贈与契約書に印紙は必要?印紙が必要・不要なケース、取扱いの注意点や印紙税について

贈与契約書における印紙税の基本を知ろう
贈与契約書を作成する際には、契約内容によって印紙税が必要になる場合があります。特に、不動産の贈与や負担付贈与では、収入印紙を適切に貼付することが法律で義務付けられています。一方で、金銭や株式の贈与契約書の場合には印紙が不要となるケースも。ここでは、贈与契約書における印紙税の基礎知識をわかりやすく解説し、注意すべきポイントや具体例を紹介します。
贈与契約書には印紙が必要!不要なケースとは?
不動産の贈与契約書には印紙が必要です。しかし、金銭や株式の贈与契約書には印紙が不要な場合があります。
不動産贈与の場合の印紙税額は?
印紙税は、契約書や領収書など、法律で定められた「課税文書」を作成するときにかかる税金です。この税金は、取引の内容や金額を証明する文書を対象として課されます。
たとえば、不動産の売買契約書、借用書、工事の請負契約書、領収書などが該当します。これらの文書に課税額に応じた「収入印紙」を貼ることで、税金を納める仕組みになっています。
不動産の贈与契約書も印紙税の対象となります。
不動産を無償で贈与するのだから契約書には課税されないと思いがちですが、課税について法定されている以上、納税はしなければいけません。
不動産を無償で贈与契約する場合は、一律200円の収入印紙を貼付が必要です。
なお、印紙税の納付が必要な課税文書は、国税庁のホームページで確認が可能です。
現金や株式など不動産以外の贈与の印紙税
金銭や株式を無償で贈与する場合、贈与契約は贈与する側だけが義務を負う「片務契約」に該当します。このため、受け取る側は代金を支払う必要がなく、契約書に記載される取引金額は0円となります。
印紙税法では、取引金額が1万円以下の場合、収入印紙を貼る必要がありません。この規定により、贈与契約書に記載される取引金額が0円であれば、収入印紙は不要となります。
たとえば、AさんがBさんに100万円の現金を贈与した場合、契約書上の取引金額は0円とみなされるため、印紙税はかかりません。このように、金銭や株式などの贈与に関しては収入印紙が不要となるケースがほとんどです。
負担付贈与の特別なケースと印紙税額の違い
負担付贈与では契約書へ記載された契約金額によって、下表のように税額が異なってきます(国税庁「No.7140印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」「No.7108不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」をもとに作成)。
契約書に記載された契約金額 | 税額(軽減措置) | 税額(一般) |
10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超~50万円以下 | 200円 | 400円 |
50万円超~100万円以下 | 500円 | 1,000円 |
100万円超~500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 5,000円 | 10,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 10,000円 | 20,000円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30,000円 | 60,000円 |
1億円超~5億円以下 | 60,000円 | 100,000円 |
5億円超~10億円以下 | 160,000円 | 200,000円 |
10億円超~50億円以下 | 320,000円 | 400,000円 |
50億円超~ | 480,000円 | 600,000円 |
印紙の取り扱いと注意点を押さえよう
不動産に関する贈与契約書が、贈与者・受贈者の納得できる内容であっても、収入印紙の貼付・消印を行わなければ、税務署からペナルティを受ける可能性があります。
また、贈与契約書作成時の収入印紙の貼付場所に決まりはないものの、消印方法に注意する必要があります。
こちらでは収入印紙の一般的な貼付場所と、消印方法を説明しましょう。
正しい印紙の貼り方とその位置
贈与契約書作成時の収入印紙の貼付場所は、法律で明記されておらずどこに貼付しても構いません。図のように、一般的には契約書1枚目の左上へ貼り付ける場合が多いです。
また、贈与契約書は贈与者・受贈者がそれぞれ保管するので、基本的に2通作成されます。つまり贈与契約書1通ごとに、契約書に記載された契約金額分の収入印紙を貼り付ける必要があります。
消印の手順と注意すべきポイント

収入印紙を貼付したら必ず「消印」を押さなければいけません。収入印紙を貼付後、贈与契約書と収入印紙へまたがるように押印しましょう。
なぜこのような方法をとるかというと、貼付した印紙を再利用できなくする必要があるからです。この方法を怠ると、過怠税というペナルティが課せられてしまいます。
ただし、消印を行うときは署名した際の印鑑を利用しなくても構いません。別の印鑑や氏名・名称等を表示した日付印や、役職名・名称等を表示したゴム印も利用できます。
また、印鑑ではなく氏名・通称・商号等をペンで自筆し、消印する方法も認められています。
ただし、ペンで自筆するならば簡単に消せないもので消印としましょう。また、単にペンで斜線を引くような方法では消印と言えません。
収入印紙は契約書ごとに貼付

収入印紙は契約書1通ごとに貼付する必要があります。
一般的には、贈与者と受贈者の両方が1通ずつ契約書を持つため、2通の契約書を作成することが多いです。印紙税は契約内容そのものではなく、契約書という文書に対して課される税金です。したがって、契約書を2通作成する場合、それぞれに収入印紙を貼付しなければなりません。
たとえば、AさんがBさんに評価額300万円の不動産を贈与し、契約書を2通作成する場合、各契約書には200円の収入印紙を貼付します。これにより、合計400円分の収入印紙が必要になります。同様に、3通作成する場合は600円分の収入印紙が必要です。
ただし、契約書の原本は1通のみ作成して、それをコピーして所持するならば、コピーした方の契約書に収入印紙の貼付は不要です。
印紙を貼り忘れた場合のリスクと影響
契約書に収入印紙を貼り忘れると、思わぬペナルティが発生することがあります。契約そのものは有効ですが、税務署から指摘されると過怠税を課される可能性があります。過怠税は、本来の印紙税額よりも高額になるため、注意が必要です。
ここでは、印紙を貼り忘れた場合のリスクやその影響、適切な対応策について解説します。契約書作成時の基本ルールを確認し、トラブルを防ぎましょう。
契約の有効性にどう影響する?
契約書に印紙が貼られていなくても、契約自体の効力には影響はありません。領収書の場合も同じです。しかし、印紙を貼るべき書類に印紙が貼られていないと、それは脱税と見なされます。その結果、税務署から罰則を受ける可能性があります。
印紙の貼付は税金を納めるための義務であり、契約書を作成する際には必ず確認することが重要です。
過怠税が発生する可能性について
収入印紙の貼付をうっかり忘れてしまった、消印に不備があるという場合は「過怠税」というペナルティを受けます。
過怠税とは、課税文書を作成した際、納付するべき印紙税を正しく納めないと課税されてしまう税金です。過怠税として「本来納めるべき収入印紙の税額+(本来納めるべき収入印紙の税額×2)」が課されてしまうので気を付けましょう。
せっかく収入印紙を貼り付けたのに、消印しなかったためにペナルティを受けては、悔やんでも悔やみきれません。
ただし、税務署から指摘を受ける前に、課税文書の作成者が自主的に収入印紙の不備を税務署へ申し出たならば、納付しなかった税額の1.1倍に減額されます。
印紙税に関する疑問を解決しよう
印紙税は誰が負担するのか、どこで収入印紙を購入できるのか、そして印紙税を節約するための方法など、よくある疑問を解決します。
印紙税は誰が負担するの?
印紙税法第3条では「課税文書を作った人」が印紙税を支払うことになっています。ただし、契約書を共同で作成した場合、双方に納税義務があります。
通常、契約書は2通作成し、それぞれが1通ずつ保管します。そのため、双方が自分の契約書に必要な収入印紙を貼る形で費用を負担するのが一般的です。
誰が負担するかを事前に話し合い、明確にしておくとスムーズです。
収入印紙の購入方法
贈与契約書に貼付する収入印紙は、いろいろなところで販売されています。
- コンビニ
- 郵便局
- 法務局
- パスポートセンター
- 市区町村役場
コンビニで手軽に購入可能ですが、200円印紙のみしか販売されていないケースがほとんどです。もちろん、契約書に契約金額が記載されていなかったり(無償)、契約金額が少額に収まったりしているなら、コンビニで購入しても構いません。
しかし、負担付贈与契約で数万円程度の収入印紙が必要な場合、数百円単位の収入印紙を貼付するのは骨の折れる作業になるでしょう。
郵便局では収入印紙31種類全てが販売されています。1万円〜10万円の収入印紙も扱っているので、税額が大きい場合は郵便局で購入しましょう。
印紙税の負担については法律で明記されておらず、誰が負担しても構いません。
贈与者と受贈者(贈与される人)のどちらかが印紙代を負担しても良いですし、双方が折半で負担しても良いでしょう。
印紙税を節約する方法と電子契約の活用法
印紙税の負担が大きくなりそうだ、と言うときには電子契約書で贈与契約書を作成しましょう。
電子契約なので収入印紙を貼付する必要がなく、購入費用はかかりません。
電子契約を締結しても契約書の有効性は変わらず、現在では贈与者・受贈者が電子署名するにあたり、多段階の認証プロセスを経るので、高い安全性が確保されています。
また、印紙税がかからない他、インターネットにデータとして保存されるため、書類が紛失したり、改ざんされたりするリスクもありません。
贈与契約をあまりこころよく思わない人物への対策としても活用できます。
電子契約サービスは非常に多くの事業者が参入し、自分のニーズに合わせて様々な商品を選べるはずです。
贈与契約書作成時に知っておきたいアドバイス
贈与契約書を作成する際には、法律や税制について正確に理解しておくことが大切です。印紙税の適用や契約書の形式、作成の効率化など、注意すべきポイントを押さえることで、スムーズかつ適正な手続きが可能になります。
契約内容に応じた適切な印紙税の選び方
贈与契約書には、内容によって印紙税がかかる場合とかからない場合があります。たとえば、無償で現金や株式を贈与する契約書には印紙税は不要です。一方で、不動産を無償で贈与する贈与契約書には、200円の収入印紙が必要になります。
一方で、負担付贈与の場合は、その負担額に応じて必要な印紙税額が代わってきます。
印紙税が必要かどうか、いくらになるのかを判断するには、契約内容と税法のルールを確認することが大切です。
法令を守りながら効率的に契約書を作成する方法
契約書を効率的に作成するには、以下の方法がおすすめです。
- 原本を1通のみ作成する
双方が原本を必要としない場合は、原本を1通だけ作成し、それをコピーして使用する方法があります。これにより、収入印紙を1枚だけ用意すれば済み、コストを抑えることができます。 - テンプレートの活用
専門家が提供するテンプレートを利用すれば、基本的な書式や内容を網羅できます。ただし、内容が契約に合っているかは必ず確認してください。 - 契約書の簡略化
不必要な条項を省くことで、作成時間を短縮し、内容を明確にできます。
専門家に相談することと最新情報をチェックする重要性
贈与契約は法律や税制に関する知識が必要です。そのため、税理士や弁護士などの専門家に相談することで、リスクを回避しながら適切な契約書を作成できます。特に、印紙税の軽減措置や非課税文書の判断には専門的な知識が役立ちます。
また、税制は頻繁に改正されるため、最新情報の確認が欠かせません。国税庁の公式サイトや専門家の解説をチェックして、常に最新のルールに基づいて作成しましょう。
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