法定相続人と相続人の違いとは?どこよりも分かりやすく解説!

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遺産相続

相続人と法定相続人の定義の違いとは?

相続人とは、被相続人の死亡により相続が発生した際、実際に遺産を取得する人と定義されます。一方、法定相続人とは相続が発生した際、民法に従い遺産を取得できる人と定義されます。

被相続人の「配偶者」「直系卑属(子供、子供が亡くなっている場合は孫)」「直系尊属(父母、祖父母)」「兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪)」が法定相続人です(民法第886条~890条)。

つまり、被相続人の親族に相続する意思があっても無くても、民法で明記されている親族ならば法定相続人となるわけです。

推定相続人との違いは?

推定相続人とは、現在の状況でもしも相続が発生した場合、遺産を相続するはずの人と定義されます。なお、被相続人がこのまま生存し、推定相続人の方が早く亡くなる場合もあるので、推定相続人が必ず遺産を取得できるとは限りません。

下表でそれぞれの違いをみてみましょう。

種別被相続人の状況定義
相続人死亡相続発生時、相続権があり相続を承認しており、実際に遺産を取得する人
法定相続人死亡相続発生時、民法に従い遺産を取得できる人
推定相続人生存中もしも現時点で相続が発生した場合、遺産を取得できるであろう人

つまり、被相続人が生きている状態の場合に遺産を取得できそうな人は推定相続人と呼ばれ、相続の発生で民法に従い遺産を取得できる人が法定相続人、法定相続人の中で実際に遺産を取得する人が相続人と呼ばれます。

相続人と法定相続人の範囲の違い

法定相続人には、民法で明記された被相続人の遺産を取得できる人が該当し、実際に遺産を取得するかどうかは問われません。

例えば、被相続人の遺産の取得を拒み相続放棄した人も法定相続人に含まれるのです。一方、相続人は法定相続人となり相続権を有していて、遺産の取得を承認し、かつ実際に遺産を取得する人が該当します。

つまり、相続人と呼ばれる人の範囲は、法定相続人の範囲よりも狭まっています。

法定相続人でも相続人にならない場合もある!

法定相続人であっても相続人とはならないケースとして、主に次の3つがあげられます。それぞれのケースについて解説しましょう。

相続を放棄した場合

生前の被相続人と仲が悪く遺産を取得したくない、または負債(借金)が多く引き継ぎたくない等という理由で「相続放棄」をするケースがあります。

相続放棄をしたい人は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に「相続の放棄の申述」を行います。この申述が家庭裁判所に認められた場合、被相続人の権利や義務を一切受け継ぎません。つまり、相続放棄をした人(申述人)は、最初から相続人で無かったことになります。

相続欠格に該当した場合

相続欠格とは、法定相続人の相続権を手続きなしで剥奪する制度です。そのため、相続欠格は被相続人等に対して重大で深刻な行為をしたケースが該当します。

  • わざと被相続人や他の相続人となる可能性があった人を死亡させ、あるいは死亡させようとして刑罰に処された
  • 被相続人が殺害された事実を知っていても、告発・告訴しなかった
  • 詐欺や強迫を行い、被相続人に遺言書の作成・撤回・取消・変更を操作させたり、わざと妨げたりした
  • 被相続人の遺言書の内容を偽造・変造、破棄または隠した

この相続欠格に該当してしまうと、たとえ被相続人の配偶者や子供であっても、相続人にはなれません。

被相続人から廃除された場合

相続廃除とは、被相続人が家庭裁判所に申立て相続権を剥奪させる制度です。ただし、廃除が認められるには、推定相続人と単に仲の悪い状態だったというだけでは足らず、次の事実が必要です。

  • 推定相続人が被相続人を虐待し、または重大な侮辱を加えた
  • 推定相続人に著しい非行があった

なお、相続廃除は被相続人本人が直接、家庭裁判所に申立てをしても良いですし、遺言書による廃除も可能です。遺言書で廃除する場合は遺言執行者を指定し、その人が家庭裁判所に申立てをします。

法定相続人と相続割合を具体例を挙げて解説!

法定相続人には優先順位があり、被相続人の配偶者は常に相続人となります。その他の方々の優先順位は次の通りです。

  • 第1順位:直系卑属(子、子が亡くなっている場合は孫)
  • 第2順位:直系尊属(父母、祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪)

この法定相続人の相続割合はケースによって変わります。こちらでは、いろいろなケースを取り上げ相続割合がどうなるのかについてみてみましょう。

配偶者がいるケース

配偶者は常に相続人となり、法定相続人の中で最も優利な地位と言えます。法定相続人が配偶者だけの場合、他の法定相続人がいた場合の相続割合は下表の通りです。

法定相続人相続割合
配偶者のみ全部
配偶者と子供配偶者:1/2、子供:1/2
※子供が複数いる場合は1/2の枠内で更に等分
配偶者と親配偶者:2/3、親:1/3
※両親とも存命の場合は1/3の枠内で更に等分
配偶者と兄弟姉妹配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4
※兄弟姉妹が複数いる場合1/4の枠内で更に等分

配偶者の場合は法定相続で遺産を分割する限り、たとえ他の法定相続人がいても相続割合1/2〜3/4の遺産は取得できます。

その他のケース

その他の法定相続人の相続割合は下表の通りです。

法定相続人第1順位:直系卑属第2順位:直系尊属第3順位:兄弟姉妹
直系卑属
[相続割合]
・直系卑属のみ:全部・配偶者あり:1/2
複数いる場合は等分
××
直系尊属×
[相続割合]
・直系卑属のみ:全部・配偶者あり:1/3
複数いる場合は等分
×
兄弟姉妹××
[相続割合]
・兄弟姉妹のみ:全部・配偶者あり:1/4
複数いる場合は等分

なお、直系卑属である子供が亡くなっても、被相続人からみて孫(孫も死亡していた場合はひ孫)がいれば、その人が第1順位の法定相続人となります(代襲相続)。

また、第3順位の兄弟姉妹がいない場合、法定相続人が誰もいなくなるわけではなく、兄弟姉妹の子供(被相続人からみて甥姪)がいれば、その人が法定相続人となります。

法定相続人になる人の注意点とは

法定相続人に誰がなるのか、判断が難しいケースもあるでしょう。こちらでは、法定相続人を把握する際の注意点について解説します。

内縁の配偶者は法定相続人の対象外

法定相続人となる配偶者は婚姻届を出したパートナーを対象とします(法律婚)。つまり、何らかの理由で婚姻届を市区町村役場に提出しない内縁のカップルは、たとえ事実上の夫婦生活を送っていても法定相続人にはなれません。

法定相続の場合、内縁の配偶者は被相続人遺産を受け取れないので注意しましょう。ただし、被相続人が遺言書を作成し、内縁の配偶者を受贈者(遺産を譲渡する人)に指定した場合、遺産の取得が可能です。

養子は法定相続人

養子縁組を成立させれば、養親・養子との間に法律上の親子関係が成立します。法定された条件に合致していれば、養子となる人物は自分の孫でも、他人でも構いません。養子となった子供は法定相続人となります。

ただし、相続税の計算の際に差し引ける制度(相続税の基礎控除額、生命保険金・死亡退職金の非課税枠)で、法定相続人としてカウントできる養子には制限があります。

  • 被相続人に実子がいる:法定相続人の数に含める養子の数1名まで
  • 被相続人に実子がない:法定相続人の数に含める養子の数2名まで

養子となった人が多ければ、それだけ相続税が軽減されるわけではないので注意しましょう。

相続放棄した人も法定相続人にカウントされる

相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになります。しかし、それが原因で他の相続人が不利な事態(例:基礎控除額や非課税枠の減少)となるのは、公平性に反します。

そのため、相続放棄に関しては相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や生命保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)をする場合、相続放棄をした人も法定相続人にカウントして計算します。

ただし、廃除や相続欠格に該当した人は相続税の基礎控除額、生命保険金・死亡退職金の非課税枠を計算する際、法定相続人に含まれないので注意しましょう。

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