認知症が相続手続きに与える影響は?ケース別に対処法を解説!

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遺産相続

認知症が相続手続きに与える影響とは?遺言書の作成や遺産分割協議に影響がある?

認知症によって判断能力が低下してしまうと、どのような影響が出てくるのでしょうか。
まず、ご本人の場合には、事前対策としての遺言書の作成ができなくなってしまう可能性があります。

また、遺言書がなければ相続手続きを進めるために遺産分割協議が必要となりますが、相続人の中に認知症の方がいる場合には、その方のために後見人等を選任する必要性が生じ、手続きがスムーズに進まなくなってしまう恐れがあります。

ここではまず、認知症を発症したのがご本人の場合と、相続人(遺産を引き継ぐ人)の場合のそれぞれについて、どのような影響があるのかを解説していきます。

認知症を発症するのがご本人(遺産を残す方/被相続人)の場合

自分の遺産を誰に譲るのかを指定したい場合には、遺言書を作成する必要があります。しかし、遺言書を作成するためには、「遺言能力」が必要です。「遺言能力」とは、遺言書を作成するに足る判断能力のことをいい、この遺言能力が不十分であると判断されうる原因の一つとして、認知症があります。

遺言書の作成時に遺言能力が無かった場合には、せっかく作った遺言書が無効になってしまったり、相続人の中に「本当にご本人の意思で書かれたものなのか?」と疑念を抱く者が現れたり、その有効性について紛争に発展してしまうリスクがあります。

だからこそ、遺言書の作成を考える場合には、「まだ大丈夫」と先延ばしにせずに、判断能力が十分なうちから、しっかりと準備しておくことが重要となります。

認知症を発症したのが相続人の場合

被相続人(遺産を残す人)が遺言書を作成していなかった場合には、相続手続きを行うにあたって、遺産分割協議が必要となります。

この遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の「参加」と「合意」が必要です。ただし、遺産分割協議に参加をするための前提条件として、相続人には判断能力がなければなりません。

相続人の中に認知症等で判断能力が不十分な方がいるケースでは、遺産分割協議を行うために、まずはその方に後見人等を立てる必要が生じます。

そして、現状では、一度後見人が就任すると、その方の判断能力が回復するなどの事情がない限り、基本的にはその方が亡くなるまで、後見人とのお付き合いは続くこととなります。遺産分割協議で必要だからと言っても、後見人は「遺産分割協議の時だけ」とできないところに注意が必要です。

自分自身の認知症リスクに備えておきたい場合には?任意後見制度と法定後見制度について解説!

認知症への備えとして、後見制度があります。ここでは、「法定後見制度」と「任意後見制度」という2つの制度について比較し、解説していきます。

任意後見制度

「任意後見制度」とは、自分が認知症等で判断能力が低下してしまった場合に備えて、判断能力が十分なうちに、あらかじめ契約で信頼できる人を自分の「将来の後見人(任意後見人といいます。)」として選んでおくことができる制度です。

この任意後見制度を利用すれば、自分が信頼できる人を選んでおくことができるだけでなく、任意後見人に与える代理権の範囲など、自分が必要だと思う内容を柔軟に契約に盛り込むことができます。

任意後見人になるために特別な資格は必要ありませんが、法律や福祉の専門家に依頼をして就任してもらうこともできます。

ただし、任意後見制度はあくまで判断能力の低下に備えるための制度であるため、例えば判断能力は十分だけれど、怪我や病気などで様々な手続きや支払いなどが難しくなってしまったという場合には、利用することができません。

そうした場合には、任意後見契約ではなく財産管理等委任契約が力を発揮します。また、任意後見制度は本人の死亡により契約終了となってしまうため、スムーズな財産承継の準備をしておくためには任意後見契約に加えて、遺言書を作成し「遺言執行者」の選任をしておいたり、遺言で実現できない事項については、必要に応じて死後事務委任契約の検討もしていく必要があります。

遺言執行者や死後事務委任契約の受任者は、ご本人の財産を引き継ぎ、遺言書や死後事務委任契約で定めた内容を実現するため、必要な手続きを行っていきます。

法定後見制度

認知症となってしまった後では、契約締結に判断能力が求められる任意後見制度を利用することはできなくなってしまいます。

認知症等で判断能力が低下した後は家族等が申立人となり、家庭裁判所にご本人の判断能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人(以下「成年後見人等」)の選任申立てを行う「法定後見制度」を利用することになります。

選任された成年後見人等は、ご本人の利益とならない行為は行うことができません。例えば、成年後見人等が就く前であれば、ご本人が友人に自分の財産を贈与したいと思えば、ご本人の意思で贈与することができますが、成年後見人等が就任した後では、それはご本人ではなくて、贈与を受ける友人の利益のための行為であると判断されてしまい、贈与ができないという可能性が出てきます。

そのため、財産を渡す相手や渡し方について希望がある場合には、遺言書の作成や民事信託の活用を検討するなど、ご希望に合わせた相続対策を早めに準備しておくとよいでしょう。

相続人に認知症の方がいる場合の事前対策は?遺言書の作成や民事信託の活用を。

相続人の中に認知症の方がいる場合には、遺産分割協議に入る前に、その方に成年後見人等を就ける必要が生じ、相続手続きがスムーズに進まない可能性があることをお伝えしました。ここでは、相続人に認知症の方がいた場合でも、円滑に相続手続きが行えるようにする方法を解説していきます。

遺言書を作成する

相続人の中に既に認知症の方がいる場合や、将来的に認知症となってしまった場合に備えておく方法として、遺言書の作成が効果的です。

遺言書があれば財産を渡したい相手に渡すことができるだけでなく、原則遺産分割協議を省略することもできるため、相続人への負担を軽減してあげることもできます。ただし、単に遺言書がありさえすればよいわけではなく、きちんと遺産分割協議を省略できるような内容や書き方で作成しておくことが必要となります。

また、遺言書の内容や書き方次第では、相続人間でトラブルとなってしまったり、遺言書は決まった様式で書くことを求められるため、様式を満たしていない場合には、せっかく作った遺言書が無効となってしまう可能性もあります。

そのため、弁護士や行政書士のような法律の専門家にも相談の上、客観的な視点でのアドバイスも受けながら作成しておくと安心でしょう。

民事信託を利用する

民事信託とは、自分の信頼できる家族や親族等に財産を託し、管理・処分を行ってもらう財産管理の仕組みのことです。自分(委託者)が、財産を託したい相手(受託者)と信託契約を結ぶことで、この仕組みを利用することができます。

委託者が死亡した際に、信託財産を承継させたい者を、信託契約の中で「帰属権利者等」として定めておくことができます。

「帰属権利者等」とは、委託者が死亡するなどで信託契約が終了となった場合に、信託財産を手にする人のことです。誰がどんな財産を手にするのか、信託契約で詳細に定めておけば、相続人に認知症の方がいた場合でも、財産を承継させることができます。

成年後見制度を利用する

相続人の中に認知症の方がいて、遺産分割協議を行う場合には、その方のために家庭裁判所に成年後見人等の選任申立てをすることが必要となります。

前述したとおり、たとえ遺産分割協議のために成年後見人等の選任申立てをしたとしても、成年後見人等との関係はその時限りのものではなく、基本的にはその方が亡くなるまで長期に渡って関係性が続いていくことになることを理解しておくことが必要です。

また、他の相続人が任意後見人や成年後見人等となっている場合には、遺産分割協議においては利益相反関係となってしまうため、別途特別代理人の選任申立てが必要となります。

本人(被相続人)が認知症になってしまった後に相続対策はできる?

ご本人(被相続人)が認知症になってしまった場合には、遺言や民事信託といった事前対策をとることは難しくなってしまいます。

そのため、前述した通り認知症になる前の早めの事前対策が重要となります。もし、ご本人が遺言書を残さずに亡くなってしまった場合には、相続人全員で遺産分割協議を行うほかありません。

相続人や被相続人が認知症の場合の相談先は?専門家への早めの相談がおすすめ!

相続手続きでは、期限が定められているものがあります。そのため、相続人の中に認知症の方がいるなど、どのように手続きを進めていったらよいか迷った場合には、できるだけ早く相続に詳しい弁護士・司法書士・行政書士等の法律の専門家へ、どのような措置を取るべきか相談されることをおすすめいたします。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

長島 愛

行政書士・カウンセラー・社会福祉士

長島 愛(ながしま あい)

遺言、認知症への備え、亡くなった後のお手続き。それから、相続のご相談。これらの相談は、単なる『手続き』の相談ではありません。大学時代から福祉・心理学を学び、福祉専門職として働いてきた社会福祉士・カウンセラーだからこそ、ご本人の不安なお気持ちにもしっかりと寄り添いながら、伴走者の立ち位置で、一緒に考えサポートをさせていただきます。 

サイトURL:https://www.hidamari-a.com

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