海外の預金の相続方法は国によって違う!手続きや注意点を徹底解説!
Contents
海外にある預金は相続できる?適用される法律は?
被相続人の海外預金をはじめとした国外財産も相続の対象です。
法の適用に関する通則法において「相続は、被相続人の本国法による」と明記されています(同法第36条)。
つまり被相続人が日本人であるなら、海外の金融機関の口座に預金していても、日本の法律(民法)に則り相続が進められます。
相続した外資預金の評価方法とは?
相続した外貨預金は、相続開始日の「時価」で評価します。また、日本での相続税は日本円で計算するため、時価は日本円で算定します。
評価は、相続開始日における最終の「対顧客電信買い相場(TTB)」という為替相場をまず確認しましょう。外貨を売り日本円に換えた日の最終の為替相場で、外貨預金の評価額を求めます。
相続開始日に為替相場が存在しない(祝祭日)場合は、相続開始日前の為替相場のうち直近のものを利用します。
具体例をあげて計算してみましょう。
(例)相続外貨預金が21,000ドルで、相続開始日のTTBが110円の場合
21,000ドル(外貨預金)×110円(TTB)=2,310,000円
相続外貨預金は231万円となります。
なお、被相続人の取引していた金融機関が公表している為替相場を用いて評価します。
国によって相続の手続きは異なる?違いを解説!
海外預金については、英米法(イギリスやアメリカ等)でも大陸法(フランスやドイツ等)でも、被相続人の本国法が適用されるので違いはないです。
つまり、被相続人が日本人ならば、日本法を適用して相続手続きが進められます。
ただし、海外預金の払い戻すための具体的な手続きは、現地の制度に従わなければいけません。
英米法を採用する国の場合、海外預金を相続するときは「プロベート(probate)」という手続きが必要です。
こちらはたとえ遺言書があっても、相続財産の管理・分配を裁判所が関与しながら進める方法です。一方、大陸法を採用する国の場合はこの手続きはありません。
英米法・大陸法の相続手続きの流れを解説!
こちらでは、それぞれ預金口座のある国の手続きの流れを見ていきましょう。
英米法の手続き
被相続人の海外預金を払い戻す手続きでは、プロベートが適用されます。
- 遺産管理人の選任:裁判所で選任され、海外預金等は遺産管理人の管理下に置かれる
- 遺産管理人が調査開始:被相続人のの資産や負債、相続人が誰か等の調査を進める
- 相続税の申告・納付:遺産管理人が相続税の申告・納付手続をする
- 裁判所から相続財産の分配許可を得る
- 預金の払い戻し
預金の払い戻しまでに1年〜3年程度かかってしまう可能性があります。
大陸法の手続き
プロベートが適用されない分、英米法の場合よりは迅速に手続きを進められるはずです。
- 海外の金融機関へ相続報告:被相続人が死亡した旨を伝え、預金の払い戻しを申し出る
- 必要書類の作成・翻訳:金融機関側から指定された書類を収集、翻訳する
- 公証役場で認証:公証役場で翻訳書類が適式であると証明してもらう
- 外務省で証明:公証役場で認証を経た書類を、今度は外務省に提出し書類が日本のものであるという証明をもらう
- 在外公館で証明:海外預金のある国の大使館で、書類を作成者は相続人本人であると証明してもらう
- 預金の払い戻し
預金の払い戻しまでに半年〜1年程度かかります。
海外にある預金の相続にかかる費用はどれくらい?
日本国内で相続手続きに追われる中、日本の相続人が現地に行って海外預金等の手続きを進めるのは困難です。
特に英米法の国ではプロベートが必要なので、現地の弁護士等に依頼し手続きを進める必要があります。
海外預金の払い戻しに必要な費用をそれぞれ比較してみましょう。
英米法 | 大陸法 |
弁護士費用がかかってしまう ・着手金の相場:20~50万円 ・報酬金:海外預金等の10~16%程度 ・実費:書類の郵送代、書類発行手数料 →100万円以上かかる可能性が高い | ・30~50万円程度 →銀行と直接のやりとりのみ、弁護士費用はかからない |
トラブルに注意!海外にある資産が凍結するのを回避する方法
海外にある資産の凍結をされると、凍結が解除されるまでの長期間を要します。
凍結を避けたいならば、次の方法を検討しましょう。
- 生前信託:信頼できる親族の誰かと信託契約を結べば、契約した親族(受託者)が財産を分配するので、裁判所から資産を凍結されずに済む
- 預金口座を共同保有:被相続人と相続人の誰かが口座を共同保有すれば、相続人が資産をそのまま引き継げる
- 被相続人が受取人を指名:事前に被相続人が自分の死亡後の預金の受取人を指名すれば、相続開始後、相続手続きを省き、指名された受取人が口座の預金を受け取れる
海外の預金を相続するのが難しい理由とは?
海外預金の相続の際には、そのまま日本語で書類を提出するのではなく、海外預金のある国の言葉に翻訳しなければいけません。さらに手続きのための書類なので、正確性が求められます。
また、英米法の国では海外預金の払い戻しに裁判所が関与するので、現地の弁護士のサポートが必要となります。
このような煩雑な手続きを踏むので、海外預金の相続は手間がかかってしまうのです。
生前対策として財産目録を作成しておこう!作成方法を解説!
海外預金があっても日本にいる相続人は、国内の相続財産だけに注目してしまい、海外の資産を見過ごしてしまう可能性があります。
そんな事態にならないように、前もって被相続人の方で「財産目録」を作成しておきましょう。
財産目録とは、被相続人の所有する土地・建物のような不動産資産、預貯金・株券のような金融資産を一覧にした書類です。なお、財産目録の書式や記載内容は特に法律で定められていません。
こちらに他の財産ともども海外預金も明記しておきましょう。海外預金の手続きをどのように行うかも記載していれば、相続人は安心して対応できるはずです。
裁判所のインターネットサイトでは、次のような相続財産目録(遺産目録)のサンプルが提供されています。
【裁判所COURTS IN JAPANホームページ 書式集】
このようなサンプルを利用して作成しても構いません。
二重国籍を持っている場合は相続に影響する?
二重国籍とは、2つの国の国籍を持つ状態を指します。両親のどちらかが日本人でもう一方が外国籍の場合、そして外国で生まれた場合に該当します。
この場合、本人が20歳に達するまで(二重国籍となったのが18歳以降:その時から2年以内)に、いずれかの国籍を選択しなければいけません。
国籍の選択後に本人が亡くなった場合、その選択した国籍に従い相続手続きを行います。
もしも、日本と他の外国籍の2つの国籍を持っている人が亡くなると、少なくとも日本国内で相続手続きを進めるならば、日本の民法が適用されます。
海外預金の相続手続きを経験した人の事例をご紹介!手続き時の注意点とは?
こちらでは、外国にいる相続人と遺産分割協議を行った事例について取り上げます。
【経緯】
被相続人(母親)が亡くなり、日本国内にいる子A(兄)は海外に在住する子B(弟)と、メールで遺産分割協議を行いました。
遺産分割に関する内容へお互いが納得し合意後、遺産分割協議書を作成しました。
【問題】
遺産分割協議書には署名の他に押印(実印)が必要で、遺産分割協議書を金融機関等に提出する際、実印を証明する「印鑑登録証明書」の添付も必要です。
しかし、子Bは日本に住所がなく、印鑑証明書の発行を受けられません。子A・子Bは相続の手続きに行き詰ってしまいました。
【問題解決】
現地の日本領事館で対応できると気付いた子Aは、遺産分割協議書を子Bに送付します。
遺産分割協議書を受け取った子Bが、日本領事館の担当職員の面前で遺産分割協議書に署名し、それが子Bの署名に間違いないと認証してもらいました。
この認証手続きを行えば、実印・印鑑証明書がなくても相続の手続きが行えます。おかげで子A・子Bは無事、相続手続きを完了できました。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください