不動産の生前贈与に関する基礎知識・手続き・税金・メリットを解説!

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遺産相続

不動産の生前贈与の手続きはどうするべき?

贈与とは一方の持っている所有物を、無償で譲渡し、それをもう一方が受け取ることによって成立します。あげる側を贈与者、もらう側を受贈者といいます。

あまり財産的価値のない動産の贈与などはそのものを渡すことで完了しますが、不動産の贈与は法務局での名義変更が必要となり、無償での譲渡であるものの、売買と同じような書類が必要になります。

一般的には下記のような書類が必要になります。

・贈与契約書 
・贈与者の印鑑証明書
・不動産の権利書(登記済証又は登記識別情報)
・受贈者の住民票又は戸籍の付票
・不動産の評価証明書
・法務局に提出する申請書
・司法書士に依頼する場合は委任状

これらを準備し双方が共同で法務局に申請をします。一方的にあげるのではなく、受贈者が同意の上受け取るという行為が不可欠になります。

生前贈与のメリットと相続との違いについて

そもそも不動産の生前贈与をする目的は何でしょうか?不動産の生前贈与のメリットを節税の観点と、不動産の活用の点とで見ていく必要があります。

まず、節税の観点から言うと、メリットを受ける方は限定的です。具体的には一部の「お金持ち」くらいで、一般の家庭で不動産の生前贈与をして節税のメリットを見出すのは難しいです。通常、生前贈与の節税は相続税を軽減するために行う場合が多いです。

暦年課税という制度を使い現金を贈与税のかからない範囲で毎年していくことで財産を減らし、節税をすることはよくありますが、同じように贈与税の非課税の範囲で生前に不動産の一部または全部を相続人の名義にしておくことにより、相続財産の課税対象から、離脱させることもできます。

しかし、現金と違い贈与税以外の費用や税金がかかることや、手続きの煩雑さから、毎年不動産の贈与をすることはかなりの負担になります。

また、贈与税をある程度払ってでも、節税のために不動産の贈与をすることはありますが、贈与をしなかった場合にかかる相続税と比べ果たして得をするかをしっかり検討しなくてはなりません。基礎控除枠という非課税枠のおかげでそもそも相続税の課税がない場合が多く、相続税の税率が高く、贈与税を支払ったとしても、節税効果が期待できるのは、多額の遺産のある方ということになります。

このように節税だけの視点で見ると、一般の方には効果がなく、むしろ損をしてしまうケースも多いです。20年以上連れ添った配偶者への自宅の贈与をすることにより2000万円までは非課税となる配偶者控除もありますが、相続財産全体で基礎控除枠をこえなければ、そもそも相続税はかかりませんし、配偶者が取得する財産額が1億6千万円までは相続税を非課税とすることができる配偶者特別控除も利用できるのでどちらが得かは一概には言えません。

しかし、税金面ではない部分でメリットがある場合もあります。例えば子に対して生前に不動産を贈与し、その贈与を受けた子がその不動産を自由に活用することにより、贈与者にはできなかった価値の創出ができることもあります。

また、配偶者に限りますが40年ぶりの相続法の大改正により20年以上連れ添った夫婦間の自宅贈与でいままでになかったメリットを受けることができるようになりました。

メリットが限定的な不動産の生前贈与ですが、40年ぶりの相続法の改正により、新たにできた制度もあります。

改正前の制度では生前贈与を受けたとしても、相続の際には、残った額の法定相続分を取得できるわけではなく、生前贈与を受けた金額と相続開始時の遺産を併せた金額が相続財産の価格となります。

そこから法定相続分を受け取ることになるため、すでに受け取っている相続人は相続の時は受取金額が少なくなったり、すでにもらいすぎているとして、相続財産を受け取れないという規定があり、「持ち戻し」と呼ばれます。

被相続人の意思表示により、この「持ち戻し」といわれる仕組みを適用しないこともできます。今回の改正により受贈者が20年以上連れ添った配偶者であり、自宅不動産を贈与または遺贈した場合はこの「持ち戻し」の規定は適用せず、「持ち戻し」をしない旨の意思表示を被相続人がしたと推定し、適用しないこととなります。

よって配偶者は自宅不動産以外の財産について法定相続分を受け取る権利がありますが、遺留分を侵害することはできないため、遺言による取得と結果が変わらないケースが多く、積極的に不動産の生前贈与をしたほうがいいかは、不動産以外の財産状況、税金及び他の相続人との関係により考慮する必要があります。

相続は、取得時期を選ぶことができませんが、一般的には贈与で受け取るよりも税金が安くなる場合が多く、相続人が複数いたとしても遺言で取得者をしていきます。

その反面贈与は、手続きをしたいときに行えますが、税金に気を付けないと損をするだけになってしまう場合もあります。また、贈与税の非課税枠を廃止して、相続税の際に全て課税するような税法の改正なども見込まれております。今後の改正によってなにが一番いい選択かを判断するのは難しくなってきています。

また、税金だけでなく相続や、贈与だけでなく民事信託のように、財産を移転せずに管理処分をまかせるというやり方もあるので、総合的に判断する必要があります。

不動産の生前贈与に発生する税金、その他の費用とは?

不動産の生前贈与は、それ自体は無償で損することがないように見えますが、不動産の評価に応じて、贈与税、登録免許税、不動産取得税などの税金が受贈者に課せられます。

・不動産取得税:時期により減税がある場合がありますが本則は不動産価格の4%
・登録免許税:不動産評価額の2%

贈与税は年間110万円以上になると、価格により税率も変わりますが最高税率が55%になり、場合によっては贈与する財産価格の半分以上を税金として納める必要がでてきます。

また、法務局での名義変更を司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬がかかります。

ローンが残っている不動産の生前贈与はどうなる?

ローンが残っている不動産には銀行の抵当権がまだついています。抵当権とは、もしローンを返済できなかった場合に、銀行がその不動産を競売にかけて優先的に支払いを求めることができる権利です。

銀行が融資をする際に、債務者となる方の支払い能力や、担保提供者(不動産の所有者)などを審査したうえで貸し付けを行っているため、不動産の所有者の変更はその前提が崩れかねないため、銀行にとっては都合の悪いことである場合があります。所有者が変わっても抵当権は効力があるままですが、銀行との信頼関係が破綻する可能性がありますので、事前に銀行に相談をすることが望ましいでしょう。

不動産の生前贈与の注意点まとめ!

不動産の贈与(名義変更)には様々な費用や税金がかかります。結果的に費用ばかり掛かって意味がなかったという方もいらっしゃいます。贈与を含めた生前の対策は、節税の面から見るのか相続人間の遺産分割協議の面から見るのかで、必要な手続きが違いますので、生前贈与をありきではなく、まず目的や優先事項を決めたうえで、遺言、保険、贈与、信託などを組み合わせて準備をする必要があります。

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この記事を書いたのは…

御法川 明

司法書士

御法川 明(みのりかわ あきら)

平成20年司法書士試験合格

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