割割合を他の相続人より低く抑えたりする工夫が必要です。
また、本特例は相続時精算課税制度(贈与時に2,500万円の特別控除が得られる制度)や、暦年贈与(年間110万円の贈与額は非課税)との併用は可能です。
一方、小規模宅地等の特例(相続した土地の相続税課税評価額が大幅に減額される制度)との併用はできないので注意しましょう。
デメリットもある!住宅取得資金贈与の特例を利用し失敗した事例を紹介!
こちらでは住宅取得資金贈与のタイミングが悪かったため、特例の利用に失敗した事例を2つあげましょう。
贈与のタイミングが早かった
本特例を受けるには、贈与された年の翌年3月15日までに贈与税申告と居住を開始する必要があります。贈与を受けたタイミングが早いと、翌年3月15日までに居住が開始できず特例適用外となってしまいます。
【対策】
贈与された資金を一度返金しましょう。そうすれば、住宅取得資金贈与が行われていない旨を主張できます。
改めて1月1日以降に贈与すれば居住する準備も十分整えられます。後日、正式に贈与するならば贈与契約書を作成しましょう。贈与契約書があると贈与の事実を税務署に証明できます。
住宅取得資金贈与は住宅の取得後だった
本特例を受けるには、原則として住宅の取得前に贈与されないと適用外となります。どんなに耐震機能や環境にやさしい住宅を建ててても、もはや1,000万円の減税は不可能です。
【対策】
住宅取得後に贈与を受けたいときは暦年贈与を利用しましょう。暦年贈与では年間110万円までの贈与額が非課税となります。
1回の贈与額は少なくとも、例えば年間100万ずつ受け取るならば10年間で1,000万円を非課税で得られます。
住宅取得資金贈与の特例を共有名義で利用する時のポイント!
自宅を共有で購入する場合も本特例の適用は可能です。ただし、次のポイントに十分留意しましょう。
- 自分の親や祖父母からの贈与が対象
- 共有名義の持分は資金負担の割合
受贈者が夫婦の場合は夫の親や祖父母、妻の親や祖父母それぞれからの贈与が対象です。ただし、例えば妻が夫の親や祖父母から資金援助を受けても本特例の対象外となります。
また、夫の自己資金・妻の自己資金でそれぞれ負担の割合で共有名義の持分が決まります。例えば、夫が1,400万円・妻が600万円を負担したら、夫の共有名義の持分は7割、妻の共有名義の持分は3割です。
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