団体信用生命保険（団信）とは？

団体信用生命保険は略して「団信」とも呼ばれ、住宅ローン利用者が、死亡または高度障害状態となった場合に備えられる保険です。

利用者がローン返済中、万一の事態となってもこの保険が適用されるので、残債務が免除され、家族はそのまま住宅に住み続けることができます。

団体信用生命保険は次のような仕組みをとります。

• 契約者・保険金受取人：ローンを申し込んだ金融機関
• 被保険者：住宅ローン利用者

被保険者である住宅ローン利用者に万一の事態があった場合、生命保険会社が保険金受取人である金融機関へ、住宅ローンの残高に相当する保険金を支払います。

その結果、住宅ローン利用者の負っているローン残高がゼロとなるのです。

団信なしでも住宅ローンを利用できる？メリット・デメリットを解説！

団信に加入しなくても長期固定金利住宅ローン「フラット35」の利用は可能です。

フラット35を団信なしで利用するメリットは、団信に加入している場合と比較し、適用金利の低い点があげられます。

そのため、ローン利用者の返済期間が短い場合、借入金額の少ない場合は意図的に団信へ加入しない人も多いです。

一方、返済期間中にローン利用者が死亡または高度障害状態となった場合、その後の返済は一切免除されないのがデメリットです。

万一の事態となれば、利用者の配偶者や子供が重い返済義務を負う事態になるかもしれません。

団信に加入しなくてもリスクを減らしたい場合の対処法

団信の保険料総支払額は高くなる傾向があり、加入を避けたい人も多いはずです。しかし、住宅ローンの多くは団信加入を必須条件としている場合がほとんどとなっています。

こちらでは、団信なしでも申込みを拒否されるリスクがない住宅ローンや、ローン返済中の利用者に万一の事態が起きても支障なく返済していく方法を解説します。

フラット35を利用する

「フラット35」とは、住宅金融支援機構と民間金融機関とが提携して提供する、最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。そのため、申込み窓口はあくまで民間金融機関となります。

ずっと固定金利なので計画が立てやすく、市中金利が上昇しても、確定済みの金利で返済し続けられるので安心です。

保証人不要、繰上返済手数料不要、何より団信に加入しなくても借入できるため、保険加入を避けたい人、または健康上の理由で保険加入を断られた人も、契約できる可能性があります。

フラット35の金利情報は下表の通りです（2023年9月現在）。

民間会社の生命保険に加入する

生命保険会社の販売している死亡保険は、非常に安い保険料で高めの保険金額を設定できる商品が多いです。

特に定期保険は保険料が安く、保険期間中に万一の事態が起きても、まとまった保険金が受け取れます。

例えば30歳男性で保険期間10年（更新可）、死亡・高度障害保険金1,500万円で契約した場合、毎月1,500円程度の負担で住む保険商品もあります。

ただし、申込の際は生命保険会社が定める健康告知項目へ正直に回答しなければいけません。

健康に不安のある人は加入を拒否される場合もあるので注意しましょう。

住宅ローン返済中に契約者が死亡した場合の残りのローンはどうなる？

住宅ローン利用者が団信に加入していれば、返済中に死亡または高度障害状態となった場合、基本的に生命保険会社が保険金受取人となっている金融機関へ、住宅ローンの残高に相当する保険金を支払います。

金融機関は住宅ローンが完済された形となるので、家族がローンの返済を引き継がずに済みます。

一方、ローン利用者が団信に加入していなれば、家族が何とか返済しなければいけません。

ただし、ローン利用者が生命保険（死亡保険）に加入しているなら、保険金が下りるので一括返済も可能です。

また、家族がローンの返済を引き継ぎ、返済が厳しい場合は「任意売却」も可能です。

こちらは住宅ローンの返済が難しい場合、住宅ローンを組んだ金融機関の了承のもとで、一般市場で不動産を売却する方法です。。

団信に加入しているか確認する方法

ローン利用者が死亡または高度障害状態となったら、家族が住宅ローンを契約した金融機関に連絡しましょう。

電話担当者が団信に加入しているか否かを確認してくれます。また、手元に住宅ローン契約書があれば、加入の有無をご自身でチェックできます。

なお、フラット35等の住宅金融支援機構のローン・融資制度を利用している場合は、「お客さまコールセンター（団信専用ダイヤル）」に問い合わせてみましょう。

団信に加入していても住宅ローンが免除にならないケースとは？

団信の被保険者（ローン利用者）が死亡した場合でも、無条件で保障が実行されるわけではありません。次のようなケースで死亡した場合、住宅ローンは免除対象外となります。

• 保障開始から1年以内に被保険者が自殺
• 被保険者が事前告知で虚偽の申請をし、保険会社から契約が解除された
• 被保険者が戦争やその他の変乱（クーデター等）により死亡
• 被保険者が詐欺や不法取得目的で団信に加入した

被保険者が嘘を言ったり、保険会社を騙したりして加入した場合、ローンが免除にならないのは当然と言えます。

しかし、被保険者の責任ではない戦争やクーデター等に巻き込まれ死亡した場合も、免除対象外となるので注意が必要です。

団信なしの住宅ローンを相続した際の相続税の計算方法を解説！

住宅ローンは債務なので、ローン利用者が返済途中で死亡した場合、ローン残債は債務控除の対象となります。

例をあげて相続税への影響をみていきましょう。

（例）ローン利用者（被相続人）が死亡し、法定相続人は配偶者・子供の合計2人である。遺産総額は5,000万円だが住宅ローン（団信なし）は500万円残っており、葬儀費用は300万円である。

遺産総額は5,000万円から住宅ローン・葬儀費用を差し引けます。

遺産総額5,000万円－（住宅ローン500万円+葬儀費用300万円）＝遺産額4,200万円

遺産額4,200万円ですが、更に相続税の基礎控除（3,000万円+600万円×法定相続人2人）も差し引けます。

遺産額4,200万円－基礎控除4,200万円＝0

相続税は0円（非課税）です。

なお、団信に加入していた場合は、保険金で債務が0円になるのでローン残債は債務控除にできません。

この場合は葬儀費用のみ差し引けるので、

遺産総額5,000万円－300万円＝遺産額4,700万円

遺産額4,700万円－基礎控除4,200万円＝500万円

500万円が相続税の課税対象となります。

住宅ローンの契約者の死亡後に必要な手続き方法

ローン利用者が死亡したら次のような手順で手続きを進めます。

1. 金融機関への連絡：団信加入者の身に死亡したら家族が、死亡を伝える他、被保険者指名・保険証券の番号も報告する
2. 金融機関の指示に従い保険金請求のための書類を提出
3. 保険会社の審査開始：請求書類に不審な点が無いか審査
4. 保険金の支払い：金融機関は保険金を受け取り、住宅ローンの完済処理を進める
5. 遺族が法務局に抵当権抹消登記の申請を行う

保険会社に保険金請求を行う場合は、主に次の書類を準備します。

• 死亡診断書：医師から作成してもらう
• 被保険者の除籍謄本：本籍地の市区町村役場で取得、1通750円
• 受取人の印鑑登録証明書：お住いの市区町村役場で取得、1通200～300円
• 受取人の戸籍謄本：本籍地の市区町村役場で取得、1通450円

なお、団信の請求には時効があり、3年以内に請求しないと保険金の請求ができなくなるので注意しましょう。

団信なし住宅ローンの返済の負担が大きい場合の対処法を解説！

被相続人のプラスの遺産（不動産や預金等）より、住宅ローン等のマイナスの遺産が多額となる場合は「相続放棄」を検討してみましょう。

相続放棄は被相続人の相続人から外れる代わりに、プラスの遺産や債務も全て相続できなくなります。また、相続人全員が同意し、プラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を相続する「限定承認」も利用できます。

ただし、相続放棄と限定承認いずれの場合も、相続の開始があった事実を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述しなければいけません。

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