遺言執行者の代理人をたてるには?復任権の実行や費用について解説!

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遺産相続

遺言執行者って何?遺言内容の手続きをする人のことです

遺言執行者とは文字どおり、遺言の内容を執行する役割を果たす人です。遺言の内容を現実に落とし込むのが遺言執行者の仕事であるため、その職務内容は遺言に書かれている内容によって決まります。

預金の解約、株式名義の書きかえなど財産にかかわる事務手続きから、不動産の名義変更、認知、廃除(特定の相続人から相続人たる地位を奪う法律行為)といった法律手続きまで、その職務内容は多岐にわたります。

遺言執行者の主体要件

原則として遺言書のなかで指定された人が遺言執行者になります。遺言による指定がない場合や、遺言で指定された人が辞任や死亡した場合など、相続人らで遺言執行者を選べますが、この場合、家庭裁判所に申し立てる必要があります。

基本的には誰でも遺言執行者の職務に就け、個人ではなく法人でもよいとされています。ただし法律上、未成年者や破産者は遺言執行者にはなれません(民法1009条)。

遺言執行者の復任権~委任状をもって代理人が立てられます

遺言執行者には復任権が与えられています。復任権とは仕事をほかの誰かに任せる権利です。復任権はホットなテーマで近年、民法の改正があった部分です。今でこそ遺言執行者には復任権があるのが原則ですが、以前までは例外的にしか認められていませんでした。

遺言の執行は故人の思いを遺族に伝える大切な仕事である一方、財産の分配など高度な管理能力が求められる局面もあります。買い物を頼むのとは重大さが違い、勝手に他人に頼まれては困るのです。それゆえ民法改正前は「やむ得ない事由をのぞき」復任権の行使は認められていませんでした。

改正前の復任権

改正前の条文(民法1016条)では下記のように規定しています。

「遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。」

改正前の条文によると、遺言執行者はほかの人に仕事を任せることができないことがわかります。

やむを得ない事由がある、あるいは本人が(遺言のなかで)あらかじめ復任を承諾していた場合に限って例外的に許されます。なお、やむを得ない事由には、具体的に病気で動けない等などが挙げられます。

つまり、例外はあるものの基本的には「復任するのはダメ」ということが改正前でした。直近、これは改正で大きく変化しました。

改正後の復任権

では、民法の改正後の条文をみてみましょう。

「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」

改正後の条文によると、遺言執行者が第三者に任務を任せても問題ありません。遺言者執行者が(遺言のなかで)ほかの人間に仕事を任せることを禁止した場合に限り、復任は不可になります。

改正前と改正後の原則と例外が完全に逆になっていることがわかります。

仕事で時間がとれない、遠方住みのため職務をこなすのが困難、遺言の内容が専門的すぎるなど、指名された遺言執行者本人にとって職務の遂行が難しい現実もあります。

改正前は専門家に遺言執行を依頼しようにも復任禁止の原則により、それが難しいという状況でした。

遺言執行者の代理人は誰に頼む?専門家に依頼するメリット

遺言執行者の代理人に専門家を選ぶ場合のメリットと、その選び方のポイントについて解説します。

遺言執行を専門家に依頼するメリット

遺言執行者は相続人から選ぶこともできるため、必ずしも専門家に依頼する必要はありません。遺言の内容が単純だったり、時間的に余裕がある場合、相続人間で争いが起こる可能性が低いと判断できるケースでは、あえて遺言の執行を専門家に任せる必要性は薄いのかもしれません。

あるいは遺言執行者そのものを選ばずに、相続人全員で協力して相続手続きを進めるのも一つの方法です。

しかし遺言を執行するうえで不動産を扱ったり、複数の銀行口座が存在するケースでは手続きが複雑になり、慣れていないと時間がかかります。法律の知識を要求される場面も少なくありません。

なによりも遺言執行者は世間が思う以上に重い責任を負います。正確かつ迅速に遺言の内容を実行することが求められます。

弁護士や司法書士、税理士や行政書士等の専門家は、相続手続きに慣れている方も多く、スムーズかつ確実に遺言内容の実現が期待できます。

遺言執行を頼むなら士業などの専門家へ

遺言執行者を選ぶに際に悩むことが、どの種類の専門家に依頼するかです。遺言執行者として候補に挙がる専門家は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などが一般的ですが、それぞれ得意とする分野が違います。

遺言執行の結果、1円も相続できない人がいるなど、相続人間で紛争の可能性がある、あるいはすでに紛争が起きているのであれば弁護士が適任です。また不動産が絡むのであれば登記を扱える司法書士が有力候補ですし、相続税の支払いが必要になるケースであれば税理士への依頼も視野に入ります。

ベストな選択は状況によって変わりますし、同じ専門家でも個人の得意と不得意があります。悩むところではありますが、まずは、相続手続きなどを手がけている士業などの専門家に相談してみるということが大事だと考えられます。

遺言執行者の代理人を立てて円満に解決したケース

遺言執行者の代理人を専門家に任せて、円満に解決できると考えられるケースを紹介します。

相続税の申告を急ぐケース

相続財産の総額が一定を超えると相続税の申告が必要になります。相続税の申告は期限があり、通常は死亡から10か月以内に申告を済ませる必要があります。遺産の分配を急がないといけないのです。それにもかかわらず銀行口座の数や不動産の数が多いと、手続きがなかなか進まず期限が過ぎてしまう恐れがあります。

この場合、慣れている専門家を遺言執行者に選んでおくことで、滞りなく相続手続きが完了する可能性が高くなります。相続税の申告期限を過ぎると延滞税や加算税が発生してしまう場合も多く、遺言執行を士業などの専門家に任せることで、スムーズに手続きが進み、結果として、任せて良かったと安心する声が多いようです。

認知や愛人への贈与など心理的に抵抗のある遺言執行

隠し子の認知や愛人への贈与など、他の相続人にとって心理的抵抗のある内容を遺言に盛り込んだ場合、遺言執行時にトラブルを招いてしまう可能性が高くなることが考えられます。

デリケートな執行内容にもかかわらず、相続人の中から遺言執行者を選んだ場合、スムーズに相続手続きが進んでいかないかも知れません。

手続きがスムーズに進まない可能性がある場合、利害関係のない専門家を遺言執行者の代理人に立てることで、トラブルが万が一起きてしまった場合も、対処方法を見出し、解決へと導くことができます。

遺言執行者の代理人になる際は、利益相反に注意を!

主に弁護士が遺言執行者の職務に就く場合の話ですが、遺言執行ではたびたび利益相反が問題になります。遺言執行者は相続人「全員の利益のために」働く立場にあります。特定の相続人の代理人、つまり味方になることはできないので、その点は理解しておく必要があります。

例えば、弁護士Aが遺言執行者に選任され、相続人B、相続人Cのために働くとします。

ここでBとCの間で(相続の取り分で揉めるなど)何らかの紛争が起こった場合、弁護士AはBの依頼を受けてCと争うことはできません。B、C全員の利益のために働くという遺言執行者の立場に相反するためです。

これを「利益相反の禁止」と言います。

遺言執行者を専門家に依頼した場合にはどのくらいの費用が必要?相場をご紹介!

弁護士や司法書士、税理士、行政書士などの士業に遺言執行者の依頼をした場合、どのくらいの費用が必要なのでしょうか?

不動産の数や銀行の数にもよりますが、よくある報酬基準として、遺産総額の1%から3%、最低金額は30万円からといった料金体系が多いようです。

各士業により、必要な費用も多少違ってくる場合も多いため、相続手続きなどに携わっている士業などの専門家に、まずは相談してみると良いでしょう。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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この記事を監修したのは…

梅園 浄

浄土真宗本願寺派 僧侶・行政書士・相続診断士・終活カウンセラー2級

梅園 浄(うめぞの じょう)

浄土真宗の僧侶としてお寺を護りながら、お寺を相続や終活など様々な悩みを気軽に相談できる場所にしたいという思いから、行政書士・相続診断士・終活カウンセラーとして相続などに携わらせていただいております。
また、様々な地域の宗教法人さまの事業サポートにも力を注いでおります。例えば、納骨堂や墓地に関してや、法人活動の中で必要な行政手続きなど、様々なお悩みについて、ご相談を承っております。

サイトURL:http://umetakegyosei.site

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