財産評価基本通達とは|一般動産・株式・不動産の評価方法

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遺産相続

財産評価基本通達とは?相続財産の評価基準を定めたものです

財産評価基本通達とは、財産の評価方法を解説するマニュアルのようなものです。相続税にしろ贈与税にしろ、税金を算出するには、前提として財産の価額を知る必要があります。

財産評価基本通達のメリット

相続税法の22条では、財産の価額は「時価」によるとされています。しかし時価とは具体的にどんな価格を指すのでしょうか。 財産を時価で評価して税金を納めてくださいと言われても、時価を決めるための基準がなければ、納税者は困ってしまいます。

この点、時価の決め方で迷わないよう、国税庁が公表しているのが財産評価基本通達です。財産評価基本通達を参考することで、不動産から動産まで、財産の類型ごとに時価を算出できる仕組みになっています。

税理士は不要? 財産評価基本通達のデメリット

財産評価の大まかな指針としては役に立ちますが、財産評価基本通達はあくまでもマニュアルにすぎません。状況によっては、個別の事情を考慮して評価をしないと、現実離れした計算結果になってしまうこともあります。

財産評価基本通達さえあれば、税理士は不要だと考える人もいるかもしれません。しかし繰り返しになりますが、財産評価基本通達はあくまでマニュアルです。財産評価基本通達の内容を重視しすぎたあまり、本来納めるべき以上の、不当に高額な納税をしてしまう恐れもあります。

財産評価基本通達とは異なる評価方法を取らないと、明らかに不公平な結果を招いてしまう場面もあります。しかし税理士でなければ、個々の事情に合わせた柔軟な判断は難しいです。財産評価基本通達にとらわれない評価をするには、税務に関する正確な知識が必要不可欠であるためです。

一般動産の評価はどのようにされる?償却費の計算方法も解説!

国税庁によると、一般動産とは「動産で、機械、運搬具、じゅう器その他これらに準ずる動産及び家庭用動産その他これらに準ずる動産」と定義されています。事業を営んでいる人なら、事業用の機材、一般家庭の人なら、自動車や家具、家電などの家財道具をイメージすると分かりやすいです。

一般動産の評価の単位

不動産評価で一筆、一棟ごとに財産の評価額を算出するように、財産は1個づつ評価するのが原則です。動産も例外ではなく、財産評価基本通達の128は「原則として1個又は1組ごとに評価する」としています。例えば、自動車なら1台ごとに評価します。

もっとも、自宅内にあるような動産(テレビ、エアコン、パソコン、衣類、タンスなど)まで、1個づつ財産の評価をしていたら、膨大な時間がかかってしまいます。そこで、財産評価基本通達の128は一個ごとの評価を原則としつつも、「1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して<中略>評価することができる」として、例外を設けています。

・1個または1組ごとの評価が原則
・1個または1組の価額が5万円以下は一括にまとめて評価

<中略>原則として、1個又は1組ごとに評価する。ただし、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる。

(財産評価基本通達128)

一般動産の評価の方法

財産評価基本通達の129によると、一般動産の価額は、原則として「売買実例価額、精通者意見価格等を参酌(さんしゃく)して評価する」としています。

売買実例価額とは、簡単に言うと中古で売った場合の価格です。自動車の相続税評価なら、死亡時における、中古買取業者の買い取り価格になります。また、精通者意見価格とは、骨董品や美術品の鑑定など、専門家の鑑定結果等によって提示される価格です。

例外として、売買実例価額、精通者意見価格が明らかでない財産は、新品の課税時期における小売価額から償却費の額の合計額を控除した価額となります(財産評価基本通達130)。

・売買実例価額、精通者意見価格(原則)
・新品の課税時期における小売価額から償却費の額の合計額を控除した金額(例外)

一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。

(財産評価基本通達129)

償却費の計算方法

財産評価基本通達の130は、償却費の計算方法を以下の通りに定めています。

(1) 耐用年数

 耐用年数は、耐用年数省令に規定する耐用年数による。

(2) 償却方法

 償却方法は、定率法による。

耐用年数

耐用年数とは、ある資産がその価値を持ち続けられる最大期間を意味します。耐用年数が5年なら、5年で価値はゼロです。耐用年数は耐用年数省令で定められています。

定率法

償却方法は定率法で計算します。定率法は、一年目に100万円×0.4(定率法償却率) = 40万円、二年目に60万円×0.4 = 24万円と、三年目に36万円×0.4 = 14万4,000円と、年数が進むにつれ償却する金額が小さくなっていく計算方法です。なお、定率法償却率は耐用年数によって定められます。

定率法による償却費の計算式は、以下の通りです。

償却費 =(取得価格−減価償却累計額)× 定率法償却率

株式の価額の算定方法〜株式の種類によって違いも〜

株式の価額の算定は、株式の種類(上場株式か非上場株式)によって異なります。非上場株式の評価方法はかなり複雑なため、税理士への相談をおすすめします。

上場株式の評価方法

上場株式の値段は日々変わります。そこで上場株式の評価をするためには、どの日の株価を基準にするのかを決める必要があります。具体的には、以下の4つのうち、最も株価が低くなる日を基準として、株価の評価をします。

1、死亡した日の終わり値
2、死亡した月の、終わり値の平均額
3、死亡した月の前月の、終わり値の平均額
4、死亡した月の前々月の、終わり値の平均額

株価の終わり値は取引所のホームページで調べることができます。また、取引所の休日等などで、死亡した日の終わり値が存在しない場合があります。このケースでは、死亡日から最も近い日の終わり値を、死亡した終わり値として扱います。

非上場株式の評価方法

非上場株式の評価はとても複雑なので、概要を紹介するに留めます。

非上場株式の評価で特殊なのが、株式を譲り受ける側の株式比率によって、評価方法が変わる点です。会社の支配権を持つ株主(同族株主)の株式を譲り受ける場合は、原則的評価方式を採用します。一方で、同族株主以外の株主(少数株主)の株式を譲り受ける場合は、特例的評価方式(配当還元方式)で評価します。

原則的評価方式はさらに、以下の3つの評価方式に分かれます。

・類似業種比準価額方式
・純資産価額方式
・併用方式

類似業種比準価額方式は、同じ業種の上場企業の株価を参考にする評価方法です。また、純資産価額方式は会社の純資産(資産 – 負債)を基準に株式を評価します。さらに、併用方式は両方の方式を混ぜた方式です。3つのうちどの方式で評価するかは、会社の規模(大会社から小会社まで5段階ある)によって変わります。

非上場株式は、評価方法が複数に枝分かれする上に、どの方式を選択して計算するかで評価額もかなり変わってきます。専門家でないと間違った方式を採用したり、損な方式で評価してしまう恐れがありますので、非上場株式の評価は必ず税理士に相談しましょう。

不動産の評価方法を土地・家屋別にチェック!

不動産は土地と家屋(建物)で評価の方法が異なるため、両者を分けて考える必要があります。なお、今回紹介するのは、土地や建物を第三者に賃貸しておらず、あくまで本人のみが土地と建物を利用していた場合の評価方法です。

土地の評価方法

土地の評価は、二つ方式に分類されます。一つは路線価方式で、もう一つは倍率方式です。路線価が定められた地域では路線価方式で評価し、路線価の無い地域は倍率方式で評価します。

・路線価方式
・倍率方式

路線価方式

路線価方式は、路線価に土地の面積を掛けて算出します。路線価は国税庁発表の路線価図・評価倍率表を、土地の面積は固定資産税通知書を確認すると分かります。

路線価図で目標となる土地を検索し、例えば、160Dの記載があれば、160に1,000円を掛けた16万円が路線価です。したがって、敷地面積が100㎡なら、16万円に100(㎡)を乗じた1,600万円が土地の評価額になります。なお、アルファベットのDは借地権割合を意味しますが、今回のケースでは無視して構いません。

倍率方式

倍率方式は、土地の固定資産税評価額に倍率を掛けて算出します。倍率は路線と同じく路線価図・評価倍率表で確認できます。固定資産税評価額が1,000万円で倍率が1.2なら、1,200万円が土地の評価額です。

家屋の評価方法

家屋は、固定資産税評価額がそのまま家屋の評価になります。固定資産税評価額が1,500万円の家屋なら、1.0を掛けた1,500万円が家屋の評価額です。

その他の相続財産の評価方法もご紹介!

その他の相続財産の評価の方法として、生命保険と死亡退職金の評価方法を紹介します。生命保険も死亡退職金も非課税枠が用意されている点で共通します。もっとも、生命保険で非課税の恩恵を受けられるのは保険金が入金された場合のみで、生命保険契約に関する権利の相続は対象外です。

生命保険金の評価方法

相続を機に死亡保険金が入ると、保険金額はそのまま相続財産に計上せず、非課税限度額を差し引いた上で計上します。

具体的に控除される金額は「500万円 × 法定相続人の数」で計算します。相続人が2人の相続で、3,000万円の死亡保険金が入った場合、1,000万円(500万円 × 2)を差し引いた2,000万円が保険金の評価額になります。

生命保険契約に関する権利

生命保険契約に関する権利を相続した場合は、非課税にはなりません。保険金が入ったわけではなく、あくまで契約者としての権利を相続したに過ぎないためです。

夫(被相続人)が、被保険者を妻とする生命保険の保険料を払っている最中に死亡した場合、夫の契約者としての権利は相続の対象になります。相続をするのは、あくまで権利であって保険金ではありません。被保険者の妻は生きているので、保険金は入らないのです。

そして、この生命保険に関する権利の価額は、相続開始時点の解約返戻金の額によって評価します。相続開始時の解約返戻金の金額は、保険会社に直接問い合わせて確認できます。

死亡退職金の評価方法

死亡退職金も課税対象です。死亡退職金にも生命保険金と同じく非課税枠が用意されており、死亡退職金の額から「500万円 × 法定相続人の数」で算出した金額を差し引くことができます。相続人が3人で、2,000万円の死亡退職金が入った場合は、1,500万円を控除した500万円が計上するべき財産の価額です。

なお、相続税の対象になるのは、死亡日から3年以内に給付が確定した死亡退職金です。死亡から3年経過後に確定した死亡退職金は、相続税ではなく所得税の課税対象になります。

財産評価評価基本通達の総則6項が適用されるケースをご紹介!

財産評価基本通達は、総則の6項で、国税庁長官が、相続税の評価について一方的に指示できる旨を認めています。ただし、財産評価基本通達の総則6項目は、無条件に適用されるわけではなく、「著しく不適当と認められる」財産の価額にのみ適用されます。

この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

(財産評価基本通達 第1章総則6項)

「著しく不適当と認められる」の基準が曖昧なため、いかなるケースで財産評価基本通達の総則の6項が適用されるかの判断は非常に難しいです。もっとも、節税対策が行き過ぎた場合に、適用の可能性が高まるのは間違いありません。

過去に実際に適用されたのは、以下の事実が重なったケースです。

・時価(購入額)と相続税評価額の差額が大きい(4倍以上の開き)
・相続の開始直前に不動産を購入していた
・相続後1年以内に不動産を売却

上記の事実が重なったからといって、必ず財産評価基本通達の総則の6項が適用されるわけではありません。しかし、節税目的のみで財産を購入したり売却をしてしまうと「著しく不適当」と判断されてしまう確率が上がるので、注意する必要があります。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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