不動産の共有持分放棄とは?登記手続きの流れや注意点を解説

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遺産相続

不動産の共有持分放棄とは?他の人と共有している自分の不動産持分を放棄することです

不動産を所有していても、自分以外の人との共有関係を継続したくない場合は、次の方法で解消することができます。

・共有物分割:共有者同士で協議等を行い、共有物の現物を分割または売却してその代金を分ける方法
・共有持分の処分:自身の共有持分を他の共有者または第三者に譲渡する方法
・共有持分放棄:自身の共有持分を放棄し、共有関係から離脱する方法

共有持分放棄は共有関係を解消する方法の一つです。他の共有者が同意しなくても自分の意思で放棄できます。放棄した共有持分は、原則として他の共有者に帰属することとなります。

民法では、以下のように定められています。

“第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。”

e-Govウェブサイト(民法255条)

共有持分を放棄する代表的な理由とは?

こちらでは、共有持分を放棄したいと思う代表的な理由を示します。

・意見が割れて話し合いがなかなか進まないため

・固定資産税や管理費の負担を減らすため

・他の共有者との仲が良くないため

共有持分を放棄する方の多くは、「トラブルに巻き込まれたくない」という理由で渋々放棄を選択しています。

共有持分の放棄を検討している方は、まず専門家に放棄以外に選択肢はないのか相談してみましょう。

不動産の共有持分放棄はどのように行う?手続きの流れを解説!

共有持分を放棄したい場合、他の共有者の同意は必要ありません。他の共有者へ「共有持分を放棄する」旨を伝えるだけで有効となります。

つまり、本人の意思表示のみで共有持分放棄の効力は発生するのです。

しかし、口頭で伝えるだけでは、後日、他の共有者との間で「言った、言わない」のトラブルに発展するおそれも考えられます。そのため、内容証明郵便を利用して通知した方が無難です。

共有持分を放棄する際の手順は次の通りです。

1.共有持分の放棄を決める
2.内容証明郵便で他の共有者へ放棄の意思を通知
3.後日、他の共有者と共に共有持分放棄の登記を行う

通知の内容は、どの不動産の共有持分を放棄するかを明記する必要があります。

記載内容は法定されていませんが、下記を明記することで十分満たされます。

・自分の氏名・住所・電話番号等
・共有持分を放棄する旨
・共有持分を放棄する不動産の明細(不動産所在地等)

なお、内容証明郵便を郵便局の窓口から発送する場合は、1通につき1,200円程度かかります。

共有持分の放棄でかかる税金とは?

共有持分の放棄で課税される税金は2つあり、登録免許税と贈与税です。

登録免許税とは、登記手続きの際に国に納める税金です。登録免許税額は、「不動産の固定資産税評価額×1000分の20」で算出することができます。

固定資産税評価額とは、固定資産税の基準となる価格のことです。

贈与税は、放棄された共有持分をもらった共有者が納税します。持分放棄すると、他の共有者に課税されることがあるため注意が必要です。

不動産の共有持分を放棄するとどうなる?

共有持分を放棄した場合、放棄した人の持分権は他の共有者に帰属します。例えば自分と他1名が不動産を共有していた場合、自分が放棄すれば他の共有者の単独所有となります。

3人以上で不動産を共有していたならば、自分が放棄した持分は各共有者の持分割合に従って帰属します。

例を挙げて各共有者の持分割合を見てみましょう。

(例)共有者が母親・子A・子Bの場合

・母親の持分割合:1/2
・子A・子Bの持分割合:それぞれ1/4

子Aが共有持分を放棄した場合、次のように子Aの持分(1/4)が各共有者に帰属します。

・母親→1/4×2/3=2/12
・子B→1/4×1/3=1/12

不動産の共有持分を放棄した方がいい事例をご紹介!

ここでは、共有持分を放棄した方が良いケースを2つ取り上げます。

不動産の売却処分がなかなか進まない場合

次のように不動産の処分がうまくいかない場合は、放棄した方が良いケースといえます。

・不動産を売却したくても、共有者が同意してくれない
・売却の同意を得ても、買い手が見つからない

共有不動産を売却する際は共有者全員の同意が必要です。共有者が1人でも拒否すれば、売却することはできません。

また、共有不動産を売却することになっても、郊外や交通の便の悪い場所にある土地ならば、需要は極端に低くなり、買い手が見つからない可能性があります。

このような状況の場合、持分を放棄して早めに共有名義から抜け出すことも良い方法といえます。

共有している建物が長らく空き家になっている場合

故人(被相続人)の住居を相続によって子達(兄弟姉妹)が共有名義で所有したものの、誰も住むことなく空き家になっている場合は、持分の放棄を検討してみましょう。

故人と共に住んでいた生家であれば、相続人達は家族の思い出が残る住居を容易に手放したくないはずです。

しかし、共有不動産が各共有者の居住地域から離れ、長い間放置された状態だと、倒壊の危険はもちろん管理費用が重い負担となります。

売却や第三者へ賃貸する等、共有者間で空き家を利活用する話し合いが進まない場合、無用な負担を避けるために放棄した方が無難です。

持分放棄の登記には協力が必要?その手続き方法とは

持分の放棄自体は自分だけで行えます。しかし、放棄の登記は他の共有者と共同で行う必要があります。登記とは放棄の事実を世の中に示す方法のことです。

共有持分放棄の登記手続きは、共有不動産の所在地を管轄する法務局で行います。手続きの際は次の必要書類を提出します。

・登記申請書:法務局窓口で取得
・登記識別情報通知:不動産を取得した際に受け取った書類
・固定資産税評価証明書:不動産が所在する市区町村窓口で取得、発行手数料は300円程度
・実印・印鑑登録証明書:印鑑登録証明書はお住いの市区町村窓口で取得、発行手数料は300円程度
・住民票:お住いの市区町村窓口で取得、発行手数料は300円程度
・本人確認資料:運転免許証、健康保険証等

なお、登記費用として登録免許税(固定資産評価額の2%分)を支払う必要があります。自身で出向くことが出来ないため代理人が申請する場合は、委任者本人が作成した委任状が必要です。

共有持分放棄は、持分贈与や持分売却とは違う?その違いを解説!

共有持分を放棄、贈与または売却する場合それぞれで法律上の性質や課される税金等が異なります。下表を参考にしてください。

比較持分放棄持分贈与持分売却
法律上の性質単独で放棄贈与契約締結売買契約締結
他の共有者の同意不要不要不要
不動産登記必要必要必要
税金持分が帰属した他の共有者に贈与税持分の受贈者に贈与税、不動産取得税売却側に譲渡所得税、購入側に不動産取得税

持分放棄だけは単独で行うことができます。持分贈与・持分売却の場合も、他の共有者の同意は不要ですが、契約を締結する以上「その持分を受け取る側の合意」は必要となります。

また、持分放棄・持分贈与・持分売却のいずれにおいても、登記しないと持分権に変更があったことを第三者(共有当事者以外の人)へ対抗できません。

持分放棄で注意すべきこととは

持分放棄を行う際、主に次の2点を確認しておきましょう。

他の共有者に贈与税がかかり反発を招く場合がある

持分放棄をする自分は、共有持分の権利を失うため課税されることはありません。一方、放棄した持分が帰属する他の共有者には、贈与税が課せられる可能性があります。

持分を譲る(放棄する)側・持分を受け取る側が合意契約したわけではないので、法律上の贈与とは言えませんが、放棄の結果として他の共有者の持分が増加した以上、贈与を受けた場合と同じ状況となります。

そのため、税務上では贈与と同じ取扱いとなり、他の共有者へ贈与税がかかるのです。贈与税が課されることで他の共有者から反感を買うこともあり得ます。

いきなり持分放棄を行わず、まずは他の共有者と十分に話し合うことが大切です。

他の共有者が登記の協力を拒否することもある

持分放棄をすることで、不動産に関する固定資産税や管理の負担から解放されます。しかし、他の共有者が自分たちの負担が増えることに不満を抱いた場合、登記の協力を拒否することが想定されます。

他の共有者から登記を拒否された場合、登記引取請求訴訟を提起すると、裁判所の命令により強制的に登記することができます。

ただし、登記引取請求訴訟は、訴訟提起から判決までの期間が半年から1年程度かかります。また、訴訟の有効期限も次のように限定されているので注意しましょう。

・権利を行使できると知ったときから5年以内
・権利を行使できるときから10年以内

上記いずれかの期間が経過した場合、訴訟提起はできないことになります。

共有持分だけの相続放棄は不可である

共有持分だけを相続放棄することは出来ないため、注意が必要です。相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされ、遺産分割に参加できなくなります。

不動産の共有持分放棄を弁護士に依頼したい!費用をチェック

共有持分放棄を弁護士・司法書士に依頼する場合の費用の目安は次の通りです。

・相談料(60分):無料~10,000円
・登記申請:30,000円~60,000円

他の共有者とのトラブルもなく円滑に手続きが進む場合は、30,000円~70,000円程度が目安となります。しかし、他の共有者が登記を拒否し、登記引取請求訴訟を提起する場合は、多額の費用を要します。

・裁判所に納める手数料:数千円~数十万円
・弁護士報酬:数万円~100万円程度

訴訟ともなれば費用負担は重くなるので、弁護士等からアドバイスを受けつつ、他の共有者との話し合いで解決する方法が理想的です。

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