農地の相続税をかからないようにする方法とは?相続猶予制度を解説!
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農地は相続税が高い?相続税評価額を下げる方法とは
農地に関しては固定資産税が安いため、一般的な農地なら1,000㎡あたり1,000円程度です。宅地の場合は同じ面積でも数十万円に達するので、税額は概ね100分の1以下となります。
ただし、固定資産税が安いからといって、相続税評価額も低くなるわけではありません。
農地の分類によって評価方法は異なる
どんな農地であるかによって、それぞれ次のような評価方法をとります。
- 純農地・中間農地:固定資産税評価額×評価倍率
(評価倍率は、国税庁ウェブサイト「財産評価基準書」のページで確認可能) - 市街地周辺農地:市街地農地であるとした場合の価額×80%
- 市街地農地:(農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額−1㎡当たりの造成費の金額)×地積
例えば市街地にある農地の場合、1㎡当りの価額が40,000円で、1㎡当りの宅地造成費の金額が1,500円、地積が300㎡ならば次のように評価されます。
(40,000円-1,500円)×300㎡=11,550,000円
ケースによっては相続税評価額が1,000万円を超える場合があり、重い税負担が相続人に課せられる可能性もあります。
相続税の評価額を下げる方法
主に次の方法が考えられます。下表をご覧ください。
減額方法 | 内容 |
貸し付け農地減額 | 他人に貸し付けられている農地は、区分地上権や永小作権の価額等を差し引いて評価できる |
宅地造成費控除 | 宅地に準じ農地を評価するならば宅地造成費を差し引いて評価できる |
広大な市街地農地等 | ・三大都市圏:500㎡~ ・それ以外:1000㎡~ 一定の要件に合致すると「宅地造成費+規模格差補正率」を乗じて評価できる。 |
生産緑地 | 市街化区域内の農地が生産緑地に指定されれば、10%~35%の評価減が期待できる。 |
農地の相続税をかからないようにする方法は?
被相続人の遺産が主に農地しかなく、相続しても自宅から遠く離れていて利用価値がない、税負担も重い、と感じたら相続放棄を行えます。
ただし、相続放棄をしてしまうと被相続人の農地以外の遺産も相続できません。また、他の相続人の間で農地の押し付けあいが始まり、長年放置されてしまう事態も考えられます。
そのうちに誰が相続したのかわからない状態となり、農地の荒廃は避けられません。
政府は農地の荒廃や農業離れの拡大を避けるため、農地を引き継ぐ相続人になるべく負担がかからないよう、農地に関する税制上の優遇措置を設けています。それが農地の「相続税猶予制度」です。
相続税猶予制度について詳しく解説!適用条件とは?20年で猶予も免除にできるの?
農地の相続税猶予制度は「被相続人の農地を引き継ぎたいものの税負担が気になる」という相続人が検討するべき相続税の優遇措置です。
本制度を活用すれば相続税猶予はもちろん、一定の条件に合致すれば税負担も免除されます。
どのくらいの相続税額が猶予されるのか
農地を相続した相続人が猶予される相続税額は次のように計算します。
「本来の相続税の総額(※1)-農業投資価格による相続税の総額(※2)=納税猶予税額(※3)」
例をあげて計算してみましょう。
(例)農業を営んでいた被相続人から、相続人である子A1人のみが農地を含め遺産全てについて相続した。
- 相続人:子Aのみ
- 農地評価額:8,000万円
- 自宅評価額:5,000万円
- 預金:2,000万円
- 農業投資価格:1,000万円
(※1)本来の相続税の総額を計算
まず、農地評価額・自宅評価額・預金を合算します。
8,000万円+5,000万円+2,000万円=1億5,000万円
課税価格の合計額は1億5,000万円となり、今度は基礎控除額(相続人1人:3,600万円)を差し引きます。
1億5,000万円-3,600万円=1億1,400万円
本来の相続税の総額は次のように計算します。
課税遺産総額は1億1,400万円となるので税率40%を掛け、1,700万円を控除します(相続税の速算表参照)。
1億1,400万円×40%-1,700万円=2,860万円
本来の相続税額は2,860万円です。
(※2)農業投資価格による相続税の総額を計算
まず、農地評価額・農業投資価格・預金を合算します。
8,000万円+1,000万円+2,000万円=1億1,000万円
課税価格の合計額は1億1,000万円となり、今度は基礎控除額(相続人1人:3,600万円)を差し引きます。
1億1,000万円-3,600万円=7,400万円
農業投資価格による相続税の総額は次のように計算します。
課税遺産総額は7,400万円となるので税率30%を掛け、700万円を控除します(相続税の速算表参照)。
7,400万円×30%-700万円=1,520万円
農業投資価格による相続税は1,520万円です。
(※3)本来の相続税額(※1)を農業投資価格による相続税額(※2)で差し引く
2,860万円-1,520万円=1,340万円
納税猶予税額は1,340万円となります。
適用条件について
相続税猶予制度を適用するには、被相続人・農業相続人・農地それぞれが条件に合致していなければいけません。
被相続人・相続人の条件
被相続人の場合は次のいずれかに該当している必要があります。
- 死亡日まで農業を営んでいた
- 死亡日まで特定貸付け、認定都市農地貸付け、農園用地貸付けのいずれかを行っていた
- 生前に一括贈与をした
一方、農業相続人は次のいずれかに該当している必要があります。
- 相続税申告期限までに農業経営を開始、引き続き農業をする
- 相続税申告期限までに特定貸付けまたは認定都市農地貸付け等を行った
- 被相続人から生前に一括贈与を受けた
農地の条件
農地は次のいずれかに該当する必要があります。
- 相続で取得した農地等で遺産分割されている
- 贈与税納税猶予の対象だった
- 相続の年に生前一括贈与を受けていた
- 被相続人が特定貸付け、認定都市農地貸付け、農園用地貸付けのいずれかを行っていた
免除の条件
相続税が猶予されても、納付は先送りしてもらっている状態といえます。しかし、一定の条件に合致すれば猶予されていた相続税は免除され、納税が不要となります。
免除の要件は、基本的に被相続人から農地を引き継いだ相続人が死亡した場合です。
その他にも、免除されるケースがあります。
- 市街化区域の農地なら営農20年で免除:全国の市町村が該当。ただし、生産緑地・三大都市圏(首都圏・近畿圏・中京圏)の特定市を除く
- 農業相続人が後継者に生前一括贈与したら免除
このように、相続人の亡くなる前に相続税が免除される場合もあります。
農地の相続税猶予制度を利用する際の手続き先と方法
相続税猶予制度を利用するには、農業委員会、市区町村役場、税務署にそれぞれ申告をしなければいけません。
手続きの流れ
次のような手順で進めていきます。
- 農業委員会へ相続税の納税猶予に関する適格者証明願等を提出
- 農業委員会が書類の他、農地をチェック
- 問題なければ農業委員会は適格者証明書を発行
- 市区町村役場で納税猶予の特例農地の農地等該当証明書を取得
- 税務署へ相続税申告書・必要書類を提出
- 相続税の申告期限から3年目ごとに納税猶予適用継続届出書を提出
農業委員会への申請から適格者証明書の発行までは、1カ月以上かかる場合があります。
必要書類と提出期限
申請に必要な書類は農業委員会、市区町村役場、税務署それぞれ異なります。
(1)農業委員会事務局へ提出
適格者証明願・明細書は農業委員会事務局窓口等で取得できます。
- 相続税の納税猶予に関する適格者証明願(2部作成)
- 特例適用農地等の明細書(2部作成)
- 被相続人・相続人の戸籍謄本等の写し:戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得
- 相続関係説明図の写し:作成していれば提出
- 土地評価証明書または公課証明書の写し:市区町村役場で取得
- 遺産分割協議書の写し:遺産分割を行った場合に提出
- 特例農地の位置図
(2)市区町村役場へ提出
- 相続税の納税猶予に関する適格者証明書証明願:市区町村役場窓口・ホームページで取得
- 発行手数料:1通300円
(3)税務署へ提出
基本的に次の書類を準備します。
- 相続税の申告書
- 相続税の納税猶予に関する適格者証明書:市区町村役場で受け取る
- 担保提供書:農地等納税猶予税額・利子税額に見合う担保(例:土地や建物等)を提供するための書類
提出期限は相続税の申告の際に、相続税の納税猶予に関する適格者証明書も添付して提出するので、原則として相続発生の翌日から10ヶ月以内です。
農地の相続税猶予制度は利用するべき?注意点や相談先とは
農地の相続税猶予制度を検討する際は、申請前に確認するべき事柄があります。
注意点
本制度は基本的に相続人が農地を使用し続けないと、納税が猶予されなくなります。次のようなケースでは猶予が打ち切られるので注意しましょう。
- 特例農地を譲渡・放棄・転用した
- 農業経営をやめてしまった
- 生産緑地の買取りの申出があった等
また、相続税の申告期限から3年目ごとに納税猶予適用継続届出書を税務署へ提出しないと、上記のケースに該当しなくても納税猶予が打ち切られてしまいます。納税猶予が確定する提出期限の翌日から2か月以内には必ず提出しましょう。
相談先はまず農業委員会へ
申請の条件や手続きに疑問がある場合、農業委員会事務局に相談しましょう。事務局は各市区町村役場に設置されています。
相続税の納税猶予に関する適格者証明書の提出期限は、相続税の申告期限と同じなので、事務局の担当者に申請の流れやアドバイスを聞き、スムーズに申請を進めていくことが大切です。
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